佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十六話 十戦士集結! 8

<<   作成日時 : 2016/03/20 00:00   >>

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入流聡子は心優しい少女だったが、それゆえに傷つきやすく、いつも心を痛めていたよ。世界に蔓延る差別と迫害に激怒し、からかいた中傷に悔し涙を流していた。戦争と貧困を撲滅することを人生の目標とし、弱者を攻撃することを許さなかった。人より多く現実が見えてしまい、社会を良い方向へ変えられない無力さを呪っていた。それでも世界を愛し、いつも笑顔でいようと頑張っていたよ。いじらしく、健気に、笑っていたよ・・・。
しかし、そんな彼女に悪意は容赦なく降り注いだ。反撃するどころか、心を閉ざすことさえ出来ないほどの、醒めない悪夢のような濁流だ。彼女は正気のままで歪んでいき、笑顔は軋み、眼光が澱みに侵されていったよ。彼女の天才性のひとつは、高い集積能力と記憶力だが、それゆえに多くの悪意を取り込んでしまい、忘れることも出来ないまま苦痛に苛まれていた。生きてるだけで苦しんでいたよ。大勢の悪意と、無責任な善意は、彼女の天才性を病原に変質させてしまったのさ。狂人と天才は紙一重というが、それだけ天才は心の病を患いやすいんだ。
集積能力に善も悪も無い。だからこそ世界の有様を如実に反映する。どれほど高い志を持っていようとも、集積された悪意を浴び続ければ、それを超えた邪悪へと変貌する。旧オーパの発展に尽力した“マザー”が、恐怖と嫉妬を向けられ棄てられたことで、人類を家畜として扱う化物になったように。地球平和の指導者になるはずだった最高幹部ノットー・リ・アースが、戦争と混乱を激化させる“デビルズ”となったように!
史上7番目の神化系能力者であるノットー・リ・アースは、当時それとは判明していなかった。他に7つの強力な超能力を持っていたし、発見されにくい性質の神化系能力だったからな。ノットーの二つ名でもある“邪神”(デビルズ)は、周囲の悪意を無差別に取り込み、際限なく人格を邪悪に染めていく能力なのだ―――

千里:神化系能力ゆえに止めることも出来ず、強大なESPは広範囲の悪意を拾ってしまった。
カタストロ:世界が平和なら、取るに足らない能力だった・・・。
千里:ノットーは死んだが、悪意は死なない。私に、そして“イヴィル”に受け継がれている。
α:だけど受け継がれたのは悪意だけではありません。
レックス:そうだぜ。どれほど世界が悪意に満ちていても、捨てきれないものがあるから、“サトリン”は生まれた。
α:私の中には「入流聡子」の全てがありました。世界への憎悪も、世界への愛も、同じだけ抱いていたんです。
千里:だからこそ“サトリン”と“イヴィル”のスペックは互角・・・それも初期の話だが。
α:・・・・・・
千里:わかっているはずだ。“β”と“ε”では、能力を課す条件が違う。

