囲碁・将棋の思い出 エピソード3 院生

プロとアマを分かつ要素を考えるとき、
碁会所での経験を思い出す。


その碁会所ではプロを雇っており、
席料とは別料金で指導対局を催していた。

割安とはいえ相応の料金がかかるので、
私自身は打ってもらったことはないが、
横で観戦する機会はあった。

2面打ちで、一方は終局で片付け中、
もう一方は大寄せに入っており、
石の数から6子か7子局だったと記憶している。

大寄せまでは、目算およそ互角だったが、
結果は27目の大差となっていた。

何故そのような結果になったのかというと、
それだけプロは、寄せが卓越しているからだ。
寄せを見て「美しい」と思わされたのは初めてである。


プロ同士での対局では、あまり意識しないが、
アマチュアと比較すれば、
その技術の高さが浮き彫りになる。

マラソンランナーは、前から映すテレビの映像だと
あまり速いようには感じないが、
実際に横から見たときの速さは凄まじい。

併走すれば、より明らかだろう。
あっという間に引き離されて、二度と視界に入らない。

プロとアマを分かつ要素の1つは、
目算と寄せの揺るぎなき正確さだと考える。



プロとは打たなかったが、
同じ碁会所には院生も来ていた。
こちらは対局料金などは発生しないので、
それならと対局することになった。

運動方面と違って、ボードゲームでは
あっという間に引き離されるほどではない。
院生下位とは、さしたる差があったわけではなく、
手合いは2子で、1勝1敗だった。

勝った方は、相手が小目定石の受け方を知らず、
負けた方は互いにポカ、単純な征の見損じという、
なんとも締まらない対決だったが・・・w

たとえ院生といえども、下位クラスは
アマチュアと地続きであると感じた対決だった。
かつてI君に手も足も出なかった頃からすると
私も随分と強くなったものだ。


だが・・・上位となると、話が違う。

まず、手合いが6子である。
なんてったってアマ四段で高勝率を誇る私だ、
6子も置けば勝って当然だと思い、
だからこそ弛んだら負けるとも思った。

結果から言うと、勝って当然だという思いが
驕りではなく矜持であると証明できた。

しかし、たった1局で、普段の10局分は消耗した。
“格上”との対局は消耗が激しいものだが、
それでも人生で最大級に消耗した対局だった。


なんといっても緻密さが違うのだ。
同じ院生でも、下位とは別格であり、
この人は“プロの側”だと心底から思った。

常連の高段者が相手でも、
読みの緻密さだけなら勝るとも劣らないのが
私の持ち味であり、強みであったが、
やはり所詮はアマチュアの緻密さに過ぎない。

単なる“格上”ではなく、
明らかに精度で凌駕してくる正真正銘の格上に
初めて出会った体験だった。


しかし、プロとアマを分かつ最大の要素は、
目算と寄せの正確さでも、
序盤中盤の緻密な打ち回しでもない。

院生上位のT君とは、通算3度対局したが、
別な日の2戦目は負けた。
よせばいいのに3戦目は同じ日に続けて打って、
こちらはボロボロに負けた。

3戦目は、思考力が全然はたらなかなかった。
たった1局で力を使い果たすというのは、
決して大袈裟な表現ではない。
ここまで消耗するのかと、愕然とした。


碁会所の常連は勿論、席亭や父親と打っても、
ああまで消耗しない。

特に常連は雑な打ち手も多く、
立て続けに5局くらいは苦でもなかった。

むしろ相手の方が、私と打つのは消耗がキツいからと、
高段者でさえ敬遠する人もいた程だ。
(ただでさえ年配の人々だからね・・・)


T君は、私と打つときでさえ、
さしたる消耗もなく、ごく普通に力を維持していた。
勝っても負けても、私は1局で力を使い果たすが、
彼は2局どころか、5局でも10局でも余裕に違いない。

プロがアマチュアと一線を画す理由は、
目算と寄せの正確さでも、
序盤中盤の緻密な打ち回しでもない。

それらを当然のように行える、
異常なまでの“対局体力”こそが本質なのだ・・・。


なんにしても、T君にとっては
アマチュアとの平凡な対局に過ぎなかったと思うが、
私にとっては会心の対局であった。(1戦目だけは)




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