佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十話 縦の破壊 (上)

<<   作成日時 : 2016/10/01 00:04   >>

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■■■■■



その家は闇の言葉に支配されていた。
暴風のような、父親の怒鳴り声。
束縛する母親。嘆きは呪い。
障壁と、破壊と、後退が、荒れ狂う嵐の中で理性を繋ぎ止めていた。
けれど。
そのうち。
その中の、ひとりが。

『助けて・・・助けて・・・誰かぁ・・・』
少女は泣いていた。
どうしようもなく。
『誰か・・・・』
その祈りは、誰かに通じる。
通じるはずのない祈りが、電子の海へ響いた。
《こんにちは! 私サトリン! はじめまして!》
少女は、どこで“彼女”に出会ったのか覚えていない。
夢か、うつつか、はたまた幻か。
『あうう・・・・私ぃ・・・・人を、ころ、し・・・・ううっ・・・』
《つらかったね。》
『ううっ・・・うあああああ! あああああ! 助けて! 助けて! 助けて!』
《うん、いいよ。助けてあげる。あなたのところへ3人の戦士が迎えに行くよ。少しだけ待ってて!》
そんな会話を交わしたことだけ覚えていた。


- - - - - -


30代の男女が歩いていた。九古鈍郎と七村七美である。
「・・・どうして私は、一度自分を殺しかけた人と一緒に任務を遂行しなければならないんでしょうね。」
「あら、あなたは合理主義者じゃなかったかしら? “ジャスミン”が4割の力しか出せない今、5人の中で最強の組み合わせは誰なのかしら? わたしとあなたじゃないかしら。」
「私は科学人間というだけで、合理主義者は妻の方ですよ・・・。合理的に考えれば、とっくに“戦士”なんて・・・」
最後まで言い切らずに濁したのは、彼の良心ゆえだった。
サトリンを崇拝する七美の前で、あまり尖ったことは言いたくない。
「・・・・・・・・。参考までに、やめない理由をお聞かせ願おうかしら。」
「毒を食らわば皿まで。」
「・・・・・・・・・・・・。」
七美が面白く無さそうな顔をしていると、鈍郎は少し考えて付け加えた。
「・・・真面目に言いますと、合理的な理由は、先日の“アプリケイション”の件。何者かがサトリンを狙っている可能性がある。事によれば、その力を利用して良からぬことを企んでいるのかも・・・。」
「・・・・・・。・・・まだ、そうと決まったわけじゃないけどね。」
いつになく七美は言葉の調子が鈍かった。
普段の彼女なら真っ先に「サトリン“様”と呼びなさい」と言いそうなものだ。
「まあ、用心しておくに越したことはないかしら。サトリン様のことは、わたしの方が心配してるんだから。」
母親を取られたくない子供のような口ぶりに、鈍郎は少し微笑ましい気分になるが、先日のことを思い出しながら声を低くした。
「それなら先手を打っておくんですね。少なくとも現時点で最悪の事態を想定しておくべき・・・つまり、我々の中に裏切者がいる可能性です。」
「わたしに言うということは、わたしのことは疑ってないのかしら?」
「そういうわけでもないですが、シミがついた程度ですね。」
鈍郎は言いながら、違和感を覚えていた。
てっきり反発や否定が来ると思っていたが、すんなり裏切者がいる可能性を受け入れた。
(七村さんも私と同じことを考えていたのか)(いや)(そんな程度ではないかも)
「・・・残りは、どっこいかな。」
「“ガーディアン”は外していいんじゃないかしら。」
「先入観に囚われずに冷静に物事を見るべきです。彼とてシロじゃない。会議のときには言いませんでしたが、残りの連中は四方髪と同じくらい疑ってますよ。むしろ、あのやり取りで四方髪への疑いは減りました。」
「ふう。」
七美は腕を組んだ。
「瑠璃子の言う通りだわ。あなた、変わったわね。以前は、もっと弱々しくて・・・そんなに冷たくもなかったわ。」
「・・・頼りの七村さんが、そんなことでは困ります。あなたこそ冷徹になってもらわないといけないんですから。私も含めて全てを疑うべきです。」
鈍郎は昏く笑った。
その目つきにゾッとしながらも、七美は首をかしげる。
「あなたが良からぬことを企んでるなら、そんなことは言わないんじゃないかしら?」
「その程度の認識では困ります。」
鈍郎は苦笑いした。
「あなたに深い認識をさせて、なおかつ勝つ自信があるかもしれないですよ。」
「そんなことを言ってたら、何ひとつ信じることなんて出来ないんじゃないかしら?」
「裏切者を捕まえるまでの間です。七村さん流に言えば、これも“戦士の使命”ではないですか。」
「はは、生意気。」
七美はクスッと笑い、しかし焦った表情をしていた。
それを見て鈍郎は、内心で不穏に思いながらも付け加えた。
「生意気ついでに言わせてもらえば、裏切者は1人とは限りませんよ。」
「・・・・・・・・ふむ。」
やはり七美の表情は意味深な翳りがあった。

