佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 150 色恋連邦([)

<<   作成日時 : 2018/05/13 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



無堂無有が去ってから、全裸革命組織“ヌーディスト”は、六角一美をリーダーとして活動を続けた。
うら若い女子が全裸で街中を歩くのである、またたく間に組織は破竹の勢いで増大した。
その多くは興味本位で集まった有象無象であったが、組織の中軸を成す、一美、飛白、鈴昌の演説を受けて、
革命活動それ自体に熱心になっていく人間も少なくなかった。

一美の父母が、ベトナムから連れ帰った結合双生児は、絶大な効果を齎した。
飛白は「赤子を見世物にするな」と反対したが、畸形児というインパクトが急速に反戦の意識を高めていくのを見るにつれ、渋々だが認めていった。

絶対唯一モリンフェン教は、マグナムとミクロを双頭として、人種差別と戦い続ける。
その渦中でマグナム・モリンは、恐るべき概念のデッキを生み出してしまった。
マルコムXから引き継いだエクシーズ召喚を組み込んだ【モリンフェン運動】は、ついに米国議会を動かす。
拡大した運動は、全裸革命ともシナジーし、世界革命が現実味を帯び始めていた。


しかし組織が大きくなるということは、敵も増えることを意味する。
日本では、警察や機動隊による弾圧が激しさを増し、1969年の冬、ついには衝突で死者が出てしまった。
全裸革命運動が翳り始めたのは、この頃からだった。

“ヌーディスト”は、より過激な行動に出るべきだと主張する、青姦派やスカトロ派などの過激派と、今は自粛すべきではないかと主張する、半裸派やネクタイ派などの穏健派に分裂していく。
中軸の1人である大河飛白は、最も過激なリョナ派の中心となり、次第に運動の中心から離脱していった。
この2年後、かの有名な「アサイラント山荘事件」で除外デッキを用いて戦い、《D.D.ダイナマイト》で多数の死傷者を出した女が、彼女と同一人物ではないかと推測されているが、定かではない。

穏健派は、全裸には抵抗があるという(飛白には日和見と呼ばれた)人々の支持を得て、特にノーパン派が勢力を増していくと共に、次第に設立メンバーが蔑ろにされつつあった。
リーダーである六角一美は、穏健勢力の筆頭である月島鈴昌に対して、非難声明を発するが、そのことで逆に支持を失っていく。市民からも白い目で見られることが多くなっていき、やがて一美は姿を消した。


モリン教は「人類の進歩と調和」を掲げて介入したが、ミイラ取りがミイラ、自らに分裂の種を撒く結果となる。
本部ツートップのマグナムとミクロは、もはや幼馴染でも恋人でもなく、政敵になりつつあった。

1970年の万国博覧会。
そこで行われた第1回モリン杯は、皮肉にも、モリン教が単一教派として活動した最後の仕事となる。



◆ ◆ ◆



1970年、初秋。


「お久しぶりです、マグナム。」

厚いローブに包まれて、たおやかな声が空気を震わせた。

「おひさ。・・・すっかり僧正やってるな、ミクロは、よ。」
「マグナムは変わり映えしないですね。」
「ちっ、そういう物言いは変わってねえな、お前も。」

いまいち大人になり切れない自分を、マグナムは歯痒く思って、目を逸らしてしまう。
まだ16歳なのだから当たり前だが、組織のトップは子供でいることを許されない。

「・・・・・・みんなみんな、いなくなっちまった。」

マグナムは何度目かの禁煙に失敗し、苦い煙を吐いた。

「寂しいのですか?」
「馬鹿言え、時代に良いも悪いもない。」

南米でフィデル・カストロから貰った葉巻を、けちくさく分割した(本人は「賢い節約」と言い張る)最後の1本。
巻いた紙が灰になり、残り火が水でジュッと音を立てるのを見て、マグナムは何とも言えない顔になる。

「デュエルモンスターズと一緒だ。環境の変化で盛んになるデッキもあれば、消えていくデッキもある。ペニスやヴァギナを祀る祝祭も、今じゃ卑猥で滑稽なものとして捉えられている。」
「・・・あれは正直、どうかと思いますけど。子供の頃から。」
「そんなことを言ってると、気が付けば弾圧に囲まれて孤立無援だぜ。飛白ねえちゃんが消えて、一美ねえちゃんが消えて、鈴昌さんも消えて・・・次はオレ様たちかな?」

