佐久間と山田のけだるい日常 第七十一話 ~空腹~(後編)

戦車は街中を爆走し続けていた。
《その汚いパン屋を吹っ飛ばしてやる!》
砲口がパン屋を向いた。
佐久間はパンを食べ続けながらバリアを張った。
そこへ大砲が放たれようとしていた。バリアを張ってる佐久間はともかく、パン屋は跡形も残らないだろう。
パン屋の主人は1万円札の束をレジスターに仕舞うと、佐久間が破ったところから外へ飛び出した。
「俺のパン屋を壊させるものかぁ!」
パン屋の主人は筋肉で服を上だけ吹き飛ばし、その勢いで戦車に体当たり。砲口がズレ、放たれた弾丸は選挙カーを直撃。大破した。
「何者だ貴様!」
怪人れいぷ男が全裸で質問する。
「いつからBBBの怪人は戦車(オモチャ)に頼るようになったよ、小僧ども。」
「なにっ?」
「俺は元BBBの風呂焚き係、“怪人ねっとう男”だ!」
「まさか、あの伝説の・・・!? 死んだはずの貴様が何故パン屋として生きている!? 答えろ怪人なっとう男!」
「答える必要は無い。俺の冒険譚は、小僧ともの冥土の土産には重すぎるだろう。」

その間も佐久間はパンを食べ続けていた。
(熱湯男か。)
(あのとき気紛れに命を助けてやった男が、今度は私の味方とは。)
(どうやら運命は私の味方らしい。)
佐久間は不敵に笑いながらパンを食べ続けた。皮のパリッとしたクロワッサン、焼きたてホカホカのソーセージパン、サクサクのクッキー、ザクッと噛み応えのあるパイ、ふわっとした食感のクリームパンに、蕩けるようなアンパン。
(立派になりやがって。)

《恐れるな、怪人れいぷ男! 既に過去の伝説だ! お前の質量に勝てるはずがない! しかも猛毒を撒き散らしているのだ、勝てる!》
「そ、そうか。」
怪人れいぷ男は、巨大化した体から打撃を放った。
「はっ!」
怪人ねっとう男は後ろへ跳び、両手からネバネバした液体を出して、駅ビルの壁にへばりついた。
「これぞ、納豆パワー。」
先程、怪人れいぷ男が“なっとう”と言ったのは、言い間違いではない。怪人ねっとう男は、怪人なっとう男という別名があるのだ。これは佐久間も知らなかった事実である。

(知らなかった・・・。)
(あのとき、奴が納豆パワーを使っていたら、私は苦戦を強いられていたかもしれない。)
納豆パンを食べながら、佐久間は感心して観戦していた。

「そちらが納豆なら、こちらはミルクだ! ミルクブラストーーーっ!!」
再び白濁した破壊光線が放たれた。体の大きさを全く活かしてない戦術だが、最終形態にならないと使えない技なので仕方ないことだった。
「ぐあああああ!?」
駅ビルの壁が木っ端微塵に吹き飛び、怪人なっとう男は上空へ吹き飛んだ。そこへ大砲の弾丸が命中し、大爆発を起こす。
「ごはっ・・・」
怪人なっとう男は、意識朦朧としながら落下し、駅前の放置自転車の群れに激突。その瞬間に彼は粘液を出して自転車をクッション化。更にガードレールを歪むほどに蹴って駅構内へ逃げ込んだ。
「やるな、伝説。」
怪人れいぷ男は、敵ながら天晴れだと思った。
《しかし、もはや戦えるだけの力は残っていまい!》
怪人どくしょ男の指摘は正しかった。駅構内で彼は改札に体を横たえ、ピンポーン、ピンポーンと、警告音を鳴らしていた。起き上がろうにも体は動かず、ピンポーン、ピンポーンと、耳障りな音が響く中で、彼の意識は次第に遠のいていった。

だが、このとき佐久間が立ち上がった。
ボロボロになったシャツを破いてリボン代わりにポニーテールを結い上げ、颯爽と道路へ出てきた。
《露出度が上がったな、佐久間女史!》
佐久間の格好は、破れたミニスカートに、上半身は純白のブラのみ。
「ようやく腹が膨れた。戦闘再開といこうじゃないか?」
(納豆男、お前の伝説は私が引き継いでやるよ。)
佐久間が空腹を解消したところで、更なる戦いが始まろうとしていた。




