テーマ:エスパー奇譚 中編

亡霊たちへの鎮魂歌   あとがき

ふと何となく本棚を見て、「エルフ・17」の作者は今どうしてるだろうと思いました。 「紅壁虎」を手に入れた動機の大元は、概ねそんなところですが、それが今年の夏。 この「ムーン・シューターⅡ(~亡霊たちへの鎮魂歌~)」を連載する、少し前のことでした。 既にノートには最後まで書き終わっており、それをパソコンで打ち込んでいた頃。 読んで…
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亡霊たちへの鎮魂歌 エピローグⅢ

やがて20世紀も終わり、2002年。 黒月真由良は、再び高校生となる。 そのままの名前ではなく、一文字を外して。 (きっと、あたしは良い子じゃないね。) 黒月真由。 それが彼女の名前。 垂れ下がった布地のついた“兎耳帽子”を被りながら、入学式へ。 (見つけた)(あの子だ)(育生の娘)(可愛い) 栗色の髪を三つ編みに束ねて…
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亡霊たちへの鎮魂歌 エピローグⅡ

それから18年あまりが過ぎた。 めまぐるしく動く世界情勢の中で、それぞれの人間関係も変化し、もはや以前の面影は無い。 新しく出来た関係が、過去を過去として、記憶の中の思い出として、堆積させていく。 1996年の、ある日――― (馬鹿息子が。) 40代も後半、どっしりとした体格の増田半蔵(ますだ・はんぞう)は、息子の死の報せ…
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亡霊たちへの鎮魂歌 エピローグⅠ

あれから3ヶ月。 白い部屋で若葉緑里は、まだ目を覚まさない。 (オレが・・・守ってやらなくちゃならなかったんだ・・・!) 医者の言うには、脳死なのだと。 人工呼吸器その他で、生きてるように保っているが、死んでいるのだと。 二度と目を覚ますことは、ないのだと。 (違う! ミドリは生きている!) しかし、二度と憎まれ口を利いて…
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亡霊たちへの鎮魂歌 83

蛹田蛭巳が振り向くと、暗がりの中に銃口が見えた。 「・・・なんて、ね。冗談よ。」 彼女は銃を置いて、前に足を出した。 あどけない少女の顔に、冷たく淫らな女の笑みが浮かんでいる。 「マユリ・・・か・・・?」 そんなはずはない、決してないと思いながら、しかし決して他人ではない表情。 たとえ娘や孫であっても、真似できるものではない…
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亡霊たちへの鎮魂歌 82

「33年、か・・・。」 安楽椅子を揺らしながら、蛹田蛭巳は呟いた。 もうじき午前零時。 今年の4月14日が終わる。終わる。 「戦争は、終わったのか?」 玉音放送に涙した連中は、その涙が乾くと共に、戦争を忘れたかのようだった。 あの敗戦行軍の中で、何を見て、何を感じたのか、思い出せないというのか。 家族を殺された地元民が、殺…
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亡霊たちへの鎮魂歌 81

十島育生と花咲瞭が白石家に辿り着いたのは、その少し後だった。 鍵の壊れた家の中は、メチャクチャに荒らされていて、静かだった。 白石楷の両親は、息子より先に殺されていた。 「遅かった・・・!」 だが、膝をついている暇さえ無い。 きりきり痛む腹を押さえて、死んだ世界のコメディアンにでもなった気分で、十島育生は病院に電話した。 間…
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亡霊たちへの鎮魂歌 80

小学生の頃、初めて会ったときの印象は、よく覚えていない。 いつからか自然と側にいて、弟みたいな存在だった。 若葉緑里にとって海路宣夫は、手のかかる弟みたいな存在であり、長髪にしてギターなんか始めたときには、グレた弟を心配する姉の気分になったものだ。 しかし今日、彼を初めて男として意識したかもしれない。 十島育生のような大人の余裕…
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亡霊たちへの鎮魂歌 79

「何なんだ、リョウのやつ・・・。こんな夜に呼び出して。」 訝しみながらも白石楷は、特に警戒せずに夜道へ繰り出した。 待ち合わせ場所へ着くと、既に花咲瞭は来ていた。 「ああ、カイ。大事な話って何だい?」 花咲瞭の顔は、少し上気しているように見えた。 「え? 大事な話があるからって呼び出したのは、リョウの方だろ?」 「・・・・・…
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亡霊たちへの鎮魂歌 78

ふらりと夜風に当たりに出ていた十島育生は、妙な気配を感じた。 (誰だ?) 急に6年前のことを思い出した。 両親を失った、忌まわしい同時多発テロ。 戦場の空気は、日常と違うことを知った。それを吸うのは軍人だけじゃない。 「誰だ?」 呟くように、彼は言った。 その途端に、気配が膨れ上がった。 (!?) 咄嗟に彼は体をひねっ…
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亡霊たちへの鎮魂歌 77

