佐久間と山田のけだるい日常 第七十二話 ~満腹~(その2)

「はうじっ!?」
それが怪人どくしょ男の最後の言葉だった。納豆が彼にレクイエムを奏でる。
そして、闇の刃に切り刻まれた肉片が、シャワーとなって佐久間に降り注いだ。
透明な水で濡れた体が、今度は赤い水で濡れる。
「はぁ・・・・・」
淫らな美貌が、降り注ぐ雨の中で嬌笑っていた。
ここまで彼女は、怪人なんぱ男、怪人れいぷ男、怪人せんきょ男、怪人どくしょ男と、立て続けに4人もの怪人を倒してきた。いるとしても後1人か2人だろうと、あたりをつけていた。
その彼女へ、おぞましい気配が忍び寄っていた。
「おぎゃー」「あぎゃー」「おぎゃー」「あぎゃー」
赤ん坊の泣き声と共に、やおら空は暗雲たちこもり、雷鳴が轟いた。
「おぎゃー」「あぎゃー」「ふぎゃー」「あぎゃー」「ぎゅあああ」「だあだあ」「ぎゃあ」「ぎゃあ」「ぎゃあ」「ぶるるる」「ぎゃーあ」「おぎゃー」「あぎゃー」「おぎゃー」「あぎゃー」「ぎゃあ」「ぎゃあ」「ぎゃあ」
道行く道を、ミミズがアスファルトを這うように、赤ん坊の群れが這ってきた。
そして中の1人が佐久間めがけて跳躍してきた。
「あぎゃあああああ!」
「ふんっ!」
真っ二つ!
佐久間は闇の刃で、躊躇なく赤ん坊を切り裂いた。
《何てことをしやがる! 貴様には罪の意識というものが無いのか!?》
「赤ん坊を操ってる奴が、何を言ってやがる・・・。聞いたことがあるぞ、BBBの保険組合長、怪人あかんぼう男。その能力は、周囲100メートルの赤ん坊を操り、高く飛び上がる能力を付与する。」
《そこまで知ってるなら、わたしの恐ろしさも知ってるだろう! やれ、赤ん坊ども!》
「おぎゃー」「あぎゃー」「ふぎゃああああ」
次々と赤ん坊たちが佐久間めがけて突撃していく。
その表情は猿などというものではない。ぶよぶよと歪んだ肉に、不自然な笑みが張っ付いたバケモノだ。
「せいやっ!」
やはり佐久間は躊躇なく切り刻んでいく。
ああ、何ということだろう。切り刻むたびに彼女の肩が喜びに打ち震えるのがわかるだろうか。
彼女は明らかに殺戮を楽しんでいた。赤ん坊を殺したい、殺したくて仕方ないのだ。
《なんということをするんだ佐久間闇子! その赤ん坊は、そのへんの病院から持ってきた、正真正銘一般人の子供たちだぞ!? それを殺されて、赤ん坊たちの両親は、どれだけ嘆き悲しむと思ってるんだ!? 貴様の良心は痛まないのか! 最低だ!》
「むしろ最高だぜ? お前も赤ん坊を殺してみろ、きっと楽しいぞ。」
《おのれえ外道があ! 行け行け忠実なる下僕、鉄砲玉ども! 佐久間闇子を叩き潰すのだ!》
しかし所詮は、ちょっと飛べるだけの赤ん坊である。
「ハッ!」
佐久間は難なく赤ん坊を殲滅し、鮮血を浴びていく。
「楽しいぜ。あァ、そこにいたか。」
「ひっ!?」
赤ん坊の1体が逃げようとしていたのを、佐久間は暗黒納豆で捕らえ、首根っこ掴んで、とろんと笑った。
「そうだよなァ、自分も赤ん坊の中に紛れるのがセオリーだ。“木を隠すには森の中”だったか。100メートル内にいなければならないのだから、それが当然だ。当然であり、安易だ。」
「た、助けてくれ・・・!」
「ああ、助けてやるとも。人生という苦痛から、お前を永遠に解放してやる。」
次の瞬間、離れた胴体から、しゅーしゅーと鮮血が噴き上がっていた。
怪人あかんぼう男の最後だった。



