佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 28

<<   作成日時 : 2015/12/15 00:00   >>

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茶倉は自分の感情の正体に気付いていなかった。また、その感情が熟しているとも言えなかった。
それは恋や愛というよりは、衝動だった。
衝動に負けるわけにはいかない。自分を律しろ。心を乱さず、目的に向かって進め。
無意識からの呼び声は、茶倉を試験のみに集中させた。
年齢を4つも偽っているとはいえ、そもそも学力の基礎は中学までには完成し得る。90年代より前の中学生は概ねそうであったと言えるし、筆者の体験を鑑みても、それは不可能でもなければ稀有でもない。
1993年、咲村茶倉は、ひとりの兵士となった。
あるいは自衛官と言うべきなのかもしれないが、それもまた、どちらでもいいことだった。
カネを稼げるなら良し。
華と散るなら、それも良し。
軍国主義にも平和主義にも頭を下げるつもりは無い。
しかし春の陽気のせいだろうか、迂闊にも新しい人間関係に胸を躍らせたことは否めなかった。
それは心が死んでないという意味でもあるのだが、油断でもあったのだ。

入ってみないとわからないことはある。
思っていたより普通だと、意外に思ったものだ。良い意味でも、悪い意味でも、そこは“人間”の社会だった。
味わったのは、安堵と失望。当然ながら人間関係では失望の方が多かったのだが、とにかく安定したカネが手に入ることは、大きな喜びだった。
そこらで反戦平和を唱えている連中は、これほどのカネを与えてくれるのか?
やれ搾取だ階級闘争だと叫びながら、実質どれだけのことを出来ているのだ?
貧困に対する危機感が違いすぎる。貧しくても笑って過ごせる奴らとは、この先も相容れることはないだろう。
後に結婚した夫―――左翼の側であるはずの人間が、同じ思いを、より強烈に抱いていると知ったときには、驚いたものだった。
そして1993年当時も、反戦平和を唱えている人々の中にも尊敬すべき人物がいることを知っていたし、自衛隊の中にも同じ考えをもっている人がいた。
数少ない、“良し”の方の人間関係。
その人は広報の二曹(士長より2階級上)で、吉岡といった。
「意外かもしれないけど、自衛隊では珍しくないのよ。」
少数派だけどね、と付け加えた彼女は、精神病院にいる父親の面倒を見る為に、自衛隊に入ったのだという。
その柔らかな容姿と物腰の奥に、多くの苦労を重ねているのだ。
彼女の言うことが自衛隊一般の性質なのか、彼女の周囲の稀有なケースなのかは判断できなかったし、あるいはハッタリかもしれなかったが、それもまた、どうでもよかった。
それよりも、話の通じる相手に巡り会えたことの方が、遥かに重要だ。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
コング「恋愛と衝動は違うのか。僕はタイプの子の水着姿を見ると裸にして犯したいと思うが、あれは恋ではなく衝動だったのか」
ゴリーレッド「野獣か」
火剣「衝動から始まる愛もあるかもしれねえ」
コング「亜衣アイあい」
ゴリーレッド「うるさい」
火剣「自分を律するか」
ゴリーレッド「自分を律することは凄く大事だ」
コング「僕はそういう誇り高きヒロインの理性を飛ばすように日夜努力している」
ゴリーレッド「努力の方向性を誤っている」
火剣「自衛官の階級は凄いな。陸海空ともに、16段階か17段階くらいある」
ゴリーレッド「全ての国民の衣食住を守ることが国の責務ではないのか? 人を殺すのはテロだけではない」
コング「貧困に対する機械姦が違うのか」
ゴリーレッド「万力ヘッドロップ!」
コング「NO!」
火剣「なるほど、いろんなデモがあるが、困っている一人の人を救う地道な行動のほうが実質的な場合があるな」
ゴリーレッド「賢吾は30万円で救える命があると言った。借金があり家賃を滞納し、市県民税や年金の催促が来ると、ちょうど小さな城を四方から攻められて落城寸前のようなものだ」
コング「女子を落城させるにはサボテン電マ一本あればいい」
火剣「賢吾将軍が30万の兵を貸し、プラマイゼロにして1から立て直すということだな」
ゴリーレッド「ある時払いの催促なしだから凄く助かる」
火剣「介護疲れで心中という相次ぐニュースを、政治家はどう見ているのか」
ゴリーレッド「お金があれば救える命がある」
火剣「茶倉は兵士という気概なのか」
コング「吉岡?」
火剣「気の合う仲間は貴重だ。俺も友達が少ないからな」
火剣獣三郎
2015/12/15 14:57
>火剣さん
自分を律することが出来たとき、衝動から愛へ進化できた自信が持てるかもしれません。ひとたび鈍郎と離れ、自衛隊の職場で新たな出会いが待っていました。

八武「私が毎日のように妻を犯しているのも、衝動だったのか。」
山田「微妙なところだな。」
佐久間「境界線は曖昧だ。時には理性を飛ばすことも必要。」
山田「いつも理性が飛んでる佐久間は、時には理性的になることを学ぶべきだ。」
佐久間「何を言うか。こんなに理性的なのに。」
維澄「知り合いに、反戦平和を唱え、革命を目指していると豪語している教師がいた。しかし、お金のために自衛隊に入りたいから、勉強を教えて欲しいと生徒が頼んできたとき、やる気が起きず断ったという。それが可能な力量を持っていたにもかかわらずね。」
神邪「その生徒を嫌っていたんですかね?」
維澄「いや、親身に面倒をみていたらしい。しかし自衛隊を志望したことで、失望したとか。」
神邪「失望、ですか・・・。授業妨害とかならまだしも、教師の望まない進路だから失望するというのは、何だかモヤモヤしますね。」
維澄「それでいて、部下には厄介な生徒を押し付けるんだから、勝手なものだよ。その部下は、それでノイローゼになって、今でも治っていない。」
神邪「平和って何でしたっけ。」
維澄「まったくだね。私はデモの微力さを詰る気は無いが、欺瞞に対する感覚は茶倉と同じものがある。そういえば生まれも近いのか。」
八武「私もデモを悪いとは思わないけど、参加はしないねぃ。私の役目は、患者を治療することと、美女・美少女を陥落させることだと思うから。」
山田「治療だけなら尊敬してたのにな。」
神邪「それぞれに役目があるということですね。運動やデモに参加しない人を腰抜け呼ばわりするのは、明らかに間違っている。」
アッキー
2015/12/15 22:39

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