決闘祭!   Act 233 リンネの左手、ゾークの右手(ⅩⅩⅢ)

◆ ◆ ◆



私とリンネの関係は、どのように言うべきかなァ?

“始まりの1枚”の裏表。
神と悪魔。
一と全。
姉と妹。
母と娘。
あるいは恋人。
あるいはデュエルの相手。

私はリンネの分身であり妹であり姉であり娘であり母であり父であり兄であり弟であり友人であり恋人であり奴隷であり主人であり味方であり敵であり相談相手であり好敵手であり真理を探究する仲間。

とても言い表しきれないよ。
だけど今の状況に則して言うなら、原作者と二次作家ってところかな。
リンネが紡いだ世界を、私が記憶し、記録し、写し取り、続きを想像する。
具体的な想像は現実になる。私の“敵対の力”は、具体的な想像を現実化する。
なんて素敵な力。ずっと遊べる力。リンネに楽しんでもらう為の力。

私が紡いだ世界を、リンネは記憶し、考察し、類推し、参考にする。
そうやって新しい世界が次々と生まれていく。
この頃はリンネも私も、きっと誰にも無害な存在だった。
宇宙が自然に滅びるまで、のんびりと待って、それが楽しくて。

気付かなかった。それが永遠でないことを。
知らない振りをした。有限の海を。
目を逸らした。リンネの孤独から。

リンネの孤独なんて、君たち如きに分かりっこないけど、この喩えなら少しは分かるかなァ?
たくさんの物語に触れるほどに、過去最高の感動を更新することは、難しくなっていく。
誰も退屈からは逃れられない。たとえ神様であってもね。

いや、いや、いや、神様“だけ”は、だよ?

だって人間は死ねるから、いつでも退屈から逃げられる。
最高の感動を更新し続ける、いっとう冴えた方法を知ってる?
それは記憶を消去し続けることだって、知ってるよね?

天神美月は、そうしてきた。
みずからの記憶を消すことを望んで、神様を置き去りにして、新しい人生を何度でも何度でも何度でも!
その度に運命の出会いを、世界の命運が懸かったデュエルで、最高の昂揚を、悲劇的な別れを!
リンネや私にとっては見飽きた光景を、何度だって最高の鮮度で味わってきたんだ!

このゲームは、喜びも悲しみも贅沢に味わい続けた美月への、ちょっとした嫌がらせも兼ねていたり?
みゃはは、私だって美月のことを悪く言う資格なんて全然ないっていうのにね!
決して記憶を消すことが出来ないリンネと違って、私は何度だって記憶をリセット出来るし、消したくない部分は都合よく残して、嫌な記憶だけを質量として食べてしまえるんだから!

だから私は、ずっと楽しい。
だから私はリンネの孤独に、ずっと気付かなかった。



◆ ◆ ◆



「シンヤ君はね、私がリンネを楽しませる為に作った、オモチャの1つなんだみゅ♪」

カノンは“敵対の力”で何でも作る。
だからこそ唯一無二の存在を作れないかを考える。

簡単だ。感嘆するほどのこともない。
素数を定義すれば、その最小が2であるように。
性質的に唯一しか存在できない、“最速”と“最終”。

「彼がリンネを殺せるなら、それでも良かったみゅ。いや、最初に作ったときは彼女? 覚えてないなァ・・・。」

天神美月で試した試作型は、絶対能力と呼べる代物ではなかった。
しかし彼女の魔王覚醒と、残る2つの絶対能力に繋がった。

「絶対能力の二作目が“神炎”。知っての通り、今となっては攻略法など無数に存在する。ヒトミちゃんの強さは、絶対能力ありきではなく、素の強さに異能を加算しているところにある。」

絶対能力の完成系と言うべきもの。
それこそが完全無欠にして攻略不可能、“十一壱”。
理屈で言えば、リンネを存在から分解して抹消することさえ可能なはずだった。

「部分的に記憶を削除し続けてるせいで、故意か誤算か定かでないけど、残念ながらシンヤ君は失敗した。完全無欠なのは異能であって、彼自身は脆弱な失敗作。リンネには手も足も出なかった。」