(ソロウが・・・希揃が、あたしのことを・・・?) 告白されるまで気付けなかった。 気付いてもよさそうなものだった。 どれほど年齢が離れたところで、恋愛対象にならないルールは無い。 まして黒月真由良は、10代で時間が止まったかのように瑞々しい外見だ。惚れるなという方が無理である。 (は、ははっ、歴戦の殺し屋も恋愛に関しては小娘か…
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亡霊たちへの鎮魂歌 76

「・・・どうしたの。」 義理の息子に無言で手を取られて、黒月真由良は焦った。 いつもの彼じゃない。 宮白希揃は、そんな男じゃないはずだ。 「・・・。」 けれどそれは、知らなかっただけなのだろうか? 本当の彼を。 「何で、父さんなんだ。」 底冷えのする声が、凍りついた表情から絞り出された。 「・・・!」 「母さんの命日…
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亡霊たちへの鎮魂歌 75

その頃、宮白渚は墓の前にいた。 10年前に死んだ妻、瓜巣希美。 彼女との温かな思い出が、次々と蘇ってくる。 そして、冷たくなった彼女の遺体。葬式。 10年前は、本当に酷かった。心が死んでいた。 「ごめんな、希美。」 自分も酒に酔いながら、彼女の墓石に酒を注ぐ。 「お前のことを忘れたわけじゃないけど、もう、吹っ切れた。」 …
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亡霊たちへの鎮魂歌 74

「渚・・・いる?」 ちゃんとメモを読んでくれただろうか。 上気した顔で家を訪れると、灯かりが無く、人の気配がしなかった。 夜というには少し早いかもしれないと思い、何かツマミでも作ろうかと冷蔵庫を開けると、既に生ハムのサラダらしきものが2人前、用意されていた。 2人前。その意味を考えて、いよいよ胸が高鳴る。 もうすぐ戻ってくるだ…
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亡霊たちへの鎮魂歌 73

それからのことは、よく覚えていない。 どんな会話を交わしたのか、その記憶が手繰れない。 心ここに有らずの状態で話を聞いていると、聞こえていても頭に入ってこない。 それが不安だった。 たまらなく不安だった。 何か重要なことを聞き逃してしまったのではないか。友人との大切な時間を無為に過ごしてしまったのではないか。 このことが未来…
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亡霊たちへの鎮魂歌 72

愛しい狂気よ、世界に災いと死を振り撒け。 下卑た狂気よ、不条理を結末へ塗り込めろ。 青白い月が照らす、どことも知れぬ、常世とも似つかない世界で、片羽の天使は祈っていた。 枯れた草が繁る大地から、ほんの少しだけ浮かんで、彼女は微笑みを浮かべていた。 真っ白な薄絹を身に纏い、黒い靄を引き連れて、双眸は見えず、口元だけが歪んでいる…
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亡霊たちへの鎮魂歌 71

うっそうと繁る森の中。 滲んだ赤い霧が漂っていた。 鉄の匂い。 腐った血の匂い。 開けた場所に存在する湖は、真っ赤に染まっていた。そこに不気味な機械の残骸が浮いていて、吐き気を催す臭気を放っている。まだ元の形の面影がある胴体からは、てらてらと光る油が流れ出している。何年も経っているようで、油は粘性を増し、ぶよぶよとして触る気も起…
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亡霊たちへの鎮魂歌 70

白石楷は、知らない祖父を思い出していた。 花咲瞭は、知らない戦場を思い出していた。 唄には、知らないことを思い出させる力があった。    誰が 誰が 永遠の安息を与えてくれるの    深い淵へ堕ちた魂を掬い上げてくれるの    死者は眠ることさえ許されず    苦しみと 怒りと 嘆きが聞こえる    この愚かなる戦いが…
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亡霊たちへの鎮魂歌 69

黒月真由良は、白石楷の母親を見た。 (問題は、この人だが・・・。) 超能力の存在について、エス研の4人、宮白希揃、十島育生、蛹田蛭巳と護衛は、信用できる。 絶対とまでは言わなくても、安定して信頼できる。 だが、白石楷の母親まではどうか? 今日はじめて会った彼女を、黒月真由良は内面までは知らない。 (・・・いや、よそう。疑心暗鬼…
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亡霊たちへの鎮魂歌 68

「え、どうやってですか・・・・あわっ?」 若葉緑里は急に中に浮かんで、驚きの声を発した。 どう考えても手品ではない。中身が丸見えになりそうなスカートを手で押さえて、彼女は驚愕と好奇で目を輝かせた。 「す・・・すごいすごいすごい! 十島さん、本物のエスパーだったんですか!」 「ま、マジで? ミドリ、まさかオレをかついでないよな?」…
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亡霊たちへの鎮魂歌 67

