佐久間闇子と奇妙な世界

アクセスカウンタ

zoom RSS クラメーションあるいは蔵目翔 エピローグ

<<   作成日時 : 2016/02/20 00:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 1 / コメント 2

「うわ〜! こうなったらもう、やけのやんぱちくまんばちだ〜っ!」
少年が全身を歪曲空間に包んで突進する。
しかし相手の女は、ひらりと身をかわして、少年の力場をすり抜けて念力の一撃を食らわせた。
少年が悲鳴をあげて吹っ飛び、試合終了。
X・クラメーションとフィー・カタストロの、いつもの修行風景だった。

「あ〜、勝てない。勝てないどころか一撃も当たらない。どうして?」
声変わりの始まった、かすれた低めの声が、いじけた呟きを発する。
「そう嘆く必要もあるまい。現時点で、少なく見積もってもアルカディアで20番台の実力はある。」
あたりを見渡せば、だだっ広い平原のあちこちに大きな溝やらクレーターが出来ている。これら全てクラメーションが空間干渉能力でやったことだ。遠くの山などは不自然に抉れている。
ものの数十分で、ここまで地形を変えてしまう能力者は、アルカディアでも数少ない。
20万のメンバーを擁するアルカディアで、30位の中に入っているということが、どれだけ凄いことなのかクラメーションにはピンと来ていないようだ。
「お前を拾ってきてから半年と少し。ここまでの成長を見せるとは、正直驚いた。」
「そんな風には見えないけどな〜。」
クラメーションが口を尖らす。
それを見てカタストロは僅かに微笑む。
「あまり感情を表に出さないのは、子供の頃からの習性でね。代わりに行動で内心を示すようにしている。それなりに忙しい身だ、お前を見込んでいなければ、修行になど付き合わない。」
「そうなの?」
クラメーションの顔が明るくなる。彼は対照的に、感情を隠しにくい。
「しかし、こらえ性の無さは相変わらずだ。無謀な突進ほど見切られやすいものはない。」
「だって、当たらないんだもん。」
「当たれば無事では済まないからな。私の出力は現在21万、お前の出力は現段階で116万。正面切って戦えば、簡単に捻り潰されてしまう。」
「俺って、そんなに強いの?」
「出力だけならコムザインやキアラと同格だ。技量こそ圧倒的に劣るがな。」
コムザイン・シュトラスツェーベリウム。
キアラ・テスタロッサ。
かつてアルカディアが、今のようなナンバー制ではなく、“六角七星”だった頃、重幹部“七星”の地位にいたエスパーたちである。
それぞれの生涯最大出力は、コムザインが101万PKP、キアラが124万PKPと、A1級スタンダード。技量も優れており、A級エスパーの中でも上位の実力者だった。
しかしコムザインは1974年に戦死しており、キアラは1980年に引退して、旅に出ていた。その為、クラメーションとの面識は無い。
「実感湧かないなあ。たまには力と力のぶつかり合いがやりてえよ。」
「そのうちにな。ナンバー13以降で、お前を相手に無傷で勝てる奴はいない。やるとなったらS級以上の監視下でないと危険だ。」
「そうか。そうだよね。でも戦いたい。あー、そうだ。アルカディアには囚人が3人いるよね、A級エスパーの。そいつらと戦えばいいんじゃないの。戦いたいな。俺なら大丈夫。俺は防御力高いし、死んでも誰も悲しまないし。」
「私は悲しい。」
「え?」
「お前が死んだら、少なくとも私は悲しむ。」
「・・・じゃあ、やめとく。」
クラメーションは大人しく黙り込んだ。
それを見てカタストロは静かに微笑む。
「まあ、焦らないことだ。戦うかどうかは別としても、近いうちに顔を合わせることになる。囚人のみならず、多くの実力者とな。」
「ほんと!?」
「ああ。」


- - - - - -


その2日後、クラメーションは天道朋萌に連れられて、A級エスパー囚人のゴンサレスに会いに行くことになった。
「ゴンサレス?」
「そうよ。七逆帝(しちぎゃくてい)の生き残り。“空曲折帝”ゴンサレス。略して、曲帝(きょくてい)ゴンザ。・・・あれ、知らなかった?」
朋萌は細い首をかしげて、クラメーションを見た。セミロングの焦げ茶の髪が揺れる。
「知らないよ?」
「・・・ああ、囚人の存在だけ噂で聞いてたのね。どうりで。」

クラメーションが生まれる少し前、1979年にアルカディアで大規模な反乱があった。
その中心人物7名は、いずれも単独で一都市を制圧可能な力量の持ち主で、“帝”の称号を冠していた。
すなわち、“風足迅帝”、“咆音飛帝”、“魅意強帝”、“幽鬼白帝”、“瞬腕黒帝”、“硬鉱灰帝”、そしてこれから会うのが、最後の1人にして唯一の生き残り、“空曲折帝”である。