「カノン、それ以上は許さねえぞ。シンヤを失敗作呼ばわりする奴は―――」

耐え難い怒りが拳に力を込める。
だが、目の前の少女は、それを遥かに凌駕する、凍える眼をしていた。

「最後まで聞けよヴォケ。失敗作というのは常に最強を凌駕する可能性を秘めてるんだみゅ。

語尾のせいで、いまいち締まらないが、真剣さが肌を焼くほどに伝わってくる。
だが、認めたくない。この女が、自分よりシンヤを評価しているなどと。


「7896兆2977億4457万9012分の7896兆2977億4457万9011。何の割合か分かるかみゅん?」


嫌な予感を加速させるセリフが、可憐な唇から零れ落ちる。
ほとんど1に近い、その割合は。


「マサキ、大河柾くん、君が竜堂神邪を、心が擦り切れるまで虐めた、あるいは自殺に追い込んだ、あるいは面白半分に殺した、あるいは“使用”して捨てた、そういう世界の割合みゅ。小数点以下四捨五入。」


吐き気がする。
眩暈がする。

だが、だからどうした。
気をしっかり持ちやがれ。


「・・・くだらねぇ確率遊びだ。他の世界なんか知ったこっちゃねえ。この世界の俺は、シンヤと親友だ。それは揺るぎねえ事実だろ? それともテメェの“敵対の力”ってのは、創ったもん全部“掌握”できるってのかよ?」


考えたくはないが、考えずにはいられなかった可能性。
千年ロッドよろしく、悪魔の意思ひとつで操り人形にされる恐怖。

だが、こうして口にしてしまうと、杞憂にすら思えてくる。
そんな“楽しくないこと”するわけない。
信頼というより、だからこそ別の絶望が浮き彫りになるからだ。

シンヤが、嫌われ者であることが。
悪魔の仕組んだ“設定”ではなく、現実そのままに。
二次創作の喩えに沿うなら、読者からもクソミソに罵られる。
そうでなくても好かれない。主人公として認められても、人として好かれない。
たとえ好かれても、一番じゃない。シンヤの嫌いな奴が、より高く評価される。

多分そんな感じ。


「みゃはは、違うってば。単なる恨み言だよ。」


あるいは、“作者”からも。


「私は気付いたんだみゅ。この素材は嫌われるほどに強くなるって。シンヤ君に仲間も友達も要らないんだよ。嫌われて、迫害されて、理不尽と不条理の中で、精神を病み、肉体を劣化させ、価値観を濁らせ、信念までも壊れ、その果てに私の最強の駒であればいい。だのに・・・よりによって、この世界で、君が何千兆分の1の奇蹟を起こしてしまったことで、シンヤ君は、みすぼらしいほど成長しなかった。本来なら過去最強のシンヤ君が出来るはずだったのに、君のせいだよ大河柾。君のせいでシンヤ君は、たったの“2手”で、ジ・エンド。」


何もかも聞き捨てならないが、特に最後。

あらためて問う。
あらためて怒りを湛える。


「てめぇ・・・・・・シンヤを、どうした?」


拳が震える。


「みゅ? だから生きてるってば。バラバラになった程度じゃ死なないって、君が言ってたじゃない。広大無辺の闇の世界で、意識も人格も粉微塵、自我も消失した状態で、ちゃーんと生きてる。“虚空の闇の瘴気”で満ち溢れているから、絶対に死なないよ。あーんしん♪」


悪魔は笑う。

悪魔は笑う。

最悪の少女は可愛らしく、拳を胸の前で組む。


「てめぇ・・・・・・てめぇ!!」


「みゅう~、怒りたいのは私の方だみゅ。よくもシンヤ君を腑抜けにしてくれやがりましたね、この息子は。絶対に私に勝てないのは分かっていたけど、それでも“10手”くらいは対応できると踏んでいたのになァ。いや、出来るはずだったんだ。私ほどシンヤ君を高く評価している奴は他にいないんだから。」


