亡霊たちへの鎮魂歌 62

「わしの話が聞きたいのかな。」
リビングに戻ってきて、蛹田蛭巳は上座に腰を下ろした。
「鳩中高校エスパー研究クラブの部長を務めています、ご存じ白石楷です。本日は“ムーン・シューター”について話を聞きたく思い、部員一同ここへ参じた次第です。」
黒縁の眼鏡の奥で、鋭い眼光が燃え滾る。
それを見て花咲瞭はゾクッとし、若葉緑里と海路宣夫も普段とは違う部長の様子に息を呑んでいた。
「自己紹介を。」
真面目な顔で、白石楷が部員たちの方を向く。
「・・・僕は、花咲瞭と申します。副部長を務めています。」
「オレは海路宣夫いいます。」
「私は若葉緑里です。カイロ・・・海路くんと同じく、新入部員です。」
何が“海路くん”だ、という目で海路宣夫が鼻で笑う。それを若葉緑里がキッと睨み返す。
「宮白希揃・・・先代の部長です。」
「オレは十島育生。ちょっとした縁で来た。」
そして最後に、蛹田蛭巳の目が大きく見開かれた本当の原因が、いつもと変わらない口調で自己紹介を行う。
「黒月真由良です。初めまして。」
その笑顔の奥で、彼女の心は震えていた。
(久しぶりね・・・!)
「くろつき、まゆ、ら・・・。まさか君は・・・!」
蛹田蛭巳の双眼が、再び大きく見開かれる。
見れば見るほど“彼女”と似ていた。違うところは、“彼女”は冷たく淫らな目つきをしていたのに対し、目の前の少女は明るく健康的な目をしているということだ。
他人の空似ではない。しかし蛹田蛭巳の認識では、決して“彼女”本人ではありえない。
何故なら“彼女”は、25年も前に―――
「マユリの娘・・・いや、孫か・・・?」
その言葉に一同は、一斉に黒月真由良を見た。
彼女は少し目尻を下げて、蛹田蛭巳に尋ね返した。
「まゆり、とは・・・黒月繭里(くろつき・まゆり)のことですか?」


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