佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 泥沼 (後編)

<<   作成日時 : 2015/01/31 00:05   >>

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◆ ◆ ◆



からかわれるのが恐いくせに。
人から注目されるのが恐いくせに。
変化が恐いくせに。
未来が恐いくせに。

どうして私は地下デュエルなんかしてるんだろう。
これが違法だとか、そんなことは頭から飛んでいた。



「俺のターン、ドロー! 《二重召喚》で、《プロミネンス・ドラゴン》2体を召喚! ロックを組んでやったぜ、いやっほう!」

この人、テンション高い。
チンピラ風なのが恐い。

「へへ、ターンエンドだ子猫ちゃん! ファイヤーボールを食らいな!」

「きゃあっ!」

私:LP8000→7500→7000

こ、子猫ちゃん・・・?

「へっへ〜、いい声で啼いてくれんじゃねえの子猫ちゃん?」


相手の男:LP8000→7500→7000

「おぶああ!?」

《プロミネンス・ドラゴン》 (破壊)
《プロミネンス・ドラゴン》 (破壊)




「おお、おいおい、あの能力なんだ!?」
「確か、火王杯のベスト8だかあたりに残ってた奴が、こんな能力だったような・・」
「違えよ、ありゃ平田敦って男だ。能力も違う・・・。」
「まあ彼女の能力レベルはボクと同じで4だからね・・・対戦成績も、今のところ、9勝7敗。」
「は!? アルドに、えーと、4割以上も勝ってんのかよ!?」
「ひゅう〜、こりゃ今のうちからツバつけとかねえとな!」
「くかか、お前にゃ無理だろ。」
「何をう?」



「私の、ターン、ドロー。」

地下デュエルは、衝撃増幅装置のせいで、500や1000ダメージでも並大抵じゃない。
さっきは思わず叫んでしまった。

「あ、えと、《魂吸収》発動。あ、《フライファング》を召喚して、ダイレクトアタック・・」

「ふらいふぁんぐ?」

あまり使われないカードだからだろうか。
疑問を発した相手に、私はカードテキストを提示した。


フライファング レベル3 風属性・魚族
攻撃力1600 守備力300
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えたバトルフェイズ終了時、このカードを次の自分のスタンバイフェイズ時までゲームから除外する。



「何でそんなカードを・・・うおっ、痛ええ!」

相手の男:LP7000→5400

私:LP7000→7500


「あた、ターンエンド・・。」



「ノロシちゃん可愛ええ〜!」
「焦るな焦るな! リードしてるよ!」
「相手びびってるよ!」



ノロシというのは、“風堂深泥”の漢字の一部分を取った名前。
いわゆるリングネームというやつだ。

「そんなわけわからんデッキに負けてたまるか! ドロー!」

れっきとしたデッキではあるんだけど・・・。
でも、説明してる暇は無いし、出来そうにもない。

「てめぇの場は、がら空きだぜ子猫ちゃん! 《ボーガニアン》でダイレクトアタックだ!」

「きゃああ!」

私:LP7500→6200

「う・・・?」

相手の男:LP5400→4100

《ボーガニアン》 (破壊)


「うおおおお!? 何その能力、どうなってやがる・・・く、くそっ、《光の護封剣》を発動して、ターンエンド!」


「私のターン、ドロー。あ、スタンバイフェイズで、《フライファング》が戻ってくる・・・きます・・・。あ、で、《エアジャチ
》を召喚して、効果を使います・・・。」


エアジャチ レベル3 風属性・海竜族
攻撃力1400 守備力300
1ターンに1度、手札から魚族・海竜族・水族モンスター1体をゲームから除外する事で、
相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する。
その後、このカードを次の自分のスタンバイフェイズ時までゲームから除外する。



《光の護封剣》 (破壊)

私:LP6200→6700



「ダイレクトアタック・・・」

相手の男:LP4100→2500

「うげえええ! これヤバいやつじゃね!?」



私:LP7200、手札2
場:
場:魂吸収(永続魔法)、伏せ×1

相手の男:LP2500、手札2
場:
場:




