佐久間闇子と奇妙な世界

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<<   作成日時 : 2016/06/30 00:00   >>

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何も好き好んで、こんな人生を送ってやしない。

おれは普通の人間よりも疲れやすい分、思い通りにならないことも多かった。
人と遊ぶのも面倒で、家に引き籠もりがちだった。たまに遊んでも、すぐにしんどくなってしまう。
最初は友達だと思っていた人間も、すぐにおれを見下すようになりやがった。そんな少年時代を延々と過ごした。

長かったよ。
絶望的に長くて、人生の大半をこんな気分で過ごさなければならないのかと思って、自殺も考えた。
ひたすら見下され、馬鹿にされるだけの毎日。両親にも、とっくに諦められていた。

疲れやすいのは体だけじゃない。
30分も勉強を続けると、頭が絞めつけられるように痛くなって、がんがんと叩かれるような気分になって、何も頭に入ってこなくなる。
我ながら、救いようがない。

学校も休みがちになり、かといって他に何をするでもなく、家でダラダラと過ごすだけになった。
1日の半分以上を寝て過ごし、食べたいときに食べ、起きたいときに起きる。
そんな生活を送ってきた人間が、そのまま大人になったらどうなる?
おれのようになるのさ。

大人になったらなったで、働かなくてはならなくなる。
すぐに疲れる人間は、無能でやる気が無いと見なされて、どこも雇わない。
おれも、働かなくてはならないと思っている。
だらけた生活を送っていてはならないと、強く思っている。
しかし駄目なんだ。無理して規則正しく起きようとしても、体が鉛のように重く、頭もガンガンして、どうしようもない。

働き口が見つかっても、すぐに疲れて休憩ばかりのおれは、辞めさせられるか、散々に悪口を言われて自分から辞めるかだった。
そんなおれを見かねたのか、両親が強引に見合いをさせてきた。
逆らう気力も無かったおれは、結婚することになってしまった。

人間やれば出来るというが、おれは死に物狂いで働いた。
体が痛くて、頭がガンガン鳴って、毎日毎日わけがわからなくなりながら働いた。
傍目からは、おれが真面目な勤め人になったように見えただろう。
それも、前後不覚になったときでも妻が温かく迎えてくれたおかげだ。
そのうち子供も出来て、おれも以前ほどには働くのが苦痛でなくなっていた。

しかし、娘が大きくなって、学費や何やら金がかかるようになって、おれの人生は再び暗澹たるものになっていった。
新婚の頃は温かく迎えてくれた妻も、次第に冷たくなり、おれを見る目つきが変わっていった。

あるとき、あなたの稼ぎが少ない、もっと稼いでよ、と言われた。
そのときから、おれは仕事が手に付かなくなった。
以前と同じか、それ以上に疲れやすくなり、頭の中でサイレンが鳴りっぱなしになった。
勤めていた会社にも行かなくなり、近くの公園で過ごすようになった。
備蓄が尽きて、妻は物凄い剣幕で怒鳴り散らして出て行った。

家に残った娘は、学校を辞めて働いた。
しばらくは娘の稼ぎで生活していた。
半年もしないうちに破綻が来た。
お前のせいで、私は人生を損してる、と言って、娘は出て行った。

それから先、誰も頼れず死を待つだけとなったおれのもとに、クリエ・ソゥルと名乗る男が現れた。
振って湧いたような幸運!

“神酒”を飲み、アンティローグの一員となったおれは、ようやく気付いた。
自分に欠けていたのは、ただ単に「力」だった。
やる気も根性も溢れんばかりにあった。

その証拠に、おれは“休息”のレスト・プロミネという名を貰ってから、アイドのマネージャーとして精力的に活動している。
そしたら娘もアンティローグへ入ってきたではないか。

勝った。
人生に勝った。

グズでノロマなラルフ・クロフォードはもういない。

勝った。
勝った。
勝った。



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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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2016/06/30 00:01

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「何も好き好んでこんな人生を送ってやしない。このセリフは多くの人間が呟いている気がする」
ゴリーレッド「疲れやすいというのは病気だと思う。極端に肺活量が少ないなど見た目は健康にしか見えない病気もある。すぐにだるくなりソファに横になるから端からナマケモノ扱いされ心もすたれていく悪循環」
火剣「光に当たれないから顔を黒いもので隠している人もいる。職務質問した無知な警官がいてニュースになったな」
コング「少年時代に見下された経験は一生忘れないか」
ゴリーレッド「両親だけは最後まで味方であってほしいが諦めてしまうのか」
火剣「ドラマだが優秀な姉と比較して不良な妹に産まなきゃよかったと言う母親」
コング「それは言ったらダメでしょう」
ゴリーレッド「この状況で結婚は驚き。一時は良いように見えてやはり破綻が来た」
火剣「本当にどん底で最悪の状態の時にクリエ・ソゥルは現れる」
コング「アイドのマネージャーとは遣り甲斐のある仕事だ」
ゴリーレッド「やる気も根性もあった。足りないのは力だけだった。海賊になる若者に似たレールを感じる」
火剣「貧困で餓死寸前の人間の思考回路は鈍いし世界を敵視しているかもしれない。そういう時に誘われたら危ない。だから貧困撲滅は世界平和の直道だ」
コング「娘もアンティローグに?」
火剣「休息のレスト・プロミネ。休息が武器に変わったか。恐ろしい酒だ」
コング「透視能力だけ欲しいが」

火剣獣三郎
2016/06/30 12:29
>火剣さん
おそらくレストのような人間は多いと思っています。クリエは本当にタイミングを見計らって現れる。神のように見えてしまうでしょう。
人生に勝ったように見えて、もはや詰んでいたラルフ。

佐久間「虚弱に生まれついた時点で、人生は決まっていたな。片親だけでも味方だったら違っていたかもしれないが。」
山田「やるせない。ここでも社会の無理解が魔物を生んだ。」
神邪「昔は吸血鬼と呼ばれていた存在は、現代では光過敏症や幾つかの疾患・嗜癖の組み合わせで説明できるそうですね。」
山田「それでも無理解は無くならないか。」
八武「たとえ病気と診断されても、休んでいる人間を見ると怒りが湧いてくる人も多い。自分は働いているのに、という心理が出る。」
維澄「生活保護と同じだね。受給者は攻撃に晒されている。」
佐久間「知り合いの詐欺師が言っていた。詐欺は話術ではなく、ターゲットを選ぶことだと。孤独な人間、味方のいない人間は、味方が現れたら誰であろうとも飛びつく。」
神邪「悲しい心理ですね・・・。いや、僕は幸運だったと言うべきでしょうか。」
佐久間「そうだな。必ずしも悲しい心理じゃない。」
山田「近付いてきたのが真の味方なら、幸運を逃がさない性質にもなるのか・・・。同じ性質でも、相手によって明暗を分ける。」
八武「透視能力も使い方次第だ。私に透視能力を!」
佐久間「投資能力?」
山田「おい。冬だったら凍死してたぞ。」
維澄「貧困問題は21世紀の今でも全く解決していない。ラルフの姿は他人事ではないね。」
アッキー
2016/06/30 22:35

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