佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十六話 十戦士集結! 13

<<   作成日時 : 2016/03/25 00:00   >>

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私にとって友人と呼べるのは、後にも先にも3人だけだ。七村光子、吉岡同人、沢木銀一の3人。少女時代に出会い、別れた、三日月千里にとっての永遠だった。
九古貞主は私と同じ中学に通っていたが、そのときの私にとっては大勢の中の1人でしかなかった。彼が生まれたのは1939年だが、私は早生まれなので学年は同じ。それだけの間柄だったよ。クラスメートですらなかった彼が、光子の人生に大きく関わってくるとは、私にも予知できなかった。それは私が未来を変えた結果だったのだからな。
正直ノーマークだったのだよ。光子を誑かす男は年上と出ていたし、九古貞主が慕情を向けていた相手は私だったしな。しかし私は消息を絶つ前に、光子に手紙を残していた。そこで「年上の男に気をつけろ」と書いたことが、未来を変えたのだ。九古貞主は七村光子と結婚し、わずか半年で破綻した。私が変えたかった未来は、光子が不幸になってしまうことだったのに、その結果は変わらず、ただ相手だけが変わったのさ。

インビンス:じゃあ、まさか・・・
アインストール:わたしと鈍郎は、本当の姉弟なのかしら!?
千里:その通り。
インビンス:しかも七美ねえさんが生まれたのは1966年・・・兄より後だ・・・。
千里:離婚してからも関係は続いていたのさ。次の結婚が上手くいったのは癒してくれる愛人のおかげとも言える。
インビンス:・・・私には、責任は無くても知る義務はあった。
千里:だから話した。
アインストール:わたしにとっては今更かしら。わたしを見捨てた母の罪が、また増えただけ。
千里:8年前にも言ったが、七美には光子を責める権利がある。
アインストール:それも今更かしら・・。苦しみを訴える権利は、若い世代に残しておかなくちゃ。
千里:そうか。お前も私から見れば、十分若いんだが。
アインストール:口に出して訴えなくても、あなたが聞いてくれている。それで十分かしら。
千里:・・・ありがとう。


   光子___貞主___志穂
        |     _」_
        |    |   |
       七美  鋭郎  鈍郎


入流聡子が生まれたのが1963年で、同じくして電脳計画はスタートした。七村七美の生まれた翌年の1967年が、私が光子と同人に再会したときで、三角龍馬が生まれた頃でもある。変わり果てた友人との再会で沈んでいた私は、その翌年にレックスと出会うが、逸る気持ちを抑えきれなかったのは千里眼として失格だったな。わたしにとっては窮地を救ってくれた未来のビジョンでも、レックスにとっては初対面の相手だ。普通の人間に千里眼の事情を察しろと言っても無理な話だし、それ以前に超能力の存在を信じてもらうのが難しい。まったく、無様なものだった・・・レックスの前で私は、随分と醜態を晒したものさ。当時を思い返すと、今でも惨めな気分になる。
その頃の私はアルカディア上層部から警戒されていて、能力に極度の制限をかけられていた。結果的に私にとっても、無制限のまま力をもてあますより有益な、より精緻に能力を扱える状況になったが、それに至るまでの犠牲を思えば、手放しで喜べることではないな。無制限状態なら助けられたはずの者が大勢いるのだ。タウラとトーラの姉弟や、魔犬の犠牲者・・・それに、十島育生の両親も、その中に入る―――1972年のことだ。
封印された“神酒計画”を解き放ったのは、“リバース・オブ・アルカディア”の(7)、11番目の神化系能力者“T2”というエスパーだ。実行犯は別にいるんだが、あの北欧神話のロキのような“悪戯者”には随分と手を焼かされたものだよ。1964年は九古鋭郎の生まれ年だが、朋萌が奴に酷い目に遭わされた頃でもある。そのあたりについては割愛するが、それから8年後、1972年の大事件は忘れようもない。アメリカで起こった同時多発テロは、ベトナム戦争に伴い国際情勢の悪化が招いた、集団ヒステリーだと、一般には報じられているが、真実は“神酒”を注がねば見えてこない。たとえ状況が悪くとも、切っ掛け無しに人は、凶行へ走ることはないのだから。
ミコンを死なせた狂科学者の悪意と対決したのが1974年。私の能力の一部を持ち、ミコンの力の一部を備え、何より厄介な催眠(ヒュプノシス)能力を持っていたエスパーは、最初は静かに忍び寄っていた。奴が葬送曲を奏でるとき、人を死に誘う。ここまで聞いて、心当たりはあるだろう、九古鈍郎?

