佐久間と山田のけだるい日常 第七十一話 ~空腹~(中編)

(腹が痛い。腹が空きすぎて痛い。)
次々と車を跳び移りながら、佐久間は左手で腹を押さえていた。蹴られたダメージも合わさって、余計に痛い。内側と外側の両方から痛い。特に外側の痛みは、普通の人間なら死んでいる。
「逃げるな佐久間闇子! わたしがレイプしてくれる!」
全裸の怪人れいぷ男が車を蹴り飛ばすように踏みながら追いかけてくる。普通の人間なら恐怖でパニックになっている。実際、街の人々は混乱し、悲鳴をあげる者もいた。
(読書男が見えないな。)
(遅いとは思えない。)
(隠れて攻撃の隙を窺っているのか。)
「ふん。」
佐久間は左手に闇エネルギーを集約させ、数十の球体へと変えた。
「ダークボールか。わたしの睾丸(ボール)と勝負する気か?」
「下品な冗談に付き合ってる暇は無ぇよ。目玉と頭(ドタマ)消し飛びやがれっ!」
暗黒球体が放たれる。
怪人れいぷ男は逃げられない。
「バリア!」
薄い透明の膜が闇エネルギーを弾き飛ばした。
「BBBの切り込み隊長がバリアくらい張れないと思っていたのか!」
意気揚々と叫ぶ怪人れいぷ男だったが、佐久間は笑っていた。
「思っていないさ。」
「か・・・?」
バリアを通過して、闇エネルギーの槍が怪人れいぷ男の腹を貫通していた。
「結界通過技・“ジャグマ”。」
「何てことしやがる! 腹に槍を刺すなど、普通の人間なら死んでるぞ!」
「私の腹を蹴った十倍返しだ。」
「貴様を姦通する前に、わたしが貫通させられてしまうとは、不覚だ・・・。」
深く傷を負った怪人れいぷ男は、脂汗を流しながら佐久間を睨んだ。
その瞬間、佐久間の体に異変が起きる。
「・・!?」
体が痺れる。
火照って疼く。
(何だ?)
(読書男の仕業か?)
すると戦車が車を踏み潰しながら走ってきた。
《どうかね佐久間女史! 僕が開発した猛毒の威力は?》
周りを見れば、人々が倒れて苦しんでいる。血を吐きながら、のた打ち回っている。
前方の怪人れいぷ男も、全裸で苦しそうだ。
《露出度の高い格好が仇になったな! 普通の人間なら血反吐を撒き散らすところだが、そこは流石に佐久間女史、少し痺れるだけとは! だが、BBBの切り込み隊長である怪人れいぷ男は、この毒に耐性を持っている! これで形勢は逆転した!》
しかし怪人れいぷ男は血を吐いて苦しんでいた。
「・・・。」
《どうやら腹を貫かれたせいで血を吐いているようだが、彼には最終奥義がある!》
「つ、使うしかないのか・・・!」
怪人どくしょ男の得意気な声とは裏腹に、怪人れいぷ男は青くなっていた。
「・・・。」
空腹で喋るのも億劫になってきた佐久間は、油断せずに構える。
「最終奥義、巨大化!」
怪人れいぷ男の体が3倍になった。肉が増えたせいか、傷も塞がっている。
「この技だけは使いたくなかった。元に戻るとき、手術で肉を削ぎ落とすのが痛いからな・・・。」
「心配するな。地獄なら普通の大きさだ。」
佐久間は闇エネルギーを集約し、再び球体を数十個作り出す。
「最終形態のわたしに、そんなものが通用するか! ミルクブラストーーーっ!!」
怪人れいぷ男の全身から、白濁したエネルギーが放たれる。
「あああああっ!?」
佐久間は暗黒球体ごと吹き飛ばされ、電線をぶっちぎって空へ舞い上がった。そこへ戦車から大砲が放たれ、佐久間に命中。爆発炎上し、佐久間は仰向けに落下した。
(チッ、1秒意識が飛んだか!)
落下の途中で意識を取り戻した佐久間は、車を蹴ってパン屋に突っ込んだ。
クリームパンが破れてクリームがかかり、佐久間は思わず舐め取った。
(甘い。)
(これは食い物か。)
起き上がると、パンが散乱していた。
佐久間は無意識的に財布から1万円札を50枚取り出してカウンターに置き、パンを貪った。
(何という美味さだ。)
(こんな美味いものを作り出す人類を滅亡させるのは考え直すべきか?)
今、街角のパン屋さんが世界を救った。



