佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS クロス・アバター   第五話・中編

<<   作成日時 : 2016/08/27 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



俺は男との会話が苦手だ。いつも心が縮こまってしまう。
クラスの女子で誰がタイプだと聞かれても、返答に困る。
心にも無いことを答えるのは、心が澱む。

男の会話は、“男女”を前提にしている。
“男同士”を前提にしていないから、窮屈だ。
悪意も無く、敵意も無く、自然体で俺を孤独にさせる。

「男の裸なんて見たくねえよ」と軽口を叩く奴がいると、しんどい。
悪意も無く、敵意も無く、俺の心を傷つける。

ゲイであることは、ただ男が好きなだけじゃない。
そのことで、価値観が合わないことが多い。多い。多い。多すぎる。

どいつもこいつも、男は女が好きなものと、勝手に決め付けてくる。
悪意も無く、敵意も無く、好意すら持って俺に近寄ってくる。

わかってるさ、彼女たちに悪意なんて無い。
その想いが人として嬉しいのは事実だ。

だが、男としては悲しすぎる。

窮屈で、やるせない。

・・・嫌になる。



◆ ◆ ◆



黒須数多:LP8000、手札0
場:ソドム(攻4000)
場:

湯布院根黒:LP3000、手札0
場:創星神sophia(攻3600)
場:振り子の揺れる闇の世界(フィールド魔法)




ごてごてしく神々しい、半獣半人の女神が、フィールドに降臨していた。
対峙する炎の巨人は、彼女の巻き起こした終焉を乗り越え、立ち竦んでいる。

「・・・・・・なるほどな。僕としたことが、その可能性を考えてなかった。」

長身を後ろへ湾曲させて、ネクロは天井を見つめた。
その顔は、どこか虚ろで、リセットされた手札と墓地のようだった。

「気持ち悪くねえのか?」

「は?」

聞き取れなかったわけではない。
ネクロは、数多の言ってる意味がわからない。

「何が気持ち悪い? 同性愛が? それとも、同性愛を認めない連中が?」

どんみりとした瞳は、大きく見開かれ、怒りすら燃えていた。

「理解しようとする連中も、結局は自分の物差しでしか理解しない。自分の理解する幅を広げようとしない。」

自分の理解できる範囲でしか理解しないのは、理解できないものを排除するのと、どこが違うのか。
そう言いたげな怒りを灯して、ネクロは悲しげに言った。

「なァ数多、人間はどこまで行っても他人とは分かり合えないんだ。」


麗しき馬頭観音が、再び殺意を集約する。


《創星神sophia》 (攻3600→4600)



「攻撃力が・・・? ・・・っ」

黒須数多:LP8000→7400



「数多、僕が好きなんだろ。僕のものになれよ。ひとつになろう。」

「・・・っ、俺のターン! ドロー!」

心が誘惑に塗り潰されそうになる。
だが、まだ塗り潰されない。まだ。

「魔法カード発動・・・!」


カオス・グリード (魔法カード)
自分のカードが4枚以上ゲームから除外されており、
自分の墓地にカードが存在しない場合に発動する事ができる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。



「それ、いいね。まだ闘志が折れないか。まだ。」

「フィールド魔法《うずまき》発動! この効果によるライフ変動は、ダメージじゃねえから防げねえだろ!」


黒須数多:LP7400→3700



「僕はダメージも防いでるわけじゃないさ。ただ、軽減してるだけでね?」


湯布院根黒:LP3000→1500



「・・・っ」

「どうした? この程度で僕を倒せると思っていたわけじゃないよな? 《うずまき》によるライフ変動はマイナス4000か半減かを自由に選択できる。魔力は必要だがな。」

「・・・カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」



黒須数多:LP3700、手札0
場:ソドム(攻4000)
場:うずまき(フィールド魔法)、伏せ×1

湯布院根黒:LP1500、手札0
場:創星神sophia(攻4600)
場:振り子の揺れる闇の世界(フィールド魔法)




