佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「NEKTAR」 八、強奪

<<   作成日時 : 2016/05/21 00:00   >>

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アルフレッド第一分隊、ラプソディア第二分隊、アージェ第三分隊、ラドル第六分隊、アトラト第八分隊。
総勢40名は、“強奪”のノーティ・バーグラーと遭遇していた。
「おう、美少年やないか。うらやましい。」
アルフレッドは呑気な感想を述べながらも、素早く隊列を展開させた。50に近いベテランならではの余裕だ。
アージェ隊とアトラト隊は普通に構え、ラプソディアとラドルが攻撃した。
「円歌狂詩曲!」
「スナップ・ショット!」
ノーティはサイコバリアーを張るが、ラドルのすり抜けサイコキネシスは防げない。
「ぐふっ!?」
相手が少年だろうと、何の躊躇いも無い。
「もういっちょ、スナップ・ショット!」
「円歌狂詩曲!」
ノーティは、今度はラドルの攻撃を集中して防ぐが、同時にラプソディアの攻撃は防げない。
更にアトラトが隙を突いて攻撃した。
「げふっ!」
先制を取って、いい調子で進んでいる。
コムザインから命じられたのは足止めだが、もしかしたら勝てるのではないかと40人全員が思った。
何しろ、A級エスパーのくせに異なる型のサイコキネシスを一度には使えない。これは致命的だ。
今のように性質の異なる同時攻撃で簡単にダメージを与えられる。パワーはA級でも、技術はC級だ。
「・・・っ」
しかし守勢では弱くとも、攻勢に回れば話は別。
「げっ!」
「ぐっ!」
「がっ!」
突然、隊員が次々と血を吐いて倒れていった。
「!?」
「何よ!?」
「え!?」
見るとノーティの周りに、こぶし大の肉塊が浮かんでいた。
「ひっへへ〜、いっただきい。」
ノーティは無邪気な顔で笑い出した。
「ああああの野郎、テレポートで内臓ぶっちぎってこれんのかよ!?」
自分も似たような能力を持つラドルだが、禍々しさが違う。思わず叫んだ。
「ぴんぽーん。だーい正解。心臓ってきれいだよね。ぼくねー、ほしいものはすぐに手に入れるんだ。どろぼーはとってもいけないことだって大人はゆーけれど、どうしていけないのか全然わかんなーい。」
殺したいほどに頭が熱くなったが、ここは退かなければならない。
このおぞましい固有能力の前では、ちまちまとダメージを与えていく作戦は犠牲を増やすだけだ。
「ひけ、退けえっ!!」
26人は散り散りに逃げ出した。
この中の何人が生きて帰れるか・・・そう思っていたが、意外にもノーティは追ってこなかった。
「あー、逃げるなら逃げれば? ぼく追っかけっこ好きじゃないし。」

妨害念波でクレアの千里眼が鈍くなっているのが痛い。ディバウア、パージャ、ノーティと、固有能力は凶悪なものが多い。それを事前に知れないとなると、毎回のように犠牲を出すことになる。
クレアは史上最大の千里眼だが、それに匹敵する能力者は存在しない。ということは、どういうことか?
アルカディアのメンバーは組員千人だけではないのだ。本部に住む10万人と、世界中に散らばる10万人、クレアは千里眼の殆どを、その20万人の健康・精神・危機の有無をチェックし続けることに使っているのだ。
もしもクレアが千里眼を、この戦いだけに投入すれば、組員に1人の犠牲すら出さずに勝利することさえ可能。
しかし、その間にアルカディア20万の市民に、どれだけの犠牲が出るかわかったものではない。
アルカディアのメンバーは、多くが死の呼び声を聞いた者たちだ。貧困と暴力に苦しむ人間は1日の孤独で死の危険性があるし、世界を見渡せば戦争は必ずどこかで起こっている。
今までに砕組には41人の犠牲者が出た。彼らの命を助ける為に他で犠牲を出すということは、有事の際には軍人を大事にして庶民を犠牲にすべしということである。クレアはその選択はしなかった。