インビンス:1974年・・・母が死んだ年・・・!
千里:奴は人間の、一過性の感情を増幅することが出来るのさ。

人間は通常、“死にたい”とか“殺したい”とか思っても、すぐに霧散してしまうし、たとえ感情が持続しても実行までは至らない。しかし奴は、普通なら問題にもならないような感情を増幅し、実行に至らせてしまう。
その量的増幅は、質的な転換を遂げる。“あんな女と良い仲になれたらいいだろうな”と思えば、その後をつけて強姦に及ぶ。“刃物で指を切ったら痛いだろうな”とでも思えば、包丁やナイフを持ち出してきて、自分の指を切り刻む。ふと“死んだら楽かな”と思ったが最後、それしか考えられなくなり、自ら死を選んでしまう。

インビンス:・・・その、エスパーは?
千里:私が殺した。私にとってはミコンと、ミコンが好きだった少女の、仇討ちだ。
レックス:もう、あれから30年も経つんだな・・・。

だがレックス、お前も日頃から言ってる通り、年月で薄まる過去はあっても消える傷は無い。厄介な相手は“リバース”だけではない、シャングリラの檻から解き放たれたゲシュペンストの存在にもあった。私は部下を、レックスは友人を、殺されている。“悪戯者”のT2も、ゲシュペンストとの戦いで命を落としているし、よくぞ封じ込めてくれたと小松崎ランには礼を言いたいところだが、彼女の宿命の壮絶さを思えば、迂闊に気安い言葉はかけられないな。
1981年だ。横浜中央病院で看護婦を殺したゲシュペンストは、殺戮を繰り返した後に小松崎ランに吸収された。だが、太古より生きるゲシュペンストは、完全には吸収されず、逆にランにとって“爆弾”となってしまったのだ。それを仕組んだサグは、古代超人類の血が色濃く出たエスパーで、先祖の仇を討ち、地球を優れた者の管轄下に置こうと動いていた男だった。そのときに彼も死んだのだが、彼の望みは部分的に叶ったと言えるだろうよ。

インビンス:1981年・・・“決戦”の舞台は、九州の阿蘇でしたか?
千里:その通りだ。訊かれる前に答えておくと、九古貞主の自殺は、サグの副官パトナに誘導されたものだ。
茶倉:あなた・・・
インビンス:大丈夫だ。超能力というものの存在を知ったときから考えていた可能性だよ。
千里:そうか。ならば続きを話してもいいな? お前の妹の話になるんだが。
インビンス:・・・!



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「友人と呼べる人間が3人もいるのか」
コング「火剣だって、激村、短ライ、賢吾と3人いる」
火剣「激村は友人じゃねえ」
コング「僕の友人は千香と瑠璃子」
ゴリーレッド「向こうは友達とは思ってない」
火剣「相手が変わっても不幸という運命は避けられない。宇宙の法則を感じるな」
コング「戦国自衛隊が来て形は変わっても自然の力が動くかのように強引なまでに歴史通りに進む」
火剣「魔犬、T2、ゲシュペンスト。懐かしい・・・と言えるような者たちではないが」
コング「殺されたナースがかわいそう過ぎる」
火剣「魔犬も殺し方が残酷過ぎる」
コング「僕がどれだけ紳士かわかるね?」
ゴリーレッド「七美は本当に姉さんだった」
コング「姉さん事件です」
火剣「あんな女と良い仲になれたらいいだろうなと思ったら最後、強姦してしまうなんて、殺すしかなかった」
コング「ところで朋萌はどんな酷い目に遭ったんだ? 割愛しちゃあダメ」
ゴリーレッド「割愛する」
火剣「次は妹の話」
コング「ところで千里はレックスの前で羞恥を晒した場面があったか?」
ゴリーレッド「醜態だ」
火剣獣三郎
2016/03/25 10:20
>火剣さん
長く生きていても、気心の知れた相手は少ないですね。部下は多い千里ですが、これから友人が増えることはなさそうです。

佐久間「レックスは夫だしな。」
山田「夫ではない。」
八武「本当に姉弟だったか。千里にとっては大差ないが、鈍郎にとっては事件です。」
維澄「しかし冷静だね。その為に大きな歴史を先に語ったというのもあるか。」
神邪「なるほど、千里さんの配慮ですか。」
佐久間「語るのを先延ばしにしたというのもあるけどな。千里にとっては苦々しい過去だ。戦国自衛隊よろしく、人間が変わっても同じ役割を担う者が出てくる。」
神邪「ホロンですね。」
山田「滅んではいない。」
佐久間「みんな、山田が今くだらないこと言ったよ。」
山田「うるさい。」
八武「思えば恐ろしいエスパーたちと戦ってきたものだ。私は良い仲になるイコール強姦だから関係ないが。」
山田「死根也も殺しておこう。」
八武「待ちたまえ、まだ話は終わっていない。一過性の感情や感覚が、頭にこびりついて離れない病気は実際ある。超能力でなくてもね。」
佐久間「天才と呼ばれる人々は、そういう傾向が強い。」
維澄「天才と狂人は紙一重というのは、皮肉なものだね。天才性を発揮するほど狂気も増大する。」
アッキー
2016/03/25 20:10

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