テーマ:エスパー奇譚 千里

「千里」 第十七話 魔犬再来 17

本隊、すなわち司令官ヴェネシンと参謀クレア、第二分隊と第十六分隊。この18名は、“魔犬ケルベロス”と対決を開始していた。 ヴェネシンはクレアを守らねばならない為、戦うのは16名。ラプソディアとキムがツートップだ。 第二分隊長ラプソディア・カッセルは、B2級サイコキノ。蛇のようにウェーブのかかった黒髪の、30代後半の女性である。砕組偶…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 16

『ヴェネシン、もう起き上がっていいのか?』 『いつまでも寝てられるかよ、雌犬のガキを始末して、妹の墓前に供えてやる。』 殺気立つ彼女の後ろで、砕組の新入隊員が呟いた。 『何いきってんだか。バッカじゃねえの。』 『・・おい、今なんつった。』 ヴェネシンは一歩で掴みかかった。 『なんつった? 事情も知らねえ奴が、軽々しくほざいて…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 15

『ヴェネシン先輩は半狂乱だとよ。復帰も危ういらしい。』 『うろおい、無理もないですよね・・・。』 『ああ。家族を殺された痛みは、どうやったって癒せない。』 中肉中背の飄々とした男は、死んだ弟のことを思い出していた。 『・・・そんで、ゼットの方の魔女が持ち帰った砂から、羊水が検出されたんだって?』 『うろおい、それだけじゃないで…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 14

1953年、春。 静かに波が打ち寄せる浜辺に、漆黒の衣装に身を包んだ細身の女性が現れた。 後ろから付いてくる数十名の部下は、おっかなびっくり歩いている。 『そう怯えるな。魔犬は死んでる。精神波を感じない。』 年齢は30前といったところ。落ち着いた声で、目つきは暗い。 『ステルスかもしれないじゃないですか!』 『私から隠れるほ…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 13

“叩割空帝”(こうかつくうてい)モース・リーガル。 コムザイン、デュースと並ぶ、アルカディア旧三帝の1人だった男だ。 力が衰えたことでアレクセイに帝の座を譲り渡し、現在は帝の字を引いて“叩割空”(こうかつくう)と呼ばれているが、その戦闘センスは健在である。 「つくづく俺もおせっかいだな。頼まれてもいない仕事で命を危険に晒すとは。」…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 12

「お前らの実力は見切っている。あたしに勝てるわけがない。」 フェンリルは笑って5人を見下した。 「それはどうかな。」 ノワールが頬の肉を揺らしながらニヤリと笑った。 それと同時にフェンリルは腕に衝撃を感じた。 「!?」 彼女の顔が歪む。 「ふふん、連携してたときのことは想定できてないか?」 「チッ。」 フェンリルは舌打…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 11

「ぐっ!」 ハービスは前方に転がって致命傷を回避した。 「やれやれだね。」 “魔犬フェンリル”だった。彼女は血のついた右手をペロッと舐めて、次の攻撃にかかろうとする。 そこへリックが念力のハサミで斬りかかる。同時に周りから部下がサイコキネシスで一斉攻撃。 だが、予知されていた。 「遅い、遅い。」 とはいえハービスは死んでい…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 10

司令官ヴェネシン・ホーネット。 参謀クレア・クレッセント。 ラプソディア第二分隊8名。 ハービス第四分隊8名。 キム第十六分隊8名。 ヴェロニバル及び報組のメンバー。(非戦闘員) 白組・黒組連合5名。 2体の“魔犬”相手に心許ない戦力だった。早くもラドル分隊が負傷して戦線離脱しており、前途は暗かった。 コムザインやカタス…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 9

かつて、“魔犬”と呼ばれるエスパー犯罪者が存在した。 17年前にアルカディアは日本で“魔犬”を追い詰め、イブ・ホーネット率いる砕組第七分隊が対決することになった。 そのとき、当時はアルカディアのメンバーではなかったクレア・クレッセント(三日月千里)の虚言により、第七分隊は“魔犬”と相討ちし、壊滅する。 千里の虚言に関わらず第七分隊…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 8

負傷者の応急処置をしてアルカディアに運ばせる傍ら、ヴェネシン、クレア、ヴェロニバル、キムは、緊急に集まっていた。 「まさか魔犬が2体いるとはな・・。クレッセント参謀、まさか他にはいないだろうな?」 「ちょっと待ち・・。能力制限かかってるから、過去視に時間がかかる。17年も前のことなんでね。」 「奴の言ってた弱点は大当たりね。」 …
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「千里」 第十七話 魔犬再来 7