「駒として、だろ?」

握る拳から血が滲む。
ありきたりの反論は、自分でも空々しい。
シンヤは、自分を駒として正当に評価してくれる存在を、喜ぶだろうから。


「ゴチャゴチャうるさい。これでも喰らってろ、シンヤ君が振り切れなかったゴリ押し能力ラッシュだみゅん。」



“ZZZ-Kill” ???能力
デュエルが始まる前にデュエルに勝利する。

“約束されし勝利の神剣”(レーヴァテイン) ???能力
このデュエルにおいて、過程を問わず自分は勝利する。

“無法と暴力の現実”(ストライクシステム) ???能力
相手プレイヤーの異能を無効化する。

“帰納法いたちごっこ”(レトリックホテル) ???能力
相手のL回「無効化されない」効果をL+K回「無効化」する。

“色褪せぬ絶対の思い出”(パーフェクトメモリアル) ???能力
テキストは書き換えられない。




だが、心が折れることはない。
むしろ意気揚々と、フィールが増す。

シンプルな理由だ。

強敵と戦う喜び。
シンヤを超える喜び。


「俺はシンヤみてぇに丁寧な解き方はしねぇぞ? “それらはシンヤなら解ける問題だ”。よって俺が解く必要は無ぇ。」



“Z  -Kill”  ??能力
デ  ルが始  前にデュエ  勝利する。

“約  れし勝  神剣”(レ  ァテイン) ???能力
この ュエル  いて、過程  わず自分は勝利する。

“無  暴力  実”(ストライ  ステム) ???能力
相手 レイヤ の異能を無  する。

“帰  いたち  こ”(レトリ  ホテル) ???能力
相手 L回「無 化されない  果をL+K回「無効化」する。

“色  ぬ絶対 思い出”(パ  ェクトメモリアル) ???能力
テキ トは書き えられない。




「わかったんだ、シンヤ。こいつはデュエルでもリアルファイトでも倒せねえ。だが、それらを融合したらどうだ? デュエルの理を破るならリアルファイトで、デュエルの理に従うならデュエルで戦うまでだ! 何度でも同じ手を使ってみろよ、オートエンドレス加速システムで叩き潰してやる!」

「みゅう~、テスト用紙を破り捨てるとは、とんだ問題児もいたものだみゅ。想定とは違うけど、まァいいや、カノン先生のハチミツ授業、“3手目”に対処できるかみゅん!?」


“Z-END” ???能力(所有者:大河柾
自分はデュエルを始める前に敗北する。



「みゃはははは、自分の魂を攻撃できるかな?」


「んなことも出来るのか・・・。いよいよ何でもありだな、“敵対の力”。だが、俺が何の為にタイヨウたちを呼び集めたと思ってんだ?


「みゅ・・・?」


見れば死体が無い。あるはずがない。
だって最初から死んでないのだから。


「“ブック・オブ・ザ・ワールド”を欺く方法は古今東西たったひとつしかねえ。」


全てではない。
だが、ほとんどが芝居だ。


「てめぇが黒幕であることなんざ、最初から承知だ。シンヤの顔色が悪かった本当の理由に何で俺が気付かねえと思うわけ? 演技だよ。ずっと“親友の危機に気付かない間抜けな男”を演じていた・・・半分以上は事実だしな。楽なもんだぜ。」


現在、ほとんどの人類は生き残っている。

紛争は回復魔術で犠牲を抑えている。
発射された核ミサイルは、大半がダミーだ。


「世界は6次の知り合いで概ね通じてるって知ってるか? 何で特記戦力が、あの10人なんだと思う? 稼いだ時間で全ての決闘者を集結させることが出来るからさ! 行くぜ素敵なクソヤローども!!」


マサキは、1枚のカードを天に翳した。


「魂を張り合わせるのが、てめぇの専売特許だと思うなよ? 人類だって、とっくになァ・・・・・・それでは全世界の皆さん、悪魔に向かって御唱和ねがいましては!!」





『超・融・合!!』





悪魔と戦う意志のある者は、全て決闘者たる。

数十億の意志が結集した状態で、“決闘者”は、“敵対者”と対峙する。






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