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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 56

<<   作成日時 : 2016/01/14 00:00   >>

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「そのプログラムは誰が作ったんですか?」
「・・・・・・。」
茶倉の問いに、七村はすぐには答えなかった。知らない様子ではないが、答えにくそうだ。
「・・・質問を変えます。“サトリン”は、“誰”ですか?」
先に“イヴィル”の方を質問したのは、“サトリン”が何者かと訊いたところで、返ってくる答えは予想済みだからだ。
(ひたすら褒め称えるだけだろう。)
七村が悪人とは思えないが、カードを全て提示してくれるほどの親切心を持っているとも思えない。
隠し事をする理由が、過去の傷、殊に“恐怖”であるなら猶更だ。
(あの取り乱しようは異常だった。)
まんざら茶倉も知らない感覚ではない。
そして七村が、自分より狂気の淵に近いところにいることも、感じ取れた。
「わたしの口から言うべきことではないかしら。」
七村は少し目を伏せてから、はっきりと言った。
そのとき茶倉は、もしかすると七村も、案外こちらの考えるほどには事情を知らないのではと感じた。
茶倉の知らない事情を多く把握しているのは確かだとしても、起こっている事態については殆ど把握できていないのではないか?
(本当の事情通は“ガーディアン”?)(あるいは)
あるいは単純に、“サトリン”本人が言うべきだという意味かもしれない。
(それに、一から十まで説明してもらわなければ十を知ることが出来ないというなら、ただの子供ではないか。)
子供のまま大人になって。
気が付けば25歳。
夫が自分と結婚した年齢。
(大人にならなければ)(ならない)
大人になるということは、くたびれた妥協などではない。より鋭く研ぎ澄まし、芯は鈍重にどっしりと。
そうでなければ、子供の笑いものだ。過去の自分に顔向け出来ない人間になど、なってたまるものか。
「いずれ・・・」
「?」
ばつが悪そうに七村は、おずおずと再び口を開いた。
「いずれ事実は明るみに出るわ。真実は白日の下に晒されるわ。それまで待ってくれないかしら?」
「待ちましょう。」
即答できたのは、そう遠くないうちに疑問が解消する確信を得たからだった。
そして同時に、茶倉は気付いたことがあった。
(サトリンはテレパシーのような能力を持っていた。イヴィルも同じだとすれば、下手に喋らないのは賢い判断だ。)
そのことに気付かなかった自分の不明を恥じると共に、それを指摘しなかった七村に疑問を感じた。
疑問といっても不信感を伴わない、純粋な疑問であり、ある恐ろしい可能性が頭に浮かんでいた。
それが当たっているならば、七村の狼狽ぶりにも説明がつく。むしろ気丈だ。
「泊まっていく?」
「はい。」
吉岡の好意を受け取って、茶倉は宿泊した。
女たちの共同戦線は、2003年の終わりを以って始まった。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「狂気の淵か。重い言葉だ。たとえば知られたら一瞬にして全てが終わる過去を背負って生きているとしたら、平穏無事になど暮らせるはずがない」
コング「白夜行?」
ゴリーレッド「思い出しただけで恐怖に震える過去の出来事という場合もある」
コング「さすがは茶倉はもう大人だ。大人になるということは、腰がくびれること」
ゴリーレッド「はい?」
コング「美脚美ボディのために一切妥協しないこと」
ゴリーレッド「16文キック!」
コング「があああ! 何をする?」
ゴリーレッド「何を言うだ」
火剣「より鋭く研ぎ澄まし、芯は鈍重にどっしりと。詩人だな茶倉は。詩心も大人の条件だ」
コング「七美も大人だ。事実は白日の下に晒されるということは、仲間の誰かが白昼磔にされ、全裸を晒されることを暗示しているんだ」
ゴリーレッド「ドロップキック!」
コング「どおおお!」
火剣「テレパシーで会話を聞いているくらいは察知する必要があるか」
ゴリーレッド「女たちの共同戦線。映画のタイトルのような」
火剣「一を聞いて十を知るも戦士の必須条件だな」
コング「25歳か。一番いい時ではないか。ロマンを満喫してほしい。戦士にも休日が必要だ。『嘘でしょ!』というトキメキとドキドキ感、理性が吹っ飛ぶほどの快感」
ゴリーレッド「黙らないと泣かす」
コング「違う。これは僕の優しさだ。女子だからこそ味わえることがあるのだ。茶倉にも瑠璃子にも体感してもらいたい。メロメロ体験が明日への活力になる」
ゴリーレッド「もういい」
火剣「朝まで生さだの看板を出そう『意見には個人差があります』」
コング「リコはもちろん茶倉も心のどこかで僕と同じ意見のはずだ」

火剣獣三郎
2016/01/14 11:30
>火剣さん
心が崖っぷちに近いほど、恐怖に苛まれて過ごす人生。七美の詳しい過去は第三部で語られる予定ですが、イヴィルから並々ならぬ恐怖を味わってきました。
対峙する茶倉は集中力を発揮し、敏感に感じ取ります。

八武「敏感?」
佐久間「体ではなく心がな。」
山田「俺は狂気の淵から遠いかもしれない。見えないほど離れてはいないが。」
八武「私は一度、淵に落ちた。死んだのだよ。」
神邪「生きてる感覚が薄くて困りますよね。」
八武「生きている実感を得る為に、今日も私はガールハント。」
山田「やめろ。」
八武「コングの意見は誇張があるかもしれないが、狂気の淵に溺れたことがなければ、快感に溺れたいと思うものだ。それは普段から生きている感覚を持っている者ならではだよ。」
山田「ふざけとシリアスが交互に来るな・・・。」
維澄「鈍郎が戦士として招聘されている間に、こんな共同戦線が張られていたんだね。女の世界、悪くない。」
佐久間「おい。」
維澄「やらしい意味ではなくて。」
八武「くたびれたと、くびれた。一文字の違いで大違い! 貴女も明日からヤってみませんか?」
山田「何をだ。」
神邪「性感マッサージによるシェイプアップエクササイズのことですね、わかります。」
八武「流石は我が弟子。一を聞いて十を知る。」
山田「・・・。」
アッキー
2016/01/14 21:24

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