佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 13

<<   作成日時 : 2015/11/29 00:00   >>

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その少女は、迷彩服を着ていた。
鈍郎の認識では20歳か21歳のはずだが、3年前と変わらぬ少女のような姿で、そこに彼女は立っていた。
実際、本当の年齢は18歳であったわけだが、中学生に間違われても不思議ではないほどだ。
しかし逆に、何を着ようが、どこへ行こうが、周囲から浮いてしまうのも確かだろう。そういう人種、自分と同類。
「・・・咲村さん?」
記憶を手繰り寄せるまで数秒。
実際に自衛隊の制服を着た彼女を見ていると、何かのコスプレにしか見えない。よく似合っているが、マンガの中から出てきたような、奇妙な非現実感がある。こんな細い体で、自衛隊員が務まるのか心配になった。
もちろん自衛隊員としての規定身長はクリアしているし、実際に制服を着ているからには自衛官なのだろうが、彼女が敵である可能性を考えもしないほどに、鈍郎は心配の方に気を取られていた。
ただ、その可能性を鈍郎が考え付いたとしても、態度には出さなかっただろう。
彼女の瞳は気高く、声と同じに澄んでいた。
(私は?)
自分の目つきは、おそらく濁っているのだろう。鏡を見なくても、気分でわかる。
反戦平和を目指している自分が濁っていて。
人殺しの職業に就いている彼女が澄んでいる。
(何それ。)
結婚してなくても、年収が少なくても、それを恥じたことはない鈍郎だが、このときばかりは大いに恥じた。
「偶然ですね。」
彼女は言った。
(偶然?)
そのとき初めて、鈍郎は違和感を覚えた。自衛隊員というものは、夜間に1人で外出が許されているのだろうか。
休みの日だというのであれば、戦闘服を着ているのは変だ。
「仕事中じゃないの?」
「はい。」
「・・・・・・。」
どっちの意味での「はい」だろうか。それだけで彼女は黙ってしまったので、わからない。
「3年、になるのかな。」
「はい。」
澄んだ瞳が真っ直ぐに見つめてくる。
かつての教え子に無様な姿は見せられないと思うと、息苦しい。
そんなプライドに、しがみつこうとしている自分が、情けない。
「それでは、また。」
やはり仕事中だったのだろうか。彼女は二言三言話しただけで去っていった。
思わぬ再会に心を乱されながらも、鈍郎は去り際に彼女が一瞬だけ見せた微笑に、胸を高鳴らせていた。
しかしそれも、家に戻ったときに忘れてしまった。

兄の死を報されて。




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
コング「迷彩服の女子、萌えるう!」
ゴリーレッド「何と軽薄な」
火剣「20か21歳。でも見た目通り18歳だったのか。ならば少女だ」
コング「美をつけなさい」
ゴリーレッド「気高く澄んだ瞳か」
コング「気高いヒロインのほうがヒロピン時の興奮度は高い」
ゴリーレッド「シャラップ」
コング「嘘、ダメでしょう、こんな気高い人を辱めたらダメでしょう、と胸が高まるう!」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「NO!」
火剣「独身、年収など恥じる要素になんかならねえ。独身で貧しいのが恥ずかしいと言うヤツこそバカ丸出しの人間なんだ」
コング「ドウドウ」
ゴリーレッド「微笑の意味するものは」
火剣「惚れたか」
コング「そりゃあこんな美少女の微笑を見たら押し倒したくなる」
ゴリーレッド「純愛ものを読んだことがないのか?」
コング「なーい!」
火剣「人殺しの職業か」
ゴリーレッド「かつで現役の官房長官が暴力装置と言って大問題になった」
火剣「それは失言ではなく日頃からそう思っていることがバレてしまった」
コング「入る目的は国防、体を鍛えられる、雲隠れ、免許資格がたくさん取れるなど、理由は様々」
火剣「ひと口には言えないな。茶倉の志望動機は何だろうか?」
コング「脂肪もなさそうだし」
ゴリーレッド「細い体でも強いのはナウシカとサン」
コング「サンのヒロピンを邪魔したのはアシタカだ。せっかく屋根から転落したところをバキューンで気を失い、かわいい寝顔を」
ゴリーレッド「チョークスリーパー!」
コング「げえええ!」
ゴリーレッド「そんなヨコシマな目であの名作を見る男がいるとは」
火剣「曇りなき眼も様々だ」
ゴリーレッド「兄の死?」
火剣獣三郎
2015/11/29 13:00
>火剣さん
教え子を卒業した茶倉との再会に、鈍郎の心は・・・?
人が自分を恥じるときというのは、自分の生き方が曲がっていたことに気付いたときなのかもしれません。

八武「コスプレにしか見えない。それ重要!」
山田「死根也とコングは曲がらねえ生き方だな。」
佐久間「九古鈍郎が、萌えという概念について、とても深い理解を示した瞬間であった・・・。」
維澄「あながち間違ってない気がする。」
神邪「純愛と萌えの狭間ですか。」
維澄「純愛7割、萌え3割かな。」
八武「なにっ、萌えとエロスのマリアージュではないのかね?」
山田「曇りまくりの眼だな。」
神邪「結婚や高収入など関係なしに、反戦平和に人生を捧げるつもりで生きてきたのに、気がつけば濁っている。これは辛いです。」
八武「自分より気高く澄んでいる者を見ると、自分の汚さに恥じるところはあるが、心の底から湧きあがる、この汚したい衝動は何だぁー!?」
佐久間「わかるわかる。」
山田「お前ら・・・。」
神邪「美少女は何を着ても似合いますからね。」
山田「ああ、神邪が濁ってしまった。」
佐久間「このくらいで濁ったとは言わない。」
維澄「茶倉の志望動機は未だ不明。だけど、父親がいないと言ってたね。」
八武「ふむ。」
山田「どういうことだ?」
八武「母子家庭と聞いて思い浮かぶのは?」
神邪「未亡人。」
八武「正解!」
山田「・・・おい。」
佐久間「本当の正解は後ほど。」
山田「96年は03年の7年前。鋭郎が死んだのは、このときか。」
アッキー
2015/11/29 23:34

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