無邪気な少年ノーティは、テレポートで人の多いところへ行き、そこでも心臓を引っこ抜いて遊んだ。
何て楽しそうなノーティ。もはや安全な場所は無い。人々は恐怖に怯え、逃げる場も無く暴力の餌食となった。
鮮血が飛び散り、腐臭と混じって吐き気がする。自分がその真っ只中にいる。
“神酒”を飲んでエスパーとなった人間たちは、欲望のままに破壊を行う。
生命、財産、常識、未来、全てが破壊されていく。
「ららんらんら〜。」
ノーティは暴力の街を、鼻歌を口ずさみながら散歩していた。
彼はこの荒廃した世界で恐怖を感じずに済む、数少ない人間だった。
「どうして盗んじゃいけないのっ。どうして盗んじゃいけないのっ。だあれも教えてくれないのっ。だあれも教えてくれないのっ。いけないことだと言うけれどっ、大人はみんな言うけれどっ、大人の方が盗んでるっ。大人の方が盗んでるっ。子供のことは叱るのにっ、大人相手にゃ腰を折るっ。何でかなっ、何でかなっ、ぼくにはわからない〜。」
そこへパチパチパチ・・・と1人分の拍手があった。
右目に眼帯の代わりに包帯を巻いた、京狐夜果里だ。
「皮肉の籠もった、いい唄じゃないか。」
スコップを地面に突き刺して、その上に腰を下ろしている。
「それとも純粋な疑問を歌にしただけなのかね?」
「京狐夜果里だね。ケガしてるけど大丈夫かな。体力的にもぼくの方がちょびっと上だと思うけど? 勝てない勝てない。」
「何か言ったかね。歳を取ると、どうも耳が遠くなってねえ。」
歳を取ったといっても、まだ52歳の夜果里は、立ち上がってスコップを地面から引き抜いた。
「こう見えてもねえ・・・けっこう子供好きなんだよ。ただし、バケモンは別だがね。」
引き抜いたスコップを、夜果里は一回転させて構える。
「墓堀り人・・・参る!」
速攻。
あっという間に間合いを詰めて、スコップでノーティの頭をぶん殴る。
「げっ!」
ノーティは横へ逃げようとするが、それより早く夜果里は左手にスコップを持ち替えて振り下ろした。
頭に命中。
「ぐぎゃっ!?」
ノーティが地面に落ち、すかさず夜果里は左足で踏みつける。
細身でもメタルイーター能力者の彼女は、見た目の3倍以上の体重を持っている。
100キロでは済まない重量が、ノーティにのしかかる。サイコキネシスのバリアが無ければ砕けていた。
「思った通り・・・。心臓を抜き取る切断アポートは、ある程度の距離が無ければ使えないね?」
近くでノーティを攻撃していたラドルやラプソディアではなく、後ろの隊員たちを狙った。
その情報を得て、夜果里は推測を立てていたのだ。
「・・・。」
答える代わりにノーティは、サイコキネシスで地面を吹き飛ばして脱出した。
(それも予想済みね!)
左手でスコップを強く握り、回転をかけて薙ぎ払う。
ノーティの小さな体は簡単に吹っ飛んで、ビルの壁に激突した。
「げほげほっ!」
「あたしから離れるな!」
スコップの先端がノーティの体めがけて飛来する。
ノーティはギリギリでかわし、サイコキネシスで空中に浮かぶ。

