決闘祭!   Act 230 リンネの左手、ゾークの右手(ⅩⅩ)

◆ ◆ ◆



闇のゲームが始まった。

地球には幾千万の隕石が降り注ぎつつある。
しかし隕石群は、天神美月、竜堂神邪、いずれか一方の死を以って消え失せる。

天神美月が死ねば、世界はデュエルモンスターズの法則から解放される。
人々は少女を犠牲にした記憶が消えないまま、理不尽と不条理の中へ放り出される。

竜堂神邪が死ねば、世界は平和になり、悪魔から永久に解放される。
人々は少年を犠牲にした記憶も消えて、超技術の恩恵に与かる幸福が待っている。

死に方は、自殺・他殺・不慮の事故・その他いずれの方法でも構わないが、あらゆる拡大解釈を無効とする。
すなわち、同姓同名の別人を殺すとか、社会的な死などの、生存する逃げ道は認められない。

殺害方法は、デュエル、リアルファイトを問わない。



◆ ◆ ◆



人々の反応は様々だった。

最初の分岐を挙げるなら、諦める者と、諦めない者。

諦めた者の末路は、あまり書きたくはない・・・。
自死する消極は、まだしも倫理的だ。
彼らは、窃盗、殺人、強姦、考えつく限り自由に振る舞った。
それは理性の抜け落ちた、獣の自由でしかなかったけれど。

諦めない者は、行動する者と、そうでない者に分かれる。
いつも通りの生活を送る者は、諦めているようで諦めていない。
その何割かは、獣の自由に蹂躙されてしまったけれど。


行動する者は、多岐に分かれる。

魔術に長けた者たちは、隕石を食い止め続けている。
今このとき、時間を稼ぐ価値は、二度と再現できない魔術道具よりも高い。

あるいは、悪魔にデュエルを挑んでいる。



「みゃはははははは、シンヤ君! カノン先生がハチミツ授業を始めるよ? まずは先日の宿題だ、可愛い黙示のレベルマイナス、“ゾークエンド”の攻略法を答えてもらおうかなっ♪」


“Z-Kill” レベルマイナス能力(所有者:田宮行方?)
デュエルが始まる前にデュエルに勝利する。



「答えるまでもない。」

少年の瞳がデジタルを視る。
0と1の集合を。
フラクタルを。
シンメトリーを。
トポロジーを。
異種微分幾何構造を。
数学を数学を数学を数学を数学を。

「“虚空の闇の瘴気”を伝って、お前のいる闇の世界へ直接やって来た僕だ。」

zork - kill levelminus user tamiyayukue
duel ga hajimarumaeni duel ni syourisuru


「いかなるデュエリスト能力とて、解析してみせるさ。」

zork
-  k i ll 
le ve lmi nu s u
se r  ta   miy
ay uku e
duel ga
 haj i ma
ru 
ma   en i  due
l ni  syo 
urisuru


「そして、シフトする。」


文字情報も、0と1の集積で表現可能。
ならば、数字を操作する“シフトワン”の領域だ。


“十一壱”(シフトワン) 絶対能力(所有者:竜堂神邪)
数字を元の値から±1出来る。



「とこしえの闇に散れ。」


いつになく真剣な顔で、神邪は闇の中、楽しげに笑う。
このような、みもふたもない使い方など、他の相手では楽しめない。

しかし、相手がカノンであれば。
原初のゾーク、“永劫回帰の敵対者”であれば。

「みゃはは、この程度はダメだよね~。行方ちゃんも言ってたもんね。君は雑魚を喰らう強者の側だ。私の計画が順調に行けば、もっともっと強くなるはずだった。だけど今のシンヤ君は、あまりにも弱い。危ないよ?」

闇の中で、新たに能力が具現化していく。

“敵対の力”は、自分の質量を、世界に存在し得る何かに換える。
その対象は、魂でも、デュエリスト能力であっても同様だ。
ゆえにカノンは、実質的に膨大なデュエリスト能力を所持できる。
質量の怪物だからこそ出来る、尋常ならざる凌駕。