しばらく歩いて、2人は目的地に着いた。
「着いたわ。今回の任務は、ちょっと厄介よ。」
「今まで厄介でない任務がありましたっけ?」
「ふ・・・。」
七美は苦笑いして足を止めた。
「下手したら・・・いいえ、上手くいってもかしら? 警察と一戦交えることになるかも。」
「マジでございますか?」
「頼りにしてるわよ。」
七美は悪戯っぽく笑うが、鈍郎は不安だった。


邑甘(むらあま)一家は、大良(だいら)と松実(まつみ)夫妻、守名実(まなみ)、富良実(とらみ)、恵須実(えすみ)の3人娘、それとペットの犬ジョンで構成されている。
今回の事件は、大良と松実夫妻が何者かに殺されたというところから始まった。いずれも後頭部を鈍器で殴られたような痕があり、その他にも傷があった。争った形跡があり、夫の大良は犯人のものと思しき毛髪を数本、握り締めていた。
鑑定の結果、犯人は3人に絞られた。すなわち、3人の娘―――同じDNAを持つ、三つ子の子供たちである。
この事件に乗り出したのは、大西大(おおにし・まさる)警部。しかし捜査は困難を極めていた。
まず、三つ子の区別がつかない。3人とも年齢は15歳で、セミロングの黒髪、濁った瞳。体中の痣は、両親による虐待で付けられたものだった。
そして困難なもうひとつの理由は、3人が犯人を庇うような証言をしているということである。
「だからね、親の虐待のことを考慮に入れて、罪は重くなることはないんだって。誰が殺したんだい?」
「だから、私たちみんなやってません! やってないものをやったとは言えません!」
「・・・・・・・・・。」

別室で大西警部は煙草を吸いながら溜息をついていた。
「はあ、どうして警察というものは、こうも信用が無いのやら。」
「明らかに庇ってますよね。」
部下の小森(こもり)巡査が言った。
「ああ。状況が理解できてないほど子供じゃない。問題は、知ってて庇ってるかどうか・・・最悪の場合、3人の共犯ということもありえるな。」
「そんな・・・。」


七美と鈍郎が邑甘家に着いたのは、その翌日のことだった。
「もしもし〜、メールで連絡もらったんだけど〜、邑甘さんの家は、ここでよかったかしら〜?」
「誰だ、お前ら。」
大西警部は少し戸惑いつつも、警察らしく居丈高な口調で言った。
「・・・あなたこそ誰なのかしら?」
七美は後ろへ下がり、鈍郎を左手で庇いながら大西を睨みつけた。
「警察だ。」
「その証明は?」
「・・・。」
大西は渋い顔で黒い手帳を出した。
それを七美は引っ手繰って、鈍郎に渡した。
「あ、こらっ!」
ドスッ
迫り来る大西に一撃入れて、七美は鈍郎に訊いた。
「どう?」
「・・・本物のようですね。」
「そう。どうやら火急の事態ではなさそうね。」
七美は手帳を大西に放って返した。
鈍郎は大西の様子を警戒しながらも、今の七美の言葉の意味を考えた。
(警察の偽者が出張っている可能性?)
火田七瀬を思い浮かべながら、鈍郎は戦慄した。
フィクションとして読んでいたときでも相当に入り込んだが、スケールの同じ状況に自分が置かれていると思うと、震えが止まらない。
あるいは、それは武者震いなのかもしれないが。
超常が現実となっている今に、心が躍らないほど木石ではないのだ。

