「サトリン」 第十一話 丸十字の選択 4

「トランジスターさん・・・ですか?」
自分の戦士名で呼ばれて、瑠璃子はハッとして左を向いた。
そこに1人の少年が立っていた。
「・・・秋原芒くん?」
「はい、そうです。」
13歳にしては体格も大きく、喋り方も大人びている。話しやすい相手だ。
「今、両親は?」
「別々のところに泊まっています・・・。僕はその間、黛(まゆずみ)さんの家に泊まっているんです。あと3日で、どっちに付いていくか決めなくちゃいけないんです。」
「もうそんなに切羽詰ってるの?」
「ええ、黛さんが僕を泊めておけるのが、あと3日だから・・・。」
「ふうん、ちょっとその黛さんとやらに話を聞いてみる必要があるわね。」

黛悠妃(まゆずみ・ゆき)が住んでいる家は、3階建てのビルで、1階が駐車場と応接室、2回が事務所で、3階が住居だった。
秋原少年の案内で中に入ると、応接室で誰かがソファーにうつ伏せになっていた。
「んあ?」
その人物は、不健康を音にしたような声を発して起き上がった。
40歳くらいの女性で、細身といより痩せている体つき。目にはドス黒い隈が出来ていた。
「・・・ああ、芒か。それから電脳第五戦士“トランジスター”十島瑠璃子。」
悠妃は、だるそうな顔を2人に向けた。微妙に目の焦点が合ってない。
「どうしてそれを・・・?」
「わしと七村は、田中流道場の同期だ。」
「七村先輩の? じゃあ、あなたも田中流暗殺拳を?」
「ふん・・・今じゃ見ての通りさ。あちこち体をやられててね・・・。3日後に入院する。」
「それで・・・。」
瑠璃子はタイムリミットのことを納得した。
一人称の割には若々しい声だが、寝そべっていてもしんどそうだ。
「芒、ちょっと上から薬取ってきて。」
「あ、はい。」
秋原少年は階段を上がっていった。
「・・・・芒には、わしの手伝いをさせていてね、今じゃあの子に頼りっきりだ。体がぶっ壊れてなけりゃ、わしが引き取るんだがな。」
「あの子を、ここに住まわせるわけにはいかないんですか?」
「わしも考えた。ゆくゆくは芒に、この事務所を譲るつもりだし、あの子も吝かでない。仕事もよく出来るわ。しかし・・」
そこへ秋原少年が戻ってきた。
「芒・・・お前が後何年か早く生まれてればなあ。」
13歳の秋原少年を、ここに住まわせるのは、色々と面倒だ。法律上は問題なくても、社会通念上の問題がある。
しっかり者でも、13歳の“少年”を、世間は“大人”と見てくれない。
「秋原くんの両親に協力してもらうわけにはいかないんですか?」
「あー、無理無理。両方とも借金抱えてるもん。わしの事務所の儲けを殆どつぎ込んで、ようやく返済の目処が立ったくらいだから。」
「ゲッ・・・。」
「・・・まったく、あの馬鹿どもが・・・。恋愛結婚したくせによ。友人として、わしが最後に出来たことが、借金返済の尻拭いとは、情けなくて涙が出るよ。」
「黛さん・・・。」
「・・・・というわけだ、“トランジスター”。芒は、どっちに付いていった方がいいか、判定してくれ。」
「・・・・・・。」
(父親か、母親か・・・。)
瑠璃子は頬に手を当てた。


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この記事へのコメント

2015年03月09日 17:41
火剣「変態じゃないと医者は務まらないか」
賢吾「そんなことはあらへん」
ゴリーレッド「そもそも賢吾は医者ではない」
賢吾「わいは究極の内科医や。患者を裸にはできんが」
火剣「トランジスター瑠璃子」
賢吾「黛悠妃。珍しい名前やな。性格も珍しそうだが」
火剣「賢吾が言うか」
ゴリーレッド「七美の同期。田中流暗殺拳か」
賢吾「3日後に入院か。それで急いでいるわけか。入院先は八武院長の病院か?」
ゴリーレッド「違う」
火剣「社会通念上の問題? 小学生ならともかく、13歳は立派な大人だ」
賢吾「13歳の少女が一人暮らしなら危ないが、13歳の少年なら問題ないやろ」
ゴリーレッド「何の話をしている?」
火剣「少女なら八武医者が、少年なら佐久間んが。いずれも危ねえ」
ゴリーレッド「真面目に語ろう」
賢吾「瑠璃子がついに判定の時か」
火剣「13歳にしては体も大きくてしっかりしているか」
賢吾「なら瑠璃子みたいな嫁入り前の娘は同居できんな」
ゴリーレッド「もう少し真剣に心配しないか」
火剣「ドロップキックが出せなくてストレス溜まるな」
ゴリーレッド「そんなことはない」
賢吾「○×は必ず出んのか? 両方×ゆうんはないんか」
火剣「黛悠妃の話を聞くと両方ヤバイ気もするが」
賢吾「かといって七美や瑠璃子のような妙齢の」
ゴリーレッド「もういい、強制終了」
火剣「強制絶頂?」
賢吾「コングか」
火剣「うるせえ」
ゴリーレッド「自由かっ!」
2015年03月09日 20:49
>火剣さん
私は小学生の頃に、展示会の受付や雑誌の撮影を経験しましたし、更に前の世代なら、もっと幼い頃から店番や手伝いを普通にやっていたと聞いています。
そう考えると、13歳ともなれば本来、社会人として通用する能力があってもおかしくないのですが、子供が大人になることを許さない風潮がありますね。
瑠璃子による判定の時間。両方×のような予感がありますが、果たしてジャッジの行方は・・・?

佐久間「邪悪とは無垢なる優しさだと、誰かが言った。」
山田「誰だ。」
八武「ならば変態とは、ムクムク大きくなるやらしさ。」
山田「黙れ変態。」
八武「しおりん、今のセリフを君の声で!」
維澄「たいへん稀だ?」
神邪「アナグラムですか。」
佐久間「13歳と言えば、山田と再会を果たした頃か。誕生日前だから12歳だが。」
神邪「13歳と言えば、カンサーと戦う決心をした頃でした。」
アッキー「13歳と言えば、レイプされた母親の復讐をする息子の物語を考えていた頃でした。」
八武「やはり13歳は大人だ。個人差はあるが。」
山田「むしろ佐久間は13歳の頃が最も大人だった。」
佐久間「そんな馬鹿な。」
神邪「田中流暗殺拳については、けっこう謎ですよね。よくある暗殺拳の一種かと思っていましたが、どうしてそれを習ったのか。」
山田「よくある暗殺拳って何だ。」
八武「ふむ、格闘術ではなく暗殺拳ねぃ。七美の場合、似たようなものだが。」

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