つづく

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この記事へのコメント

2014年08月08日 09:44
えげつない…。赤ん坊の群れに恐怖し、佐久間さんの凶行に恐怖し、怪人あかんぼう男に嫌悪する…。特に怪人あかんぼう男に関しては、外道とかお前が言うなという感じ。ここで正義の味方とかだったらどうにかして赤ん坊達を殺さずに、怪人あかんぼう男を探し出して倒すことを考えながら戦うところでしょうが、佐久間さんは違う。自分の障害になるものは何であっても殺して進む。山田さんというストッパーがいないと、いくらでも殺し続けて本当に人類を皆殺しにしてしまいそうですね…。しかし、赤ん坊の死…酷い。赤ん坊に怪人の能力に逆らえるような力はないだろうし、何か悪行があった訳でもない。罪なき者の死…。
2014年08月08日 21:12
火剣「そうだ、なんぱ男を忘れていた」
コング「秒殺だったから印象が薄かった」
火剣「なんぱ、れいぷ、どくしょ、せんきょ、あかんぼう、か」
コング「当然これは怪人あかんぼう男に全責任がある」
火剣「本物の赤ん坊というのも嘘かもしれねえ」
コング「あぎゃー、ふぎゃーと泣いていたからリアリティーがある。もしもオギャーだったら怪しいが」
ゴリーレッド「・・・・・・」
火剣「しかし殺戮シーンは慣れないな」
コング「心優しき戦士たちだから。佐久間んや山田太郎の域には遠い」
ゴリーレッド「山田殿は関係ない」
コング「あぎゃー、あぎゃー」
ゴリーレッド「ドラゴンスープレックス!」
コング「ふぎゃあああああ!」
ゴリーレッド「・・・殺す」
コング「ダッシュ! 逃げるが勝ち!」
火剣「殺意が湧く人の気持ちもわからんではないが」
2014年08月08日 21:46
コング「さあ、きょうも強い悪人を作る方法を語り合おう」
火剣「佐久間んか?」
ゴリーレッド「受け答えるほうも疲労があるのでは?」
コング「♪ヒーロー! ヒーローになる時・・・」
火剣「コングも強過ぎてきめ細かな人の痛みとかがわからないタイプだな」
コング「火剣に言われたくない」
ゴリーレッド「弱い善人が深く傷つくと、心を失ってもいいから俺は強くなる。弱い善人なら強い悪人のほうがマシだ! という思いにかられる。こういう方向へ持って行くのも魔の罠だから」
コング「ブルーサンダーは働き者だからな」
火剣「作家という職業は確かに危ない。自殺したベストセラー作家も多い」
ゴリーレッド「芸術家が踏み込んではいけない危険な領域がある。その一歩手前でとどまるのは、やはり目的観か。作家は手段で目的があるから書いているというノリ」
コング「疲れを知らない佐久間んを見ると犬夜叉を思い出す。人間は休まなければ旅を続けられないのに、休もうと言うと犬夜叉は怒る」
火剣「心の強さ、頑健な体力、闘争本能も大事だが、人の心がわかるというのも革命家の絶対条件だ」
ゴリーレッド「人の心をつかむ。これができないと厳しい。目の前の一人の心をつかむ。この積み重ねが重要だと思う」
コング「胃袋をつかむ技も大事だ」
ゴリーレッド「ストマック・クロー!」
コング「ぐうううう!」
火剣「冤罪とか考えると、やることは山積だ。全部は無理だから『私はこれをやる』と自分の使命を絞るのも大事だ」
ゴリーレッド「それは天命かもしれない」
コング「テメーこのヤロー」
ゴリーレッド「ふざけてるのが約一名いるので、きょうはこの辺で」
コング「ゴリーレッドのギャグだぞ」
ゴリーレッド「よし黙れ」
火剣「それは山田太郎のギャグ」
ゴリーレッド「ギャグではない」
2014年08月08日 22:55
>千花白龍さん
いとも容易く行われるえげつない行為の2乗!
おそらくBBBの怪人の中でも、悪辣さはトップクラスな能力でしょう、怪人あかんぼう男。どくしょ男の戦車と毒ガス散布も凶悪でしたが、それ以上だと思います。ホラーにして卑劣。
対する我らが佐久間闇子も、負けず劣らず凶悪さを発揮。むしろ積極的に殺しているという。正義は不在な物語です。・・・なっとう男は正義っぽいですが、退場してしまいましたね。

