やぶ医者、妖刀、傾城の美女

子供の頃に聞いた落語に、医者の話がある。
本編の方も面白かったと記憶しているが、
どういうわけか“まくら”(前振りの掌編)が
印象的だったりするから不思議なものだ。

おおまかにいうと、
「かぜで動く」から「藪医者」という掛け言葉で、
いっとう有名な説だと思われる。
落語というメディア展開の力ここにあり。

竹藪は「風で動く」ほどに、“しなり”を持っている。
そして腕の拙い医者でも、風邪くらいなら
いないよりはマシ、ということで呼ばれ、
ゆえに「風邪で動く」という話には“くすり”とさせられる。
観客がクスリと笑えば、「その笑顔が“薬”です」と、
それでまた受ける、というまでがテンプレートだろうか。

更に、これから藪になろうとしている「タケノコ医者」、
しっかりと藪を支えている「土手医者」、
これから藪の方へ飛んでいこうとしている「スズメ医者」、
こうした亜種が登場してきて、場が温まったところで
本編に入るわけだが、この話だけで十分面白かった。


幼い頃は、この「藪」が唯一絶対の説だと思っていたが、
やぶ医者の亜種と同じく説も様々ある。

ひとつは、どこの“馬の骨”とも分からない、
と同じニュアンスで「野夫」を語源とする、
及び、「野暮」との掛け言葉である、というものだ。

漢字は同じだが、うっそうとした「藪」を
「見通しのきかない」状況のメタファーとして、
掛け言葉とは異なる語源として見る向きもある。


中でも興味深いのは、
「養父」を「やぶ」と呼ぶ地域を語源とする説だろう。

本来は名医を輩出していた地域だったが、
やぶ出身を名乗る偽医者が氾濫し、
ついには意味が引っくり返ってしまったという。

ドクター「八武」の背景設定には
この話を組み込んであったりもするが、
概ねフィクションだろうと思っていた。

・・・が、今かかっているお医者さんの知り合いに
実際に養父姓の名医がいるというので、
あながち根も葉もない話でもないらしい。


ひとつの説を唯一解だと思い込むのは、
もはや人類史の悪癖と言っても差し支えない。
私とて幼い頃は、落語の話を鵜呑みにしていたし、
それ以外の説を聞いたときには逆に、
あれは噺家の作り話だったのかー、と思っていた。

恐竜の絶滅は、隕石だけでなく
いくつかの複合的な要因が絡むというのが定説だが、
それに准えて考えれば、「やぶ」の語源も
複数あったものがミクスチャーされているのが
おそらく実態であろう・・・。

「養父」の話も、単に偽医者が多かっただけでなく、
「藪」や「野夫」などの系統と混ざったことで、
より強化されてしまったとは考えられないだろうか。
現代でも“諸説ある”ことを考えると、
当時も混乱、混線があったと考えるのが自然だ。


“掛け言葉”というのは、音声の同一性、類似性をもとに
こじつけていく手法だが、
「音声の同一性」というのは極めて強い影響力がある。

「さる」を「えて公」、「シネマ」を「キネマ」、
「するめ」を「あたりめ」と表記するのも、
音声影響力の一端を示していると言えるだろう。

これに関しては、私は病的に脳に刺さるので、
分かりすぎるほどに分かる。
「あ」「つ」「い」が、続けて耳に入れば
「あつい」と認識されるようなことは日常茶飯事だ。

とりわけ、負の感情を刺激する音声・文字の並びほど、
よく聞こえるし、目につく(脳が意識してしまう)ので、
先人たちの言い換えを笑うことも出来ない。



「養父」説が、どこまで真実なのか、
作り話ではなくても、脚色が何割くらいなのかは定かでないが、
この話を聞いたときに、「妖刀」の話を思い出したのは確かだ。

妖刀は名刀である―――ゆえに贋作も横行したし、
本物は本物で、それを巡ってコレクターたちが
血みどろの争いを繰り広げたのは言うまでもない。

呪われているのは刀剣ではなく、
それを欲する人の方なのだ―――などと言うと
ロマンもへったくれもないが・・・。

なんてったって“いわくつき”には
それこそ「妖しい」魅力がある。
憎まれっ子世に憚る、ではないが、ある種の悪評は
一辺倒の絶賛よりも人を惹きつける爆発力を持っている。

