「NEKTAR」 エピローグⅡ

嘘は、いけないことだ。

嘘は、悪いことだ。
だから私は、今でこそ嘘つきだけど、子供の頃は正直な子供だったんだ・・。
ただし、頭に“馬鹿”がつく方のね。

正直というのは損をするということだ。

野球をしていて町長の家の窓ガラスを割ったことがある。
どうやらそこで高価な置物を割ったらしくてね。
皆で相談して・・・というよりは、チームのリーダーの意見で、このことは隠し通すことにした。
しかし私は罪の意識に耐え切れず、教会で一部始終を告白した。
すると翌日には私1人が犯人ということになっていた。口裏を合わせようと言い出したのも私になっていた。
まったく宗教系の連中は信用するものじゃない。

まあ、私が愚かというか、卑怯だったのだろう。直接町長のところへ行かずに教会に行ったのだから。
罪悪感は払拭したいけど弁償は御免だという、私の心の弱さが招いた事態というわけだろう。
ホームランを打ったのは私だったし、チームの連中が私1人を犯人にした気持ちもわからなくはない。
生まれて初めてのホームランだったんだがね・・・。

家は莫大な借金を背負うことになり、私はその一環として町長の家でこき使われることになった。
何年も何年も奴隷のように働いたが、借金が1割減るよりも先に、私は大人になっていた。
働く傍ら、私は時間を見つけて法律の勉強をした。弁護士になって、早く借金を返す為だ。
町長も鬼じゃなかったらしく、多少の下心はあったにしろ、私の学費を出してくれた。

私は晴れて弁護士になった。
これで借金も返せると、有頂天になっていた。
しかし、ここでも生来の馬鹿正直が災いしていた。よく弁護士になれたものだと我ながら思う。
依頼人の言うことを鵜呑みにして、法廷で赤恥をかいて大敗北。
それで嘘つき弁護士のレッテルを貼られて、仕事が出来なくなった。
嘘つきはともかく、無能と見られては、誰も依頼しない。

仕事が来なくなると、町長の態度も冷たくなり、親は失意のうちに死んだ。
思えば、それからだろうね。私が今のように、平気で嘘をつける人間になったのは。
私が正直であり続けたのは、両親に対して恥ずかしくない人間であろうとしていたのだと、わかった。

それから短期間で私は変わった。
依頼人を必ず勝たせる、嘘つき弁護士に変貌していった。
利用できるものは何でも利用した。
町長の娘を誘惑して妊娠させ、誠実を装って夫に納まった。
依頼人は町長のコネクションで集めた。
そして現金なもので、勝つとなれば一般からの依頼人は増えた。
私は彼らを徹底的に調査し、勝てそうな依頼のみを引き受けることにした。
もはや依頼者は私にとって、お客様ではなく、家畜と同等だった。

それから数年、クリエ・ソゥルとかいう怪しい人物が現れた。
彼の差し出す“神酒”というものを飲むことを決意したのは、弁護士の仕事に有利だからというだけではない。

最近ね、どうも自分の本性を暴露してみたくてたまらなくなったのさ。
アンティローグ第九位“偽証”のパージャ・フォールスから、馬鹿正直なジェフリー・コンダクターに戻って・・・。

何もかも終わりにしてしまいたいのさ。



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この記事へのコメント

2016年06月25日 12:34
火剣「偽証のパージャ・フォールス誕生秘話」
コング「娘を誘拐して孕ませたのか」
ゴリーレッド「誘惑だ」
火剣「人は嘘はつく。幼稚園や小学校では嘘つきはいけないと教えるのが正しいだろう。でも大人は嘘をつくものだ。嘘をつかなくていい人生は最高に幸福だ。『俺は嘘が嫌いだ。嘘をついたことがない』と胸を張る人間は、自分の幸福に気づいているだろうか」
コング「豊かな胸の女子も自分の幸運に気づいているだろうか」
火剣「嘘をつかざるを得ない人生もある。大人なら秘密の一つや二つはある。全面的にオープンなんて考えられない」
コング「そのためにビキニがある」
火剣「人を騙す嘘は良くないが、人を守る嘘、自分を守る嘘もある」
コング「♪折れた、タバコの、吸殻でー」
ゴリーレッド「例えば『誰にも言わないで』と言われて嘘をつくのは約束を守ったことになるからその嘘は正しい」
コング「♪あなたの、嘘が、わかるーのよー」
火剣「嘘をつけない性格なもんでと正直者ぶって秘密を喋ったら信頼を失う」
ゴリーレッド「弁護士だったのか」
コング「それより妊娠させたシーンを再生できないか。無理やり犯したのか同意のもとなのか」
火剣「馬鹿正直で損をした反動か?」
ゴリーレッド「何もかも終わりにしてしまいたいというのは危ない」
火剣「内にこもれば自殺。外に怒りが向けば通り魔」
コング「馬鹿正直なジェフリー・コンダクター。僕も正直者で有名だ」

2016年06月25日 22:54
>火剣さん
隠し事も、知っていることを知らないと言ってるのだから、嘘のうちに入りますね。
ジェフリー少年は、この社会で生きていくには純粋すぎたのかもしれません。

山田「ジェフリーは正直だから損をしたのではない。」
八武「ほう。」
山田「人を信じたから損をしたんだ。」
佐久間「日頃から人を信じることは素晴らしいと言ってる山田が、それを言うか。」
山田「俺は妄信を推奨してるわけじゃない。裏切りはありふれた悲劇だし、人を信じて損することは多い。それでも人を信じるから、尊いんだ。」
維澄「信じることと、疑うこと、その両方を深く知っていなければならないね。信じるだけでは騙されるし、疑うだけでは身動きが取れなくなる。」
神邪「アンティローグに誘われなければ、ジェフリーは幸せだったのでしょうか。」
八武「少なくとも傍目には性交した人生。」
山田「漢字。」
八武「間違ってないよ。」
佐久間「悪党の人生でも、充実していただろう。」
八武「娘を誘惑して孕ませる。幸福だ!」
維澄「佐久間は自分の幸福に気付いているだろうか。」
佐久間「山田の話か?」
神邪「胸の話だと思います。」
八武「品行方正に生きていると、我慢した分だけ反動のときの開放感を味わえる。それもまた人生の楽しみ。」
神邪「そのレベルまで早く辿り着きたいものです。」
八武「焦ることはない。」

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