細身な七美の当身では、大柄な大西に大したダメージは与えられていない。
大西警部からすれば、相手が女だからというのもあるだろう、無かったことにして手帳を仕舞った。
「わたしは七村七美。邑甘とはメル友よ。」
「私は九古鈍郎。七美の弟です。」
「え?」
大西は訝しがったが、不審がるのを予想していた鈍郎は、すぐさま詰め寄って大西の手を取った。
「け、警部さん! 何てことを! 私と姉さんの苗字が違う!? そんなこと!」
「いや、まだ何も、」
「私と姉さんの、笑いあり、涙あり、甘酸っぱくもホロ苦い感動の歴史を今ここで暴露しろと!? あんまりです!」
「い、いや・・・。」
どことなく嘘の匂いがするが、大西は迫力に押されたのもあり、深くは追求しないことにいた。
そしてその隙に、七美は鈍郎の服を引っ張って、まくし立てた。
「わたしたちは邑甘から殺人事件があったから来て欲しいってメールをもらったのよ。ねえ、おかしいじゃないの! 既に警察が来てるのよ。わざわざ、わたしたちを呼ぶことないじゃない。下手に捜査を混乱させるだけ・・・。そんなことがわからないような子じゃないわ。これはおかしいと思って来てみたら案の定。どうやら警察がアテにならない状況みたいね。大西警部? 百歩譲って、あなたを信用するとしても、他の連中はどうかしら? 鑑識は? DNA鑑定は正しいのかしら? いかに警察が信用できないかなんて小学生でも知ってるわ。数々の失態に冤罪事件。金持ちの子供には速攻で、貧乏人ほっちらかし。警察官として知らないとは言わせないわ!」
鈍郎と同じく、シナリオに沿ったセリフを喋っているが、そこには彼女の憎悪も確かに籠もっていた。
売春を強要されていた七美を救ったのは誰だったのか。それは警察ではなく、サトリンだ。
「し、失礼なことを言うな・・・!」
「失礼? 捜査の指揮を執る者は、先入観に囚われず、あらゆることに疑いを持たなくてはならないんじゃないかしら! 身内は絶対に信頼できるなんていうのが、既に先入観なのよ!」
「・・・っ、・・・ええい、もう出ていけ!」
やり取りの最中に、大西の部下たちも集まってきた。
「あら・・・力ずくで追い出そうというつもりかしら。」
七美の目が怪しく光る。
それは例のサトリンズ・アイであるが、警官には知識は無い。
無いのだが、現場で仕事している人たちだ、直感で危険を感じて動かない。
「姉さんを怒らせると恐いですよ。この前、私も殺されそうになりましたし。」
虎の意を狩る狐のようなセリフだが、鈍郎こそ恐ろしい能力の持ち主である。
もっとも、これは七美に対する皮肉であるのだが。
「鈍郎は黙っててくれるかしら。・・・わたしたちを追い出そうとするのは、何か疚しいことでもあるのかしら?」
「馬鹿な!」
「じゃあ、ここにいても構わないわね。」
「一般人は捜査の邪魔だ。」
「は、事件から10日も経つのに何の進展も無い素晴らしい捜査を、いったい誰が邪魔するというのかしら?」
「貴様・・・!」
大西は歯を軋らせた。
「邑甘が泊まっているところ、教えてくれるかしら。」


三つ子が泊まっているところは、警察の監視下にある施設だった。
口で勝ったとはいえ、すんなり教えてくれたことに、七美も鈍郎も訝しいものを感じていた。
こういう場合、警察は普通、話など通じないものだ。
「・・・。」
「・・・。」
2人は目で合図し合った。
「うわー、ボロっちい建物。建築基準法とか大丈夫かしら。」
「ダメですよ姉さん、本当のこと言っちゃ。」
職員の表情が曇った。
それを2人は、普通にしながら念入りに観察する。とりあえず問題なさそうだが、油断は禁物だ。
「ここか。」
邑甘三姉妹のいる部屋に案内された。
そこに疲れた顔の、守名実、富良実、恵須実がいた。