刀剣を美女に喩えるならば、
さながら「妖刀」は「悪女」といったところだろうか。


「形成の美女」あるいは「傾国の美女」もまた、
その女が国を傾けたわけではなく、
国家の実態が危機的状況にある反映だという“分析”は出来る。

妲己が殷を滅ぼしたわけではなく、
愛妾に毅然と接しない暗愚な王や、その部下たちが
国家を傾けていったのは言わずもがな。

「けいこく」は「警告」である、という
こじつけも掛け言葉として面白い。

もちろん、すぐ動乱を女のせいにする悪癖と同様に、
全てのケースが濡れ衣だと考えるのも早計だし、
個人的な好みとしても、一律ではない。

フィクションとしての面白さを考えるならば、
「妖刀」と同じく「妖しい魅力」にロマンがあるのは、
これまた言うまでもないだろう。



八武「すなわち、悪い美女は、エロいってことだねぃ!」

佐久間「男を立てるよりも、男を勃てる女でありたいものよ。」

山田「こいつらときたら・・・。」

維澄「そうか、わかった。山田が日頃から佐久間に冷たいのは、悪評を混ぜることで魅せる、巧妙なプロパガンダなのね?」

佐久間「言うまでもない。ブログ読者の100%が知っている常識だ。」

山田「・・・百人殺せば英雄、ってのは日々実感している。」

佐久間「山田お前、いつの間に人を殺していたんだ?」

山田「お前だ、お前。」

佐久間「おかしいな。昨日は誰も殺してないと思うんだが・・・?」

山田「こいつを今すぐ病院に送る。死根也、しばらく退院させるな。」

八武「それは医者として出来ない」キリッ

山田「ざけんな。」

八武「健康なものを寝かせるベッドなど、私の病院には存在しないねぇ。」

山田「佐久間の頭は不健康の極みだろうが。」

八武「いや? 先月の健診でも、病変も委縮も見られない、綺麗な脳だったが?」

山田「今まさに現代医学の敗北を痛感した。」

八武「しおりんは若干ストレスが多かったねぃ。」

維澄「ビタミンと佐久間闇子が不足してるみたい。」

佐久間「聞こえないなァ。もっと小さな声で!」

維澄「もっと?」

佐久間「今後は声量の上限を、バスト高低差デシベルにする、というルールで会話しようと思う。いいな?」

山田「それだと俺や死根也が永続サイレスなんだが・・・」

八武「・・・っ、そうか、今こそ女体化手術を広める好機!」

山田「健康なものを寝かせるベッドはないんじゃなかったか?」

八武「発想を飛躍させるんだ、山田くん。男であることが既に、不健康であると・・・」

維澄「それは流石におかしいと思う。」

八武「いやいや、これは男の悩みなのだ。数日も溜め込むと、おにんにんがイライラして、不健康な精神状態に陥ってしまう。そこでレイプをしてスッキリ健康になるわけだが・・・」

佐久間「ある意味で健康なんじゃないか?」

山田「健康どころか正気じゃないな。」

佐久間「私も破壊衝動を溜め込むと、吐き気と苛立ちが抑えきれんので、定期的に食事をして健康になっている。」

山田「その食事は食物の摂取でいいんだよな? 別な意味とか無いよな?」

佐久間「貴様はスケベなことしか考えないのか。」

山田「お前に言われたくない。」

佐久間「精液を摂取するとか想像したのか? そのへんの人間を捕獲し、さくっと捌いて食ってるだけだ。」

山田「やっぱこいつブッ殺そう。」

維澄「佐久間の頭って寄生生物に乗っ取られてるの?」

八武「ちゃんと頭蓋骨はある。」







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