佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS クロス・アバター   第五話・前編

<<   作成日時 : 2016/08/26 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



俺は、人には言えない事情がある。

それは人によっては、大したことがない事柄だろう。
あるいは逆に、病的に否定されることかもしれない。



◆ ◆ ◆



「あーあ、負けちゃったか。」

ショートヘアが力なく垂れ下がった。

「悔しいよ、泣きたいよ、だけど清々しい。やっぱデュエルって・・・いいね。」
「俺もそう思うぜ、そ・・・笑氏。」
「園花でいいわよ。気にしないで。ううん、あたしが下の名前で呼んで欲しいの。」

次の瞬間、背後から園花は口を塞がれた。

「!?」

しかし数多は笑っていた。

「・・・やっぱりな。」
「あらら、どうやらバレてましたわね。」

白い薔薇が凜と澄まして、紺サージのスカートを翻した。
さっきまで床に、だらしなく倒れていたのが嘘のようだが、スカートには皺がついていた。
そしてブラウスには、埃がついていた。

「その通り、狂言ですわ。」

埃を払いながら、ダリアは言う。

「だけど、ふたつ。」

勝利と平和のシンボルは、令嬢としてはアクティブな仕草に見えた。
ダリアは指を折り、唇を開く。

「この計画は、わたくしが立てたものですわ。笑氏さんを、そそのかした、わたくしが悪いのですわ。」
「そんな、白木原さんは・・・」
「いいって。俺はどっちのせいにする気も無え。責めたくねえよ。」
「よろしくてよ。」

払った埃が白い薔薇に変わる。

「もうひとつ。わたくしが倒れていたのはお芝居であっても、笑氏さんの思いは本気です。勝てば黒須さんを殺して死ぬことも含めて、本気でしたわよ。」
「・・・ま、今更そんなこと言ったって、信じてもらえないかもしれないけどね。でも黒須、デュエルに負けた今でも、あんたのことが今も本気で好きよ。殺したいくらいに。」
「そっか・・・。ありがとな。」

数多は目頭が熱くなった。
たとえ思いに応えることが出来なくても、嬉しい気持ちに嘘は無い。

「園花の思いには応えられねえが、だけど俺は、感動している。これは本当だ。」
「わかってるわよ。どんだけあんたのことを見てると思ってんの。」
「わかっていた未来でしたが、美少女ふたりを袖にするとは、あたたかい色男ですわね。」
「・・・すまねえな、ダリア。お前の提案にも乗れねえよ。お前を苦しめる未来が見えてっから。」
「あら、わたくしが黒須くんを本気で好きだってこともバレてました?」

少女は、悲しそうに微笑む。
白い薔薇が背後で首を垂れていた。

「バレバレだよ。だから、お前を苦しめたくねえ。」
「あら、遂げられない思いに苦しむ日々で女を磨くのも、一興かと思っておりましたのに。」

冗談か本気かつかない顔で、ダリアは事も無げに言った。
それとも精一杯の強がりなのか、彼女は小さく震えていた。





「さよならの時間だ。」





体育館の天井から聞こえてきた声が、床まで落ちてきた。

「よう、見てたぜ。お前らのデュエル。」

ネクロ。
湯布院ネクロ。

足を骨折して動けない。

「ようやくお前の中の悪魔を魅せてくれたな、数多。」
「ネクロ・・・。」

数多は緊張の面持ちでネクロを見つめた。

「足・・・痛くねえのか?」
「こんなもん、屁でもねえよ。」

片足で立ち上がったネクロは、そのままデュエルディスクを構えた。
それと同時に、園花とダリアの足下から、黒い瘴気が噴き出す。

「きゃっ・・」
「何事ですの!?」

そのまま黒い瘴気は2人を包み、ネクロへ吸い込まれる。

「いただきぃ。」

瞬く間に折れた足が治り、ネクロは両足で床を踏みしめた。

「―――っ、な・・・何を・・・・・・」

数多の頭は混乱で動かない。
思考が空転して、上手く言葉が出ない。


「ダリアと園花は僕がいただいた。手塩聖夜と、脳堂美宇も、既に吸収した。へへ・・・美味かったぜ。」


ネクロは死人のような目で、どんみりと笑う。

「あとは数多、お前だけだ。お前も吸収して僕は・・・僕らは、ひとつになるんだ。」

濁った目が、見ているだけで痛みを感じるほど鋭くなる。

「さァ、ディスクを構えろ数多ァ! 僕と楽しく、デュエルしようぜーーーっっっ!!」

「・・・っ」

ねっとりした汗が止まらない。
しかし数多はデュエリストの本能に従って、再びディスクを起動する。



「「デュエル!」」


黒須数多:LP8000
湯布院根黒:LP8000



「この瞬間、僕はデッキから《振り子の揺れる闇の世界》を発動する!」


振り子の揺れる闇の世界 (フィールド魔法)
このカードはデュエル開始時に、デッキまたは手札から発動する。
このカードはフィールドから離れない。
互いのペンデュラムスケールは、0と13として設定される。