   第七十一話   了

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この記事へのコメント

2014年08月02日 12:50
火剣「きょうも暑さに負けずに漫才をしよう」
コング「熱中症と食中毒には要注意。熱中症は体が動かなくなる恐ろしい症状。水分補給、塩分補給、官能サスペンス堪能で真夏を乗り切ろう!」
ゴリーレッド「最後は関係ない」
火剣「シャツを筋肉だけで破る?」
コング「そのシャツを誰が縫うんだい?」
火剣「パン屋の店主も人間じゃなかったか」
コング「怪人ねっとう男。夏には迷惑な名前だ」
ゴリーレッド「なっとう男?」
火剣「どっちなんだ?」
コング「言い間違えは突っ込まないのが優しさと思って触れなかったが、間違いではなかったか」
火剣「ほとんどスパイダーマンだが」
コング「ヒロインの衣服が破れるチラリズムはハイレベルな演出だ」
火剣「戦闘やジャングルの枝で服が破けたりして、腰や脚などあちこちの肌が露わになる格好は、なかなか魅惑的だ」
ゴリーレッド「佐久間闇子19歳。さすがは女優」
コング「私は女優よ」
火剣「了? 怪人れいぷ男は葬らなくてもいいのか?」
コング「ボケナス大統領も何度でも蘇る。怪人は不死身だ」
火剣「律儀に蘇生しないのはジャスティスだけか」


2014年08月02日 14:47
更なる超展開!パン屋さんが戦闘に加わった辺りでジブリ的なノリかと思ってましたが、まさかのBBB(元)。なんか、街のいたるところにこんな人達が潜んでいる気がしてきた…。
ねっとうだよ、とツッコミを入れる前に、両方であることが判明。挑発のためにワザと間違えたと思ってました。
敗れたなっとう男ですが、なぜか佐久間さんがその意思を引き継ぐという胸熱(?)展開。しかし、これって結局、佐久間さんが人間を救ったということになるのかな?昔に何があったのかはさておき、謎のハイテンションのまま次の話へ。腹の膨れた佐久間さんは怪人二体にどう戦うのか。多分、納豆ボンバー(←そんな技あるのか?)とかその辺りの技を使いそうな気がします。
2014年08月02日 21:38
>火剣さん
戦闘というより漫才になっていますが、佐久間闇子復活までの時間を稼いでくれました、怪人ねっとう(なっとう)男。夏は熱湯より納豆の方がいいですね。
女優・佐久間が、次第に露出度を高めていく中で、第七十二話「満腹」へ続く・・・!

八武「何気にポイント高いのは、破れた服をリボン代わりにする機転。この佐久間は、どこまでサービス精神旺盛なんだ!」
維澄「気合を入れる為の行動が人を萌えさせる。これが天然の威力なんだね・・・!」
神邪「素敵です、佐久間さん!」
八武「実際、酷暑や極寒を乗り切る為に、エロスは有効なのだ。夏バテ防止に食べようというのは、いかにも義務的で、わかっちゃいるけど食べられない状態。しかし官能的な気分は食欲をも高めてくれる。性欲は生欲、生きること、食べること、性、これらは密接に繋がっている。睡眠も忘れずに。」
神邪「最後の一言が、いかにも真面目ですね。」
八武「私は常に真面目だ。熱中症対策として、美女はビキニでプールへ行くといいぞ。」
維澄「段々と真面目さが薄らいでいく・・。」
八武「このあたりは佐久間が1人で戦ってるから、記憶を探っても出てこないな。しかし山田が何か聞いてるかもしれん。山田、山田はどこだ?」
2014年08月02日 21:53
>千花白龍さん
ラピュタ的なアレかと思いきや、アンパンマンを差し置いてジャムおじさんが1人で戦い始めるようなものですね。2つの名前を兼ね備える、伝説の怪人。
「おかしなまち」に匹敵するくらいおかしな街。流石に元BBBがゾロゾロいるはずはないですが、変人・奇人の類は多そうです。
食事を済ませて、万全とはいかないまでも普通に戦えるまでに回復した佐久間闇子。怪人なっとう(ねっとう)男の思いを引き継ぎ、納豆パワーが炸裂する?
醤油ボンバーと納豆フラッシュなら、「うえきの法則」に出てきましたね。

八武「腹の膨れたというと、どうしても妊娠を思い浮かべてしまうのは、医者として仕方ないことだ。」
神邪「ドクターは医者でなくても想像しそうな気がしますが・・。」
八武「しかし腹いっぱい食った割には、腹が凹んでるな。食ったものはどこ行ってるんだ?」
維澄「きっと体重と同じで圧縮してるんだね。」

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