知っている者も、おさらいとして聞いてほしい。
超能力の出力は基本的に、A級B級C級の3段階に分類されている。C級は千人に1人、世界に700万人近く存在するが、少しばかり勘が良いとか、力が強いという程度のもの。認識していなければ常人の範囲に収まるもので、ゆえに大半は自覚を持たない。これまでの歴史で、超能力者の存在が社会的に明るみになっていない理由でもある。明るみになったところで、C級なら問題なかった。
B級は十万人に1人、世界に6万人ほど存在している。その多くが能力に自覚的で、同時に自らの能力を隠している。テレパシーで言えば、思念や思考が読めるのが、この段階だ。電脳戦士諸君のうち、今はアインストールも含めて8名がB級に属している。邪戦士の方も、アタッカーからパニックまでの7名は、全てB級だ。固有能力は、その性質上どうしても、多くがB級に属することになる。
A級は数が少なく、一千万人に1人ほどだ。世界に数百名しか存在せず、多くの場合において複数の超能力を持っている。単数であっても、同時に複数の使い方を心得ている。出力だけでない“A級エスパー”という呼称は、高出力の超能力を同時に複数使用できる者を指しているんだ。クラメーション、ユイファ、そして小松は、出力こそA1級の上位ではあるが、複合使用(プルキネシス)において未熟な為に、カタストロ1人に敵わない。
A級の中でも更に強力な者を超A級、その中でも桁違いの者をS級と、細かいカテゴライズはあるが、それは今は置いておこう。問題はC級の下・・・超能力の潜在因子こそ持っているが、超能力が発現していない段階。便宜上これをD級と呼んでいる。このD級エスパーが、世界中に、どれほど存在していると思う?
・・・なるほど、1割という推測が多いようだ。A級B級C級の人数比からして、C級の百倍程度と見るのが妥当な判断だからな。しかし実は、D級ともなればマイノリティーではなくマジョリティーなのだ。答えは8割強、6人の5人が潜在的に超能力を持っているのさ。古代超人類の血は、薄まったとはいえ世界中に広まっている。だからこそ小松崎宗の実験も成功した。1万年以上前は人口が極めて少なく、混血児は大した能力を持たないとはいっても十分に優秀で、心優しい者が多く、子孫を残すには困らなかった。優れた相手を選ぶことも出来たしな。
とはいえ、発現できるかどうかは別問題ではある。多くの場合、超能力者というのは一代限りの突然変異であり、あくまで因子は因子に過ぎない。超能力の因子を持っていても、それを発現させる因子が無ければ、能力は生涯、眠ったままだ。ゆえにD級というのは便宜上の呼称であって、超能力者の段階には分類されてない。
あァ、質問される前に答えておくが、発現因子を含めて超能力の因子を固定化する因子も存在する。その因子を持っている者を“妖精”(ティンカーベル)と呼ぶ。超能力者の“一族”が存在していたり、ノットーの子孫に強力なエスパーが多いのは、ティンカーベル因子によるものさ。定着させる因子は複数あるが、まとめてそう呼んでいる。
ここまで話して、気付いた者や思い出した者も多いようだな。“β−サトリン”は、自分が関わった相手のうち、6人に1人ほどが超能力を発現すると言っていた。それは全体から6分の5を引いた割合と一致する。発現しているエスパーが全体の0.2パーセント未満であることを踏まえて、人類の6分の1・・・およそ十億人ほどは、D級にも属さない、正真正銘の“普通の人間”なのだ。ショックを受けるなよ、“無能力”ではない、“普通”なんだ。
超能力の因子を持たない普通の人間であること、それこそが“β−サトリン”が超能力を課すことの出来る条件であり、接触した者は基本的に“電脳回遊”(ネットウェイ)の能力を課せられている。サトリンと異なり電脳空間を自在に行き来することは出来ないが、意識をチャットルームに繋ぐことが出来る。電脳戦士の中には、それを知らされてなかった者もいるが、七美の誠意だと思ってくれ。チャットルームにはイヴィルも入ることが出来るのだから、情報戦や心理戦を仕掛けられる危険性が大きかった。“β”の固有能力を課せられる適性は、“ε”に取り込まれやすいという意味でもあるのだからな。イヴィルの危険性を知っている七美からすれば、当然の判断さ。
能力付与の条件は、“ε−サトリン”も基本的には同じだ。接触した者に“電脳回遊”を課し、素質がある者には更に固有能力を課すことが出来る。だが、“普通の人間”にしか能力を課せない“β”と違って、“ε”には制限が無い・・・。因子があろうが超能力者だろうが、力を課すことが出来るのだ―――――




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
ゴリーレッド「心優しい人ほど傷つく世の中では仕方ない。社会変革は絶対に必要だ」
火剣「差別と迫害、戦争と貧困の撲滅。こういうストレートな発信をする政治家が意外と少ない。本心から語れば受けると思うが」
ゴリーレッド「このようなことを人生の目標とするとは素晴らしい。大善だと思う」
コング「悪意はこの世に充満している。善から悪意が生まれる一つには法律。昨夜の土曜ワイド劇場でもやっていたが、レイプしても人を殺しても少年だから保護観察処分? 結局その不良は暗殺された」
火剣「劇場版ATARUのマドカはエスパー級の天才少女。捜査のために膨大な殺人事件の記録を暗記させられ、人間への憎悪が芽生え、凶悪殺人犯となってしまう」
ゴリーレッド「世界への憎悪と世界への愛。この両方を持つことが重要か」
コング「僕は普通か。でもマジシャンの中にエスパーが紛れている気がする」
火剣「確かに魔法としか思えないマジックはある」
コング「神上禁千がエスパーだということも明るみにはなっていない」
ゴリーレッド「自分が超能力者だと自覚がない者が大勢いるわけか」
火剣「激村もエスパーか。空を飛ぶからな」
コング「じゃあルパンも」
ゴリーレッド「関係ない話はいい」
火剣獣三郎
2016/03/20 10:11
>火剣さん
ストレートに真剣な主張をすると、世の中をわかってないと見られるのは、悔しいものです。世界の不条理が見えているからこそ、変えねばならないと思います。
しかし傷つき疲れ果てた末に心を病んでしまうと、より凶悪なものが生まれてしまう危険を孕んでいます。それでも世界を愛する心が勝つか、憎悪が勝つか。せめぎ合いのフェイズU。

佐久間「反戦、対貧困、非差別、抗迫害。全て揃った主張をしている者は少ない。」
維澄「それな。」
八武「反戦は昔も今も、よく聞くのだがねぃ。貧困に対する認識は、ようやく広まってきたというところかな。」
山田「斜に構えるのが当たり前になってしまった今、入流聡子のような人間が必要だ。」
佐久間「しかし少数派になるのは避けられない。反戦と対貧困を両立するだけでも少ないんだ。まして差別や迫害を許さないまで揃えると希少種。」
神邪「反戦平和を唱えながら、いじめに無関心な人々は多いですからね。平和の精度が低すぎる。」
維澄「しかも左翼の中にな。我々の社会でも、どれだけ入流聡子のような人間が潰されてきたか。」
佐久間「栞は潰れてないけどな。」
維澄「私はしぶとい。まだ世界を愛している。自覚なき悪に溢れた世の中だが、自覚なき善も見てきた。」
アッキー
2016/03/20 16:29

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