佐久間「納涼・2020年初夏の怪談」

山田「もう既に嫌な予感しかない・・・!」

佐久間「失礼な奴だな。」

山田「下着姿の人間に言われたくねえ。」

八武「いや、山田くんも大概だ。」

山田「俺は服を着ている。」

佐久間「Tシャツと短パンが偉そうに・・・。靴下すら穿いてない!」

山田「だって暑いだろ?」

佐久間「私も暑いんだよ!」

山田「お前は細身だから暑さに強いはずだ。」

佐久間「なんという偏見。」

八武「仕方あるまい。男の巨躯部は熱に弱い。」

佐久間「局部な。お前らは巨躯でも合ってるけど。」

八武「できれば私も、旧帝大物理実験教室の学生スタイルで過ごしたい。」

山田「お前の友達に磨毛保則って奴がいなかったか?」

佐久間「・・・まァ、いやらしい目で見てくる女もいることだし、ジーンズくらい穿いておくか。」

維澄「佐久間の露出はそのままで構わないよ。会談を始めよう。」

佐久間「怪談な。」

山田「すっかりホラーな雰囲気じゃなくなったけどな・・・。」

アッキー「ですね。」

神邪「だけど佐久間さんなら・・・佐久間さんなら、きっと・・・!」

佐久間「ああ、私に任せておけ。背筋も凍る話をしてやろう。」

アッキー「いっとう恐い話をした人が優勝です。」

佐久間「なに? それでは私の勝ちだ。」

八武「随分と自信があるようだねぃ。」

佐久間「では語ろう。怪談『おっぱいスイカ』―――」

維澄「・・・・・・」

山田「この時点で既に怖さの欠片も無いな・・・。」

佐久間「まあ待て、これは悲しい話なんだ。」

山田「悲しいのは貴様の頭だ。」

佐久間「それは、ある暑い日のことだった・・・」

佐久間「女たちは、涼しさを求めて、スイカを購入した。」

佐久間「だが、いざ切ってみると、殆どが皮だった!」

山田「どういうこと!?」

佐久間「わずかに中央部分だけ、赤い果肉が存在していた・・・」

佐久間「申し訳程度に存在する赤い果肉は、」

佐久間「さながら白い巨乳を彩る、鮮やかな乳輪だった・・・」

佐久間「悲しい、夏の断片―――」

山田「だから悲しいのは貴様だ。」

アッキー「というか、それ『コインランドリーの女』ですよね?」

佐久間「ああ。どういうわけか真魚子には親近感を覚えるのだ。」

山田「お前を見てると、あの界隈が比較的まともに見えて嫌だ。」

佐久間「それより山田、次はお前の番だぜ。」

山田「ああ・・・。」

神邪「緊張してるんですか? 佐久間さんの後だとハードル高いですよね。」

山田「別な意味でな・・・。まあいい。」

山田「これは俺が先週体験したことなんだが・・・」

八武「ほう、体験談かね?」

山田「本屋に別冊少年マガジンの6月号を買いに行った。」

維澄「・・・!」

山田「だが、売り切れていたのか、無かった・・・。」

山田「あちこちの本屋を巡ったが、どこにも無かった・・・。」

アッキー「まさ・・・か・・・」

山田「そう・・・」

山田「今月は休刊になっていたんだ!」

アッキー「ぎゃああああああああああああああああああ!!!」

神邪「なんて悲しい話なんだ・・・!」

佐久間「認めよう山田、私の負けだ。だが次は勝つ。」

山田「虚しい勝利だった。誰も幸せにならない。」

維澄「そうね・・・。」

八武「ふむぅ、どうやら私の出番のようだ。」

八武「これは私が軍医を務めていたときの話だが・・・」

八武「人間ってやつは、死ぬと大小便を漏らすんだ。」

山田「・・・・・・」

八武「戦場に限った話ではない。尿が溜まっていれば小便を漏らすし、お腹を空っぽにしていなければ糞を漏らす。それが死ぬということだ。」

八武「特に意識していなくても、筋肉に力が入っているから、我々は文化的な生活を送れているというわけなのだよ。」

八武「病院で患者が亡くなったときは、排泄物の処置をしてから、遺族と会わせる。それが文化ってものだ。」

八武「“お別れ”は生きている者の為にある。遺体に縋って泣いてるときに、異臭が漂ってきたら興ざめも甚だしいだろう?」

維澄「確かに・・・。」

山田「汚い話かと思ったら真面目な話だった。」

八武「いや、汚い話なんだ。戦場では、その“文化”ってやつが低下するのでね。」

八武「最期まで弱音を吐かずに息を引き取った奴も、みっともなく喚き散らしていた奴も、殺してくれと懇願していた奴も、故郷で家族が待ってるって言ってた奴も、死ねば小便と糞を漏らして蛆と蠅まみれになっていった。」

神邪「“美しい死”はファンタジー寄りの話なんですね・・・。」

八武「哲学や悟りの類ではない。ただ私は、死んだ奴は処置しないと汚いんだな、と思っただけだ。自分の理想とする死に方を追求するのは、また別の話だよ。」

佐久間「それこそが悟りだと思うけど。」

八武「いやいや、悟りというなら、この先だ。」

山田「先?」

八武「死後の処置が発達する以前、死者に縋って滂沱する人々は、異臭などを気にしただろうか?」

八武「それもひっくるめて“死”であると、受け止めていたのではないだろうか?」

山田「ふむ・・・」

八武「何も私は、それが本来の姿だと思ってはいない。特に疫病の場合だと、感染のリスクが高まるからね。文化とは、様式美と機能美を併せ持つものだ。」

八武「ただ私はね、人を愛するということは、排泄物までも愛するということではないか・・・と、思ったんだ。」

山田「・・・・・・うん?」

佐久間「わかる。」

維澄「・・・何だか、話の方向性が・・・・・・」

八武「そして現在、私は妻の腸内に牛乳を注ぎ込み、」

山田「聞きたくない。」

八武「排泄物を啜っている、というわけさ。」

神邪「戦場から日常に戻ってきましたね。」

山田「戻ってきてほしくなかった。」

神邪「いえ、戦場と日常は地続きなんだな、って。」

維澄「そこなの?」

八武「それからというもの、家のトイレは私しか使っていない。なぜなら私が妻のトイレになっているからだ!」ドヤァ

佐久間「すっかり愛妻家だな。」

山田「・・・シリアスな話だったはずが、やっぱり汚い話だった。」

八武「だからそう言ってるではないか。私は悟ってもいないし、哲学を思考しているわけでもない。ただ、溢れ出るリビドーに衝動を委ね、性癖に素直であるだけなのだ。」

山田「頭が茹ってるな・・・。」

維澄「だいぶ涼しくなったし、このあたりでお開きにしよう。」

佐久間「栞お前、勝負から逃げる気か?」

維澄「八武の話に圧倒されて、『胸が小さくて悩む少女Sの恨み言』を語るどころではないと、そっとガイアが囁いている。」

佐久間「ガイアが囁いてるなら仕方ないな! お開きにしよう!」

山田「・・・優勝は維澄さんなのでは?」








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