ターンを終了して、状況は、こうなっている。


「やべーやべーやべー。俺のターン、ドロー!」

優勢だが、まだ油断はできない。

「こうなったら待ちの一手だ、《平和の使者》を発動、モンスターをセットしてターンエンド!」

攻撃力1500以上は、攻撃できないか。
それなら。

「私のターン、ドロー。」


私:LP7200、手札3
場:フライファング(攻1600)、エアジャチ(攻1400)
場:魂吸収(永続魔法)、伏せ×1

相手の男:LP2500、手札1
場:伏せ×1
場:平和の使者(永続魔法)



「ええと・・・《スカイオニヒトクイエイ》召喚して、ダイレクトアタック・・」


スカイオニヒトクイエイ レベル3 風属性・海竜族
攻撃力600 守備力300
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。このカードが直接攻撃を行ったバトルフェイズ終了時、
このカードを次の自分のスタンバイフェイズ時までゲームから除外する。



「うげええ!」

相手の男:LP2500→1900


罠カード《破壊指輪》で《フライファング》破壊・・」


破壊指輪 (罠カード)
自分フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊し、お互いに1000ポイントダメージを受ける。



「自分のモンスターを破壊するだと!?」


私:LP7700→6700

相手の男:LP1900→900→0


「うおおおおおおおおおおお!!?」



「おおおい、圧倒的じゃねえか!」
「こりゃもう結婚するしかねえな!」
「だから、お前にゃ無理だって。」
「何をう。人生わかんねえもんだぞ。」
「言ってろ。」



◆ ◆ ◆



その日は顔見せということで、3回だけデュエルした。
惜しまれながらデュエル場を後にして、私の気分は晴れ晴れとしていた。

みんなから称賛されるのって、こういうことなんだな。
チヤホヤされるのって、いいな。

本当に・・・


「泣いてるのミドロ?」

永遠さんが顔を覗きこんでくる。
覆面してて良かった。みっともない泣き顔を見られない。

「あの、どうして、私を地下デュエルに誘ってくれたの?」

「特に理由は無いよ・・・気晴らしに、なるかなーと、思って。この程度で、コンプレックス、払拭されると、思ってないし、そんな意図、さらさら、無い、よ。」

永遠さんの目つきは、相変わらずゾッとするような深さがあった。
覗き込んだら、たちまち異次元へ吸い込まれそう。
この人からすれば、私の心なんて、水溜りレベルだろう。
抱えている悩みだって、せいぜい沼。深泥だから泥沼か。
ぽっかりと開いた、暗くて寒い宇宙空間。それが永遠さんのイメージだ。

「つまり要するにボクはね・・・人間は心、っていう、言説が、あまり、好きじゃ、ないのさ。それは、例えば、体は男でも、心は女だって、人がいたら、その人は、女湯に、入る権利が、あるのかな。外見が、全てという、言説も、同じくらい、好きに、なれない、けど、外見を、ないがしろに、するのは、視覚障害者、だけに、許された、権利だと、思うんだ。」

お喋りな彼女だが、いつもと様子が違う。
いや、これが本来の永遠さんなのか。

「外見を磨くということは内面を磨くということと同じだけ尊重されることで外見で人を見るのも内面で人を見るのも等しくエゴイスティックな価値観で片方がヒューマニストぶって相手を非難するのは良くないと思ってる・・・けれど、だったら、容姿に恵まれない人、自分の望む性別じゃない人は、どうすればいい、のか。それで、ね。」

永遠さんは、清楚な笑みを浮かべて、私の手を取った。

「とりあえず気晴らしして・・・それから、考えようと、思うんだ、よ。」

そのときの彼女は、泥沼に落ちていた私を掬いあげてくれた、女神のように思えた。
童話に出てくるやつだ。金の斧、銀の斧、鉄の斧。

この童話は、「正直者は得をする」なんて教訓ではない。
斧を人間の比喩と見れば、鉄の斧は冴えない女。金の斧や銀の斧に、見劣りする。
きこりの男は、金銀を大事にして、鉄の斧を使い潰すだろう。
冴えない女に良くしたら、可愛い女や綺麗な女と知り合えた。後は言わずもがな。

