「サトリン」 番外編 折れた十字架 4

劣等感というものがあるのなら、それを心底から味わったのは、20歳の夏だった。

第一の戦士“サトリン”。
第二の戦士“ガーディアン”。二葉蒼志。
第三の戦士“アインストール”。七村七美。
第四の戦士“アプリケイション”。桐札零一。
第五の戦士“トランジスター”。五留吾永須。

5人の電脳戦士が一堂に会したのは、夏の暑さも増してきた頃だった。
1990年の6月、オレは桐札零一に出会った。最初の印象は、強いハンサム。
それは彼の断片に過ぎないことは、じきに嫌でもわかってしまった。
「君が、永須くん? 俺は桐札零一。これからよろしく!」
握手した手の温かさから、彼の人柄が伝わってくるようだった。
あまりに眩しくて、オレは彼の目を真っ直ぐ見られなかった。
「よ・・・よろしくだべ・・・。オラが、どれほど力になれるかどうか、わからないけど・・・」
「大丈夫さ。俺が“なんとかする”さ。最初から何でも出来る人なんて、いやしないんだ・・・。」
そのとき彼の表情に、翳りが見えた。
いや、それよりも。「なんとかなる」ではなく「なんとかする」と言った。
オレは彼を好ましく思った。同時に、敵わないとも。
「“電影作為”(ブラウザクラフト)。永須くんの潜在能力を目覚めさせる。」
「・・・これ、は!」
自分の中に、不思議な力が漲っているのがわかった。
集中してみると、両手に刺青のような紋様が出てきた。
「“正否聖痕”(スティグマータ)。君の能力名です。」
二葉さんに言われて、オレは信じられない気持ちだった。
「じゃ、じゃあ、みんなも・・・能力を?」
「そうです。僕の能力は“電子防御”(プロテクト)。戦士全員に防御壁を張ることが出来ます。」
「わたしの能力は“人格消去”(マインドデリート)。つらい記憶を忘れさせることが出来るわ?」
「俺の能力は“電影作為”(ブラウザクラフト)。状況に合わせて様々なことが出来るのさ。」
「オラの、能力は・・・これは、未来が見える?」
そのとき、コンピューターから声が響いてきた。
七美の声を明るくしたような、凜としながらもメルヘンチックなソプラノだった。
《ん・ん・んんっん~♪ 初めまして、私サトリン!》
コンピューターの画面は幾何学模様が映っていたが、そこからニュッと細い手が出てきて、テーブルを掴んだ。
続いて出てきたのは、可愛らしい顔立ちをした、帽子を被った少女だった。帽子・・・。
灼けつくような道の記憶が、帽子で涼しくなった。
《いよっと、あ、狭いな、これ。抜けないよ~?》
「姫様、出てくるならメインコンピューターからにしてくださいと、いつも言ってるでしょう。」
そう言いながらも二葉さんは、彼女の腕を引っ張ろうとする。だが、抜けない。
《いたたたた、痛い、痛いってば~!》
「仕方ない、なんとかしよう。“電影作為”。」
すると少女の肉体が湾曲し、ねじるようにして画面から出てきた。
《の・の・の・の~、私としたことが、せっかちさんだったな。自分の胸の成長に涙が出そうだよ、うるるん。》
出てきた少女は、服装は少年の格好だったが、体の曲線が隠せない。
《ありがとね、零一くん。そして初めまして、永須くん。私はサトリン。困ってる人の味方だよ♪》



つづく

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この記事へのコメント

2016年04月10日 14:35
火剣「劣等感は思春期なら多かれ少なかれ感じることがあると思う。大人になって少しずぶくなり、経験を積んで俺は俺と自信も出てきて劣等感が少なくなることもある」
コング「二葉だから第二と思ったら、七美は第三か」
ゴリーレッド「第四の戦士アプリケイション桐礼零一」
コング「アプリケイション?」
火剣「五留吾が第五でトランジスターだ」
コング「五留吾は刺青か。瑠璃子は頬の○×というかわいいパターン」
火剣「1990年6月か」
コング「強いハンサム? 僕のことか」
ゴリーレッド「どこがだ」
火剣「言葉は大事だ。その者の哲学は言葉に表れる」
コング「♪そのうち何とか、なーるだーろーおー」
ゴリーレッド「水を差すな」
コング「なんくるないさー」
ゴリーレッド「やかましい」
コング「せわーない」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「NO!」
火剣「なんくるなさいーとせわーないは励ましの言葉で、何とかなるとは違う」
ゴリーレッド「メルヘンチックなソプラノ。ついにサトリン登場か」
火剣「美少女を前に何を思う五留吾永須」
コング「惚れやすく気が多いタイプならサトリンにも惹かれるであろう。むひひひ」

2016年04月10日 20:32
>火剣さん
劣等感は成長の肥やしになりますね。自分の劣等感と向き合って、目の前を懸命に生きているうちに、いつの間にか経験が積まれて劣等感が和らいでる。私もいつ頃からか、あまり劣等感を覚えなくなってきました。自分のスタイルらしきものが見えてきたからでしょうか。

山田「零一も劣等感を乗り越えてきたのかな。」
八武「人を励ますことで、自分に言い聞かせるということもある。何とかなると人に言うのも、自分に言い聞かせているのだと思うね。」
維澄「なるほど。」
神邪「そういえば名前の漢数字と戦士番号って、あまり一致してませんね。」
佐久間「アッキーも混乱してるらしい。『未来日記』みたく、なった順番関係なしの番号にすれば良かったかもしれんね。」
神邪「コード01、コード02・・・みたいにですか。」
山田「本編では瑠璃子がトランジスター。永須の番号はいつ繰り上がったのか。」
維澄「11人いる!」
佐久間「おい。」
八武「6月ということは七美は23歳か。七村七美23歳!」
山田「エロペンギン・・。」
八武「やはりサトリンは可愛い。どれ、おぢさんが胸を支えてあげようじゃないか。」
山田「蒼志に殺されるぞ。」
維澄「ナズミはちゃんと出てこれたのにね。」
佐久間「ナズミより10年も前で、コンピューターも狭いんだよ。」
山田「そういえば昔のパソコンは巨大な割りに画面が小さかったような。」
佐久間「画面でかいのもあったんだけどな。」

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