亡霊たちへの鎮魂歌 68

「え、どうやってですか・・・・あわっ?」
若葉緑里は急に中に浮かんで、驚きの声を発した。
どう考えても手品ではない。中身が丸見えになりそうなスカートを手で押さえて、彼女は驚愕と好奇で目を輝かせた。
「す・・・すごいすごいすごい! 十島さん、本物のエスパーだったんですか!」
「ま、マジで? ミドリ、まさかオレをかついでないよな?」
「そんなことしないわよ!」
怒りながらも興奮醒めきらぬ若葉緑里。
その横で、白石楷と花咲瞭も目を輝かせていた。
「いたんだ・・・本当にエスパーは、いた・・・。」
「正直、びっくりしてる・・・。ホント凄いよ・・・。」
それとは逆に、黒月真由良と宮白希揃はギョッとした顔をしていた。
「育生、お前・・・。」
「何だよ真由良、もしかして心配してんのか?」
青い顔の真由良に、十島育生は、いつになく真面目な顔で語り出す。
「・・・正直さあ、エスパーに対する迫害って、無知からきてんじゃねえの? オレの能力と手品の違いなんて、タネやシカケがあるか無いかだけだ。起こってるこた同じ。だいたい世の中、タネやシカケのある技術の方が恐くねえか? 毒ガスだって、核兵器だって、科学的に解明されてる理屈で作られてるじゃねえか。超能力は、理屈がわけわかんねえだけで、実際起こってる“現象”だけ見れば、科学の力で同じことが起こせるんだ。物理現象は言うに及ばず、テレパシーにしたって、人間は普段から他人の心を知ろうと努力してる。行動心理学や経済学だって、そりゃあ未熟ではあるけど、未来を予測できている。人間が積み重ねてきたものってのは、そんじょそこらの超能力に引けを取らねえ。そうだろ?」
「いや、しかし・・・」
立て板に水の弁に押され、黒月真由良は反論の言葉が続かない。
彼女の常識では、超能力は、ひた隠すものであり、おおっぴらにするものではない前提があった。
(揺らぐ。)
焦る彼女に、十島育生はフッと笑って言った。
「何よりも、この子らが、エスパーを迫害したり利用したりすると思うか?」
「あ・・・。」
黒月真由良はエス研の4人の顔を見て、そしてフッと笑った。
「はーはは、あたしの負けだ、育生。」
知り合って間もないが、この4人は信用できる。
それは単に害意が無いというだけでなく、迂闊に人に喋ったりしない賢さを持っているということだ。
(“悪意”がある。程よい悪意。)
善意だけで行動する人間は、時として取り返しのつかない事態を引き起こす。
最も信頼できるのは、悪意はあっても害意は無い。そんな人間だ。


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この記事へのコメント

2014年11月08日 16:35
火剣「やってしまった十島育生」
コング「なぜ緑里を裸にしなかった?」
ゴリーレッド「神上禁千や西尾雅架ではあるまいし、そんなことできても普通はしない」
火剣「無知から来る恐怖。これによってエスパーを迫害する。七瀬で散々それは知った」
ゴリーレッド「この子らへの信頼が凄い」
火剣「しかし、知人がいきなり超能力を目の前で見せてエスパーだと名乗ったら、焦るな」
ゴリーレッド「エス研だからやったのだろう。蛹田中佐はどう思ったか?」
コング「真由良は『あたしの負け』と認めたぞ。よし、育生の部屋へ行き、言うことを何でも聞く」
火剣「希揃が許さない」
ゴリーレッド「そもそも賭けなどしていない」
火剣「程よい悪意か。『悪意はあっても害意は無い』か」
コング「僕のことだ」
ゴリーレッド「害意だらけではないか」
コング「僕はヒロインをスッポンポンにひん剥いて手足を縛り、ボカボカ腹パンチ連打するだけだ」
ゴリーレッド「十分害意だ」
火剣「善意の凶器については佐久間んから学んだ。自分が正義側と思っているから省みない。エロスを害毒と決めつけ、この世から撲滅することが正義だと信じて疑わない。その勢いは凄まじい。名のある大御所の漫画家が反対しても再検証に消極的だ」
コング「エロスは重要だ。悪質な児童ポルノと他の傑作品の区別もつかないお偉方に、性で苦悩する人々の気持ちはわからん」
火剣「お、賢者コングー只今惨状」
コング「参上だ」
ゴリーレッド「さて育生をどう思ったか蛹田中佐」
2014年11月08日 22:36
>火剣さん
軽いノリで披露したように見えて、色々と考えていた育生です。
もしもエス研が、タロンのようなエスパーを利用する性質のものであれば、決して明かすことはなく、また、真由良もエス研を潰そうとしていたでしょう。
しかし、これまでの付き合いから、そんな人間ではないと信じることが出来ました。

