魔物使いは志す (前編)

この世界には魔物がいる。

この世界には人間と魔物がいる。

魔物と人間の違いは何だろう。
魔物は魔力を持っている。
人間も魔力を持っている。

魔物は人間より強いか。
魔物より強い人間もいる。
人間も魔物も様々だ。

強い人間。弱い人間。
強い魔物。弱い魔物。

魔物は人間より凶暴だろうか。
魔物より凶暴と思える人間もいる。

姿形が違うだけで、魔物も人間も変わらないのではないだろうか。
この世界に住んでいる、生き物たちだ。

あたしは、人間と魔物が手を取り合う世界を作りたい。
それは夢物語でない。

勇者が魔王と手を組んだ。
それを人々は裏切りだと罵った。

あたしは違うと思った。
勇者も魔王も、人間と魔物が手を取り合えると思っていたのだ。

そうであると信じたい。
だから確かめに行く。


かつての戦友として、あたしは彼らに、最初に何を言うべきだろうか?



◆ ◆ ◆



魔の大陸に、1人の女が足を踏み入れていた。
49歳という年齢に相応しく、相応の貫禄がある。
そして彼女の背後からは、3体の魔物が一定の距離を保って付いてきている。

「やっぱり、故郷の空気は美味しいかい?」

元気そうな魔物たちを見て、魔物使いは思わず笑顔になる。
人間にとっては敵地であっても、彼らにとっては故郷なのだ。
やや渦巻く不穏な空も、魔物にとっては心くすぐられる景色なのかもしれない。


だが、しばらく歩くと、その魔物たちすら不穏に感じる空気が漂ってきた。
魔物使いも足を止め、警戒して周囲を窺った。

(何だろう・・・この気配。いや、これは・・)


「死臭・・・?」


そのときだった。

「やはははは! 頭が高い! ダウ~ン!」

空から骸骨が降ってきた。
それも人間のサイズではない、かなり大きなものだ。

「おおっと、失礼、麗しいマダム。」

骸骨は流暢な言葉で話しながら、地面に落ちた頭骨を拾い、両手で背骨に設置した。

「らざああああああああああ!」

「っ!?」

突然の叫びに、魔物使いはビックリして後ずさった。

「あああ・・・・と。」

上から錫杖が落ちてきて、骸骨の手に収まった。
そして骸骨は、眼に邪気を込めて挨拶した。

「お初にお目にかかります、魔物使いのベスラおばさん? 冥王様が第一の下僕、ピルトと申します。」

「め、冥王・・・?」

その言葉を聞くのも久しぶりなほど、タブーに近い存在。
かつて世界を恐怖と絶望に叩き込んだ、冥府の王。

「様を付けんかババア!」

「・・っ!」

「なーんてね、ジョークジョーク。何なら冥王ちゃんでも冥王ぴょんでもいいんじゃない? ピルトそういうの別に、こだわらない主義だし。」

激昂したかと思えば、次の瞬間には気さくな態度。
ペースに乗せられてはならないと、ベスラは身構えた。

そのとき。

「というのが冗談でえ!」

ピルトは杖を振り上げて魔力を込めた。
激しい稲妻がベスラを襲う。

「あぐうううう!!」

「いいよお、おばさんの悲鳴いいよお! もっと泣いて泣いて・・」

そこへ3体の魔物がピルトめがけて襲いかかった。

コアトルは炎を吐いた。
メタルキングは稲妻を放った。
そして虹孔雀は、全ての魔力を解き放った。




つづく

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