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zoom RSS 「NEKTAR」 十五、子供

<<   作成日時 : 2016/06/02 00:00   >>

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さて、クレアが産んだ女の子は、どうなっていたか?

アルカディア本部の奥の部屋で、名も無き赤子は少女の膝に抱かれていた。
少女はまだ10代前半で、たっぷり幼さを残している。美しい金髪は2年前よりも長くなっている。
クレアを母のように慕ってやまない、赤い目の少女スカーレット・マーチ。
魔犬と戦ったときに比べて出力が膨大になっており、しかも制御が不安定なので、戦闘からは除外されている。
「あーもう、憎たらしい! でも可愛いの! 妹みたいなものだもん!」
スカーレットは嫉妬と慈愛の心が同時に顕現して混乱していた。
クレアを病的に慕っていて、自分よりクレアに近しい者には無差別に嫌悪を向ける彼女だが、実は子供好きだ。
「ああああクレアの子供! クレアの娘! クレアの分身! 可愛いい可愛いいい憎たらしい可愛い可愛い可愛い憎たらしいい可愛い可愛いよしよしよしよしアハハハハハハハハ食べちゃいたいくらい可愛い可愛い子供かわいい子供かわいい可愛い可愛い可愛い憎たらしい可愛い可愛い可愛いいいい食べちゃいたい食べちゃいたい食べ食べ食べ食べ食べ食食食食べ食べ食食食ああああああ食べ可愛いいい!!」
常軌を逸した慈愛一色に心が染まり、スカーレットは涎が止まらない。
名も無き赤子は、それを見てダァダァと声を発して喜んでいた。
その横では、ここしばらく姿を見せていない砕組隊長シュシュ・オーディナークが黙々と作業をしていた。
“神酒”にも似た赤い液体が入った容器が、いくつか置いてある。
シュシュはそれを使って理科の実験のようなことを行っていた。