維澄「佐久間なら赤ん坊を殺さずに本体を見つけ出すことも出来たと思うが、その意思が無いか。」
八武「うーむ、恐ろしい。だが同時に惚れ惚れしてしまうよ・・・。」
神邪「血まみれの美女は美しいです。」
維澄「早く来てくれ山田っ!」
2014年08月08日 23:18
>火剣さん
残念ながら本物の赤ん坊です。相手が命を尊重する者であれば、より効果的な卑劣さ。
なんぱ男は戦ったうちに入るかどうか怪しいですが、ともかく4人、あかんぼう男を含めて5人。残るはせいぜい1人と予想していますが、当たるとは限りません。

維澄「なんぱ男は本当に怪人だったのかどうかも怪しい。」
神邪「言わないであげてください。」
八武「普段の佐久間なら、むしろ授乳するくらいの余裕を見せると思うが、殺伐としているねぃ。」
維澄「子供を殺された親のことを思うと、後味が悪い・・。BBBとは、どういう組織なんだ?」
八武「・・・あかんぼう男の能力には、首領の憎悪が顕れてるのかもねぃ。」
神邪「やっぱり首領とは面識あるんですか。」
八武「まあ、一応は。」
維澄「怪人は洗脳されてるの?」
八武「その可能性は低いと見ているよ。なっとう男はマトモだし・・・。」
2014年08月08日 23:59
>コングさん
なるほど、強い善人を作る方法と、強い悪人を作る方法は、表裏一体のものかもしれません。強い悪人が形成されるケースを研究する中に、強い善人を作るヒントがあるはず。
疲れを知らないタフさは美点ですが、周囲の者にまで要求すると軋轢が生まれるというあたり、一筋縄ではいかないですね。とはいえスローペースでは機を逃してしまうことがあり、バランスが難しいです。自分の中でも、体力と精神のバランスが失調することがしばしば。

維澄「抑え切れない闘争心は、時として自らの肉体も省みない。」
八武「恋愛とセックスはスローペースでもいいのだけれど。」
神邪「強い悪になれるなら、まだ幸せかもしれない。大概は弱い悪人になってしまう。」
維澄「善悪も強弱も、本人の意思や意識だけでなく、具体的な状況に大きく左右されるからね。」
神邪「だから、善悪に関係なく好きなことをやるというのが、僕のスタンスなんですよ。何をしても悪と見なされるなら、多数者とソリが合わないなら、人に基準を委ねちゃ駄目なんですよね。自分に恥じないように、自分のルールに沿って生きる。・・・それが正解だと、頭ではわかっているんですけどね。非難されると、心が痛いです。僕は強い悪にもなれない。」
維澄「しかし人の心の痛みは、よくわかる。」
神邪「そうですかね。」
維澄「心が痛まない生活を送っている者に、人の心の痛みはわからない。だって人間は、他人の気持ちなんかわからないから。自分の経験と、他人の立場に立って考える客観性から、それらしいものを想像するしかないんだ。その2つが揃っているのが、良い大人であり、強い善人の条件でもある。強い善人は心を痛めないわけじゃない。心を痛めても戦える者のことをいう。」

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