けれど、この童話の本質は、更に別のところにあると思う。
きこりの男は金の斧や銀の斧と出会えたが、鉄の斧だって同じことだ。
もちろん金銀だけなら、鉄の斧は惨めになるだけ。
でも、鉄の斧は女神とも出会えている。

女神は、きこりの相手じゃない。
冴えない鉄の斧でも拾ってくれる、優しい人なんだ。
そして、金銀に劣っていることを誤魔化さない。意地が悪くても欺瞞は無い。

私が沈んでいたのは、泉ではなく泥沼だったけど、そこにも女神は手を差し伸べてくれるんだ。





   泥沼   完

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2015/08/31 00:11

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「千香デュエルは違法なのか」
ゴリーレッド「漢字ギャグはやめなさい」
火剣「チンピラ風の男は怖い。これは官能サスペンスの演出でよくやる手だ」
コング「真面目なスーツ姿の紳士が10人歩いてきても飲み会かなと思うが、いかにも不良っぽいチンピラ風な男たちがゾロゾロ歩いてきたら、女子は怖がる」
火剣「子猫ちゃんとか言いそう。馴れ馴れしさも怖さを増幅させる」
ゴリーレッド「顔が見えない仮面舞踏会の怖さと素晴らしさが見え隠れする」
火剣「ミドロを男たちが奪い合う相談してるぜ」
コング「衝撃増幅装置、大事でーす。きゃああ!!」
ゴリーレッド「一人だけ違う話をしている」
コング「そんなことはない。教訓その一。スキー場でナンパは禁物」
火剣「なぜだ?」
コング「顔が見えないからみんなイイ女に見える」
ゴリーレッド「コングの人間じゃない攻撃発動か」
火剣「ミドロはもしかして、勝手に自分でダメだと思い込んでいるタイプか?」
コング「ダメなら仮面してもダメだろう。チヤホヤされたり、賞賛を浴びることはない」
ゴリーレッド「冷たい言い方だな」
火剣「でも永遠の言葉は重い。『女はハート』というのが必ずしもヒューマニストとは限らない」
コング「女はハート? キリンの口癖だ。ぐふふふ、似非ヒューマニスト・・・NO!」
ゴリーレッド「バックドロップ!」
コング「だあああ!」
火剣「外見も内面も磨くのは自分のためだ。そして強い心でないと心が傷だらけ血まみれになる世の中だ。強い心を鍛えるのは大変だが、社会が変わるのを待つわけにはいかねえ。闘いを挑むしかないか」
ゴリーレッド「あとは人の心を救うこと。本人が心の底から『救われた』と感じないと自己満足になってしまう」
火剣「永遠は凄い。美しい物語だった」
火剣獣三郎
2015/01/31 16:28
>火剣さん
正体を隠して地下デュエル。生まれて初めて男たちからモテているミドロです。
途中からアルドにシナリオを乗っ取られ、展開から結末、テーマまで変更され、重い話なのに爽やかになりました。アルドの手腕に脱帽。