“約束された勝利の聖剣”(エクスカリバー) ???能力
このデュエルにおいて過程を問わず自分は勝利する。

“無法と暴力の世界史”(リアリストライク) ???能力
相手の異能を無効化する。

“逆説いたちごっこ”(リリカルレトリック) ???能力
相手のK回「無効化されない」効果をK+M回「無効化」する。



「ふざけてんのか。」

神邪の指先が聖剣を摘んで、へし折った。


“約束された勝利の聖剣”(エクスカリバー) ???能力
けねデュエルぬえうと過程わ問をぜ自分ひ勝利しり。

“無法と暴力の世界史”(リアリストライク) ???能力
相手ね異能わ無効化せれ。

“逆説いたちごっこ”(リリカルレトリック) ???能力
相手ねK回「無効化しるにう」効果わK+M回「無効化」しれ。



「混沌に堕ちて、二度と這いあがってくんじゃねえ!」


“約束されたxsかjyう剣”(エクスsgvyqyしゃうyq
けねデュエルぬえうさqgsyわ問をぜ自あysyり。

“無法とsjxbsの世さsywアリストライク) ???能力
相手ね異能swxywれ。

“逆説いたちごっsxbさうカルレトリック) ???能力
相手ねK回「無効しさうにう」効果わKあすs効化」しれ。



「みゅう~、そんなことも出来るんだ。ちょっと見くびってたかなァ?」

少女は驚きはしない。
想定外かもしれないが、予想外ではないと言いたげに。

「だけどシンヤ君、その戦い方には致命的な欠陥があるんだみゅ。わかってるん?」

その問いに、神邪は―――頷く気力も無い。
単純に文字を数字に置き換えて操作するだけなら、容易い。
だが、それでは「文字操作の無効化」に対応できない。

ゆえに神邪は、魂を直接いじることでデュエリスト能力を消滅させている。
顕現している現象は、その結果に過ぎない。
どのようなテキストを書いたところで、それが書かれてある魂そのものを解析され消滅させられたら無意味だ。

しかし、テキスト操作と異なり、魂という複雑な構造を持つ事象を操作するのは、極めて煩雑だ。
電子操作でデュエルディスクのデータを書き換えたときも、これほど疲れなかった。

「顔色よろしくないの、わかってるみゅ?」

たった4つの能力を消しただけで、これほどまでに疲労する。
頭がガンガン痛くて、無い胃袋から胃酸を吐きそうだ。

「みゃはは、もう一度いっくよ~♪」


“ZZZ-Kill” ???能力
デュエルが始まる前にデュエルに勝利する。

“約束されし勝利の神剣”(レーヴァテイン) ???能力
このデュエルにおいて、過程を問わず自分は勝利する。

“無法と暴力の現実”(ストライクシステム) ???能力
相手プレイヤーの異能を無効化する。

“帰納法いたちごっこ”(レトリックホテル) ???能力
相手のL回「無効化されない」効果をL+K回「無効化」する。

“色褪せぬ絶対の思い出”(パーフェクトメモリアル) ???能力
テキストは書き換えられない。



何度でも、何度でも。
カノンは質量に任せて、どんなテキストでも具現化できる。

全く同じ能力、同じ魂であれば、繰り返し、焼き直しだ。労力は少ない。
だが、わずかに文章や能力名が違うだけで、魂の構造も違う。
その都度、神邪は演算解析を強いられる。

無論だが、演算に必要な労力は、作成者であるカノンの方が遥かに大きい。
デュエリスト能力を1つ作るのにカノンが消費する質量は、人類文明のエネルギー総和を遥かに超える。
それを数秒、あるいは、もっと短い時間で演算解析して無力化する神邪は、脆弱な少年は、最弱よりは強い。
どうしようもなく強い。効率的。圧倒的に合理的。

