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エスパーの存在が社会的に顕在化してから数年後の話。 2009年の4月から始まったサイコキネシス航空は、エスパーの力で機体を浮かして乗客を運ぶというものだ。エネルギーコストや排気ガス問題の解決策として考案されたもので、ここ半年は順調に進んでいった。 「みなさんこんにちは。こちらサイコキネシス航空19141115便です。わたしは副機長を務めさせていただいている草薙 叶香(くさなぎ・きょうか)と申します。」 童顔の彼女が頭をぺこりと下げる。可愛らしい笑顔だが、内心は不安でいっぱいだ。 (あ〜、どうしよう。わたし一人で上手くやれるかな〜?) 機長はフライトの直前で体調が悪くなり、急なごたごたの中で予備の人員も配備できず、彼女一人で飛行機を動かすことになったのだ。 (もう、機長もこんなときに・・。) 一応、エスパーの力だけでなくエンジンも付いているが、コストを相当削減したもので、それだけでは機体を支えきれない。 「フライト中は、座席にしっかり座って必ずシートベルトを着用して下さい。また、他のお客様及びスタッフにご迷惑をかけないで下さい。お願いいたします。わからないことがありましたら、近くのスタッフにご相談下さい。それでは、快適な空の旅をお楽しみ下さい。」 救命胴衣の説明なども終わり、いよいよフライト開始となった。サイコキネシス航空は、通常よりも滑走路が短い。 叶香の能力は正確にはレビテーション(浮遊)を兼ね備えている。一般的なサイコキネシスだけで飛行機を飛ばすには、相当のレベルが必要なのだ。 フライトは途中までは順調に進んでいった。 「あ・・・・ん・・・・・・」 しかしここにきて、叶香にかかる負担の大きさが問題となった。元々、超能力というものは精神状態に左右される。自分一人だけで機体を動かすのは初めてであった彼女の精神的な負担は相当のものであった。更に、いつもより若干気流が乱れていたのも災いした。 「あはあ・・・・・・アん・・・・・」 それでも今のままなら何とかギリギリでフライトを終えることが出来そうであった。過度の負担が彼女の全身の感覚を鋭敏にしていて、お腹のあたりがじんじんしてきたが、使命感とプライドで持ちこたえた。 しかし、事態は彼女の思わぬ展開を見せた。 「おい、コクピットから変な声が聞こえるぞ?」 「さっきから機体もがたがたいってるし、これってやばいんじゃないのか?」 乗客を落ち着けようとするスタッフの手をくぐり抜けて、数人の男たちがコクピットへ侵入した。 (えっ?!) どうして鍵がかかっていないのか。叶香はハッとした。 (しまった、さっきトイレに行ったとき・・!) フライトと自分の体の変調に気を取られて、扉に鍵をかけるのを忘れていた。 (・・・!) 彼女は顔を真っ赤にして、そして青ざめた。 男たちは息を荒くして叶香を見つめていた。 「・・で・・出て行って下さい・・。」 叶香は息をハァハァと吐きながら言った。しかし男たちはむしろ彼女に近寄ってくる。 「だ、駄目です・・! 今ギリギリなんです! わたしの集中力が切れたら、この飛行機、落ちちゃいます!」 怒鳴ると体が更にうずく。彼女は熱っぽい瞳で哀願した。 「お願い・・・戻って・・・」 野獣のように目をぎらぎらさせた男たちには全てが逆効果であった。彼らはほぼ同時に叶香に襲いかかった。 「きゃあっ!」 超能力の使いすぎで敏感になった体を、男たちが容赦なく触る。 「・・あ・・・や・・・・やめ・・・・」 彼女の体がひくつくと共に、機体ががくんと音を立てる。 「ひ・・・飛行機が落ちたら・・・あなたたちも・・死んじゃうんですよ・・?」 「わかってる、それでもやめられないんだよお〜!」 「だって、こんな美味しそうなごちそうを目の前にして、黙って見てらんねえって!」 「そんな、やめて、やめて、やめて、ああ、ああ、ああ、落ちる、落ちる、 落 ち ち ゃ う 〜 ! 19141115便は墜落した。 「もう、とっさに念力で浮かしたから良かったものの、一歩間違えれば大惨事だったんですよ?!」 「ふあ〜い。」 「すいませ〜ん。」 海の水にどっぷり浸かって頭を冷やした男たちは、しょぼくれて謝った。 もしも通常の航空機と同じように亜音速で飛行していたら、助からなかっただろう。 「まったくもう・・。」 叶香は海水で体の火照りを冷ましつつ、溜息をついた。 了 |
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またまた悲劇的な結末かと思いきや…、こういうのも楽しいですね。 |
すずな 2009/01/16 00:29 |
すずなさん、こんばんは。 |
アッキー 2009/01/16 00:39 |
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