「ったく、そうシリアスになるなよ。ターンエンドオブザワールドとか言ってろってば。ドロー。」

どんみりした瞳は、圧力を減らしていた。

「僕も《カオス・グリード》で2枚ドロー。・・・わかってんだろ、このデュエル、お前に勝ち目は無えよ。最初から不公平なデュエルなんだからなァ。」

「不公平? 不平等だとは思うが、不公平だとは思わねえぜ。」

「ルールやカードの話じゃねえよ。僕が言ってるのは、単純に人数の問題だ。なァ、薄々わかってんだろ、どうして僕のモンスターが罠カードで破壊されないか。攻撃力が1000上がるのか。」

「・・・・・・。」

「知ってるはずだ、デュエリスト能力は本人しか使えない。彼女らのデュエリスト能力は、彼女らの意思で、僕に味方してるんだ。・・・そして数多、お前の敵ってわけじゃない。」

ネクロの背後に、4人の少女たちが見える。

「あらゆる魔法カードの効果で破壊されない、“マジックアウト”!」


退魔肉体(マジックアウト) (所有者:白木原ダリア)
自分のモンスターは魔法カードの効果で破壊されない。



「あらゆる罠カードの効果で破壊されない、“ワイルドビジョン”!」


野生存命(ワイルドビジョン) (所有者:笑氏園花)
自分のモンスターは罠カードの効果で破壊されない。



「あらゆるモンスター効果で破壊されない、“マッシブボディ”!」


神子祝福(マッシブボディ) (所有者:手塩聖夜)
自分のモンスターはモンスター効果で破壊されない。



「攻撃時に1000ポイントアップする、“アクティブバトラー”!」


攻々昂揚(アクティブバトラー) (所有者:脳堂美宇)
自分のバトルフェイズ開始時に、
全ての自分の表側表示モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。



「そして僕は、“ネクロス”・・・・・・“エクゾディア”の成れの果て。」


未熟な免疫抗体(メモワール) (所有者:湯布院根黒)
このデュエル中に受けたダメージの合計値分だけ、自分の受けるダメージは減少する。



「なァ、気付いてるんだろ? お前の戦闘破壊されないデュエリスト能力は、《エクゾディア・ネクロス》の頭部パーツそのもの。彼女らは四肢で、僕はライフコストをカットした儀式魔法さ。」

「どういう意味だ・・・・・・はっきり言えよ。」



「僕たちは、元々ひとつ。ひとりの人間だったのさ。僕らはパズルのピースなんだよ。」



「―――っ」

「何だよ、そんな驚いた顔して。はっきり言えって言われたから、はっきり言ってやったんじゃないか。薄々わかってたんだろ、僕らは“同じ”だって。」

ネクロの手札から、1枚の永続魔法がフィールドに出される。


同星同名 (永続魔法・オリジナル)
通常召喚したモンスターと同じ星のモンスター1体をデッキからフィールド上に特殊召喚できる。
『白木』と名のつくデュエリストが使用する場合、
召喚、反転召喚、特殊召喚したモンスターと同じ星のモンスター1体を
召喚条件を無視してデッキ、エクストラデッキから特殊召喚する。この効果は重複しない。



「脳堂市長の子供として生まれてきたのは、奇怪な肉の塊だった。一度は分かれた肉体が、母親の胎内で過ごすうちに、再びくっついたのさ。僕らは、同じ星の下に生まれた。・・・レベル1の《ハネクリボー》を召喚。」


ハネクリボー レベル1 光属性・天使族
攻撃力300 守備力200
フィールドのこのカードが破壊され墓地へ送られた場合に発動する。
ターン終了時まで、自分が受ける戦闘ダメージは全て0になる。



「親は、中絶するほど残酷ではなかったけれど、僕たちをひとつのままにしておくほど優しくもなかった。観るに耐えない醜い肉塊を、医学と魔術を駆使して切り離した。見目麗しい少年少女に育ち、周りの目を楽しませるには十分だった。他人を楽しませる為に、僕らは切り離された。切り離されて、別々に育った。」

どんみりとした瞳には、呆れと、怒りと、言い知れぬ何かが浮かんでいた。

「僕は戻る。今の僕は白木原ダリアでもある。エクストラデッキから、同じ“星”のモンスターを、召喚条件を無視して特殊召喚できる・・・・・・なァ、数多、僕たちは自分しか愛せない。“他人”では駄目だ。お前はゲイだが、他の男じゃ駄目だ。“他人”は僕たちを、悪意も無く傷つける。頑張っても救いが無いと思わないか?」


