佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 48

<<   作成日時 : 2016/01/05 00:00   >>

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あるとき鈍郎から、こんなことを告げられた。
「なあ・・・超能力って、あると思うか?」
茶倉は食べかけのパンを落としそうになり、慌てて掴んで皿に置いた。
「あなたは科学人間だから、“いいえ”という答を望んでいるのでしょう。だから私がそれに答えるのは無意味です。」
我ながら可愛げが無いというか、冷たいというか・・・。思わず目を伏せてしまった。
こういうとき、相手が夫であっても、敵に対するように冷静な態度を取ってしまうあたり、まだまだ自分は殻に閉じ込められているのだろう。
そう思いながら茶倉はコーヒーを飲み干し、伏せた目を上げて鈍郎を見つめた。
「しかし、あなたは今、迷いが生じている。だから、私の言うことを信じるというのなら、その問いに答えましょう。」
予防線を張ってからでないと、まともに質問にも答えられない。そんな自分は、あまり好きじゃない。
それだけに、鈍郎の言葉は嬉しかった。
「・・・信じるさ。もう自分も疑わしいが、お前なら信じられる。」
言われて茶倉は、胸のあたりが甘く疼いた。
(ああ)(この人は)(私に肩を預けてくれている)
これが母性というものだろうか。
いわゆる“母性本能”などというものは、胡散臭く下卑たものだと思っている茶倉だが、人と人との対話から生じる温かさは否定しない。そういった温かさは、たくさん鈍郎から貰ってきた。
「それでは答えます。超能力は、あります。」
「ある・・・・。」
鈍郎の表情に曇りが宿る。
「エスパーは実在するわ。私の母は昔、ミルという少女のエスパーに両手の骨を折られたのよ。」
その事件のことを、茶倉は断片的にしか知らない。病んでいた母の言葉を鵜呑みにするわけにもいかない。
しかし、言葉の全てが事実ではないにしろ、核心部分だけは真実だった。
「科学は、せいぜい“万能”止まりよ、あなた。決して“全能”じゃない。」
その“万能”すら、扱う人間の拙さによっては全然おぼつかない。証言に嘘や間違いが含まれているからといって、全てを嘘や間違いであるかのように主張する愚は、科学でも何でもない。集合論をイチから学び直せ、話はそれからだ。
「現代の科学で解明できないものなんて腐る程あるわ。重力の正体だって、今の科学では解明されてないのよ。サイコキネシスも重力と同じ、目に見えない、離れてはたらく力。そう考えれば納得できる?」
「・・・・・・・・・。」
鈍郎は流石、愚かなエセ科学人間ではない。すぐに茶倉の言うことを、言外まで捉えて、納得した表情になった。
科学人間にとって、納得は心の安寧だ。
「科学が、この先もっと進歩すれば、超能力とかそういったものの正体も明らかになる。でもそのときは、また別の謎が出てくるでしょうね。」
このとき茶倉は、自分の言葉にハッとしていた。




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「超能力はあるか。何で鈍郎は自分はもう疑わしいんだ?」
ゴリーレッド「自分を信じられないというのはあまり良い状態ではない」
コング「でも茶倉は信じる。これで茶倉がぬくもりを感じたなら成功だ。もちろん人間は心のぬくもりだけでは生きていけない。体のぬくもりも必要だ」
火剣「裸で抱き合うだけとかもダメなのか?」
コング「茶倉の全裸を見たら犯したくなるだろう」
ゴリーレッド「話がそれたな」
火剣「エスパーは実在する。七瀬や千里」
コング「神上禁千みたいに催眠術師と嘘をついているエスパーも、ほかにマジシャンの中に紛れているかもしれない」
火剣「近年、魔法としか思えないマジックがあることは確かだ」
コング「禁千は女子を全裸にして寸止めテクからのエンドレスエクスタシー! 多くの女子に喜びを与えてきた」
ゴリーレッド「恥辱を与えてきたの間違えではないのか」
火剣「西尾雅架もエスパーだろう」
コング「そもそも鈍郎もエスパーだ」
火剣「茶倉はなぜ自分の言葉にハッとしたんだ?」
コング「風呂上りに全身鏡で自分の全裸を見て、あまりにも魅惑的なのでハッとしたことはあるだろうけど」
ゴリーレッド「何の話をしている?」
火剣「人間の脳は7%か8%しか使っていない。超能力というのは脳を20%、30%使える人間のことではないのか」
ゴリーレッド「子を助けるために車を持ち上げたり、ベランダから落下する子を抱きとめたり、火事場のバカ力も超能力かもしれない」
火剣「落下した速度が加算して普通は抱きとめられない」
コング「僕は神上禁千の超能力が欲しい」
ゴリーレッド「絶対ダメだ」
コング「意識が正常のまま体だけ操られてしまう。誇り高き正義のヒロインにとってこれほど屈辱的なことがあろうか」
ゴリーレッド「デビルアロー!」
コング「ぎゃあああ!」
火剣獣三郎
2016/01/05 14:06
>火剣さん
この頃の鈍郎は、今までの自分の価値観が揺らいでいる時期でした。左翼グループで失望を味わっていた頃も、政治的な思想で揺らいでいましたが、このときは科学の思想が危うい頃。しかしそれは、更なる発展への準備段階でした。

八武「うむ、内助の功。そのまま肉体も癒してあげよう。」
山田「内助の功という言い方は、茶倉や鈍郎は嫌いだと思う。」
八武「なにっ?」
佐久間「まあ、“奥さん”や“家内”と同じで、妻は家の中にいるものという言葉だからな。」
八武「むむむ。」
維澄「あまり神経質になってもいけないよ。」
神邪「全裸と言えば、鈍郎さんは茶倉さんの全裸を見たことはあるのでしょうか?」
八武「無いと思う。見てしまったら犯さずにはいられないはずだ。」
佐久間「そこを敢えて耐えるプレイなのさ。」
八武「なんて高度な!」
神邪「この頃の鈍郎さんは、まだ自分がエスパーであると自覚していませんでしたが、超能力には目覚めていましたから、感覚的に茶倉さんの話が正しいことを理解できたんですね。」
山田「なるほどな。」
維澄「人間の脳には、膨大な無意識の処理能力がある。それは高速で正確だ。人間の脳の中で何が起こっているか、ようやく解明されてきている。」
八武「最も欲しい能力は、やはり催眠。」
山田「じゃ、俺は無効化で。」
八武「待ちたまえ。」
維澄「茶倉は何を気付いたのかな?」
佐久間「それは次回。」
アッキー
2016/01/05 21:18

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