| タイトル |
日 時 |
「スロウ剣術」 牛夫 18
「“スロウ”?」
ビルの屋上の上で、結花は柵に体を預けて翔の話を聞いていた。
「そう、それが玄田さんの超能力。朋萌ちゃんから聞いたときは身震いしたぜ。」
「どういう能力なの?」
「簡単に言えば、自分を遅くするって能力。」
「・・・何ソレ。」
結花は複雑な表情を浮かべた。
「仮にそういう能力が存在するとして、完全なデメリット能力・・・。とても翔が興奮するほどじゃないと思うけど?」
「そう思うよな。俺も思った。だがよ、極めればこれほど恐ろしい能力も無いぜ?」
「他のものも遅く出来る...
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2012/05/19 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 17
信じられない光景だった。
あまりの事態に、小徹は素人のように隙だらけで突っ立っていた。おそらく、10秒ほど。
我に返った彼は、これまでの人生で一番の狼狽ぶりを見せて飛び退いた。
「あっ、あうっ、うあああああっ!!?」
よろけて転びそうになり、それが焦りを増幅する。そこに達人剣士の面影は無い。
それだけの事態が起こっていた。
「何をそんなに慌てている? 剣士の誇りを捨てても、命まで捨てるつもりは更々無いんだが。」
牛夫が、淡々とした声で言う。
「ききき貴様、どういうことだ! どうい...
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2012/05/18 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 16
その夜のことだった。
海辺の砂浜に、草薙小徹の姿があった。着古した袴、腰には真剣。
「来たか。」
歩いてきたのは袴姿の玄田牛夫。
月と星の光が、両者を不気味に照らし出す。
「弟子同士の戦いは負けたが、おれは貴様に負けたとは思ってない。雌雄を決するのは直接対決の他には無い。」
小徹は大会のときとは比べ物にならない眼光で牛夫を睨んだ。
それに対し牛夫は、かすかに笑っていた。
「変わってないね、君は。・・・40年前のまんまだ。」
「おれは昔から武士道に沿って生きてきた。それよりも玄田...
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2012/05/17 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 15
(世界が美しく見える。このまま時間が止まってしまえばいいのに。)
弟子たちの喜びが、観客たちの歓声が、まるで光の洪水のようだ。
その中で牛夫は達成感と充実感で満たされていた。
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2012/05/16 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 14
「ころしてやる。」
誰にも聞かれないくらいの小さな声で、雄太は再び憎悪の言葉を口にした。
(先生は、こんなことは慣れてると言った。)
(子供だから仕方ないとも言った。)
(でも、許すとは言ってないですよね?)
雄太は被った面の中で嗜虐的に笑った。
その直後に試合開始の合図が成され、岡崎の突きが来る。
(遅ぇよ。)
それは高校生としては驚異的な速さの突きだったが、雄太は竹刀の先端を見つめたままかわした。
直後、自然に面を入れていた。特に入れてやろうという気持ちもなく、ただ体が勝手...
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2012/05/15 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 13
決勝戦の相手、岡崎(おかざき)を前にして、雄太は試合前の出来事を再び強く思い返した。
師範と一緒に廊下を移動していたとき、見知らぬ女子高生が走ってきてぶつかった。
『ちょっと、邪魔よ!』
『・・・ぶつかってきたのは、そっちだろ?』
『やだ、何この子、生意気〜。・・あ、もしかしなくても今日の対戦相手じゃん?』
『だから?』
『あんたら有名よ。カッコだけのチャラ男に、泣き虫のいじめられっ子に、元柔道のデブ、剣道オタク。そしてあんたは在日チョーセンの弟子? 揃ってキモッ!』
『・・・!!...