つづく

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2014年08月01日 21:35
火剣「どこかにふざけがある怪人れいぷ男」
コング「怪人どくしょ男はどんな技を使ったんだ。佐久間んが疼くとは」
ゴリーレッド「意外にもってる」
火剣「結果ありきの観戦はやめろ。まだわからないだろ」
コング「佐久間んを1秒でも気絶させたのは相当強い」
火剣「しかしパンを食べるのに50万円はいらないだろ」
コング「お金を出すところが律儀だ」
ゴリーレッド「パン屋が人類を救うか」
火剣「一万円札をさりげなくレジに置くだけでもかなり人間的だが、なぜ50万円?」
ゴリーレッド「佐久間んにははした金とか」
コング「それより姦通はまだか?」
火剣「猛毒で無関係の人間に被害が及んだとしたら許せん」
コング「コントで通行人を犠牲にしてはいけない」
ゴリーレッド「コントではない」
火剣「命懸けのバトルだ」
コング「結界破りといえば、かごめだ」
ゴリーレッド「はい終了」
コング「奈落の結界を破れるのは桔梗なきあとは、かごめだけ」
ゴリーレッド「よし黙れ」
火剣「そういえば山田太郎はどこへ?」
2014年08月01日 22:25
街のパン屋さんが世界を救う!病院の時といい、名も無き誰かが世界を救う展開に胸熱。空腹時には特に食べ物の重要性が上がります。この極限状態で得た大量のパンには、店の修理代も含めて50万の価値がある。
しかし、巨大化は怪人系のスキルとしてまだ分かりますが、どくしょ男の戦車と猛毒って…。

ルビデ「あっちで毒砲弾、こっちで猛毒!」
白龍「酷い…。」
ルビデ「ジャグマの使い方をメモメモ。出来れば放つ時のコツが知りたい。」
白龍「研究熱心だな。」
ルビデ「世界を破壊と恐怖のどん底に叩き込める人材がパンによって懐柔されたか…。人はパンのみによって生きるのだ。」
白龍「聖書の言葉を否定したかっただけだろ。」
ルビデ「バレたか。」
白龍「パンを食べることによってエネルギー充填完了。佐久間さんの反撃が始まる。これで勝ったな。」
2014年08月01日 22:51
>火剣さん
どう考えてもふざけていられる余裕があるようには思えませんが、それでもふざけを入れる怪人れいぷ男です。ある意味この物語に相応しいキャラかもしれない・・・。
50万円は多分、建物の修理費も込みですね。・・・あるいは毒で意識朦朧として1ケタ間違えた可能性も。

維澄「体が疼いたのは、もしかして猛毒の効果がそれだけしか効いてないの?」
八武「流石は佐久間だ。地獄絵図を恥辱エロに変えてしまうとは!」
神邪「市民が血を吐いてる時点で、かなりの地獄絵図に思えるんですが、それは・・」
八武「ふむ、市民の中に美人がいるなら許しがたいことだ。」
維澄「またそういうことを言う。」
八武「この状況を解決する方法は2つしかない! 佐久間にも通用するHガスを開発するか、佐久間が毒ガスを目一杯吸引するか! 時間的余裕から鑑みて後者!」
神邪「それだけ吸ったら、いくら佐久間さんでも危なくないですか?」
八武「だから・・・いいんじゃあ・・・ないか・・・!」
維澄「駄目だこの人、とっくに狂気の世界へ行ってしまってる。でも確かに、猛毒に悶える佐久間を見てみたい。」
神邪「僕も見てみたいです。どうにも山田さんがいないと、ストッパーに欠けますねぇ。」
2014年08月01日 23:04
>千花白龍さん
腹が減っては戦は出来ぬ。ようやく食い物にありつけて、戦闘中ながら食事開始。あまりの美味さに、世界を滅ぼそうという危ない考えも変更を余儀なくされています。
むしろ戦車と猛毒の方が現実的かもしれませんが、確かに怪人としてはどうなんでしょうね。一応、科学者を名乗ってるだけあって、この毒は自作です。
(怪人読書男ではなく、怪人毒所男)

神邪「なんでしょうね、このシンクロ具合は。」
維澄「よくあることだよ。」
八武「毒は毒でも娼毒ならパーフェクトだったのに! ガスでなく液体を浴びせかければ猶よいぞ!」
神邪「目的方面でも連携が悪いみたい。」
八武「まったくだ。」
維澄「あなたはBBBと敵対してるんじゃなかったの?」
八武「それはそれ、これはこれ。佐久間とも敵対関係にあるし。」
神邪「悪友ではなくて?」
維澄「さあ、反撃の時間だ。」

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