佐久間と山田のけだるい日常 第七十五話 ~放射能~

「やれやれ、男の体も不便なものだな。やっぱ女でいいわ。」
いつもの黒いシャツに短いジーンズ姿で、佐久間闇子は食卓で味噌汁を啜る。
山田は怒りが込み上げてきたが、それより気になることがあった。
佐久間の耳から青白い煙が出ているのだ。
「なあ佐久間、その煙は何だ。」
「これか? どうやら放射能が漏れてるらしい。」
「お前の体には原子炉でも埋め込まれてんのか!?」
「勘違いしないでほしいんだが、放射能そのものは目には見えない。この青白い煙は、副次的な何かだ。」
「そんなことはどうでもいい! 早く死根也のところへ行け!」
「何だ、お前も保身の為に友人を差し出すんだな。実は仲悪いのか?」
「悪いに決まってるだろ。さっさと行って治療してもらえ!」
「また無料で診てもらうのか。気が引けるなァ。」
「だったらカネを払え!」
「何で私がカネを払わなければいけないんだ。私はカネを払いたくない。払いたくない。払いたくない!」
「腹痛くない? 俺はストレスで腹痛い。」
山田は胃がキリキリ痛むのを感じながら、コーヒーに牛乳を入れ増しした。


- - - - - -


「というわけで死根也。山田がどうしてもと言うから、無料で診察を受けに来た。」
「またしても現代医学の前に大きな壁が立ちはだかる・・・。耳から放射能を発する女を前にして、何をしろと?」
ガイガーカウンターで測定しながら、八武は嘆きの声を発する。
「即死レベルではないが、これから近隣で癌が増える・・・。見た目だけの問題なら、喜んで匙を投げるが・・・。」
「それでも医者か、てめーは。」
「人間専門のな・・・。」
「私のどこが人間でないと?」
「どこもかしこも。何か心当たりは無いのかね?」
「無いこともない。原子力発電所から出る放射性廃棄物を、カネを貰って引き取ってるんだ。右手の異次元ポケットに入れてるんだけど、ちょっと引き取りすぎたかな。」
「・・・・・・お前の肉体構造については敢えて言及しないでおくが、それらのゴミを太陽へ捨てろ。」
「いやいや、これが少し手を加えるだけで売り物になるんだ。プルサーマルっていうんだよ♪」
「いいから捨てなさい。佐久間なら太陽まで8分だろ。」
「私はガンマ線かっ。」
「何分かかる?」
「何日と聞いて。その間、食事当番はどうするんだよ。」
「カップラーメンでも与えておけ。街の安寧の為に、必要な犠牲だ。」
「必要な犠牲? そんなものはあってはならない。カップラーメンの塩分で、山田が高血圧になったらどうする。」
「・・・仮に山田が高血圧になったとしたら、原因の9割以上は貴様だ。」
「うむ、美しさは罪だな。私の色気が、そこまで山田の鼓動を加速させていたとは。」
「君はガミラスから来たのか知らんが、山田は放射能を浴びたら健康を損なうぞ。」
「そこはイスカンダルと言ってくれ。」
「はいはい、イスカンダルで椅子噛んだる。太陽でもマゼラン星雲でも、どこへでも行って、さっさと放射性廃棄物を捨ててきたまえ! 宇宙は巨大なゴミ箱だ!」
「なんという邪悪な発想だ。お前にかかれば宇宙もゴミ箱扱いか。」
「プルサーマルの推進者に言われたかないね。」
「・・・・・・放射能汚染のデータ、研究したくない?」
「そんなものは世界のあちこちで取ってる! チェルノブイリ! スリーマイル! 東海村! 原発のあるところに、劣化ウラン弾の使われたところ! 原子爆弾が落ちたところ! 水爆実験とかもね!」
「何だ、私がバラ撒くまでもなく、既に地球は放射能まみれだな。」
「そうなんだよ。」
「となると、私が耳から放射能を放つことに、そんなにインパクトは無いか・・・。」
「うむ、その通りだ。」
内心では現代医学の敗北を痛感しながら、八武は威厳たっぷりに答えた。
「山田くんが君をここへ来させているのが、何よりの証拠だと思わないかね? 彼との夫婦生活に刺激を持ち込もうとするのはいいが、夫婦生活というものはっ! 持たず、作らず、持ち込ませず! それは愛人であっても、放射性廃棄物であっても同じこと・・・。何故そのままの自分で勝負しない!? 貴様の美貌と肉体美が、放射能ごときに敗北してるとでもいうのかね!? いいか、水着のビキニが何故ビキニと呼ばれているか! ビキニ水爆実験のインパクトから、ビキニと名付けられているのだ! すなわち紐ビキニの悩殺破壊力は、エロス界のツァーリ・ボンバと言っても過言ではないだろう! 更に貴様の色香を以ってすれば、破壊力は幾何級数的! たちまちのうちに地球も真っ二つ! 山田の脳髄は光よりも早く地球を7週半するだろう! そうは思わないか佐久間!?」
「・・・そうだな、死根也。私が間違っていた。どう考えても山田は、耳から放射能を発する女よりも、紐ビキニを纏った女の方がいいに決まってるものな。」


