佐久間闇子と奇妙な世界

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<<   作成日時 : 2016/06/06 00:00   >>

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ありがとう、と言わせてもらおうか? いや、少し違うかな。
ハービスめ、余計な真似しやがって。あのまま逝けたら幸せだったのに・・・。
イブもキャンディナも死んでなくて、キャンディナは結婚して子供もいて・・・。
ついでにアトラトも加わって、みんなで誕生祝いか。
なんて理想的な幻じゃないか。
あの光景こそが・・・わたしが求めていたものだった。
20年前に破れ、2年前に砕かれた幸せ。
戻らないさ。戻らない。

かつて・・・アルカディアに来たとき、わたしは17歳、妹のイブは14歳。終戦直後で、世の中がメチャクチャだった。
あの頃は犯罪という言葉は無かった。犯罪とは日常で、誰もが犯罪者だったから・・・。
わたしの手も血で汚れていた。イブを守る為に暴漢どもを始末したこともあったし、食う為に強盗した。
数知れずの人を殺めたが、同じ境遇の弱者を襲ったことはない。
しかし今更そんなことは、誇りにもなりはしない。イブは死んだのだから・・・。
正確には19年前の春、2歳の誕生日が間近の娘を残して、任務を遂行して死んだ。
残されたキャンディナも、2年前の任務で首だけになっていた。

そうさな、幸せだけを求めるなら、フィリップ・ケストナーのように引退すれば良かったんだ。
何故そうしなかったか・・・わたしも、イブも、キャンディナも。
驕っていたか。
己の実力を過信していたのか。
そうでないとは言い切れないが、それだけとも言えない。
過去に背を向けて、自分たちだけの幸せを追い求めるのではなく、過去と戦う道を選んだのだ。
理不尽に苦しめられる弱者は、過去の自分たちそのものだったから。
救済はそれ自体が目的ではなく、惨めな過去と戦って打ち破る為の手段だった。
だから慈善でやるんじゃない。
慈善活動なんてものは、突き詰めれば“可哀想な人”に“手を差し伸べてやる”だけだ。
そこには理不尽を根本から粉砕しようという意思は無く、己の薄っぺらな良心を満足させる程度でしかない。
だからわたしは戦う道を選んだ。
力を絞り、技を磨き、冷徹に任務を遂行していった。
砕組で、隊長、副隊長に続き、分隊長の中で頭ひとつ抜けて最強と言われるまでになっていた。
準幹部の七十七璧から、重幹部代行の準星にまでなった。

だが、どこからかな・・・。
いつから歪んでしまったんだろう。
そうだ、クレア・クレッセント。あの女と出会ったときからかな・・・。
イブの死に関与していたからという理由だけで毛嫌いしていたわけではない。
憎んでいたよ、ああ、憎んでいたさ。
そして悔しかったのさ。
クレア・クレッセントは、わたしの知らなかった闇だ。
彼女の抱えている闇の正体がわからない。今でもわからない。
出会ったときにはわからなかった膨大な負の想念が、時を経るごとに大きく感じられる。
だがそれも、それすらも氷山の一角に過ぎないのだ。
わたしが理解している部分など、ほんの一部分でしかない。

奴はどうして、あんなにも濁っている?
この世の理不尽を打ち砕くべく尽力していたが、彼女の抱えている理不尽は、わたしには打ち砕けない。
直感であって根拠は無い。
根拠が無いからこそ、わたしは今まで通りに戦い続けた。
だが、そうだな・・・それは惰性に過ぎなかったのだ。
だからキャンディナも死なせてしまった。
戻らない。戻らないんだ。
全てがどうでもよくなった。
イブもキャンディナもいなくなった世界は無くなってもいいと思った。

ずっと死に場所を探していた。
今でも生きたいとは思わない。
大事な人がいなくなっても、世界は淡々と続いていく。
わたしは後継の為に死のうと思っていた。
死にたいという意思が主体であり、そのおまけとして1人でも多く救えればと思っていたのだ。
けれど、違うわね。
仲間の命を1人でも多く助ける。その為に自分が生きてようが死んでようが構わない。
死ぬことは恐れていなかったし、今でも恐くない。
しかし、ハービス・・・お前のおかげで、生きることも恐くなくなったよ。
死んでもいいとは思っても、死にたくもないし、死ぬべきだとも思わない。
わたしの命も残り少ないだろうが、それを精一杯燃やし尽くすだけだ!


