亡霊たちへの鎮魂歌 71

うっそうと繁る森の中。
滲んだ赤い霧が漂っていた。
鉄の匂い。
腐った血の匂い。
開けた場所に存在する湖は、真っ赤に染まっていた。そこに不気味な機械の残骸が浮いていて、吐き気を催す臭気を放っている。まだ元の形の面影がある胴体からは、てらてらと光る油が流れ出している。何年も経っているようで、油は粘性を増し、ぶよぶよとして触る気も起きない。
残骸に少女の生首が乗っかっている。さぞかし美少女に違いない、その首も、右目から頬、顎の近くにかけてケロイドのように黒ずんで腐食している。口元からは、普通の人間には聞こえない音域と声量で、葬送曲が吐き出されている。壊れたレコードのように、同じ歌詞を繰り返す。

   良い歌声は 紅く飛ぶ
   水の中でも 泥の中でも
   良い歌声は 紅く飛ぶ
   光の中でも 泥の中でも

(クリムゾン。)
(お前なのか?)
会ったこともない、話に聞いて知ってるだけの存在。それも断片的なものでしかなく、そこに何かを思うには情報も感情も少なすぎる。およそ彼女の名が付けられた葬送曲の他には、何も知らないに等しいのだ。
黒月真由良は軽やかに跳躍し、少女の生首を手に取った。
(クリムゾン。)
(何が言いたい?)
(わたしに何を伝えたいのだ?)
すると生首は歌うのをやめた。
『けらけらけらけら!』
代わりに大声で笑い出した。
驚きはしなかったが、未来が不気味だった。この生首は良くない未来を伝えようとしている。
(・・・・・・黙れ。)
すると生首は笑うのをやめて、再び歌い出した。
今度は最初から、正しい歌詞で。
それは現実世界で聞こえてくる歌詞と混ざり合い、やがて消えていった。

そして黒月真由良は現実世界へ立ち戻った。
十島育生と海路宣夫の、小さな晴れ舞台が、ちょうど終わったところだった。



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2014年11月11日 16:17
火剣「真由良は何を見たんだ?」
コング「夢か妄想か、それとも過去の映像か」
ゴリーレッド「良くない未来を暗示しているか」
コング「紅く飛ぶってどういう意味だ」
ゴリーレッド「深い」
コング「腐海に手を出してはならん」
火剣「いきなりけらけら笑われたら不気味だ」
コング「カンラカンラ」
ゴリーレッド「真由良に何かを伝えようとしたのか」
火剣「情報も感情も少な過ぎる」
コング「小さな晴れ舞台か。特にカイロにとっては晴れ舞台だ。いとしの緑里をドキッとさせた」
火剣「男女ともに異性をドキッとさせるのは素晴らしいことだ」
コング「僕も女子を何人ハラハラドキドキさせたことが」
ゴリーレッド「絶対に意味が違う」
コング「両手首を頭上でクロスされ、片手だけで両腕を床に押さえつけられ、無防備の美ボディに拳を軽く当てられ、『降参?』と迫られる。その時のヒロインの紅潮した顔に、芸術t」
ゴリーレッド「ギロチンドロップ!」
コング「だあああ!」
ゴリーレッド「無関係な話が多過ぎる」
火剣「ブラボーなセッションに対して皆は何て言うか」
コング「ブラジャー! パンt」
ゴリーレッド「浴びせ蹴り!」
コング「NO!」
2014年11月11日 22:33
>火剣さん
謎の光景、謎の生首。真由良にとって、亡霊渦巻く光景よりも、いっそう不気味で不吉なものでしょう。
現実世界と重なる、クリムゾンの葬送曲。この唄そのものが何を暗示しているのか。全ての歌詞は次回にて。

山田「ゾッとする光景だな。」
八武「どこかで見たことがあるような。」
維澄「断片的なせいもあるけど、謎めいた歌詞。」
佐久間「カッセルの鎮魂歌と違って、クリムゾンの葬送曲は何回聴いても難解だ。」
山田「何回乗っても高野線。」
八武「君たち。」
佐久間「ケラケラケラケラ!」
山田「恐えよ馬鹿!」
佐久間「ホラーショーはさておき、小さなステージは拍手喝采。そこまで描写されてないが。」
アッキー「ここは意図的に切ってあります。真由良の意識に沿って物語を展開するという意味で。」
佐久間「ふたたび黒月真由良が主人公らしくなってきた。」
八武「それはつまり、押し倒されて服を剥がされ、困惑し紅潮した顔に私もう大興奮!」
山田「途中から妄想になっているぞ。」
佐久間「予言だったらどうする?」
山田「また思わせぶりな・・。」

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