- - - - - -


「・・・という経緯を経て、私は水爆実験が行われた海のように青いビキニを身につけたのだ。」
山田の前で佐久間は、しなやかな肢体を見せ付けた。
豊かな胸と、くびれた腰、スラリとした脚線美が、惜しげもなく晒されている。
山田は心底どうでもよかったが、ここで下手なことを言うと再び放射能の恐怖が待ってるので、褒めるしかない。
「ああ、いいんじゃないか。綺麗だよ、佐久間。」
「心が籠もってない!」
こんなときだけ鋭い。山田は胃の痛みが増した。
「違うって。ちょっと今、胃の調子が悪くて、あまり感動的な声を出せないんだ。」
「山田、お前、どういう肉体構造をしてるんだ・・・?」
佐久間だけには言われたくないセリフだった。
首をかしげているのが腹立たしい。
「仕方ないな。お腹をさすってあげよう。」
佐久間は滅多に見せない穏やかな顔で、山田を横にして撫でさすり始めた。
ビキニ姿の美少女に乗られて、手当てと称した何かを受けている。
しかし山田の体は反応しない。硬くなる様子が無い。
「・・・どういうことだ。」
佐久間の目つきが鋭くなる。
「何が。」
「このシチュエーションで反応しないだと?」
「・・・。」
山田は佐久間の言いたいことを察した。
「・・・あのなあ佐久間、あらためて言うが、俺は前世の記憶がそっくりそのまま残ってるんだぜ? あの、巨大な鉄の塊、アストロン・ビックスだ。俺にとって人間は、丸っきり姿形が違う異種族なんだよ。」
「安心しろ、私もそうだった。人間の真似事もしてみたが、やはり人間とは違った。しかし転生してからは、事情が変わっている。今やセックス好きの変態だ。お前もセックスの味を知れば―――」
そう言いながら佐久間は、山田のズボンを下ろそうとする。
次の瞬間、山田の蹴りが炸裂!
「ごっ!?」
天井まで吹っ飛んだ佐久間は、赤い顔をして降り立った。
「昨日のアレで、股間を蹴るのがクセになったのかよ!? 女だって蹴られたら痛いんだぞ・・・。ああ、子宮に響く。」

佐久間の耳からは、再び青白い煙が出始めていた・・・。




   第七十五話   了

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この記事へのコメント

2014年08月28日 13:22
火剣「佐久間んは人間か、人間じゃないか」
ゴリーレッド「どう見ても普通の人間ではない」
コング「界隈で正真正銘の生身の人間は僕と栞んくらいか」
火剣「俺様も人間だ」
コング「過去はライオンだったとか」
火剣「佐久間んや山田太郎と違い、俺は過去のことは覚えてねえ。ゴリーレッドが覚えているから知っているだけだ」
ゴリーレッド「いつも短ライと火剣は一緒に暴れていた」
火剣「山田太郎にとって人間は異種族か」
ゴリーレッド「やはり過去世の記憶はないほうがいい」
コング「太陽まで8分じゃどこでもドアもいらない」
火剣「人間は8分どころか近づいたら死ぬ」
コング「ところで夫婦生活って結婚したのか?」
火剣「同棲だから夫婦も同じだ」
ゴリーレッド「同棲ではない。同居だ」
コング「佐久間んに褒め殺しは効くか?」
ゴリーレッド「ビキニ環礁かあ・・・」
コング「ビキニ観賞?」
火剣「そういえば宇宙に捨てるとよく聞くけど、宇宙人が聞いたら宇宙はゴミ箱じゃないと思うだろう」
コング「♪さらばー、地球よー、旅立ーつ船はー、宇宙ー」
ゴリーレッド「800文字」
コング「確かに言われてみればビキニの水着を発明した人はノーベル賞ものだ」
ゴリーレッド「・・・」
火剣「紐はヤバイな。ロマンを感じる」
コング「水着姿は究極のチラリズムマジックだ。夏が終わるのは寂しい」
火剣「小説は常夏を実現できる」
コング「ロマンだ。小説を発明した人はノーベル賞ものだ」
ゴリーレッド「それは肯定するが」
2014年08月28日 22:37
>火剣さん
考えるほどに異常、感じるほどに非常! 人間以上というよりも、人間以外と評した方がよさそうな佐久間闇子です。
ちなみに作中の季節は冬だったりしますが、水着に季節は関係ないとばかりにサービス精神旺盛な展開。しかし前世の記憶が邪魔して萌えられない不幸?

佐久間「いやいや、山田は照れてるだけなんだ。全く女子に興味が無いわけではないんだろう?」
山田「まあな。前世の頃も、別に人間を不気味だと思ってたわけでもないし。」
佐久間「私も同じようなものだったな。この美貌と色気は、死根也の影響がベースにあるんだ。」
八武「育成に失敗した感は否めないがね。」
佐久間「どのへんが?」
八武「性格。」
佐久間「つまり外見はパーフェクトだと言いたいわけだ!」
山田「何だそのポジティブ思考。」
維澄「でも正しい。やっぱりビキニが似合うのは豊かな胸でないと・・・。」
八武「大丈夫。ビキニだけが正義ではない。何を隠そう、私はパレオも好きなんだ。」
佐久間「あれは逆に胸があると微妙なぁ・・。」
維澄「しかし考えてみれば、人間が記憶を保ったまま獣に生まれ変わったとしたら、同種族に萌えるのは難しそう。佐久間と山田の苦労がわかる。」
八武「となると獣姦・・」
山田「ラリアット!」
八武「ごふっ!」
佐久間「そもそも無性生殖だったからなァ。闇モンスターは基本的に無性生殖なんだよ。だから種族としては千種類も無かった。地球は何百万という種類の動植物がある。バリエーションが多くて楽しいな。」

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