- - - - - -


その頃、神殿で傷を癒したノーティ・バーグラーは、再び街へ繰り出していた。
子供の残虐さでもって彼は、良心の呵責を全く感じることなく、笑いながら切断アポートで心臓を抉り取る。
手当たり次第に市民から、心臓を抜き取って、コレクションして喜んでいる。
「るんたったー、るんたったー・・・ん?」
だが、いつの間にかノーティは遠巻きに包囲されていた。
「へっへ〜、また来たのか。」
砕組の奇数分隊、12隊96名。それだけの数を相手にするとわかっても、ノーティは少しも怯えていなかった。
合計の出力では上回っているとはいえ、個々の力はB2級以下・・・ノーティの数十分の1でしかない。
ノーティは、自分をボコボコにした京狐夜果里のようなエスパーがいないとわかって、ニタリと笑った。
「子供は風の子、元気な子っ、いっくよ〜!」
目の色が変わり、ひゅうひゅうと風が渦巻き、彼を包み込んで暴風となった。
「いやっほーい!」
もはや、つむじ風というものではない。風の牙、風の刃。あたりの物体を切り刻み、吹き飛ばしていく。
あっという間に広大な平地が出来上がり、砕組とノーティは互いに目視できる距離にいる。
「さあ、いっくぞ〜、“強奪”のノーティ・バーグラーあらため・・・“凶風童子”ノーティ・シニスターだっての!」
周囲すべてを切り刻む暴風サイコキネシス。これこそがノーティ第2の固有能力だった。
砕組96人はノーティの切断アポートを恐れて、それが届かない距離で遠巻きに囲んでいた。
それはノーティに、暴風サイコキネシスを発動させるに十分な時間を与えてしまったのだ。
「うあっはははほーい!」
ノーティは前方の部隊へ突撃した。その攻撃で6名が死亡。
力が違いすぎて勝負にならない。
「退け!」
「逃げろ!」
敗走の号令がこだまする。
「今度は逃がさないぞ〜! 逃がさないったら逃がさないっ。逃がすものかっ!」
一方的な殺戮。虫を切り刻んで遊ぶように、ノーティは人を刻んで遊ぶ。
考えなしに面白半分に人を殺す子供。無邪気だからこそ迷いが無い。
最初は96人いたアルカディアフォースも半分近くまで減ってしまった。
「この勢いで、全・滅、させちゃうぞ〜!」
このままでは本当にそうなりそうだった。
全滅すれば、しばらくはノーティを止められない。そうなれば何千人死ぬかわかったものではない。
だが、そうなる前に救援は来る。
「“酒の勢い”(スルギム)!」
流れるような念力が、風の刃を潜り抜けてノーティに直撃した。
「ぐふぁっ!?」
ノーティが地面を転がり、その間に青年は地上に降り立った。
砕組第十八分隊長カーム・シュミット、遅ればせながらの参上である。
「まったく、子供というのは自分勝手でワガママで、自分がどれだけ周囲に不快な思いをさせ、迷惑をかけているかわかってないんだ。」
カームは淡々と怒っていた。
「何だよ何だよ、おじさん何様だっての。大人だって自分勝手でしょ、それなのに子供には」
「うるさい黙れゴミ。」
「・・・っ」
カームに睨まれてノーティは怯んだ。
「年齢は関係ない。10歳の大人もいれば、50歳の子供もいる。」
そこからカームは仲間50人に呼びかけるように、大声で言った。
「ろくに考えもせず、欲望のまま好き勝手に暴れる害獣! これを放っておいて何が大人か! 子供が道を踏み外したら、殺してでも止めるのが大人の役目だ!」
その言葉は、強烈な威力を発揮した。
逃げ腰で嬲り殺されるのを待つだけだった砕組50人は、活気付いた。
「“酒の勢い”(スルギム)!」
カームの攻撃が再開する。それに続いて50人が次々とサイコキネシスで援護する。
総合力は上回っているのだ。力を合わせさえすれば勝てない相手ではない。
「げふっ! 何が大人の役目だ偉そーに! ぼくは自由に行動してるだけだよ? それの何が悪いっての!」
ノーティもダメージを回復し、暴風サイコキネシスをMAXにして反撃。
だが、カームも負けていない。
「自由? 横暴の間違いだろ。幼稚な愚物が何を気取るか!」
彼の流体サイコキネシスは風の刃を潜り抜けてノーティへ辿り着くのだ。倍以上の力の差があるとはいえ、ノーティの技量では防御も回避も不可能だった。
「わーん、もうやってらんないよ! 帰る!」
しかしテレポートが上手く発動しない。
「!?」
「気が付いていないのか? 僕も“神酒”を飲んだのだ。テレポート能力はデリケート・・・こうして同じ能力で干渉してやれば、長距離は飛べない。」
「ぼくの邪魔するな! するなするなするなあー!」
しかしノーティの暴風サイコキネシスは当たらなくなってきている。
カームが透視と予知で風を見切り、テレパシーで仲間に伝えているのだ。
「終わりだ坊や、遊びの続きは地獄でやってろ!」
カームの流体サイコキネシスが与えるダメージは、ノーティの回復量を凌駕していた。
ダメージの蓄積と共にノーティの攻撃力もダウンし、カームはますます戦いやすい。
「くそー! くそー! 何でだよう! 死ね死ね死ねアホ馬鹿!」
「思い通りにいかないと、すぐに駄々をこねる・・・低劣で醜悪!」
「ぎりっ・・・!」
ノーティはカームを睨みつけて歯軋りし、その瞬間、暴風は凪いだ。
(今だ!)
このチャンスを逃すカームではない。
「“酒の勢い”二式!」
それは流体念力の刃。高圧の水が鉄をも切断できるように、それはノーティの型を貫いた。
「ぐぎゃあああっ!」
しかし同時にノーティの切断アポートが、カームの臓腑を抉っていた。
「ごぼっ!」
「ははっ、やったやったあ〜、カームの心臓はぼくのもの〜!」
肩の傷も寸前で体をひねったおかげで大したことはない。すぐに回復しつつあった。
「・・・え?」
しかしノーティは、自分が抉り出したものを見て固まった。
「肺?」
気付いたときには遅かった。暴風の盾を無くしたノーティの無防備な体に、50人分のサイコキネシスが直撃。
「ぐぎゃららららららら!?」
「残念だが、僕の心臓は右にあるんでね。ひゅー、ひゅー、ぐっ・・・。」
カームは体の中を強引にサイコキネシスで修復していた。
「お前が切断アポートと暴風サイコキネシスを同時に使えないのは知ってる・・・。追い詰めたら切り替えて僕の命を狙ってくるのはわかっていた。ひゅー、ひゅー、それがチャンス。切断アポートを予知して、心臓を更に右へ寄せ、その他重要器官も肺だけ残して移動させた。ひゅー、ひゅー、肺は片方だけでも何とか呼吸は出来る・・・からな・・・。」
「がぎゃっ、ぐぎゃ、ごげっ、ぐごっ! まだ、終・わ・ら・な・い〜!」
ノーティは再び切断アポートを発動。
しかし、それは不発。
「!?」
「馬鹿め、何で僕がわざわざそれを食らったと思う。こうして干渉し、妨害する為に、ひゅー、ひゅー、能力の質を肌で覚えておいたまでのこと!」
「ぐにいい〜!?」
「“酒の勢い”!」
流体サイコキネシスがノーティの体を14箇所も切り裂いた。
「ぎゃあああああああっ!!?」
「終わりだ。」
「逃げっ、逃げっ、あああー!」
「無駄だ。テレポートは封じてある。」
「・・・・・!」
ノーティはたまらず泣き出した。
「うわあん、うわあん、おうちへ帰りたいよう!」
「帰れよ・・・地獄へな。」
冷酷な顔のカームが、とどめの一撃を放った。
ノーティは脳天をぶち抜かれ、幼い命を散らした。


