亡霊たちへの鎮魂歌 61

やがて午後3時を過ぎ、それから午後4時までの間にエス研の5人が白石家に戻ってきた。
最初に戻ってきたのは、白石楷と花咲瞭の2人。昂揚した雰囲気で、どことなく顔が火照っている。
続いて海路宣夫がギターを持って登場。その少し後に若葉緑里が到着。
そして黒月真由良が姿を現したのは、4時が近くなった頃だった。
中で待っていた宮白希揃と十島育生、そして肉まんを蒸していた白石楷の母親を含め、合計8人。
これから来る客人の、見えもしない姿に、それぞれ心が落ち着かない様子だ。

チャイムが鳴った。
白石楷の母親が玄関に出て、そこにいた3人を中へ招き入れる。
左右に屈強な護衛を携えて、妖怪じみた目つきの老人が杖をつきながら上がってきた。
気難しそうな仏頂面に、ちょっと見ただけでは眠っているのかと思わせる瞼、その奥にある細長い眼光。
いかにも粘着気質で、しかし同時に好々爺たる印象も与える人物だった。
「おや・・・」
皺に隠れた目が、ギョロリと大きく見開かれる。蛇の眼光が爛々と光る。
「蛹田さんの話を聞きに来たとかで、鳩中高校からいらっしゃったそうです。」
落ち着いた声で、白石楷の母親が言う。
その言葉の響きに不自然なものが感じられないか吟味してから、老人は黙ってリビングへ足を運んだ。
元大日本帝国陸軍中佐・蛹田蛭巳。堂々の参上である。
「こんばんは。」
蛹田蛭巳は一同に向かって挨拶をしてから、白石楷の母親と共に隣の部屋へ行き、仏壇に手を合わせた。
そのときに懐から厚い封筒を取り出して、彼女に渡した。
「50枚。確認を。」
「はい。」
彼女は落ち着いた様子で、封筒から札束を取り出して数える。
夫からしてみれば、父親の死が金で贖われるのは複雑な思いだろう。しかし自分にとっては単なる家計の手助け、それも下手(したて)に出ずに貰えるカネだ。
戦後直後、まだ子供だった頃に、両親が親戚から金を借りたことがあった。そのときの卑屈にも近い、へりくだった態度が、今でも心にこびりついている。
誇り高くなくてもいいが、せめて普通に振舞って欲しかった。
自分は普通に振舞って生きていきたい。子供心に、そう思ったのだ。


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2014年11月01日 12:57
火剣「いよいよ午後4時か」
コング「運命の時間?」
ゴリーレッド「蛹田蛭巳元中佐が登場」
コング「50枚かあ。50枚あったらサーロインステーキを毎日食べてもなくならない」
火剣「回らない寿司に行くな。カウンターで値段を気にせず食いまくる」
コング「トロ、マグロ、はまち、サーモン、えび」
ゴリーレッド「横道にそれ過ぎ」
火剣「中佐が真由良を見るシーンを見逃すな」
コング「♪寿司食いねー、あ、ガリ、ガリ、ガリガリガリ」
ゴリーレッド「わさびを1キロ食いたいと?」
コング「言ってません」
火剣「緊張の時間だ。育生がそそうをしそう」
ゴリーレッド「誰に対しても態度を変えない男」
コング「金か。ドラマでもあるな。町工場の経営者が土下座しているのに男が足蹴にするシーン」
火剣「殺し屋本舗が必要な世の中と感じたくないが」
ゴリーレッド「国法に触れない悪人を闇から闇に葬るか。真由良もその一人か」
コング「悪女をレイプしても萌えないから、闇レイプマンは受けない。犯すならやはり純情可憐な正義のヒロインじゃないと」
火剣「経済再生じゃなく貧困撲滅なんだ。金持ちがさらに金持ちになって、全体の平均点が上がったら好景気なんてふざけろってんだ」
ゴリーレッド「国の財力ではなく、貧困人口の少なさで経済大国のランキングを決めたらいい」
火剣「貧困がなくなれば強盗などの犯罪も減り、治安も良くなる。裕福ならテロリストや海賊になりたいなんて思わない」
ゴリーレッド「餓死寸前では心が破壊し、正しい判断力も鈍る」
コング「レイプの話からなぜそんな不真面目な話になるんだ?」
ゴリーレッド「レイプの話なんかしていない」

2014年11月01日 23:00
>火剣さん
4月14日も、残すところ3分の1となりました。第4章も中盤に差しかかり、蛹田中佐の登場です。
いよいよ“ムーン・シューター”の話が聞けるのかと、一同は期待と緊張で胸が高鳴っていることでしょう。

八武「真由良は別の意味で緊張しているはず。不安と緊張が美少女を彩る。」
山田「毎月50万円。しかも1978年だから、相当な金額だな。」
佐久間「ちなみに蛹田の私的なカネだ。国からも多少は見舞金が出たらしいが。」
維澄「国家は戦没者の遺族に、戦争の被害者に、果たして幾ら支払っているのか。カネで買える誠意は無くても、誠意を示すのにカネは必要だね。」
神邪「カネを出さずに口を出すのは、やっぱり良くないですか。」
佐久間「物言いによる。それはカネを出しても同じだ。弱ってる相手に発破かけるような物言いは、少なくとも私は嫌いだね。元気な者を奮い立たせる言葉は、傷ついた者を地獄へ叩き落す言葉でもある。だから栞の言う、“真理は常に具体的”って概念は好きだな。“逃げても死ぬなら戦って死ね”というのが私のモットーではあるがね、時と場合で“逃げて生きるなら迷わず逃げろ”と、言い方を変える。意味は同じだけどね。厳しい言葉を真っ先に向ける相手は、最もカネと力を持っている奴なんだ。それ以外に厳しい言葉を向ける奴は、総じて弱い者いじめが好きなんだよ所詮。私自身も含めてな・・・。」
維澄「相変わらずストイックな佐久間。」
八武「これではレイプの話が出来ない。」
山田「しなくていい。」
佐久間「てなわけで次回は中佐と真由良の対面だ。」
維澄「楽しみ。」

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