佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 24

<<   作成日時 : 2015/12/11 00:00   >>

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幼い頃から茶倉は、借金だけは絶対するまいと思っていた。
ひとたび借金をすれば、利子は雪だるま式に膨らんでいく。元金よりも多くのカネを取られるなど、我慢ならない。
その我慢ならないことを実行したときには、自分の中で何か大きなものが崩れていく気持ちだった。
誇りとか、信念とか、思い入れとか・・・そんなものは、カネあってのものだと痛感した。
(早く返さないと)(早く早く)(ああ)(くそ)(いらいらする)
腹の底で重苦しい塊が動いている。
将来に対する不安。
いわゆる“いい高校”とか“いい大学”を出て、出たとして、どうなるのだろう。
ふと思ったのだ。それで将来は約束されているのかと。
愚にもつかない高学歴批判などに賛同する気は無いが、エリート幻想に酔っていられるほど夢見がちでもない。
“高度経済成長”は終わったのだ。経済の成長は今後も続くのだろうが、一億総中流と言われた時代は終わった。
何が中流?
ヘドが出るわ。
貧しいものが1人でもいるなら三流の国だ。その1人にならない自信があるのか。その1人が、千人、百万人にならない保証はあるのか・・・そうした茶倉の暗い怒りは、遠くない未来に大勢が叫ぶようになる。
遅えよ。
茶倉は思っていた。
20世紀のうちから貧困撲滅を唱えていた人々を尊敬する―――21世紀になってから、周りが、時代が、大勢が危機感を抱いてから、ようやく叫ぶようでは遅いのだ。
その程度で、そんな程度で、21世紀に生きる子供たちを守る?
笑わせんじゃねえ。
20世紀に貴様らは、貧困撲滅を唱える人を笑いものにしていただろうが。
ああ、あ、いらいらする。
頭が割れそうだ。
(ゆがんでいる)
社会という曖昧なものが、世間というあやふやなものが、自分の人生を決定していくのか。
嫌だ。
もう嫌だ。たくさんだ。
(死にたい)
自衛隊に入ろうと思った動機に、そうした後ろ向きの薄暗い感情が大いにあったことは否めない。
もちろんメインは、手っ取り早くカネを稼ぐ為ではあるのだが、戦争でも起こって自分なんか死ねばいいと思っていた。
湾岸戦争のことが、やけに近く感じた。
黒く黒く。
イメージは戦車に大砲。爆撃、轟音、火に煙。
楽しそうだと思うことは、不謹慎だろうか。
もはや通常の倫理観が麻痺するほどに、茶倉は疲れきっていた。
唄が聞こえてきた。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「借金の怖さは『魔』でも知った」
ゴリーレッド「借金地獄に堕ちると、毎日『いつ人を殺してもいつ自分が死んでもいい』というくらいまで生命が堕ちる。非常に危険な精神状態になる」
火剣「茶倉が借金だけはしないと思うのは正しいと思う。毎月のローンがゼロ円でも税金と家賃と水道、ガス、電話、電気代でかなり行くからな。そこへ年金だなんだ神田御茶ノ水と来ると、大金持ちにならない限りこの世では生きていけないと思う」
コング「やはりみんなで大金持ちを目指そう!」
火剣「希望を捨てないことは大事だ」
ゴリーレッド「貧困撲滅に20世紀の時に真剣に取り組んでいなかった。壱万円札で紙飛行機を飛ばしていた人間もいた」
火剣「1杯50万円のワインを飲んで自慢してたバカもいた」
コング「バカとか言っちゃいけません」
ゴリーレッド「人のために尽くそうという人に大金が入ったら大変だから、魔は全力でそれを阻止する。だから崇高な志の持ち主がなかなか裕福になれない」
コング「だから僕は裕福なのか」
火剣「言ってしまったな」
ゴリーレッド「茶倉の動機の一端がわかった」
火剣「投げやりの気持ちもあったか」
コング「オゾン層破壊の話題も80年代か90年代だったか。あの頃から真剣に取り組んでいれば」
火剣「茶倉の世の中に対する激しい気持ちがわかる。世の中って何だ?」
コング「きれいな戦争」
ゴリーレッド「その言葉は痛恨の極みだ」
火剣「倒産寸前の社長がいっそう戦争にでもなればと口走った。それほど貧困は人の心を麻痺させる」
コング「機械姦を感じるな」
ゴリーレッド「危機感だ」

火剣獣三郎
2015/12/11 00:31
>火剣さん
幼い頃から、人とカネの貸し借りするなと言われてきましたが、祖父の借金返済で苦労している様子を見ていただけに、説得力がありました。
狭められた選択肢の中から、茶倉が選んだものとは・・・。

佐久間「借金生活を送っている人がいた。そこへ健康な人が『自分も貧乏だけど、何とかやっている、お前も頑張れ』と言って・・・次の日、殺された。」
維澄「貧困問題の捉え方に、深い溝を感じることは多いね。貧困を経験した人も2種類いる。ドクター白茶熊のような、心が死んだ経験を持つ人は、20世紀どれだけいただろうね。私が左翼時代に出会ってきた中には、貧乏でも何とかなると思って、人の苦しみに無神経な連中も少なくなかった。」
神邪「危機感が違いすぎるんですね。“何とかなる”という言葉を吐く人は、信用に値しません。」
山田「“何とかする”なら言っていいが。」
八武「そこが境目だねぃ。」
佐久間「貧乏でも、そのうち何とかなると言ってる奴は、『選んでるから就職できない』とか言ってるコメンテーターと同類だ。ただ貧乏なのと、貧困とは、実は別物。原始時代、みんな裸だった頃も貧乏と言えば貧乏だが、イコール貧困とは限らない。」
山田「裸だった頃は余計だ。」
佐久間「いや伏線だって。よくいるだろ、裸一貫で一文無しから社長になりましたって奴。しかしそれは、犯罪を含んでいるから出来たことだ。悪いことしないと金持ちにはなれない。」
山田「お前が言うと説得力あるな、別の意味で。」
佐久間「しかし今の世の中は、悪いことしないと生存すら出来ない方向へ動いているのかもね?」
山田「うーむ・・・。」
維澄「貧困という徴兵制度は、既に復活している。アメリカでも、この日本でも。」
アッキー
2015/12/11 01:57

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