亡霊たちへの鎮魂歌 80

小学生の頃、初めて会ったときの印象は、よく覚えていない。
いつからか自然と側にいて、弟みたいな存在だった。
若葉緑里にとって海路宣夫は、手のかかる弟みたいな存在であり、長髪にしてギターなんか始めたときには、グレた弟を心配する姉の気分になったものだ。
しかし今日、彼を初めて男として意識したかもしれない。
十島育生のような大人の余裕や、花咲瞭のような上品さに心惹かれるけれど、今日の海路宣夫には、それとは別の魅力を感じた。
「カイロ、ねえ、大切な話って何よ? まさか愛の告白なんてするつもりじゃないでしょうねー?」
夜中に呼び出されて、若葉緑里は不機嫌になる。
本当に告白だとしたら、時間と場所を選んでほしいものだ。
しかしすぐに彼女は不機嫌ではなくなる。
それどころではなくなるからだ。
背後からガツンと、鈍器で殴られた。
(え?)(何これ)(痛い)(痛い)
斜めになった景色に、血相を変えた海路宣夫。
(カイロ)(ああ)(これって罠?)(誰の)(誰かの)(何て顔してんの)(ホントに私のこと)(私のこと好きだったの?)(ああ)(幼馴染)(私の大切な幼馴染)(弟みたいに)(出来の悪い)(可愛い弟)(頭)(痛い)(カイロ)(暗い)(そんな顔)(頭痛い)(寒い)(・・・・・・)

小学校の頃、初めて会ったときの印象は、生意気な女だ。
うかうかしてると距離を詰められていて、いつしか側にいるのが当たり前になっていた。
いつしか、それは恋心へ育っていた。
海路宣夫にとって若葉緑里は、ひとりの女性だった。
向こうからは弟のような存在としか思われてないことを、わかっていた。
ひとりの男として向かい合うには、自分が未熟すぎることを、わかっていた。
だけど今は、その立場に甘んじていたことを後悔している。
悔やんでも悔やみきれないほどに。
「ミドリに何しやがる!」
走ってきた海路宣夫は、そのままの勢いで男に体当たりした。
男はバランスを崩したのが予想外とでもいうかのように、呆気に取られた顔をした。もつれた足は体勢を整えられない。
ゴンッと嫌な音がして、男は地面に頭を打ちつけて動かなくなった。


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この記事へのコメント

2014年11月20日 10:26
火剣「まさか緑里までも・・・」
コング「緑里、死んではならん。カイロは緑里の裸を見るまでは後悔してもしきれない」
ゴリーレッド「クリーンt」
コング「待て、言い直す。緑里を抱くまでは悔やんでも悔やみきれない」
火剣「惚れた男に『妹のようにかわいい』と言われると、イコールふられたと思い、女はショックを受ける」
ゴリーレッド「鈍感な男の場合、ふったつもりはないが『妹=恋愛感情なし』と取られる」
コング「諦めるのは早い。弟みたいな存在から、カイロのように男に昇格する場合があるからな」
火剣「幼馴染や小学校の同級生のように、子どもの時から知っている女子に恋心を抱くと、大人になってから知り合ったのとはまた違う強烈な感情が芽生える」
ゴリーレッド「慈しみというか」
コング「恋心を抱いたことがないのでわからない」
火剣「本当はモンスターなんだろう?」
コング「それより緑里を襲ったのも一味か」
火剣「いったい何を考えてやがる」
コング「緑里だけはイカして・・・間違えた、生かせてほしい」
火剣「しかし文学的にこの独白は終わりを意味している表現だ」
ゴリーレッド「七瀬の友達の姫のように」
コング「いきなり殺す欲のない悪党は許せん」
火剣「怒りの矛先がおかしいぞ」

2014年11月20日 21:59
>火剣さん
やはり緑里も襲撃されていました。この彼女の思考は、命の炎が消え行くときの・・・?
カイロを男として意識した日に、この事件。残酷な運命です。

佐久間「緑里とヘニーデ姫。タイプも似てる。」
山田「しかし運命まで似なくても・・・。育生の予感が当たってしまったか。七瀬も仲間が次々と襲われていった。」
八武「さぞかし無念だっただろう。カイロもそうだが、緑里は。」
維澄「幼馴染を男として意識して、これからというときに。」
佐久間「やはり私は幸せ者なのか・・・。」
山田「俺は割と不幸だ。」
維澄「恋愛感情も様々。“弟みたい”と“弟”の間には、大きな溝がある。」
神邪「緑里さんは死んでしまったんでしょうか? 明確に“死んだ”とは書かれていませんが・・・。」
山田「まだ希望はあるか。」
八武「うむ。目覚めたらカイロが緑里の服を着替えさせてあげている最中で、『何してんのカイロ!?』という・・」
山田「いつもなら殴ってるところだが、今はそれが希望の光景か。」

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