山田「真由良も出会って1週間だが、間もない育生がすぐに信じたのは凄いな。」
佐久間「育生は基本的に他人を信用するタイプ。真由良のことも信じている。」
八武「緑里を裸にしないのは何故だ。」
佐久間「そもそも出来ない。サイコキネシスでなく重力操作だからな。」
八武「せめてスカートを・・・スカートめくりを・・・! ああ、もうちょいで見えそうなのに・・・。」
山田「こいつは放っとこう。」
維澄「悪意はあっても害意は無い。なるほど。」
佐久間「地獄への道は善意で敷き詰められている。栞から学んだことだ。」
八武「ひた隠すものであり、おおっぴらにするものではない。この言葉にエロスを感じる紳士は私だけではあるまい。」
神邪「そうか、これはSMプレイなんですね。真由良さんが必死で隠していたものを、育生さんが白日の下に晒け出す。」
山田「お前らは何を言ってるんだ。」
八武「女の子に言って欲しいセリフ、『嫌あ、見ないで・・・見ないでぇ・・・!』こんな感じの真由良が見たい!」
神邪「セーラームーンのアニメで、そんなシーンがありました。」
山田「どういうアニメだ。」
佐久間「全年齢対象。」
維澄「マンガやアニメはいいね。幼児を出しても大丈夫。」
佐久間「実社会なんか高校生でも色々言われる。世知辛い。」
山田「それは世知辛いのだろうか・・。」
2014年11月24日 08:39
育生、かっけー!人には出来ないことを平然と!そこに痺れる憧れるー!めちゃくちゃ真面目に考えて、まったくもって正論で、エスパーであるという立場から人を信じようと物申す。偽善じゃない、不真面目でもない、かっこいい姿。
なんで普段からその姿を見せないかな、と思いつつ、こういう場面でこそその人の真の姿が見れるということかもしれません。カミングアウトは勇気がいる。特にかつてそのことで嫌な目に遭っているなら尚更。自分が超能力者であるということは一生墓場まで持っていくことが出来る情報だった。でも、人に隠し事をしながら生きるというのは、どうにも苦しい。その内容が本来なら迫害されるいわれのないものなら尚更。
人を信じるというのは簡単な話じゃない。それで救われることもあれば、傷つく事もある。そして傷つく事の方が何万倍も多い世の中。それでも育生が選択した、人を信じる道へ進むことは、とても素晴らしい一歩。この育生の姿は黒月さんにも勇気を与えたのではないでしょうか。
2014年11月24日 22:08
>千花白龍さん
普段は下品でスケベですが、たまにカッコイイ育生です。ルパン三世の魅力と通じるところがあるかもしれません。決して“いい奴”ではないですが、しかし悪の側とも言いきれない、飄々とした人物像。
育生が両親の死を経験したテロは、超能力者が関わっており、この結論に辿り着くまでには様々な葛藤がありました。自身がエスパーであるからこそ、辿り着けたと思います。
同じくエスパーでも、真由良は自分の能力で人を殺してきたので、超能力が危険視される世の中を、ある意味で認めてしまっています。一般的な意味では超能力者への迫害を良しとしないけれども、自分は迫害されても仕方ないと思っている。重い十字架です。
カミングアウトすることで、育生は肩の荷を下ろすことが出来ました。この境地へ真由良が達するには、まだ時間を要することになりますが、しかし少なくない影響を与えたのは間違いありません。男として愛することは出来なくても、友人として尊敬できる男。これが後の瑠璃子との出会いにも繋がっていきます。

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