「・・・でも、“ムーン・シューター”が死んでるとしたら、N氏殺害事件とかは、どう説明されるのかしら?」 そう言ったのは若葉緑里だった。 「何だよミドリ。“やっぱ偽者だったじゃない”とか言わねーの?」 からかい半分、驚き半分で、海路宣夫が言う。 「そんな子供みたいなこと言わないわよ。超能力の存在を信じてるかどうかとは話が違うわ。ス…
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亡霊たちへの鎮魂歌 66

“ムーン・シューター”黒月繭里は、25年前に死んでいる。1953年の9月30日に。 それは、にわかには信じることの出来ない話だった。 「・・・確かに、死んだんですか?」 白石楷は、青い顔で訊いた。 「間違いない。この目で死体を確認しておる。」 「替え玉ってことは考えられないですか?」 「その可能性を、わしも真っ先に考えたよ。…
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亡霊たちへの鎮魂歌 65

「マユリの超能力は2つある。ひとつは攻撃力・・・光を束ね、レーザービームとして撃ち出すものじゃ。当時の技術でも、人を失明させるほどのレーザーはあったが、今の技術でも人を焼き殺せるようなものは無い。ましてマユリのように人体を貫通できるような熱線はSFじゃな。遥か未来の話じゃ。作ろうと思えば作れんこともないじゃろうが、費用と効果が全く噛み合…
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亡霊たちへの鎮魂歌 64

黒月真由良は、お茶を啜ってから、一息ついて話し始めた。 普段の快活な声ではなく、本来の彼女に近い調子の、静かな声で。 「両親が何をしていたのかは知りません。まして祖母が何者であったかは想像の外です。・・しかし確実に、人には言えない世界の住人だったと思っています。」 そこで彼女は、伏せた目を上げた。 兎耳帽子が、ぴょこんと動く。 …
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亡霊たちへの鎮魂歌 63

40年前。 日中戦争開始の翌年、1938年。蛹田蛭巳は34歳の誕生日を迎えていた。 誰に祝われるでもなく、しかし彼の生涯で最も大きな出会いが、この日にあった。 『飛鳥井大佐の紹介で配属されました、黒月繭里と申します。』 軍服に身を包み、黒髪を青いリボンで束ねた少女は、冷たく淫らな目つきで敬礼した。 『少女ではないですよ。成人し…
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亡霊たちへの鎮魂歌 62

「わしの話が聞きたいのかな。」 リビングに戻ってきて、蛹田蛭巳は上座に腰を下ろした。 「鳩中高校エスパー研究クラブの部長を務めています、ご存じ白石楷です。本日は“ムーン・シューター”について話を聞きたく思い、部員一同ここへ参じた次第です。」 黒縁の眼鏡の奥で、鋭い眼光が燃え滾る。 それを見て花咲瞭はゾクッとし、若葉緑里と海路宣夫…
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亡霊たちへの鎮魂歌 61

やがて午後3時を過ぎ、それから午後4時までの間にエス研の5人が白石家に戻ってきた。 最初に戻ってきたのは、白石楷と花咲瞭の2人。昂揚した雰囲気で、どことなく顔が火照っている。 続いて海路宣夫がギターを持って登場。その少し後に若葉緑里が到着。 そして黒月真由良が姿を現したのは、4時が近くなった頃だった。 中で待っていた宮白希揃と十…
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亡霊たちへの鎮魂歌 60

「おにぎりでも、どうですか?」 しばらく睨み合っていたところへ、白石楷の母親が、皿に黒白のコントラストを載せてやって来た。 性的にそそられるものではないが、温かくて落ち着く笑顔だ。十島育生は母親のことを思い出して目頭を熱くした。 「いただきます。」 「?」 尊大な態度を取っていた男が、いきなりしおらしくなったので、宮白希揃は訝…
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亡霊たちへの鎮魂歌 59

賑やかに会話している間に8時を過ぎた。 エス研の5人は学校へ出かけ、家には白石楷の母親と、男2人が残った。 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 十島育生と宮白希揃は、再び睨み合っていた。 「・・・あらためて、オレは十島育生。25歳。」 「・・・宮白希揃。20歳だ。」 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 「オレと…
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亡霊たちへの鎮魂歌 58

「ほらもう7時半よ、カイロがグズグズしてるから。」 「間に合ったんだからいいじゃねーかよ。」 若葉緑里と海路宣夫が慌しく駆け込んできた。 「すいませーん、遅れちゃって。」 「遅れてねーだろ、時計見ろって。」 「5分前行動が世間の常識よ。みんな来てるでしょ。」 「そんな常識は知らねーな。」 「若葉、海路、相変わらずだな。」 …
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