佐久間と山田のけだるい日常 第七十三話 ~意識~(その4)

「男を侍らせて歩くのは、遍く女のロマンたる・・・。右にスマートハンサムガイ、左に無骨なマッスルガイ、これこそ私の理想形!」
邪悪な目つきで佐久間闇子(B)は、誰にともなく言い放った。
これから佐久間闇子(A)を捕獲しに行くのだが、山田と八武は心中穏やかではない。
本当にこれでいいのか。元に戻してしまっていいのか。
八武がそう思うのは当然として、実のところ山田も迷っていた。
佐久間闇子(B)の下品さには耐え難いが、しかし(B)の存在が山田に安心感を与えたのも事実だった。
自分の知っている佐久間闇子は、“失われていない”。
ならば佐久間闇子(A)を、自由にさせてやりたいと思わずにはいられない。
もちろん止めたい気持ちの方が勝るが、自由闊達な佐久間は美しい。
「わかるよ、山田くん。」
八武も、(B)の提案した光景を見たいとは思いつつも、その後に待っているのは人格の統合・・・すなわち(A)の消失であると思うと、なかなか割り切れない。
理屈では消失ではなく、普段の佐久間闇子の中にも(A)は含まれているのだが、気を許した間柄では(A)面を見せてくれない。(B)面ばかりだ。
「わかるか、死根也。」
上品なのが好きだとしても、それでは佐久間ではないと思う。このジレンマ。
「何だ、男だけでわかったような会話して。同期の桜か?」

そんな会話をしているうちに、3人は佐久間闇子(A)のいるところまで辿り着いた。
「このあたりにいるはずだが・・・。見当たらないな。オナニーでもしてんのか?」
「やめい。・・・だが確かに、佐久間なら行く先々で事件を起こしているはず。」
「破壊の痕跡は残ってるんだけどねぃ。」
電線は千切れ、信号機は粉々、あちこちのビルに穴が開いている。
救急車や警察が右往左往しており、パン屋が事情聴取を受けていた。
「・・・! あのパン屋・・・まさか・・・?」
佐久間(B)はとんぼ返りで美脚を晒し、男の前に降り立った。
「お前は怪人ねっとう男! 久しぶりだな!」
「しがないパン屋ですよ。・・・もしや、分裂しているので?」
「話が早いな。ということは、片割れと会ったな?」
「会いました。ですが、怪人どくしょ男の砲撃で気絶している間に、いなくなってしまいまして。」
「ふーむ、まだ近くにいるはずなんだが。」

確かに近くにいた。
佐久間闇子(A)は、観目(アンネルク)と聞目(カンゼック)で、ビルの壁を通して様子を窺っていた。
(何だ、あれ・・・?)
(分裂?)
(どういう意味だ?)
(BBBの技術か?)
(山田太郎と八武死根也とかいうやつも来てる。)
佐久間(A)は、無人のオフィスで再び推理を開始した。




つづく

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この記事へのコメント

2014年08月19日 12:30
火剣「誰にでもA面B面はあるだろう」
ゴリーレッド「二種類どころか、もっと多面性の持ち主は多い」
コング「裏表がないのは僕くらいか」
火剣「・・・分裂したままでいいわけはないが」
ゴリーレッド「佐久間Aは分裂をすぐに理解したか」
コング「怪人納得男も」
火剣「納豆男だ」
コング「熱闘甲子園」
ゴリーレッド「熱湯をかけようか?」
コング「NO!」
火剣「佐久間A対佐久間Bか。あまり見たくないが」
ゴリーレッド「まだ戦うとは限らない」
火剣「八武医者と山田太郎は融合したあと泣かされないか?」
コング「とりあえずAと様子見だ」
2014年08月19日 17:43
二人の佐久間さんが接近中。それぞれに複雑な気持ちを抱きつつ、人は進んでいかないといけない。さて、ここで納豆男と再会。しかも、佐久間Bの方もしっかり覚えていた。佐久間Aの方が覚えていることは覚えていないかと思いきや、根っこは同じということでしょうか。
佐久間B側は見えてないけど、佐久間Aはもう三人を発見。そして推理タイムへ。ここで佐久間Aがどんな結論を出すかで話の流れが変わってくる。どうにか穏便な方向に解釈して欲しいところです。実の話、佐久間Aはかなり客観的な結論を下す気がします。しかし、その結果、自分という存在が融合により「佐久間Aだけ」というものが消滅することを知って融合を拒否するという展開になりそう。事実を客観的に把握しているために説得も通じず、戦いは避けられない…という展開になりそうです。
2014年08月19日 23:07
>火剣さん
二面性が高じると、多重人格になりそうです。それとは少し違うかもしれませんが、分裂の佐久間闇子。2人が戦うとなると、嫌な予感がしてきますが・・・。

神邪「口調を揃えたら区別つかないですね。」
八武「だから嫌な予感がするんだよ。」
維澄「ああ、見たくないって、そういうことか。佐久間Aが攪乱の為に、下品な言葉遣いをすると・・・。」
八武「ただでさえ限界なのに、2倍に増えたら普段の4倍きつい! 想像するだけで心が折れそうだ! 地獄甲子園!」
神邪「しかし言われてみると、分裂という事実をすぐに理解できるって、凄いですよね。」
八武「ああ、まあ、それは佐久間だから当然というか。」
神邪「理解しにくいことでも、佐久間闇子だからで強制的に納得させられそうですね。」
八武「そうやって、どれだけの理不尽を呑み込まされてきたことか・・・。」
維澄「やっぱり分裂したままでいいのでは。」
八武「私もそう思う。」
神邪「それでは歴史に合いませんよ。」
2014年08月19日 23:17
>千花白龍さん
ふたりの王女ならぬ、ふたりの佐久間。接触すると破滅が起こるわけではないですが、尋常ならざる事態になりそうです。
分裂したのは記憶ではなく人格なので、2人とも覚えていることの方が多いです。どちらも覚えてないことも実はあります。統合しないと思い出せない記憶や感情に、割と重要な記憶もあったり・・。完全に裏設定ですが。
そして、覚えていることはBの方が多いものの、Aだけが覚えていることもあり、冷静な思考が出来るのもAの方ですね。Bは行き当たりばったり、その場のノリでしか物事を考えてない気がします。

神邪「事実をわかってるがゆえに避けられない戦いですか・・・。」
維澄「まあ、戦いは避けられそうにないよね。ヘドロスライムになって潜り込むとか言ってるし。」
八武「それは素晴らしいのだが、その後で人格が統合されてしまうと、Aのみという逸材が消えてしまうジレンマ。嗚呼。」

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