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2012/05/14 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 12
先鋒は松沢。激しい打ち合いの末に小手を取られ、そのまま時間切れで負けた。
終始、冷静な攻めだった。攻めて攻めて、相手を防御一辺倒に回らせた。
(松沢さん。軽薄そうに見える君が、実は努力家だなんて、どれだけの人が知ってるだろうね。)
(かっこいい自分を演出する為なら努力は惜しまないって、入部するときに言ってたね。)
(その言葉は嘘じゃなかった。練習メニューを少しも休まずにこなし続けた。)
(人の何倍も努力しようとしても、破綻が来るもの。人一倍の努力を弛まずに続けることが出来るのが松沢さん...
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2012/05/13 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 11
顔の痣の理由を、土屋から聞き出した。
どうやら彼は日常的にカツアゲに遭っているらしく、勇気を振り絞って抵抗を試みたものの、散々に殴られて金も奪われたということだった。
『け、警察に、い、言えば、事件にして、くれると思い、ます。でも、警察は、金は取り、戻してくれても、プライド、までは、取り戻して、くれない、です・・・。』
土屋は半ば泣いていた。
『強くなりたい、です。ボクは、強くなりたい、です。』
泣きじゃくる彼の手を、3人は殆ど同時に取って、強く握り締めた。
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2012/05/12 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 10
放課後、教室で待っていた雄太のもとに、大河内と木崎が現れた。
雄太は2人の手を取って、楽しげに微笑んだ。
『やってくれるか! ありがとな!』
『ありがとうございます。あと、厚かましいかもしれませんが、玄田さんに剣術の指南をお願いしたいのですが。』
『もちろんだよ。先生が断るはずがない。でも・・・』
こういうことは早めに言っておいた方がいいと思い、雄太は意を決して質問した。
『大河内くんは、いいの? その・・・』
『あ、柔道か? そりゃ未練はあるさ。けれど元々おれは、心身を鍛える為に...
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2012/05/11 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 9
驚き目を見開く雄太を前に、木崎は話を続けた。
『ぼくも剣道やっていたんですよ、中学時代。柿本くんの剣道部にも、偵察に行ったことがあります。ぼくは剣道の実力もありますが、それよりも人の強さを見抜く才能に長けていましてね。体つきやフォームを舐めるように観察した結果、必ず柿本くんは出てくると踏んでいましたよ。しかし一年生のときも二年生のときも出てこない。挙句の果てには剣道部を辞めてしまった。・・・ぼくはね、おかしいと思ったことは納得いくまで調べ上げないと気が済まないのです・・・昔からね。だから偵察係...
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2012/05/10 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 8
転機が訪れたのは、10月に入って最初の月曜日だった。
その日の朝、2人の男子生徒が雄太の席で待っていた。
『おう、柿本! お前、剣道やってんだって!?』
声の大きい大柄な少年。3組の大河内(おおこうち)だ。確か柔道部に所属していたはずだ。
『大河内、くん?』
雄太が怪訝な顔をすると、大河内は笑顔で手を差し出した。
『おれたちと一緒に、剣道部を作らないか?』
『ええっ? ええと、大河内くんは確か柔道部だったはずじゃ・・・?』
すると大河内の表情が曇った。
そして隣にいた痩せた少年...
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2012/05/09 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 7
1999年の9月。大賑わいだったノストラダムス騒動も収まり、柿本雄太は高校一年生の二学期を静かに送っていた。
雄太の入った高校は剣道部が無く、その中で彼は目立つことなく集団に埋没していた。成績も中くらいで、人当たりも悪くなく、良く言えば平穏な毎日を送っていた。
特に内容も無く、すぐに忘れてしまうような会話を繰り返す、平凡な日常。当たり前の日常。それは決して苦痛でもないけれど、楽しくもなかった。
苦痛に苛まれるよりは上等だし、これが楽しい人間も多いのだろう。安心感という意味では、なかなか得が...