「ま、それだけだ。ドローしてターンエンド。」

「・・・っ、ドローゴーだと? 舐めてんのか?」

「いいな、それ。ようやく頭が回ってきたか。舐めてるわけじゃないが、まァ確かに全力でもない。」

「・・・・・・。」

ネクロの意図が読めない。
だが、数多の手札には既に、キラーカードが舞い込んでいる。

「ドロー。俺は《サンダー・ドラゴン》を捨てて、2枚の《サンダー・ドラゴン》を手札に加える。」

「来るかい?」

「ああ。」


闇の世界に、鎖の走る音が響く。
滔々と流れる、水の音が響く。

棘のついた鎖が視界を覆い、真っ白な十の錠前が出現する。


「淫らに染まりし暗い川よ、自然に抗い、運命を貫け! コンファイン召喚!! 出でよ、《ソドム》!!」


ソドム クラス10 炎属性・悪魔族・コンファイン
攻撃力2000 守備力2000 同属性モンスター×2体以上
(1)このカードの攻撃力は、自分のCゾーンのカードの数×1000ポイントアップする。
(2)このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、相手のカード効果を受けない。
(3)自分のモンスターは相手の守備モンスターに貫通ダメージを与える。



《ソドム》 (攻2000→4000)



「そして俺は手札から、《E−HEROヘル・ゲイナー》を召喚する!」


E−HEROヘル・ゲイナー レベル4 地属性・悪魔族
攻撃力1600 守備力0
自分のメインフェイズ1にこのカードをゲームから除外し、
自分フィールド上の悪魔族モンスター1体を選択して発動できる。
選択した自分の悪魔族モンスターはフィールド上に表側表示で存在する限り、
1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時、
この効果を発動するために除外したこのカードを
自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。



「ペンデュラム召喚は使わないのか?」

「ヘル・ゲイナーの効果発動! このカードを除外して、《ソドム》は2回攻撃できるようになるぜ!」

「いいな、それ。」

ネクロは頭を掻きながら、目を輝かせる。

「ダイレクトアタックだ!」


炎の巨人が拳を振り上げる。

振り下ろした先には、ネクロの細い肉体。


湯布院根黒:LP8000→4000



「・・・・・・」

「なんだ、僕が何もしないから警戒しているのか? 萎えるような真似すんじゃねえよ。僕をデュエルで倒しても、彼女らが死ぬなんてことはない。さァ、遠慮なく僕の首を掻っ切れ。パズルを粉々に破壊しろ。」

「そうさせてもらうぜ・・・ダイレクトアタックだ!」

再び炎の一撃が、細い体めがけて放たれる。



「やれるもんならなァ!」



湯布院根黒:LP4000→4000



吹き飛ばされはしたものの、ネクロは無傷だった。

「―――っ、馬鹿な!?」

「やれやれ、まだ頭が回ってないようだな。まァ無理もないか。僕に吸収された4人が心配だろう、そうだよな。」

ネクロは埃を払って、どんみりとした笑みを浮かべた。

「僕もデュエリスト能力者だってことを忘れてるんじゃないか? いや、見せたことはなかったか。これまで1度のデュエルで2回以上のダメージを受けたことはなかったからなァ。」

「・・・“プロテクション”みたいなものか?」


未熟な絶対防御(プロテクション) (所有者:稲守蛍)
それぞれのターンで自分が2回目以降に受けるダメージをすべて無効にする。



「まァ別に、教えてあげてもいいな。僕のデュエリスト能力は“メモワール”・・・受けたダメージ分だけ、受けるダメージが減る。」


未熟な免疫抗体(メモワール) (所有者:湯布院根黒)
このデュエル中に受けたダメージの合計値分だけ、自分の受けるダメージは減少する。



「・・・カードを2枚伏せて、ターンエンドだ。」


黒須数多:LP8000、手札2
場:ソドム(攻4000)
場:伏せ×2

湯布院根黒:LP4000、手札5
場:
場:振り子の揺れる闇の世界(フィールド魔法)



「僕のターン、ドロー。手札から、《聖鳥クレイン》2体、《闇へ解け合う風》、《可変機獣ガンナードラゴン》を、ペンデュラム召喚する。クレインの効果で2枚ドロー。」

「そいつは、ダリアと、園花の・・・!」

顔を歪めながら、数多は伏せカードに手を伸ばす。

「へぇ?」

「食らえ。」

四方の窓ガラスが、濁流に粉砕された。
巨大生物の舌のように、水が体育館へ雪崩れ込む。

「やってくると思ったぜ、ペンデュラム召喚を! 《激流葬》で、お前のモンスターは全滅だ!」




「・・・・・・シンクロ召喚、エクシーズ召喚。」

濁流の中から、闇の鳥が羽ばたく。

「1枚ドロー。」


闇へ解け合う風 レベル1 闇属性・鳥獣族・チューナー
攻撃力0 守備力0
このカードがシンクロ召喚のために墓地へ送られたとき、
自分はデッキからカードを1枚ドローする。