それでも質量に任せた力技に押し切られる。
途方もない数の宇宙を喰らってきたカノンにとっては、宇宙ひとつ分の質量すら惜しくない。
質量をテキストに換えて、途方もない長文を並べ立てることだって出来る。
そもそも同じテキストであっても、能力名が違えば当然、魂は異なる。
いわゆる「回答:能力が違います」というやつだ。

そして四次元ユークリッド空間においては、異種微分幾何構造が無限に存在する。

カノンの繰り出すテキストに、終焉は無い。
ひたすら新たな問題を、神邪は解き続けなければならない。
それは甘美な拷問で、過酷な挑戦だ。

カノンを、原初のゾークを倒すという、いっとう解きたい問題に、手が付けられないままなのだから!
たとえ単純計算であろうが、延々と続ければ、いつかは力尽きる。
まして神邪が解き続けているのは、文字通りに次元の違う問題だ。


「・・・・・・まだ、ま・・・・・・だ・・・・・・」

楽しいなあ。
数学の問題を解くのは楽しいなあ。

悔しいなあ。
カノンに勝てないのは悔しいなあ。


闇の中で何万時間か経った頃、神邪は、ぐりんと眼球を引っくり返して、動かなくなった。

「みゅう・・・・・・もうダメなの?」

少女は指を咥えて、怨めしそうに、切ない声を発した。


絶対能力“十一壱”は、完全無欠にして攻略不可能。
しかし所有者である竜堂神邪は、欠落だらけ。

嫌われ者は、いかなる支援も受けられない。

孤独だから、親友に死を望まれたら受け入れてしまう。

生物だから、すぐに気力が枯渇する。


「みゅう・・・ちょっとは期待してたんだけど、欲目が過ぎたかなァ。」

少女の右手が頭蓋を掴む。
悪魔の指が、へしゃげる脳髄を、ゴミのように散らす。

「前座は引っ込め竜堂神邪、なぁにが絶対能力者だ、腹筋が痛くて割れそうだみゅ。君は吉井康助の“代役”に過ぎないんだからね? 勘違いしないでよねっ♪」

少女は右手を、ひゅんっと振った。
付いていた鮮血は、最初から無かったかのように、虚空の闇に消えた。

「おーしまい♪ だけどゲームは続くよ?」





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この記事へのコメント

豆戦士
2019年06月29日 02:02
ついに明らかになる敵対の力の正体!

なんっじゃそりゃああああああああああ!
マジでなんでもできるのかよ! ワールドクリエイトかよ!

リンネとは何だったのか……。

一見無敵と思われたシンヤ君の能力にも、そんな弱点があるとはねぇ……。
台無しな言い方をすると「能力を使うと疲れるから、使わせまくれば勝てる」になるわけですが。異能バトルかよ。……や、異能バトルだった。


……まあでも、敵対の力も、質量をコストにしている以上、どれほどの巨大数だろうとたかだか有限。
「能力が適用される直前に、その能力を消し去る」みたいな感じの自分の能力をシフトワンで作ってしまえば……あ、でも、それと同じ能力は敵対の力でも作れるわけで。


無理じゃん!!!!!!!!!!
2019年06月29日 10:22
>豆戦士さん

これが異能バトルの行き着く先なのだ・・・!
「文芸部でいえば“創世”に近い」的なことを、どこかで言った記憶がありますが、そういうことです。あのときは内心で動揺しまくっていましたよホント!

そして猫耳猫にも先を越された感があるというか、初代勇者アレクス的な立ち位置ですね、シンヤ君。(※ただし仲間はいない)
戦っている面々すべてに共通しますが、「残機0のサドンデス強者と残機たくさんの弱者が戦えば、どっちが勝つ?」みたいな、みもふたもない展開です。うう、もっとカッコよく味付けしたかった・・・。

なんにしても、シンヤ君をはじめとして、無理ゲーと言わせしめる理由は納得してもらえたと思います!!
リンネは持久力が尽きないので、いつまでも戦い続けられますが、あまりにも質量の小さな人類たちに勝ち目はあるのか? 続く!

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