(くっ、奴の心が読めない! どうしたことだ、ヴェロニバル・ゼティエルト・サンデモン!) ヴェロニバルは焦っていた。 ラドルと第六分隊との精神リンクは保っているから、能力に問題は無い。だが、相手の思考が読めない。 “魔犬フェンリル”もまた、強力なテレパシー能力を持っていた。ヴェロニバルのテレパシー能力はB1級。相手はA3級。出力とし…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 6

街ではアルカディアのメンバーが警察を協力させて避難誘導を行っていた。 「みなさーん、こっちでーす!」 「落ち着いて非難してくださーい!」 何しろ魔犬の移動は速い。事情を知らされている誘導係の方が、むしろ市民よりも焦っていた。しかし表面上は落ち着きを保たねばならない。自分たちがパニックを起こしては共倒れだ。 待機準星の1人ヴェロニ…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 5

砕組の会議室では、司令官ヴェネシン・ホーネット、第二分隊長ラプソディア・カッセル、第四分隊長ハービス・カチュラム、第六分隊長ラドル・スネイク、第十六分隊長キム・ヨーカムが揃っていた。 「ネイルは?」 「連絡がつきません。」 ハービスが答えた。 ヴェネシンは顔をしかめた。 「チッ、あのボケが・・。こんなときに。いや、こんなときだ…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 4

「おい、どういうことだよクレア。イチから説明してくれ。」 「言われなくても説明するさ。」 つかつかと歩いて、クレアは空き部屋へ入った。 「あの少年を見ただろう。あれが今回の相手、“魔犬ケルベロス”だ。」 「ケルベロス?」 「流石に私もヒヤッとしたわ。サイコキネシス、テレパシー、予知能力。それぞれを高い出力で兼ね備えた、危険な相…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 3

それから数日後の昼のこと。 「ギャアアアアッ!!」 外で悲鳴が聞こえた。 レックスとサムは急いで外へ出た。 そこに1人の裸の少年が立っていた。おそらく10代後半。口を中心に顔中血まみれで、顎からはボトボトと血が滴っている。両手にもべっとりと血がこびりついていた。 彼の足元には、血だらけの女性が横たわっていた。 「た・・・助け…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 2

「そもそも善悪って、そう割り切れるもなのかよ?」 レックスは即座に答えた。 「そう、それが理由の1つ目だ。」 サムは頷きながら言った。 「善悪は割り切りにくいだけでなく、流動するものでもある。予知にしろ善悪判断にしろ、善人だと言うことで善良さが増すこともあるし、悪だと非難することで悪辣さを増すこともある。特に、超能力による予言や…
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「千里」 第十七話 魔犬再来 1

1970年、夏。 アルカディア重幹部フィリップ・ケストナーの引退による混乱その他も概ね落ち着き、組織は順調に回っていた。 北米のクレアの事務所では、所長が不在な中、サムとレックスが留守を預かっていた。 「客、来ねーなあ・・。」 レックスがぽつりと呟いた。 ここ1ヶ月、事務所への依頼者は無い。 「今来ても困るが。」 「ハハハ…
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「千里」 第十六話あとがき

◆ ◆ ◆ 何だか随分と長いこと続いていたような第十六話、これにて終了です。 「千里」の話にも関わらず彼女の出番や話題が少ないので、どちらかというとアルカディアシリーズで発表すべき話だったのかもしれませんが、そういうことを言い出すと第十一話からずっとクレアが主人公っぽくないことがバレてしまうので、密に、密に・・・。やはり…
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「千里」 第十六話アナザーエピソード

次の瞬間、景色は一変した。 無人の大地に薄暗い空。太陽も月も星も無い。 互いに宙を浮かんでいて、その距離は30メートルほど。 千里の手足はスラリと伸びて、その右手には黒い靄が集まっている。 それぞれの服装は黒と白。 千里は漆黒のシャツに、スリットの入ったミニスカート。自分とジュエルの他に誰もいないこの世界では、男の目を気にせず…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 29

カタストロはジョナルたちのところへ歩いていった。 「なるほど、何かやるだろうとは思っていたが、それを練習していたのか。」 サイコガンのバリエーションの1つ、追尾式。それによる奇襲攻撃。 生半可な奇襲攻撃なら第一分隊の敵ではなかった。しかしジョナルと生徒8名は、これ一本を狙っていた。ただひとつの狙いに絞った特化戦術。それが砕組の最強…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 28