どんみりした瞳から、凍える風が吹いてくる。

いつの間にか、ゆらめく巨人がフィールドにあった。
それは音も無く降り立っていた。


「“他人”は僕たちの細かいトラウマまでは配慮しないし、僕たちが“他人”に対しても同じことだ。たとえ配慮のある人であっても、僕らが傷つかないと覚えない。覚えることは山ほどあるのに、そのたびに僕らを傷つける。“他人”は誰も、最初から配慮することは出来ない。自他ともに痛みに鈍い奴が幸せなだけの、ゴミ世界だ。」


氷の巨人は、黒い影に覆われて、炎の巨人に向き合った。

ふたつの巨人は、鏡写しのように似ていた。


「他人同士は互いに分かり合えない。物語の中では、人と人とが分かり合えるが、それは同じ作者によって描かれているからさ。僕たちの関係は、それと似ている。僕たちは個人で完結するべきなんだ。くだらない愚かな“他人”を満足させる必要なんて無い。自分が満足すればそれでいい。・・・出でよ、《ゴモラ》。」


ゴモラ クラス01 水属性・天使族・コンファイン
攻撃力4000 守備力4000 モンスター×2体以上
(1)このカードが自分フィールドに表側表示で存在する限り、
相手は攻撃宣言できない。
(2)このカードは戦闘で破壊されない。
(3)1ターンに1度、自分のメインフェイズに発動できる。
デッキのカード1枚を選択し、自分のCゾーンに置く。



「同性愛的な感覚を持ってなければ、同性愛を理解することなんて出来やしない。自分の感覚に“合わせて”考え、その範囲内で出した結論を、理解と称しているだけだ。本気で理解しようなんて思ってないから、ゲイは心が女だから男を愛するなんて、ズレたことをほざきやがる。・・・僕はデッキから、《イグニス・リン》をCゾーンへ置く。」


噴き出す炎が、錠前に閉じ込められる。


「心が女の男もいるが、お前はそうじゃないだろ、数多。奴らは決して、男が男を愛することを認めない。女が女を愛することも認めない。だけど僕は理解できる。人が人を愛することを理解できるし、お前を受け入れる。お前が望んでるのとは違うかもしれねえが、断る理由なんてあるか? ・・・バトルだ!」


《創星神sophia》 (攻4600→5600)
《ゴモラ》 (攻4000→5000)



「罠カード《次元幽閉》!」

「《イグニス・リン》の効果で、破壊に変わるぜ?」


イグニス・リン レベル3 炎属性・炎族
攻撃力1500 守備力200
フィールドにCモンスターが存在し、このカードがCゾーンに存在するとき、
互いの発動する効果は「フィールド上のカード1枚を破壊する」になる。



「だったら俺は、《同星同名》を破壊する!」


《同星同名》 (破壊)



「悪足掻きだなァ。だが、いいな、それ。」


黒須数多:LP3700→2100→1100



「ターンエンド。」



黒須数多:LP1100、手札0
場:ソドム(攻4000)
場:うずまき(フィールド魔法)

湯布院根黒:LP1500、手札0
場:創星神sophia(攻5600)、ゴモラ(攻5000)、ハネクリボー(攻300)
場:振り子の揺れる闇の世界(フィールド魔法)




「・・・俺の、ターン! スタンバイフェイズに、ヘル・ゲイナーが戻ってくる! そして!」


突如として、馬頭観音と氷の巨人の背後に、溶岩の塊が出現した。


「は?」

ネクロの顔が凍った。



溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム レベル8 炎属性・悪魔族
攻撃力3000 守備力2500
このカードは通常召喚できない。
相手フィールドのモンスター2体をリリースした場合に
相手フィールドに特殊召喚できる。
このカードを特殊召喚するターン、自分は通常召喚できない。
自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。



「攻撃だ、《ソドム》!」


《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》 (破壊)



「・・・・・・いいな、それ。敢えて空気を読まないモンスターを出してくるとか、どこまで僕を楽しませる気だ?」

「ヘル・ゲイナーを守備にして、ターンエンドだ。」



黒須数多:LP1100、手札0
場:ソドム(攻4000)、E−HEROヘル・ゲイナー(守0)
場:うずまき(フィールド魔法)

湯布院根黒:LP1500、手札0
場:ハネクリボー(攻300)
場:振り子の揺れる闇の世界(フィールド魔法)




「もしかして安心してるのか? 僕を倒しても、彼女らは死なないって聞いて、安心したか? だけどなァ、数多、安心材料なんてどこにも無いんだぜ。僕を倒したら彼女たちが解放されるって、誰か言ったか?