鈴昌が社会に協調姿勢を見せたのも、崩れゆく革命の中で、種火だけでも残そうという、残念な方針だった。
最初から敗北を前提にした、士気の低い戦略。

「高度経済成長で生産力は爆発的に高まり、大衆の意識は急速に変わった。規制やら弾圧やら、一部の悪い政治家がやるんじゃねえんだ。ひとりひとりは善良で弱い、無辜の集合意識が、“嫌いなもの”を迫害しやがる! 一体全体そんなことは、真っ当な人間のやることか!?」

握り締めた拳を振るわせて、マグナムは目を血走らせた。
ふと腰のホルダーに手をやると、デッキが怯えているように感じた。

「マグナムは、圭二くんのことを怨んでいるの?」
「あの野郎は世間の顔色を窺うだけの腰抜けだ。」
「そんな言い方をするものではないわ。」
「そんな言い方をするものなんだよ。」

ミクロが言った意味は、内容ではなく言葉遣いのことだ。
わかっているが、マグナムは反論せずにはいられなかった。

「あの腰抜けが何て言ったか忘れたのか? 学校で虐められるのが嫌だから、全裸で歩くのをやめろってほざきやがったんだぜ。自分を虐めた奴らではなく、一美ねえちゃんに矛先を向けたんだ。自分を虐めた奴らに屈して、革命を嘲笑う側に成り下がったんだ。まったく典型的な“ニッポン人”だよな。欧米列強に虐められて、アジアに矛先を向け、挙句、被害者たちの落ち度を声高に叫ぶ・・・ヘドが出るぜ。今日も飯が最低に不味い。」

マグナムが言っている意味も、もはや六角圭二という個人の話に留まらない。
取り込んだマルコムXの魂の影響もあるが、元より彼は、大河飛白に心酔していた。
飛白の怒りに比べれば、今の自分の怒りさえ、業火の前の篝火にしか思えなかった。

「やるせない停滞には同意しますよ。以前とは比べ物にならない権力を持ち、万博でモリン杯を開催するまでに至りましたが、果たして以前のような熱意がありますか?」

ミクロは語気を強めて、ついに核心を口にした。

「モリン・モリンは、もう戻ってこないのではないですか?」

子供の頃は、彼のことを万能の超人だと思っていた。ただ子供じみた憧れを押し付けていた。
折春が闇坂一族の“しきたり”の犠牲となったとき、そのことに思い知った。
モリン・モリンが何とかしてくれると、心のどこかで縋っていた、自分たちの愚かさを思い知った。

「わかっているはずです、彼は人を助けるヒーローですが、何でも出来るスーパーマンではありません。メメント・モリンがああなっていた間、闇坂の方に手が回らなかったのは、当たり前の・・・」

「来るさ。」

マグナムは確信的な笑みを浮かべて言った。

「七夕も彼岸も過ぎたが、あいつは来る。なんたって今日は菊の節句なんだからよ。たとえ魂だけになっても、あいつは必ず来る。あいつはカクタスのように得体が知れないが、モリンフェンへの愛は疑いようもない。モリン杯を開けば、必ず戻ってきて、オレ様たちにデュエルを魅せてくれるんだ。それでこそ平和ってもんだろ?」

「羨ましいですね、男同士の魂の誓い。モリン杯を開いた動機が、たったひとりの男の為だなんて、知っているのは私たちくらいのものでしょう。」

開会まで、残り2時間。
まだモリン・モリンは現れない。



- - - - - -



「モリンフェン使いのみんなァ! もりもりモリンフェンを愛しているかーい!」

「「「MORYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」」」
「「「MORYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」」」
「「「MORYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」」」

2時間後、開会式にてマグナムは、高らかに拳を衝きあげていた。
盛りあがる衝動のままに、会場に風が渦巻き炎となる。

「この日を迎えられたことを、モリンフェン様に感謝します。惜しむらくは、ここに私たちのリーダーが不在であることでしょうか・・・。」

その発言に、いったん会場は静まり返った。

「しかしモリン・モリンは、いつでも私たちを見守っている。そう信じています。」
「モリンフェン様のようにな!」

力強い信頼に、会場は再び盛りあがる。
そして予選が開始された。



「・・・始まっちまったか。」
「しかし、モリン・モリンはシード枠ですから、本戦が始まるまでに現れたら、まだ間に合う・・・・・・なんて、私も大概、諦めが悪いですね。」