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「危ない嫉妬心だなスカーレット・マーチン。食いてえ食いてえ」
ゴリーレッド「これでは戦闘に参加できない」
火剣「シュシュが近くにいるからいいが、クレアも赤子を任せるということは信用しているのか、大丈夫と踏んでいるのか」
コング「♪大丈夫大丈夫! 大丈夫大丈夫!」
ゴリーレッド「酒を飲んだか?」
火剣「シュシュの実験も気になるが」
コング「媚薬を製造しているんだきっと。ひと塗りであーんって虜になる媚薬を開発すればバトルにも役立つ」
ゴリーレッド「寝言は寝て言えと習わなかったか」
コング「じゃあ寝て言う。頑張れルード」
ゴリーレッド「ニードロップ!」
コング「があああ!」
火剣「子供の残虐性を風刺。子供だから許されるは甘い。少年だから人を惨殺しても死刑にならない世の中だがカームはそんなに甘くない」
コング「子供と大人。どっちがバッドマナーか」
ゴリーレッド「大人が良識人ばかりなら若者にも言えるがバッドマナーの大人はあまりにも多い」
火剣「なるほどいざとなればテレポートできるという安心感が敗因か」
コング「終わりだ坊や、遊びの続きは地獄でやってろ! 決まった」
ゴリーレッド「心臓や臓器を移動できるのか」
火剣「肺だって強奪されたらきつい」
コング「強敵を消したか。さてルードはどうなっているのかな。ハービスとラプソディアをまずは裸にしたか」
ゴリーレッド「ルードしか頭にないのか」
コング「今週m」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「なああああい!」

火剣獣三郎
2016/06/02 11:13
>火剣さん
ご覧の通り(笑)精神性に難があるので戦闘には出せないスカーレットです。クレアが預けているからには大丈夫だとは思いますが・・・。
さて、戦局はパワーアップしたカームがノーティを撃破。しかしまだ十戒は7名も残っています。ルードとの戦いも間近!

佐久間「マジか。」
山田「くだらないダジャレを吐いてる場合か。」
維澄「佐久間に子供がいたら、スカーレットと同じような反応をしてしまうかも。」
佐久間「今のうちに栞を殺しておくべきか。」
八武「やめたまえ。」
神邪「シュシュさんは何をしているんですか?」
山田「媚薬の製造でないのは確かだ。」
佐久間「だが遠くない。ある薬の製造だ。」
八武「簡易版“神酒”かね?」
維澄「その手もあるね。」
山田「ノーティは可哀想だが、殺すしかなかったか・・・。」
神邪「大人はおかしいと主張する子供は、良い子である義務がありますね。」
山田「大人の方が盗んでる。ノーティの主張は心に留めておくべきだな。」
八武「鍛えれば、臓器移植に役立ったかもしれないねぃ。」
佐久間「なるほど医者の観点。」
八武「超能力は役に立つのだよ。悪意と恐れさえ無ければね。」
維澄「いつもその真面目さを発揮していれば素敵なのに。」
八武「大丈夫、私は常に真面目だ。さあ私の胸に飛び込んでおいで。」
山田「飛び蹴りでいいか?」
八武「何もかも間違ってる!」
山田「お前のことだな。」
佐久間「アタル兄弟を倒せば折り返しだが、これが一筋縄ではいかない。」
アッキー
2016/06/02 22:02

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