宵子の童話「一匹の子豚」

ちかちかと街灯が燈る夜、一人の男が歩いていました。
足取りは重く、よたよたとしています。
男は、少し前までは痩せている方でした。
しかし今では、あちこち肉が出てきています。
遠目には、まるで子豚が千鳥足で踊っているようです。

男は親に捨てられてから、難民のように暮らしていました。
安価な宿に寝泊まりして、雀の涙ほどの日銭を稼ぎます。
食べるものは、粗悪品や残飯ばかり。
身も心も豚になってしまったようで、男は泣きました。
社会の荒波に溺れ、藁を掴むように生きているのです。

そんな彼に、人生の転機が訪れました。
宿に泊まる代金も無くなり、冬の街。
どこへ行こうか途方に暮れた彼の前に、女が現れました。
すらりと背が高く、目鼻立ちの整った、美しい女です。
男は思わず見惚れて、立ち尽くしました。
「私に見惚れているの?」
「あ、ごめんなさい!」
男は咄嗟に謝りました。
けれど、なんて綺麗な声だと思っていました。
「可愛い子ね。食べちゃいたい。」
「かわ・・・?」
それは男にとって、生まれて初めて聞く評価でした。
しかも男として見られているようです。
「坊や、お姉さんとイイコトしない?」
女の手が、首に回っていました。
坊やという年齢ではないけれど、些細なことでした。
小さなことに拘るには、あまりに彼女は美しすぎたのです。


郊外にある彼女の家は、庭付きの木造一戸建て。
女の運転で、レンガの車庫に入ります。
男はオープンカーに乗るのも生まれて初めてでした。
サングラスをかけた姿も美しいと思いました。
女は車を降りると、サングラスを外して舌なめずりしました。
かすかな街灯を反射して、双眸が爛々と煌めいています。
まるで狼のようだと、男は思いました。
(僕は奇麗な狼さんに食べられる子豚なんだ。)
そう考えると、下半身に熱が集まるのでした。
「もう準備万端ね。」
女の手が、男の股間に触れます。
実は男は疑念を抱いていました。
思わせぶりに誘って、美人局なのではと疑っていました。
半ば自暴自棄な心境だったのです。
よく考えてみると、奪える金銭すらありません。
安堵した男は、気が付けば清潔なベッドにいました。
いつの間にか裸に剥かれて、そして女も下着姿です。
野生の狼のように、しなやかな身体つき。
男は興奮して手を伸ばしました。
女も舌を出して、興奮しています。
「ふぅ、ふぅ・・・ふぅ♪」
男の逸物に息を吹きかけました。
理性が藁のように飛んでいきます。

ぱっくり。
女は指で下の口を広げて、男の逸物を一飲みに咥えました。
ぎゅうぎゅうと締めつけながら中へ導きます。
「ぐあっく、おおっぶ・・・あ・・・」
男は声にならない呻きを発しました。
我ながら、なんて汚い声だと悲しくなりました。
けれど女は、ますます興奮していました。
「可愛い声ね、子豚ちゃん?」
豚と言われて嬉しくなったのは、人生で初めてでした。
びくびくと逸物が震えるのを感じます。
昼間は真っ暗だと思っていた人生が、夜は明るく暖かい。
男は嬉しさのあまり、涙が出てきました。
「もっと泣いて、鳴いて! 可愛い声を私に聞かせて!」
「ぶ、ぶひっ、ぶひっ!」
男が豚の泣き真似をすると、女の顔は更に愉悦が燈りました。
獲物を前にして、いただきますと言いたげな狼のようです。
「あんっ、私もイく、イクッ!」
嬉しそうに腰が跳ねました。
あまりに速く擦られて、痛いくらいです。
「子豚ちゃんの搾りたて精液いただきまーす♪」
真っ逆さまに落ちるように、男は絞られました。
それでも肉は硬いままです。
ぐつぐつと煮えたぎる欲望が、出口を求めて暴れています。
女は目を輝かせて、きゅっとお尻を締めました。
「うあっ!?」
「子豚ちゃんのお肉、とっても美味しいわ。」
ぴくんと肩を震わせて、女は言いました。
「もっと食べていいかしら?」
「はいい! ぜんぶ食べてくりゃはい!」
もう男は呂律が回っていませんでした。
この妖艶な女に、精液を出したい。出したい。
そんな思いで、頭がいっぱいになっていたのです。

「君の全部いただきまーす♪」
ばっくり。
女の頭が狼に変身して、口が裂けるように開きました。
驚く暇もなく、男の上半身は世界から消えました。
「あはぁ・・・おいし・・・」
濁りに濁った眼で、女は恍惚と謳います。
男の下半身は、内臓が剥き出しになっています。
鮮血が噴き出します。
それと同時に、どぶっどぶっと精液が流れます。
女は人間の頭に戻りました。
男の下半身を愛おしそうに抱えて笑いました。
精液は一滴残らず膣に収めました。
けれど力を抜くと、ごぼりと音を立てて白濁が溢れます。
ぐつぐつと煮えたぎるスープのように、温かい液体。
それは男が遺した、命の種でした。



   一匹の子豚   了






2021年04月
            1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30   

過去ログ

テーマ別記事

最近の記事

最近のコメント

QRコード