受験者たちが集められ、カタストロが参加賞を配った。 それぞれの受験者に対する詳細な評価レポートと、おまけとしてドーナツの詰め合わせ。これらは途中で脱落した者たちには渡されない。 その後、7000点を超えた6名が残された。 「最終ボーナスに挑む人は?」 するとジョナルが即座に手を挙げた。 「やります。」 ヴェネシンとネイルはギ…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 27

「ジョ~ナ~ル~!」 イウィーが鬼のような形相で詰め寄った。 「うわあああ! せっかくの美人が!」 「コーク・スクリュー・ナッコォ!」 「がふっ!」 聞く耳持たないイウィーから放たれた一撃がジョナルの腹に命中した。 イウィーの超能力により、ジョナルの腹に激痛が走る。 「うごおおおお・・・」 悶え転がるジョナルだが、イウィ…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 26

それから1ヶ月が過ぎ、結果発表の日となった。 ジョナルが育成試験において獲得した点数は、3500点中の3355点。受験者の中ではダントツの最高点である。最初の頃は、指導する8人に舐められていたが、何をしたのか途中からジョナルに従うようになり、中間チェック、最終チェック、いずれも高得点。最初の頃とは見違えるように、よくジョナルに従ってい…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 25

「もっと危機感を持っちゃくれませんかね。あんたは強すぎるから、“リバース”すら敵じゃないのかもしれないが、奴らを甘く見ない方がいい。」 「それはクレアちゃん、危機感が足りないのは、あなたも同じことだよ。」 ジュエルは呑気な顔のままギガマイルを見つめる。 「クレアちゃんは史上最大の千里眼だけど、その能力を殆ど使いこなせていない。現時…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 24

その頃、ギガマイル・クレッセントはミセス・ジュエルに抱きつかれていた。 「やっほー、クレアちゃん。」 「放していただけませんかね、首領。」 「いーじゃん、、いーじゃん、どーせ暇でしょ? 私と遊ぼうよ。」 「断ったら殺すのか?」 「ああん、またそんなこと言ってー。クレアちゃんのいけずー。」 ぷうと口を膨らませて、ジュエルはつん…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 23

アドバイザーのキアラ・テスタロッサは、地面に寝転がっていた。今までは割と人も来ていたのだが、これからは介入禁止なので仕事は無い。 彼女は自分の赤い髪をいじくりながら、ごろごろとのたくっていた。 「なーんか手持ち無沙汰ーっていうか、こーいうのも悪かないかーな。」 暇であることに文句を言わない。ゆっくりとした時間を愛でるキアラだった。…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 22

育成試験の期間は4週間。受験者35名は、それぞれ8名のサイコキノを訓練し、部隊として育成する。 1週間ごとにチェックが入り、500点ずつ3回が配分されている。最終チェックにおいて2000点の、計3500点。 基本的に介入は無しだが、サイコキノの訓練だ、事故が起こらないとも限らない。ギガマイル・クレッセントによる予知が、ここで重要な役…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 21

ジョナルはイウィーに追われていた。 白組の施設で、走ってはいけない廊下を走っていた。 「ジョ~ナ~ル~!」 「うわああっ、あのしおらしいイウィーはどこに?」 ちょっと本気で逃げながら、ジョナルは角を曲がった。 「らしくないって言ったのはジョナルよ。お望み通り、こうして完全復活してやったわ。何なの、あの点数は! わ、わたしの唇、…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 20

統率の試験は軽い筆記テストと、数々の実技を以って行われる。 実際に部隊を指揮し、戦闘を行う試験が幾つかある。戦闘以外にも、号令、救護、炊飯、進軍・・・様々な必要事項を、つつがなく行えるかどうかをチェックされる。 戦闘実技の1つに、コムザインが試験官を務めるものがある。 1対1ではなく、多人数同士の戦いだ。 「8名の部下を指揮して…
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「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 19

そこへラドル・スネイクがやって来た。 「あ、ラドルさん。」 ウロイの顔は、すぐに昼用に切り替わる。 「よー、ウロイ。こっちはイイ感じだぜ。」 「点数比なら2723点必要じゃないんですか?」 「失点は1000点に達していない。まだまだいけるね。」 ラドルは自信ありげに笑みを浮かべた。ふふんと鼻で笑い、唇を曲げて見せた。 「こ…
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2022年10月
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