淘汰が進んでいくのを見ながら、時間の流れの無情さを知る。
モリン・モリンが来なかったところで、大会は続行するつもりだが・・・。

「いいさ、あいつが来なければオレ様が優勝するだけだ。それも悪くねえ。」

手にしたデッキは、もう怯えていない。
マグナムは本戦会場へ足を運んだ。



この時代、まだソリッドビジョンシステムは開発されていない。
プレイヤーの出したカードは、テレビカメラで撮影され、スクリーンに映し出される。
未来の決闘者たちが見れば、なんて原始的な手法だと思うことだろう。

M&Wそのものが、マイナーゲームだった時代。
モリン教の権力で捻じ込んだ大会は、ルールすら知らない観客が大半だった。
参加プレイヤーも決して多くはなく、すぐに本戦出場の8名は確定した。


シード枠からは運営の2名。

モリン界の皇帝を名乗って憚らない、有言実行の風雲児、マグナム・モリン!

爪弾くは精霊のハープ、たおやかなる水辺の独裁者、ミクロ・モリン!


加えて、予選から勝ちあがってきた6名。

失った記憶を取り戻すべく、モリン教の巫女となった、紫炎の双髪、メビウス・クライン!

物理学の達人であり、「D」に導かれしエキセントリック少女、ベリー・G・ニュートロン!

年齢不詳の人妻、ツィギーの流れを汲むスレンダーの極致、切敷綾音(きりふ・あやね)!

奴隷解放を掲げ、モリン教を支援してきた、油ハムの好きな大統領、マタイ・エイジ!

未来から来た益荒男、開拓者精神で突っ走る濃い目のナイスガイ、ムーア・ジョーダン!

これといって特徴の見当たらない青年、空いた枠に滑り込み、村上鵙(むらかみ・もず)!


「はっはあ、まったくよ! どいつもこいつもアクの強そうな奴らだぜ!」

濁っていた気分も、ゲームを前にすると吹き飛ぶのは、決闘者の性だろうか。
大会を最後までやり切るのは、義務ではない。それがマグナムのやりたいことだからだ。

「さあ、オレ様の相手は誰だ!? どれほど強い奴が相手だろうと、オレ様のハートは燃え盛る大地だぜ!」


「・・・あ、はい、私です。」

何の変哲もない青年が、ぺこりを頭を下げた。

「どれほど・・・強い奴が・・・・・・」
「あ、あの、どうしましたか?」

村上鵙は心配そうに問いかけた。
燃え盛る大地どころか、ぬかるみの行軍のようになったマグナムを見れば、誰でも心配するだろう。

「・・・このデュエル、オレ様の不戦勝でいいか?」
「いいわけないですよね!? マグナムさんってそんなキャラでしたっけ・・・?」

見た目からして大学生くらいだが、年上の威厳というものが一切感じられない。
あるいは決闘者としての闘争心のようなものが。


「「デュエル!」」


マグナム・モリン:LP2000
村上鵙:LP2000



「あ、私の先攻ですね。《ゼミアの神》を召喚、カードを2枚セットします。」


ゼミアの神 レベル4 闇属性・悪魔族
攻撃力1300 守備力1000
相手をだまして、破滅の道へと誘うことを得意とする邪神。



先攻1ターン目は静かに経過した。
ギャラリーの盛りあがりもイマイチで、マグナムは大きく息を吸うと、ポーズを取ってカードを引いた。

「オレ様のターン、《終末の騎士》を召喚するぜ。こいつはプレイヤーの墓地に、ありがたくモリンフェン様をプレゼントしてくれる、気前のいいナイト様よ!」


終末の騎士 レベル4 闇属性・戦士族
攻撃力1400 守備力1200
場に出たとき、デッキの闇属性1体を墓地に贈る!