その夜。
七美と鈍郎は中庭で、三つ子の1人と落ち合った。
「ここなら盗聴機は無いわ。監視カメラでは暗くて唇の動きまでは読み取れないでしょう。」
「それでは君は、・・・・・・実さん、ですね。一応確認を。」
「はい。」
そう言って彼女は腕をまくった。
そこには腕に沿って、縦にリストカットした痕があった。
「ん、本人です。」
あらかじめメールで伝え聞いた通りだ。
「・・・本当に・・・助けてくれるんですか・・・? 私みたいな殺人犯を・・・。」
「わたしたちは困ってる人の味方よ。自業自得ならともかく、あなたのはやむにやまれぬケースじゃないかしら。」
「たとえ半ば正当防衛だとしても、尊属殺人を重く見る連中が司法にははびこっていますし、それでなくても警察の監視下に置かれるのは間違いありません。保護観察と言えば、聞こえは良いですけどね・・・。」
「警察と一戦交える覚悟はあるわよ。あなたも腹を括ってくれるかしら。」
「はい。」

宿舎に戻った◎◎実は、他の2人を見るなり、つい表情を凍りつかせてしまった。
(ハッ・・・・!)
急いで彼女は、冷静になるよう自分に言い聞かせた。
(ばれてはいけない・・・。この2人にばれたら、何もかもおしまいだわ・・・。)
3人は両親から虐待されていたが、彼女は更に姉妹2人からも虐められていた。

『あなたが殺人を犯したことは黙っておいてあげる・・・。その代わり、わかるわよね・・・。』
『・・・・はい・・・・。』
『ほらほら、そんな暗い顔しちゃ駄目でしょ。私たちは仲良し三つ子なんだから。』

彼女だけが縦にリストカットするという、危険度の高い自傷行為を行っていたのは、そういった理由だった。
ただでさえ虐待を受けているところへ、姉妹からの虐めが、精神的な閾値を容易く超えさせていたのだ。
宿舎では、女性の監視員と共に寝泊りしているので、露骨な虐めは無かった。
しかし、それは事態の発覚をさせない役割を果たしていた。
警察に言えば、保護してもらえるだろう。しかし、もしも取り合ってもらえなかったら?
取り合ってもらえたとしても、わずかな隙を突かれて2人に先んじられたら?
たかが15歳の子供と侮っているに違いない警察が、この2人の危険性をわかっているはずがない。
“保護してあげるから”という態度の裏には、侮りや、危険性の軽視が、見て取れた。
慈愛や優しさの発露かもしれないが、同時に3人を子供扱いし、甘く見ているということでもある。
それが悪いとは言わないが、◎◎実は、事実を正しく認識していない大人に本心を語る気は無かった。
(ばれてはいけない)
(ばれては)
(絶対に)


次の日の昼近く、邑甘家に電話がかかってきた。
受話器は大西警部が取った。
「もしもし。」
「電話を取ったのは・誰だい? まあ・誰でもいいが。」
「誰だ、あんた。」
「今から話すことを・よく聞け。」
「誰だと聞いている!」
「僕は・そうだな・“破壊王”とでも名乗っておくか。破壊活動を・こよなく愛する男であり・今回の邑甘家殺人事件の首謀者でもある。はっはあ!」
「何だと!?」
「もう一度・繰り返す。僕は“破壊王”。破壊活動を・こよなく愛する男で・今回の殺人事件の・首謀者だ。ハッハッハァッ・・・・ハアッハッハア!」
そこで電話は切れた。
「何だと・・・。」
(悪戯? だが事実なら・・・。)
大西警部は、警官を更に動員した。
これこそ七美の思う壺であった。いくら人数が多くても、鈍郎の能力の前には0か1に過ぎない。
急な動員で混乱も少なくない状況で、チャンスが生まれる。
しばらくすれば混乱も落ち着くだろうが、それをぼんやりと待つわけがない。行動を起こすのは今だ。