本部の地価を深く潜り、厳重に封鎖されたエリアへ30分程かけて辿り着く。
そこに1人の青年がいた。歳は30歳くらいだろうか。明るく爽やかな印象で、とても反逆者には見えなかった。
「ハッハッハ、驚いただろ? “七逆帝”なんて物騒な名前だから、どんな厳めしいオッサンが出てくるんだろうとか思ってただろ? ところが出てきたのが僕みたいなハンサムで、面食らってるだろう?」
整った顔立ちよりも、爽やかな笑顔や口数の多さに面食らった。
「うん、驚いた!」
「素直だね。素直なのは美点だよ。それから笑顔だね。男は笑顔が大事だよ。」
「そうだよね!」
「でもね、気を付けなければならないよ。僕はね、13年前に深く考えもせずに反乱に参加しちゃって、このザマさ。仕方ないね。みんな七逆帝の恐怖が抜けてないからね。だから僕は、外出日は爽やか挨拶運動を心がけているよ。僕に対する見方を変える為には、僕自身が頑張らないとね。・・・本当はさ、僕の力なら脱獄も出来るんだ。でもね、みんなから忌み嫌われるよりは今の方がいいからね。」
囚人エスパーというイメージから思い描いていたものに比べると、まったく普通で話も弾んだ。
それもそのはず、ゴンサレスはA級エスパー囚人3名の中では、最も安全な人物なのである。

この半年後にクラメーションは、2人目の囚人、ユイファ・テスタロッサに出会うことになるが、そのときに受ける衝撃はゴンサレスの比ではない。
狂気の炎使いユイファ。奇しくも彼女の生まれた日は、クラメーションと同じである。
1980年の1月9日、同じ日に生まれた2人が出会ったのは、丁度13年後、1993年1月9日のことだった。





   クラメーションあるいは蔵目翔   了

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「サトリン」 第二部目録 (2)
■■■■■ ...続きを見る
佐久間闇子と奇妙な世界
2016/02/21 05:33

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「そうか、自ら特訓するということは相当買っているのか」
ゴリーレッド「フィー・カタストロくらい強くないとクラメーションの相手ができない」
コング「20万のアルカディアで30位以内って、大変なことだ」
火剣「しかもあのコムザインに匹敵するとは」
コング「アキラほどの実力となると溜息でビルを吹っ飛ばすほどか」
ゴリーレッド「アキラではない、キアラ」
火剣「コムザインは技量、力量だけでなく皆から尊敬を集める人格があった」
コング「ハービスを裸にしたし」
ゴリーレッド「していない」
火剣「裸を隠してあげた。紳士だ」
コング「無謀な突進は見切られる」
ゴリーレッド「戦闘の極意を教わるとは急速に成長する可能性がある」
コング「危険性」
火剣「私は悲しい。これは魔法の言葉だ」
コング「好きな人に言われると効くな。朋萌に言われても萌えると思う」
火剣「ゴンザレスという名前と反逆者からバーバリアンを想像した」
コング「何しに来やがったこの青二才。この俺様に口を聞くとは百万年と三日ハエーぜ」
ゴリーレッド「ところが爽やか笑顔のゴンザレス」
コング「女子も素直で笑顔は大事。僕も笑顔で襲いかかるからヒロインが焦る」
ゴリーレッド「笑顔まで悪用する男」
火剣「ユイファ!」
コング「クラメーションはこれから良い環境で生きていけるのか」
ゴリーレッド「茨の道でもある」

火剣獣三郎
2016/02/20 10:57
>火剣さん
クラメーションを拾いに出かけたのは上層の指示でしたが、暴走を止めようと戦って、才能を見出しました。正式な所属は別にありますが、実質的にはカタストロの弟子になっています。

山田「アルカディアでも万に1人の才能ってやつか。」
佐久間「コムザインの再来を期待する声もある。力の系統としては若干違うが、この出力だからな。」
山田「今は技量を高めている最中か。カリスマはコムザイン級までは難しいと思うが。」
神邪「どちらかというとフレンドリーな性格ですからね。」
佐久間「まあそれは、子供時代のコムザインも同じようなものだったりするけど。」
維澄「カタストロは久々に弟子を得られて嬉しそう。」
佐久間「そうだな。カタストロにとっても、止まっていた時間が動き出したようなものだ。これから忙しくなるぞ。」
八武「カリスマを得るには、裸に剥かれた部下にジャケットをあげることが大切だ。」
山田「やけに限定的だな。」
八武「強さだけでなく気配りが出来なければならないということだよ。それも自然にね。」
山田「なるほど、それを象徴するシーンということか。」
神邪「七逆帝というのは、もしかしてカタストロさんの以前の弟子だったりするんでしょうか?」
佐久間「7人のうち3人はそうだ。あれ以来カタストロは、部下の訓練こそ行うものの、弟子を取らなくなっていた。」
山田「そうだったのか・・。」
維澄「ゴンザの明るさは、後のクラメーションの性格に影響を与えているみたいだね。」
佐久間「これからの道のりが大変だ。明るい性格の方が、何かと切り開けやすい。」
アッキー
2016/02/20 22:24

コメントする help

ニックネーム
本 文
クラメーションあるいは蔵目翔 エピローグ 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる