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zoom RSS 決闘祭!   番外編 イシュタールの末裔 (後編)

<<   作成日時 : 2016/12/24 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



“墓守の一族”は、ヒッタイト王家にまで系譜を遡ることが出来る。
始祖の素性は謎に包まれており、いつまでも少女のままだったという。

それより数百年後、エジプト王朝。時は3千年前、少年王アテムの時代。
千年タウクに選ばれた神官アイシスが登場する。彼女こそイシュタールの血を引く者。

七つの千年アイテムは強大な闇の力を有していた。作り出すのに多くの血が流された。
流れた血の行く末に、盗賊王が復讐を始める。

憎悪と欲望は冥界の神を呼び寄せた。それこそ大邪神ゾークネクロファデス。
アテムは自身を生贄に、大邪神を封じ、千年錐を砕いた。

七つの千年アイテムを、生き残った神官は地の底へ奉じた。
やがて復活したファラオが記憶を継承するまで、子々孫々に至り守り抜くと誓った。



◆ ◆ ◆



マリク・イシュタール:LP4250、手札0
場:グレイドル・ドラゴン(攻3000)
場:グレイドル・パラサイト(永続罠)、伏せ×2

無堂幻大:LP6900、手札2
場:機皇帝グランエル∞(攻4250)、グランエルT(攻1300)、グランエルA(攻2100)、グランエルG(攻1300)、グランエルC(攻1500)
場:一族の結束(永続魔法)



機皇帝グランエル∞ レベル1 地属性・機械族
攻撃力0 守備力0
「∞」と名のついたモンスターは自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
(1):このカードが「グランド・コア」の効果によって特殊召喚に成功した場合、
このカードの攻撃力・守備力は自分のライフポイントの半分の数値分アップする。
(2):このカードは相手のカードの効果の対象にならない。
(3):1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスターを
装備カード扱いとしてこのカードに1体のみ装備することができる。
このカードの攻撃力は、この効果で装備したモンスターの攻撃力分アップする。


グランエルT レベル1 地属性・機械族
攻撃力500 守備力0
フィールド上に「∞」と名のついたモンスターが表側表示で存在しない場合、このカードを破壊する。
1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
そのモンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にすることができる。


グランエルA レベル1 地属性・機械族
攻撃力1300 守備力0
フィールド上に「∞」と名のついたモンスターが表側表示で存在しない場合、このカードを破壊する。
自分フィールド上に存在する「∞」と名のついたモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、
そのモンスターはもう1度だけ続けて攻撃することができる。


グランエルG レベル1 地属性・機械族
攻撃力500 守備力1000
フィールド上に「∞」と名のついたモンスターが表側表示で存在しない場合、このカードを破壊する。
自分フィールド上に存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、
このカードに攻撃対象を変更することができる。


グランエルC レベル1 地属性・機械族
攻撃力700 守備力700
フィールド上に「∞」と名のついたモンスターが表側表示で存在しない場合、このカードを破壊する。
1ターンに1度だけ、自分フィールド上に存在するモンスターは戦闘では破壊されない。



「なはははははは、グランエルの効果発動! シンクロモンスターを吸収し、その攻撃力を得る!」

高笑いしながら幻大は、グランエルの向かう先に指を突き出す。
光の触手が泥濘の竜を絡み取り、もがくを構わずコア部分に取り込んだ。


《機皇帝グランエル∞》 (攻4250→7250)



「今度の攻撃は受け切れるかな? なはっ、グランエルの攻撃!」

「《グレイドル・パラサイト》第1の効果、デッキから《グレイドル・イーグル》を特殊召喚する!」

金色の鷲が現れて、グランエルの前に立ちはだかる。
だが、グランエルは攻撃を続行する。

《グレイドル・イーグル》 (破壊)
マリク・イシュタール:LP4250→1375


泥濘となった鷲は、グランエルの腕に纏わりつき、鹵獲した。
だが、結束の下から外れた腕は、攻撃力が元に戻ってしまう。

《グランエルA》 (攻2100→1300)


「なはは、では、《グランエルC》で攻撃するとしよう。」

「罠カード《グレイドル・スプリット》!」


《グランエルA》 (攻1300→1800)



「むっ・・・! だが、《グランエルC》の効果で戦闘破壊を無効にする!」

無堂幻大:LP6900→6750



「カードを2枚伏せて、ターンエンドだ。なはっ♪」


マリク・イシュタール:LP1375、手札0
場:グランエルA(攻1800)
場:グレイドル・パラサイト(永続罠)、グレイドル・スプリット(装備罠)、伏せ×1

無堂幻大:LP6750、手札0
場:機皇帝グランエル∞(攻7250)、グランエルT(攻1300)、グランエルG(攻1300)、グランエルC(攻1500)
場:一族の結束(永続魔法)、グレイドル・ドラゴン(装備)、伏せ×2



「ボクのターン、ドロー! 装備状態の《グレイドル・スプリット》を墓地へ送り、効果発動!」


グレイドル・スプリット (罠カード)
「グレイドル・スプリット」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドのモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
このカードを攻撃力500アップの装備カード扱いとして、そのモンスターに装備する。
(2):自分メインフェイズに、このカードの効果で装備されているこのカードを墓地へ送って発動できる。
このカードを装備していたモンスターを破壊し、
デッキから「グレイドル」モンスター2体を特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。



「《グランエルA》を破壊し、デッキから《グレイドル・コブラ》と《グレイドル・イーグル》を特殊召喚する!」

「なはは、そうだろうね。わかっていても止められない・・・なっはっは、ピンチだ。」

「更にボクは、《グレイドル・スライム》を特殊召喚!」


グレイドル・スライム レベル5 水属性・水族・チューナー
攻撃力0 守備力2000
「グレイドル・スライム」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが手札・墓地に存在する場合、
自分フィールドの「グレイドル」カード2枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊し、このカードを特殊召喚する。
(2):このカードの(1)の効果で特殊召喚に成功した時、
自分の墓地の「グレイドル」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。



「墓地から《グレイドル・コブラ》を蘇生し、破壊された《グレイドル・イーグル》の効果で、《グランエルT》のコントロールを得る!」


マリク・イシュタール:LP1375、手札0
場:グレイドル・スライム(守2000)、グレイドル・コブラ(攻1000)、グランエルT(攻500)
場:グレイドル・パラサイト(永続罠)、グレイドル・イーグル(装備)、伏せ×1

無堂幻大:LP6750、手札0
場:機皇帝グランエル∞(攻7250)、グランエルG(攻1300)、グランエルC(攻1500)
場:一族の結束(永続魔法)、グレイドル・ドラゴン(装備)、伏せ×2



「《グレイドル・コブラ》に、《グレイドル・スライム》をチューニング!」

「ふむ、やはり来るかね、2体目の《グレイドル・ドラゴン》!」

「《グレイドル・ドラゴン》は、素材の水属性の数まで相手フィールドのカードを破壊できる! グランエルの核は対象に出来ないが、装備されている1体目の《グレイドル・ドラゴン》は話が別だ!」


《グレイドル・ドラゴン》 (破壊)
《聖なるバリア−ミラーフォース−》 (破壊)



「そして墓地に送られた《グレイドル・ドラゴン》の効果で、《グレイドル・イーグル》を蘇生する!」


マリク・イシュタール:LP1375、手札0
場:グレイドル・ドラゴン(攻3000)、グレイドル・イーグル(攻1500)
場:グレイドル・パラサイト(永続罠)、伏せ×1

無堂幻大:LP14000、手札0
場:
場:一族の結束(永続魔法)



「なはははは! 《デストラクト・ポーション》を発動させてもらったよ! 君の伏せカード、それは《スキルドレイン》で間違いない。どのみち無力化されるなら、わたしのエサとなってもらう。」

攻撃力合計4500では、与えるダメージは2250になってしまう。
幻大のデュエリスト能力は、地味だが厄介だ。

「・・・そのデュエリスト能力、どうやって手に入れたんですか?」

発動時から気になっていたことを、ここでマリクは尋ねることにした。
だが、そこまで幻大はサービスする気は無い。

「なはは、わたしに勝てば教えてあげよう。」

デュエリストとして当然の物言い。



「では、勝ちます。」

「なはっ?」

マリクは少年の頃に度々見せていたような、不敵な笑みを浮かべていた。
幻大は、推測した伏せカードの正体を再考する。

(・・・読み間違ったか?)

悪い予感は、マリクの場で1枚の永続罠が開かれたことで、現実となった。


無堂幻大:LP14000→12500→11000→9500→8000
         →6500→5000→3500→2000→500→0



そしてデュエルは終了した。



「なっはっはっは! 負けた負けた! 墓地発動のグレイドルと相性が良いのは《スキルドレイン》だとばかり思っていたが、そう来るとはな!」

「約束ですよ。場合によっては、あなたを査問にかける必要があります。」

「そうだったな。いやはや、どのみち君が勝ったときは言うつもりだったのだ。墓守の一族に関わることだからな。」

幻大は笑顔を控えて、神妙な顔になる。

「もっとも、わたしの知っていることは事実の断片でしかない。詳しい話は後で本人にでも訪ねてくれるといい。もうひとりの、墓守の一族の末裔からね。」



◆ ◆ ◆



百年ほど前、イシュタール家に双子の男子が生まれた。
兄はカイン、弟はアベルと名付けられた。
敢えて不吉な名前を付けることで、病気や災厄が寄ってこないようにという、願いを込められていた。
これと似たような風習は、世界各地に点在する。


墓守の一族は、10歳になると長男は継承の儀式を受ける。
それは背中に刺青を刻むという、激しい苦痛を伴うものだ。
カインは10歳の誕生日を迎えた日の未明に、暗い穴倉から抜け出し、帰ってこなかった。
代わりにアベルが継承の儀式を受けることになり、その身に痛苦を刻んだ。

アベルは生涯、地下から出ることを許されなかった。
逃げ出した兄を怨み、憎み、いつしか彼は取り返しがつかないほど歪んでいった。
継承の為に子供を設けたアベルは、我が子に兄の面影を見て、虐待を繰り返した。
負の連鎖は、続いて、続いて、孫の孫であるマリクにまで及んだ。


逃げ出したカインは、東へ、東へ、あてもなく逃げていった。
暗闇から解き放たれて自由になったというのに、心が濁り、重苦しい。
まるで追放されたかのように、光が遠く、闇が濃い。闇は優しく、冷たく、暗い。
それでも自分の行動は間違いではないと、カインは確信していた。

自分に宿った力を、暗い穴倉で終わらせたくない。
神というものが本当に存在すならば、それは聖書のように、贔屓をするものだ。
自分が選ばれた理由はわからないが、選ばれたのなら相応に振る舞おう。
カインは極東の島国へ辿り着き、鬱神家に身を寄せた。


それから百年後、デュエルモンスターズがカードゲームとして時代に登場する。
カインは失われた力を取り戻すべく、99人の子供を生贄に捧げた。
新たなる千年アイテムは、一族が守ってきた品々より性能が劣り、レプリカと呼ばれた。
だが、彼に力を取り戻させるには十分だった。

カイン・イシュタールは、デュエリストになった。
公式初のレベル5能力者として。
幽堂神門と名を変えて。



◆ ◆ ◆



「・・・それで呉星さん。僕を呼び出した理由は何かな。また僕に謂れなき暴力を振るいたいのかい?」

女子と見紛う容貌の、華奢な青年。少年と言った方が合ってるかもしれない。
竜堂神邪は薄気味悪い笑みを浮かべながら、単身で手紙の場所へ来た。
マリクと幻大が去った後の、不気味な景色の童実野埠頭。


「イザク・イシュタール。」


「・・・!」

神邪はピクッと眉を動かし、笑みを消した。
それは呉星十字に、核心を抱かせるには十分だった。

「YOUは、幽堂神門の息子なのですね。」
「それがどうかしたの?」

突っぱねるような冷たい声だが、あっさりと認めた。
その気安さに十字は面食らう。

「確かに僕は、幽堂神門カイン・イシュタールの子供で、墓守の一族としての名前はイザク・イシュタールだ。」

追求するつもりが、堂々と宣言される。
隠すことなど何も無いとでも言わんばかりだ。

「・・・けれどそれは、普段の名前が偽りという意味じゃない。武藤遊戯が、アテムの偽りの名ではないようにね。」
「YOUは、どうして今まで、そのことを隠していたのですか?」
「隠していたわけじゃないんだけどね。隠す意味も無いことだし、知ってる人は知ってることだ・・・まァ、言いそびれていたんだよ。特に隠す意味は無いけど、特に言う必要も無いことだからね。」