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2012/05/08 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 6
「・・・先生。・・・玄田先生!」
「・・・・・・あん?」
不意に呼ばれて、牛夫は我に返った。
目の前には、愛弟子たる柿本雄太の姿がある。
「ええと・・・今って、1971年・・・? あれ・・・?」
「しっかりしてください! 今は2000年、ミレニアム! そして今は全国大会の真っ最中! もうすぐ決勝戦! ・・・ちなみに僕は、柿本雄太ですよ?」
高校二年生になった雄太が、低くなった声でまくし立てる。
「ああ、わかってるよ。僕の一番弟子だ。」
牛夫は照れ笑いをして立ち上がり、大きく深呼吸...
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2012/05/07 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 5
教師にならないかと誘われたのは、大学を卒業した直後のことだった。
誘ってきたのは、高校時代からの友人である天道朋萌(てんどう・ともえ)と、彼女の部下だという油煙朝生(ゆえん・あさき)という男だった。朝生も高校時代に同じクラスだったらしいが、牛夫の記憶には無かった。地味で目立たないからでしょうと、本人は何故か照れながら言っていた。
どうやら母校の鳩中(はとなか)高校で教師になることが決まったらしく、一緒に仕事しないかと誘いに来たようだ。
教員になるには免許や資格その他が必要なのではないか・・...
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2012/05/06 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 4
次第に牛夫は学生運動に嫌気が差していった。幾つかの心に引っかかる事件の数々もそうだが、平常時においても学生運動グループの態度に違和感や嫌悪感を覚えることが多くなっていた。
その中でも、男性たちの女性に対する態度は目に余った。男性の全てではないが、かなり多くが女性のことを低く見ており、小間使いのように扱っていた。炊事や洗濯は女性が行うのが当たり前のようになっており、重要な議論が女性抜きで行われることがしばしばあった。「活動やってる女は嫁にしたくない」などという言葉を何度も耳にした。
女たちの不...
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2012/05/05 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 3
60年代というのは、まだ学生運動が盛んな時代だった。
牛夫も、積極的ではないにしろ、学生運動と関わりを持つことになった。彼が入った大学は、どこもかしこも学生運動で盛り上がっていて、熱のある勧誘を断れる雰囲気ではなかった。
それになりに興味はあったので、関わりを持つこと自体はやぶさかではなかったが、積極的に中へ入っていくのは避けるようにしていた。その判断は、おそらく正解だった。
慎重に、冷静に、注意深く様子を窺っているうちに、この地域で運動を行っている中心人物に、六道刃や草薙小徹がいるという...
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2012/05/04 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 2
牛夫が剣道を始めたのは、6歳のときだった。
母方の実家は六道(りくどう)といい、母の伯母が頭首を務めていた。彼女の友人に草薙水霊(くさなぎ・みずち)という剣士がいて、その草薙道場に通わされたのだ。
牛夫と歳の近い子供は3人・・・六道刃(りくどう・じん)、綾小路草栄(あやのこうじ・そうえい)、そして水霊の孫である草薙小徹(くさなぎ・こてつ)だった。そのうち六道刃は根気が続かずに辞め、綾小路草栄も勉強に力を入れるとかで辞めていった。そのときには牛夫は中学生になっていた。
小徹は何かと牛夫を見下...
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2012/05/03 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 1
玄田牛夫の父親は、朝鮮に生まれた。苗字は一文字、名前は二文字。割とよくある、平凡な名前だ。
彼は20歳のときに、村にやってきた日本軍に無理やり連れて行かれた。共に暮らしていた両親と弟とは、それっきり死ぬまで会えなかった。
日本に連れてこられた彼は、殴る蹴るの暴行を加えられ、汚らしい罵声を浴びせられた。餌のような食事を与えられ、1日16時間も重労働を強いられた。
彼にとって最も屈辱だったのは、名前を変えさせられたことだった。自分で日本人らしい名前を考えろと言われ、拒否すると暴行を加えられた。...
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2012/05/02 00:00 |
「スロウ剣術」 牛夫 プロローグ
自分の選択は正しかったのだろうか?
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2012/05/01 00:00 |
進撃の巨人7巻 簡易感想
惜しいキャラを亡くした・・・。
畜生どうしてこんなことに・・・。
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2012/04/30 00:00 |