「―――っ」


どろりと。


「ああ、やっぱりそれが、お前の希望の光か。だろうな。お前は最初から、彼女たちを救おうとしていた。だがな、いったん融合したら離れねえよ。いや、嘘は言ってねえぜ。僕はデュエルで負けても死なない。だから彼女たちも死なないって話だ。何でって、僕は“ネクロス”・・・死んでるんだぜ?」


絶望が堰を切って。


「死んでるから、痛みを感じない。天井から落ちたってのに、ちっとも痛くねえんだ。僕は何なんだ? 闇のデュエルでも死なない生物って何だ? もっと強い闇なら死ねるのか? 死にたいわけじゃないのに、この気持ちは何なんだ? でもまあ、いいや。デュエルを続けようぜ・・・ドロー。」


押し寄せる。


「さァ、ペンデュラム召喚だ。漆黒の太陽よ、運命の交わる刻に再び降り立て!!


希望の光を閉ざしたのは、絶望の黒い太陽。
押し寄せた濁流は光球となって舞い上がり、ヒトガタとなった。


The supremacy SUN レベル10 闇属性・悪魔族
攻撃力3000 守備力3000
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、
次のターンのスタンバイフェイズ時、このカードを墓地から特殊召喚する。



「どういう経緯でプラネットシリーズが僕やダリアの手に渡ってるかって、カードに選ばれただけさ。金星のカードを持つ月島日向も、地球のカードを持つ佐野春彦も、選ばれただけなのさ。単純な話だろう?」

切れ長の瞳は、人間関係の複雑さまでは言及しなかった。
それは言うまでもないことだから。

「The SUNで、《ソドム》を攻撃!」

「なに・・・?」


《The supremacy SUN》 (攻3000→4000)
《ハネクリボー》 (攻300→1300)



「・・・っ、そうか! SUNの効果は、このルールだと何度でも発動する! 《うずまき》が破壊され、マスタールールに戻っちまう・・・そしてループは終わるが、俺が発動するカードは全て《イグニス・リン》に・・・」


希望を焼き尽くす太陽が迫ってくる。



黒須数多:LP1100、手札0
場:ソドム(攻4000)、E−HEROヘル・ゲイナー(守0)
場:うずまき(フィールド魔法)

湯布院根黒:LP1500、手札0
場:The supremacy SUN(攻4000)、ハネクリボー(攻1300)
場:振り子の揺れる闇の世界(フィールド魔法)






つづく

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2016/08/28 00:27

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
出たー!同星同盟!しかも『白木』原さんだから、凶悪効果バージョンの方を使えるとな!?「星」はエクシーズのランクも、そしてコンファインのクラスにも対応している!完璧だ…。
しかも、アッキーさんは私が敢えて使わなかった使い方に気が付いていましたか。エクストラデッキが使えるので翼ちゃんはレベル4からランク4のモンスターを出したり出来る。それを使うと更なる凶悪コンボが組める…。

しかし、この六人が元は一人だったとは。しかも、モデルはエクゾディア・ネクロス!相変わらず伏線を張り巡らすのが上手ですね。六人は同じ星の元に生まれていたのだ…。
千花白龍
2016/08/27 19:42
>千花白龍さん

当初は原作効果の《コストダウン》を使って手札のモンスターのレベルを下げ、《ゴモラ》を出そうとしていました。
しかし白龍さんの《同星同盟》、そしてダリアの苗字が偶然にも「白木」を含んでいるとなれば、こっちの方が面白い!ということで採用させてもらいました。

「同じレベル」ではなく「同じ星」というのが、このカードの自由度の高いところですよね。
それならクラスでも出来ると気付いて、クラス1という条件の過酷さが、逆にメリットになるという、コンボの醍醐味。

物語の方も、いよいよ大詰め。
デュエリスト能力を、ゲーム展開を面白くするだけでなく、元は1人だったということを示す伏線としても使ってみました。
(同じ事柄に複数の役割を持たせる手法)
アッキー
2016/08/27 21:07

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