「そして、こいつの出番だ! マジックカード《死者蘇生》で、甦れ、《モリンフェン》様! ひょ〜う、いつ見てもカッコいいぜえええええええええええええっ!!」


モリンフェン レベル5 闇属性・悪魔族
攻撃力1550 守備力1300
長い腕とかぎづめが特徴のカッコいい姿をした悪魔。



「あんたの伏せカードを信頼するぜ? こんなところで終わってくれるなよ・・・《モリンフェン》様の攻撃!」

「あ、は、はい! リバースマジック《トランスターン》です!」

「トランスターン・・・?」

聞き慣れない名前のカードだった。
すると《ゼミアの神》が苦しみ出して、罅割れ、中から出てきたのは―――

「《トランスターン》は、属性と種族が同じで、レベルの1つ高いモンスターを降臨ましましあそばされる、恐れ多いマジックカードです。」

この光景が見えているのは、闇のゲームに親しんだ決闘者だけだ。
観客たちには問題なく、スクリーンの平面画像が見えていることだろう。

「あ・・・あんた・・・?」

爬虫類の皮を脱ぎ去った鉤爪が、新鮮な空気を切り裂いて現れた。

「いけないですねマグナム、人を見た目で侮るのは。モリンフェン様の前では、人は平等なのですから。」

そこにいたのは、何の変哲もない青年などではなかった。
顔立ちは変わっていないのに、しかし纏う雰囲気が、まるで違う。

「もう1枚のリバースも発動です。トラップカードオープン・・・」


《終末の騎士》 (破壊)
マグナム・モリン:LP2000→300


「オレ様のフィールドが、がら空きに? オレのモリンフェン様どこ行った!?」

「モリンフェン様は誰かのものではありませんよ。強いて言えば、今は私のもの・・・かな?」

「・・・っ、嬉しいぜ。こんなに嬉しいことはない・・・! よーし、こっからは全力全開だ! ゴーズを出して、トラップも伏せておくぜ!」

「それを凌駕するのが宿命です。私のターン、ドロー。」


マグナム・モリン:LP300、手札2
場:冥府の使者ゴーズ(攻2700)、伏せカード

村上鵙:LP2000、手札2
場:モリンフェン(攻1550)



「マグナムの伏せカードは《銀幕の鏡壁》、手札は《魔王ディアボロス》と《レオ・ウィザード》ですね。」

「なんっ・・・? 何でわかるんだよ!?」

これは闇のゲームだ。透視や読心でもない限り、わかるはずがない。


魔王ディアボロス レベル7 闇属性・ドラゴン族
攻撃力2800 守備力1000
相手のドローフェイズにデッキトップを確認し、
デッキの一番上または一番下に戻す!


レオ・ウィザード レベル5 地属性・魔法使い族
攻撃力1350 守備力1200
黒いマントをはおった魔術師。
正体は言葉を話すシシ。



「単純な推理です。」

村上鵙は事も無げに言った。

「カードに現身あそばされておられる《モリンフェン》様の御力を活かす為には、コンバットトリックを多く入れるのが当然であり、《銀幕の鏡壁》は罠カードの筆頭。運命力の操作として《魔王ディアボロス》、同じ★5として1350次元の支配者《レオ・ウィザード》を想定するのは、難しいことではありません。10割の確信があったわけではないですが。」

「しばらく見ない間に、どんだけ経験値あげてきてんだよ・・・。ちったあ追いついたと思ってたのが恥ずかしいぜ。」

「恥じることはありません。モリンフェン様の前では、私も常に傲慢の罪に塗れているのですから。」

アルカイック・スマイルで、村上鵙は手札を掲げる。

「私の宿命は、この手札が教えてくれました。戦激の闇が全てを切り裂く―――」


《銀幕の鏡壁》 (破壊)
《冥府の使者ゴーズ》 (破壊)
《魔王ディアボロス》 (破壊)
《■■■・■■■■・■■■■》 (破壊)
マグナム・モリン:LP300→200



「やはりディアボロスに命中しましたか。攻撃力2800同士で相殺ですね。では、《レオ・ウィザード》を。」

「・・・あんた、悪魔にでも憑かれたのかよ? バケモノすぎんだろ!」


「知らなかったのですか? モリンフェン様は悪魔であらせられるのですよ・・・・・・」


マグナム・モリン:LP200→0




- - - - - -



「ああ、負けた負けた! 悔しいもんだな、相手があんたでも・・・いや、あんただからこそ、か。主役は遅れて現れるってサプライズを気取りやがって・・・まったくよ!」

「そんなんじゃありませんよ。予選を勝ち抜いてきた、濃い経験値の決闘者を、シード枠で待ち受けるような不利な戦いなんて、したくなかったんです。」

「・・・っ、超越しすぎだろ・・・! フツーはシード枠なんて、有利と捉えるのが・・・・・・ハハッ、そうじゃないな、そうじゃなくて、言うことは他にある・・・・・・」




また・・・・・・会えたんだな・・・・・・




「はい。」

“無尽神法”モリン・モリンは、にっこり笑って答えた。







   決闘祭!   第9章 了

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