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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佐久間闇子と奇妙な世界
2016/06/06 00:00

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「キャンディナも悲劇過ぎた。むご過ぎる」
ゴリーレッド「ラプソディアを大切な人と思っていた仲間も多いはず。一生忘れられないだろう」
コング「血塗られた道をヴェネシンも歩んで来たのか」
火剣「普通に生きられなかった人間がマイナスをプラスに転じるとしたらこの生き方しかない。激しく共感する。慈善活動ではないのだ。戦いなんだ。理不尽を根本から粉砕する強固な衝動は、怒りから生まれる」
コング「ドウドウ」
ゴリーレッド「賢吾か」
火剣「貧困で一度死んだ男は復讐を誓う。貧困で苦しんでいる人を無条件で救済することが賢吾の復讐。お金のない人に追い込みをかける人間を罵倒する激しさは殺意レベルで、家賃を滞納したほうが悪い、税金を払わないほうが悪い、借金を返すのは当たり前という世の中の理屈を炎で焼きつくしていた」
コング「戦士はいわゆるアットホームな幸福なんか求めていないんだな」
ゴリーレッド「クレアが抱えている闇か」
火剣「そういうヴェネシンでもクレアは底が知れない」
ゴリーレッド「ハービスへの感謝のメッセージにも聞こえる」
コング「男が女に心臓マッサージって躊躇しないか。胸に両手を当てた瞬間に目を覚まされてこの人痴漢と叫ばれても困る」
火剣「機械の場合は確か裸にしてから貼るんだろ。女子はヤバイんじゃねえのか」
ゴリーレッド「医師は肋骨が折れても心臓マッサージしたほうがいいと言うが」
コング「ハービスが気絶したら迷わず裸にして心臓m」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「なーにがー!」
ゴリーレッド「黙れ不謹慎男」
火剣「死に場所を探す生き方も戦士ならプラスだ」
火剣獣三郎
2016/06/07 00:07
>火剣さん
マイナスからゼロになっても、平均はマイナスのまま。いつまでも過去が生々しく、現在と変わらなければ、普通の生き方は出来ないです。
それでもヴェネシンは、心が病んでいるほどではなく、マイナスは薄まっていく。狂気はあっても闇は無いタイプです。クレアの抱えている闇は、ヴェネシンには理解できないものです。

山田「俺にも佐久間の闇は理解できないのかもしれないな。」
佐久間「そうだろうな。」
維澄「理解して欲しいとは思わないの?」
佐久間「こればかりはタイプが違うとしか言いようがない。説明しづらいが、無理なものは無理だ。ヴェネシンにクレアの闇は一生わからない。」
神邪「その説明で納得できるかどうかも、タイプの違いですね。」
八武「キャンディナ、ラプソディア。」
山田「泣いてるのか。」
八武「・・・うむ、今は泣くときではないな。ハービスへの感謝で、己を奮い立たせるときだ。人を褒めるというのは、自分を奮い立たせる行為でもある。」
神邪「人を助けることが、自分を助けているようにですね。」
佐久間「誰も助けてくれないのなら、自分で自分を助けるしかあるまいよ。憎悪の強さは、偽善と罵られることを恐れない。最強の勇気は、怒りと憎しみから湧いてくるものだ。」
神邪「木原幻生も言ってましたね。志や欲望は解けやすく、憎悪は強い。」
八武「ちなみに心臓マッサージは、あんまり役得でもない。」
維澄「医師としての使命感が勝るんだね。」
八武「意識が無いと、嫌がってくれない。」
山田「おい。」
佐久間「死根也は照れてるんだよ。」
山田「そうか。」
佐久間「次はマーダだ。」
アッキー
2016/06/07 00:54

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