八武「千香と地下でデュエルしたい。」
山田「お前は普通にデュエルしても逮捕レベルだ。」
八武「だから地下デュエルなのだよ。」
神邪「僕が誘われたのも地下デュエルでしたが、アルドは色々ツテがあるみたいですね。」
佐久間「人脈の広さでは神邪も負けてない。」
神邪「そうでしょうか。」
維澄「仮面デュエリストか。ミドロの叫び声は可愛らしいね。」
佐久間「お前もミドロ狙いか?」
維澄「気が合いそう。」
佐久間「アブねーな。」
維澄「何が。」
八武「声が可愛ければ、仮面したままで・・・ふむ。」
山田「こいつこそ危ないな。」
八武「いや、安心したまえ。私は改造手術で美少女にしてからレイプする。」
山田「やっぱり危ない。」
維澄「整形でなく改造なんだ。」
神邪「内面を磨けてないと、幸福を感じられない。そういう意味でハートが大事なんですね。」
佐久間「ちなみに山田もゴリーレッドも、それを“正しい”と主張したことはなかったはずだ。」
山田「そうだったっけ。覚えてない。」
佐久間「つまり、あくまで好みとして述べている。そこが誠実なところだな。」
八武「なるほど。アルドも正しさを押し付けるようなことをせずに、ちょっとした親切として接している。」
神邪「僕も彼女には色々と救われました。」
アッキー
2015/01/31 23:03
白龍「今回のテーマは人と異なるものについてってことですかね。それと、恐怖。」
ツヲ「人と異なるものとはデュエリスト能力、そして容姿の美醜。僕はこの通り目が見えていないけれども美しいものと醜いものの違いは分かってるつもりさ。女の子を傷付ける男は醜い。どこの世界でも紳士は少数なんだろうね。そう言えば深泥ちゃんの話で、酷死病の斑君を思い出したよ。彼も元気でやってるかな。そう思うと改めてデュエルって凄いと思える。」
白龍「デュエルを通じて人の心が繋がったり、救われたり。不思議だけど、不思議じゃない。デュエルにはそういう力があるのかもしれません。しかし、それはデュエルに人が向かい合っているからこそなのかもしれません。ちょうど、金の斧の話を聞いて何を思うのかが人によってそれぞれ違うように、デュエルを通じて感じることも人によって千差万別。」
ツヲ「デュエルによって出会ったアルドちゃんに深泥ちゃんは心救われた。デュエルはいつも人と人とを繋ぐ架け橋であって欲しい。」
白龍「遊星さんの言葉ですね。」
ツヲ「詳細は違ったかもしれないけど、遊星君ならこういうことを言うと思う。」
白龍「金の斧の話は、こういう解釈もあるのかと興味深かったです。そして、救いのあるラスト。」
ツヲ「うん、良かった。ただ、アルドちゃんが言っているように、これで深泥ちゃんの長年のコンプレックスが払拭されるほどではないんだろうね。」
白龍「それでも、今朝の時の気持ちと今の気持ちを比べてみればこの出来事が深泥さんの心に光をもたらしたのは事実ですね。」
ツヲ「そうだね。ちなみに深泥ちゃんのデュエリスト能力は、自分が魔法・罠・モンスター効果によってダメージを受けた時、そのダメージを相手に与え、そのカードを破壊する。レベル4ってところかな?そしてデッキは除外デッキ。どう?当たってる?」
千花白龍
2015/02/15 16:35
>千花白龍さん

今回のテーマは、「ちょっとした気晴らしが、けっこう大事」というところでしょうか。
私は「元気になってからくよくよしよう」という言葉が好きでして、ちょっと元気になる為の方法ということで、ひとつの例を描いてみました。
気力が乏しいときにくよくよしていると、際限なく心が泥沼へ沈み込んでいく負のスパイラル。そこを突破するには、ちょっとしたプラスだけでも大きいんですね。
そんなわけで、爽やかな結末になりました。書き始めたときは、まんま「異質、迫害、恐怖」などがテーマになっていて、憂鬱な結末を見ていたのですが、アルドが展開を変えて、テーマも変わっていきました。

金の斧の童話は、西尾維新が「この話のタイトル『鉄の斧』じゃね?」と言ってたのが頭にあり、風堂深泥を鉄の斧になぞらえて物語を締め括りました。
この手の童話は、まとめにくい物語の締め括りとして、なかなか使いやすいと思うアッキーです。

ミドロの能力“反社/攻星”(ディスコミュニケーション)は、仰るとおりレベル4です。
戦闘ダメージにも反応しますが、破壊効果というわけではなく、ある処理を行った結果が破壊ということです。
デッキは【除外海産物】という、ややマイナーなものです。かつては、わかりやすく【リクル特攻】を使っていました。
アルドとしては、“強制発動する無差別攻撃”という点で、能力的にもシンパシーを抱いていたりします。
アッキー
2015/02/15 22:35

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