「は・・・・・・?」

「《スクラップ・ドラゴン》に、《ホワイト・ローズ・ドラゴン》だ。」


スクラップ・ドラゴン レベル8 地属性・ドラゴン族・シンクロ
攻撃力2800 守備力2000 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分及び相手フィールド上に存在するカードを
1枚ずつ選択して発動する事ができる。選択したカードを破壊する。
このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、
シンクロモンスター以外の自分の墓地に存在する
「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。



ホワイト・ローズ・ドラゴン ランク4 光属性・ドラゴン族・エクシーズ
攻撃力2400 守備力1800 レベル4モンスター×2体
(1)このカードはモンスター効果で破壊されない。
(2)このカードのX素材を2つ取り除くことで、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。
その後、破壊された自分のカード×300ポイント、このカードの攻撃力がアップする。



「・・・っ、《コンファイン・リボーン》!」


コンファイン・リボーン (罠カード)
自分の墓地からコンファインモンスター1体を特殊召喚する。



濁流に押し流された炎の巨人が、再びフィールドに顕現した。



黒須数多:LP8000、手札2
場:ソドム(攻4000)
場:

湯布院根黒:LP4000、手札5
場:スクラップ・ドラゴン(攻2800)、ホワイト・ローズ・ドラゴン(攻2400)
場:振り子の揺れる闇の世界(フィールド魔法)




「いいな、それ。いい感じに、わからないって顔してんな。僕もわからないよ。パズルが解けないんだ。」

ネクロは笑うのをやめて、淡々とプレイを続ける。

「1000ライフ支払って《簡易融合》発動。《古代の機械双頭猟犬》を融合召喚。・・・僕が言う義理でもねえが、みんな美少女だよな。ノエルは黒髪ロングの正統派、ダリアは凜と上品な令嬢、園花は元気で可愛いし、美宇は美人なだけでなく抜群のスタイルだ。パズルのピースは手の中さ。」

さくさく出てくるモンスター。
なかなか減らない、しぶとい手札。

「儀式魔法《影霊衣の万華鏡》発動。この儀式魔法は、素材をエクストラデッキから賄える。《古代の機械双頭猟犬》をコストに、《カタストルの影霊衣》を儀式召喚。・・・なあ数多、僕は不思議なんだ。どうして彼女たちの想いに応えられない? 極論すれば、ハーレムだって実現できるくらいなのにさァ。」

どんみりした瞳は、冷たい空気を纏っている。

「まァ、1人だけを愛するならいい。他に好きな人がいるなら、それでもいい。だがね・・・それなら、何故そうと言わない? 誰を選ぼうか迷ってるってことでもあるまい。」



「・・・お前だよ。」



「は?」

小声だったが、ネクロの耳には届いていた。
だが、内容が届かない。

ぽかんとした表情のネクロに、数多は泣きそうな顔で再び告げた。

「だから、お前だって。俺の本命。」

「・・・っ、・・・・・・」


無言で口をパクパクさせるネクロに向かって、数多は決定的な言葉を発した。


「俺はゲイだ。」





つづく

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決闘学園・壊   目録
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2016/08/28 00:27

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内 容 ニックネーム/日時
ついに物語は核心へ。何度も出て来た冒頭の三行の意味が明かされた。私はずっと数多さんが隠していた自分自身のカード(コンファイン)に関するものだと思っていましたが、そうではなかった。愛憎少女にコンファイン召喚、闇の世界シリーズ、更には人を飲み込むネクロの能力。しかし、この作品が本当にテーマにしていたことはそれらではなかった。

ある人は、男が女を好きになるのと同じだと言うかもしれない。
ある人は、個性であるし、程度の差だと言うかもしれない。
ある人は、個人の好みの問題だと言うかもしれない。
ある人は、気が狂っていると喚き散らすかもしれない。
ある人は、交友関係を絶つかもしれない。
ある人は、しきりに女の人との結婚を勧めてくるかもしれない。

そして、この社会では人に決して言えない。まだ大多数の人、「社会」には受け入れられていない事柄だから。
千花白龍
2016/08/26 23:28
>千花白龍さん

今明かされる衝撃の真実ぅ!
ハーレムぅ? 何それぇ? これはBLだよぉ!

・・・いや、もちろん真面目に書いておりますよ。
「強力なオリカで勝ってしまってもいいのか?」というテーゼも真剣に問いかけましたが、だからこそ上手くミスリードの役割を果たしてくれました。

世の中には様々な考え方がありますが、それらは同じ量ではなくて、同性愛に対して否定的・忌避的な感性が多数を占めています。
各自が“自分の意見”に沿って行動すれば、どうしても多い意見が幅を利かし、多数派と相容れないものを、多く持っている人ほど、窮屈で割を食ってしまいますね。

さて、ついに告白をしてしまった数多ですが、ネクロの答えは?
そしてデュエルの行方は、どうなるのでしょうか?

クライマックスは、ここからだ!
アッキー
2016/08/26 23:50

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クロス・アバター   第五話・前編 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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