ユウちゃんの未来

少し前に「ミスト」という映画を観た。
閉鎖系のパニックホラーであり、
グロテスクな怪物の恐ろしさは言うまでもないが、
恐怖に置かれた人間の有様も、また恐い。

登場人物も背景も異なるのだが、
まさしく実写版「漂流教室」というべき出来で、
原作小説は近い時期に登場している。
(漂流教室:1972~74年、霧:1980年)


実写版、という言い方に違和感を覚えるならば、
エッセンスの共通性と言うべきかもしれない。
うわっつらだけを真似た「実写化」よりも
根底に流れるものを掴んだ別作品の方が、
まさにそれだと思わせられる。

和月伸宏の言う「永井豪の黒い産湯」であるが、
「寄生獣」は「デビルマン」の系譜であるし、
その先に「ARMS」があるという話は納得だ。


「デビルマン」の実写は観てないので評価は控えるが、
「漂流教室」のドラマ版とされたものは
少なくとも私が求めるものではなかった。
別作品として考えれば、また違う評価なのかもしれないが、
「漂流教室」を掲げる以上は、そうとして見る。

関谷が女になっている設定からしても
「やみのさんしまい」の方がパロディとして切れ味がある。
読者をドン引きさせてから本番と謳う奇天烈さは
読む人を選ぶであろうカードゲーム漫画だ。
・・・嘘は言ってないんだぬ(モルスァ


言うまでもなく楳図かずおのエッセンスは
綾辻行人、児嶋都といった後継者に恵まれている。
そして作者自身もまた、
「漂流教室」と対になる物語「14歳」を描き、
完全版ではエピローグ「帰郷」を加筆している。

「漂流教室」における、現代と未来の間にある
空白期間を描いたものが「14歳」であるという。
もちろん作品としては別物であり、
世界の繋がりも曖昧である―――それは例えば
「マップス」と「ネクストシート」の関係や、
再び引用させてもらうが和月伸宏のパロディ論における
エッセンスを抜粋したパラレルワールドに近いものだろう。

そして、同じ世界観で捉えるならば、
かつて辿り着いた絶望の考察も、また違った見方を加えたい。


「漂流教室」で高松たちが地下で出会った老人は、
驚いた顔をして、すぐに死んでしまう。
この人物こそが、過去に戻ったユウちゃんの
成れの果てではないかと長らく思っていた。

「14歳」の状況を経験して狂ったユウちゃんが、
当時と変わらぬ高松らの姿を見て狂乱して死んだと、
アッキーの悪辣な思考は考察していたのだ。

しかし、空白期間の年月によっては
ちょっと話が違ってくる。
作者いわく「うんと未来」であるし、
そもそも同じ世界観であっても同じ世界ではないが、
空白期間が14年かそこらであると考えれば、
あの老人は馬内守也である、と考える方が
年齢的に辻褄が合っている。

あれほどの破滅を体験したら、
40歳前後で老化しても不思議ではない。
数十年も遡れば、一般的な50代の印象が
こんなに老けているのかと驚いたことがあるが、
まして文明の崩壊した状況で文明人が
急速に老いるのは当然だろう。

そして十数年なら、ユウちゃんは20歳前後。
馬内守也が破滅から救った彼が
どこかで生き延びている可能性は
もうひとつの希望であると思えるのだ。


最後に、これまた漂流教室エッセンスを感じる
「はたらく細胞BABY」を挙げておきます。
コミカルな中に含まれる愛別離苦、そして旅立ち。

恐怖だけではない、未知なる世界で
「子供たち」が生き延びていく試行錯誤、
そう、試行錯誤、である。

未来に希望があるならば、
それは漠然とした楽観ではなく、足掻きの連なりだ。

・・・この説明文だと構えそうだけど
むしろ挙げた中では、いっとう構えずに読める
基本コミカルな話ですからね?(重要)






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