その上に京狐夜果里がいた。

「離れるなと言ったろうが!」
言いながらノーティを地面に叩き落す。
「げふう、痛い、痛いよう!」
「うるせえクソガキ!」
再びスコップの先がノーティを捉えた。逃げられない。
しかしその瞬間、サイコキネシスがスコップの軌道を逸らした。
「あ!?」
夜果里が体勢を立て直すと、2人の“巫女”の姿があった。
「“強欲”のグリンディーヌ!」
「“傲慢”のホーティネ!」
「「ただいま参上!」」
これで3対1。
それでも夜果里は勝てるのかと問えば、答えはYESと言うしかない。
続行。夜果里は一足飛びで3人に接近し、スコップ、左手、右足を使って、3人を次々に吹っ飛ばした。
「ひいっ!」
バゴッ
「ふうっ!」
ボガッ
「みいっ!」
ガスッ
目にも留まらぬ連続技。
「何でよお! 何でそんなに強いいい!?」
「こんなに強いなんて聞いてないわよ〜!」
「ぼくもうやだあ〜! おうちかえる〜!」
「馬鹿どもめ、あたしもA級だということを忘れているのか? ノーティ・バーグラー、お前が10人の中で、おそらく最も弱い。せっかくの力を10分の1も活かせていない。」
単純なパワーだけなら、3人合わせれば互角以上だろう。しかし技量と精神力に大きな差がある。
こうなった以上、取るべき手段は1つしかない。
「!」
3人はテレポートで逃げ去った。
「はあ・・・逃げられたか・・・。」
夜果里は小さく息を吐くと、その場で仰向けに倒れた。
(だが、ダメージは与えてやった。それでいい。)
体がマグマにでもなったように熱く、心臓もドクドク鳴っている。
(最終手段、メタルイーター発熱。斬空みたいな繊細な技は使えなくなるが、素早く動けて頭もよく巡る。だが、もう限界だ。もう立てない。今襲われたら死ぬわね。)
発熱能力の副作用で、視力が一時的に戻っていた。
右目を覆っている包帯を剥ぎ取り、夜果里は空を見つめた。
地上はこんなにも血なまぐさいのに、空は憎らしいほどに青く、鳥すら飛んでいた。
空の1割弱を占める雲は、光を射して輝いている。太陽は、まるで金平糖のようだ。
「フフ、綺麗・・・。」
夜果里は優しく微笑んで目を閉じた。


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「頑張れノーティ・バーグラー」
ゴリーレッド「聞かなかったことにする」
火剣「ラプソティア、ラドル、アルフレッド。強豪揃いだがコムザインの命令は足止め」
ゴリーレッド「そういう場合は命令に従うべき。考えがあって足止めと言ったはずだ」
火剣「足止めどころか倒せるとこのまま一気に突き進め!と命令を破った大将が、敵の罠にはまり全滅というのは三国志でもよくある」
ゴリーレッド「案の定、ノーティの固有能力は凶悪」
火剣「やはりクレア一人に比重が行き過ぎる気がする」
コング「確かにクレア一人に頼り過ぎるのはかわいそうだ。女の子なのに独りエッチもできない」
火剣「レックスがいる」
コング「プレイでも24時間任務では快楽に集中できない」
ゴリーレッド「とりあえず黙れ」
火剣「暴力の餌食か。マッドマックス2は無政府無警察状態の無法地帯という設定。こうなるとギャングが女を見つけては無理やり回すことが日常茶飯事になる。それを思い出したな」
ゴリーレッド「生命も財産も常識も未來も破壊される」
コング「京狐夜果里52歳」
ゴリーレッド「なるほど距離を詰めたらできない能力だったのか」
火剣「3対1でも強い。さすがだ」
コング「今襲われたら死ぬ? ぐひひひ、襲おう。大丈夫。命まで取らないからね」
ゴリーレッド「コングなら一撃で終わる」
火剣獣三郎
2016/05/21 10:01
>火剣さん
足止めに徹していれば、犠牲を出すことはなかったかもしれません。功を焦るとろくなことがないのは、昔から変わらないですね。
クレアは夜果里を投入しましたが、逃げられてしまいました。ノーティとの戦いは延長戦。

山田「ノーティ。こんな力を持ってなければ、いいキャラなんだが。」
佐久間「こんな力を持ってるから良いキャラなんだろうが。」
維澄「大人の方が盗んでる。搾取は労働力の窃盗だけど合法。度が過ぎたものだけがブラック企業と呼ばれるだけで、搾取そのものは多くの企業で行われている。」
佐久間「資本主義バンザーイ。」
山田「殴るぞ。」
佐久間「真面目な話、クレアはブラック労働ではある。レックスがセックスで癒してあげないとな。」
八武「ワーカーには癒しが必要なのだ。」
神邪「余計に疲れませんか?」
佐久間「今のクレアにとっては、肉体より精神の消耗が深刻だ。それは神邪ならわかるだろう。」
神邪「なるほど、肉体はアルカディアの技術で維持できそうです。」
山田「文字通りに24時間任務となると、いつ休んでるんだ?」
佐久間「休んでない。」
山田「やはりそうか・・。」
佐久間「千里眼で、無法地帯の様子が嫌でも見えてしまうからな。休んでるより働いてる方がマシなのさ。」
八武「さて、ゆかりんの治療は私が。」
維澄「背に腹は変えられないか。」
八武「真面目にやるよん?」
アッキー
2016/05/21 22:39

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