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周りを見渡せば、あちこちに死体が転がっている。 手のもげたもの、足の無いもの、首の吹っ飛んだものもある。 それらを砂埃と、ジャングルの木々と、音を立てて飛び交う蠅が覆っている。 血と弾薬の匂いにむせかえる。人々を撃ち殺した銃弾と銃と薬莢、そして人々の肉体から吹き出した赤い血飛沫の匂いだ。 そして、死体から発せられる吐き気を催す匂い。 最悪の匂い。 腐った肉の匂い。 涙が出る。鼻汁が出る。そして咽の奥からこみ上げてくるものがある。 私は反吐を吐いた。 しこたま吐いた。 反吐が咽と鼻の奥にこびりつき、いやらしい酸っぱい匂いがする。そしてそれが死臭と混じり合い、更におぞましい匂いになる。 そしてまた反吐を吐く。 もう吐くものがないところまで吐く。 ここはどこだろう。 ジャングルに囲まれた平地。 そこに、焼け崩れたか吹き飛ばされたか、家の残骸が連なる。 あちらこちらに散らばった死体は、触れればぐちゃっと音を立てて崩れそうだ。 私はさっきまで何をしていたのだ。 人を殺していたのか。 もう一度吐き気がこみ上げてくる。 べえっと胃液を吐き散らすと、私は口をすすぎに川へ向かった。 近くを流れていた川には、やはり死体が浮いていた。死体から溶け出した脂が水面に浮き、太陽の光を受けてぎらぎらと光っていた。 私は浮かんでいた死体を押しのけて、川の水で口をすすいだ。 死体の脂が口元にこびりつき、ぎらぎらと光る。 水面に映る私は、狂い荒んだ野獣の目をしている。 死臭が鼻からこびりついて離れない。頭の芯が音のでない早鐘をこれでもかといわんばかりに鳴らしたかのように痛く、そして不快だ。 このおぞましい匂いが精神にこびりついて離れない。 ふと顔を上げると、景色が変わった。 夕闇の中、一人の少女が横たわっている。 まだ生きているようだ。 そうだ。 私はあの少女を助けなければならない。 私は少女のもとへ駆け寄った。 少女を抱き起こしたとき、私はこれまでに感じていたおぞましい腐臭がすっかり無くなっているのに気付いた。 腐臭 了 |
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