そして邑甘家の近くに、不審者は堂々と姿を現した。
最初にその人物を発見したのは、大西警部の部下である小森巡査だった。
いきなり毛布を被った不審人物が現れたので、彼はびっくりした。
「うわっ、何だお前は!?」
「冴木氷介。」
そこへ大西警部が姿を現した。
「これはこれは・警部サン。」
「その声! お前が“破壊王”か!」
氷介は、それに答えず逃げ出した。
「待て!」
すぐにその場の警官たちが後を追ったが、毛布の人物は姿を晦ましてしまった。
「くそっ!」
「逃がしたか・・・。小森、宿舎へ連絡を。警戒態勢を整えろ!」
「はい!」

その連絡が伝わったことを、七美は氷介に知らせた。
「もしもし氷介? 連絡あったわよ。」
「よし・わかった。」
受話器の向こうで氷介が笑みを浮かべたのがわかり、七美もニヤリと笑った。
「準備万端。さて・・・上手くいくかしら?」

それから間も無くして、氷介が毛布を被って、宿舎の前に姿を現した。
「“破壊王”!?」
七美の声に警官たちは反応し、即座に駆けつけてきた。
「やあ・みなさん・お揃いで。」
「そこを動くな“破壊王”!」
警官の1人が銃を抜いた。

そんなやり取りが行われている間に、七美と鈍郎は人の少なくなった宿舎内を走り、三つ子のもとへ駆けつけた。
「何があったの?」
監視員の女性が訊いた。
「“破壊王”らしき人物が現れました。」
「!」
三つ子たちも怯えた。そのうち1人は打ち合わせ通りの演技だったが。
「というわけで・・・。」
七美の目がギラリと光る。
バチッ
バチッ
バチッ
七美は監視員と三つ子のうち2人を、電撃で気絶させた。
「行きましょうか、富良実さん。」
「はい!」
富良実は涙を込めた笑顔で、七美の手を取った。
リストカットの後を見ずに、よく見分けたものだと鈍郎は感心したが、七美からすれば見分けるのは容易かった。
看護の仕事をしている関係上、人の顔や表情の識別は得意なものだ。
人間の表情とは不思議なもので、性根や思考が顔に出る。中庭で落ち合ったときに見た顔は、この部屋には1つしか存在していなかった。


「サトリン様、邑甘富良実を保護しました。」
《七美ちゃん、ご苦労さん♪》
受話器の向こうから、ねぎらいの声が響いてきた。
かつて苦界から助けてもらったときのことを思い返しながら、七美は安らかな気持ちになった。
だが、すぐにキリッと頭を整えて、次のことを考えた。まだ問題は解決していない。
(わたしの予想が当たっているとしたら・・・。いえ、予想でなく確信かしら?)
8年前の悪夢を思い出して、七美は寒気がした。
あのときのことを、まだ明かすことは出来ない。たとえ疑念を抱かれようともだ。
(“マリオネイター”に“ポイズン”・・・。今度は“パニック”かしら? “ポリス”が動いていると思ったけど・・・。)
手元の資料を見ながら、七美は忌々しそうに目を細めた。
(いずれにしても、だいぶ後手に回ったのは確かなようね。だけど、わたしたちは負けるわけにはいかない・・・。絶対に、絶対に、サトリン様を死なせるわけにはいかないわ!)
勇壮とも悲壮とも取れる、覚悟の視線だった。
彼女の双眼が捉えているものは、2つの未来。
ひとつは、誰かの目指した温かな未来。人助けの連鎖の未来。
もうひとつは、誰かの目指した―――狂った暗黒の未来。
(させるものか。わたしが世界を愛せなくても、サトリン様は世界を愛している。この世界を、お前たちの思い通りになんかさせやしないわ。)
七美は携帯電話を懐に仕舞い、胸に手を置いて唇を噛んだ。

その頃、大西警部は事の次第を把握して、歯軋りしていた。
「何もかも仕組まれていたというのか・・・!」
「そんな・・・富良実が犯人だったなんて・・・。」
「信じられない・・・。」
守名実と恵須実は、驚愕するフリをしていた。
「ショックを受けているのはわかるが、事態は一刻を争う。彼女の行き先に心当たりは無いかい?」
それを聞いて、2人は心の中でほくそ笑んだ。
「「あります・・・。」」


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「サトリン」 第十話 縦の破壊 (上) 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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