あるいは―――と神邪は思う。
このことを親友にさえ話していないのは、墓守の一族に纏わる厄介事に、巻き込みたくなかったからだろうか。

(・・・ま、それは無いか。僕にそんな殊勝な心があるとは思えない。)

それよりも神邪は、十字の意図が気にかかっていた。
十字架で殴ってこないのは嬉しいが、会話フェイズで何らかの罠を張っている可能性は否定できない。
何しろ、平和を愛し、悪を滅ぼす、正義の使者だ。凶悪犯罪者である神邪とは、絶対に相容れない。

「YOUに訊きたいことがあったのですよ。」
「“子供の頃の最悪の思い出”なら、いじめられた被害者なのに、学級裁判で吊るし者にされたことかな。何しろマサキにとっても、集団に屈して僕への暴言を吐いてしまったエピソードだからね。」
「そのことではありません・・・いえ、そのことも関係しているのかもしれませんが。」

十字は呼吸を整えてから、次の言葉を吐き出した。


「どうしてYOUは、平気で人を殺せるのですか?」


“カンサー”に所属していた頃の竜堂神邪の所業は、十字を卒倒させるに十分だった。
殺した数は千に近い。依頼があれば子供だろうと障碍者だろうと惨殺し、ゴミのように散らかした。

「“カンサー”のA級零席クリムゾン・ノヴァ・クリア。血も凍りつくような殺人マシーン。そして今は、かつての仲間を殺して回っている。“混沌派”はYOUと大河マサキによって、ほとんど壊滅状態―――」

そこで十字は、神邪が失望したような顔をしていることに気付いて、言葉を止めた。

「言ってる意味がわからないな・・・。」

呆れたような声の神邪に、十字は耐えかねて目を吊り上げる。

「どういう意味ですか? YOUの所業は、冤罪だとでも言うつもりですか? 妊婦から胎児を引きずり出して殺したことも! 幸せに暮らしていた家族を、母親と娘を強姦した後、皆殺しにしたことも! 世界中を回って“カンサー”を10万も殺してきたことも! みんな事実無根だというつもりですかっ!?」

だが、対する神邪は心ここに非ずと言ってもいいほど無気力に見えた。

「いや、13万くらいかなァ。」
「・・・っ、ふざけるなっ!」

呑気に首をかしげる神邪は、とても人とは思えない。
人の姿をしているが、頭の中身が違う―――それは十字の主観だけではなく、文字通りに。

「まァ多分、君の知ってることは事実だろうさ。だけど君は、どうして僕が平気だと思うわけ?」
「・・・・・・平気ではなかったと言いたいのですか。今でも苦しんでいると。」

意図が掴めない。少なくとも、そのようなことを言うとは予想外だった。
だが、十字の推測は早合点であった。

「そこじゃないよ。僕が何を思っているかなんて、どうでもいい。僕が人を殺したことは事実なんだから、平気だろうが苦しんでいようが、その事実が変わることはない。だけどね―――」

神邪の目が、すうっと細くなる。


「平気だと“決めつける”のは別だ。」


失望を瞳に宿したまま、神邪は続ける。

「君は僕を、平気で人を殺すような残虐な奴だと、予断を持って話を始めている。つまり最初から一定の結論を用意していたわけだ。・・・だったら質問なんかするなよ。」

最後の一節を吐き捨てるように言って、神邪は息を吐く。
失望の溜息は、どこまでも冷たい。


「君が僕に拘るのは、君の母上様が、幽堂神門に育てられたからなのかい?」


その言葉を、呉星は否定しない。
彼女の中に渦巻く感情は、素直に肯定こそしないが、肯定に近い。

天堂一美、後の呉星一美は、十字が幼い頃から幽堂神門の話をして聞かせていた。
どっしりと構えていながら、細やかな気配りも出来て、上品で優しい言葉を使う。
それでいて危機的状況においては、神の如き威圧と強さを以って敵を討つ。
あれこそ男の中の男だと、恋い焦がれる乙女のように、一美は語っていた。
いつしか十字にとっても、幽堂神門は憧れの存在となっていった。

それだけに十字は、神邪の悪評に我慢ならなかった。
憧れの人の子供が、悪行三昧であることは、耐え難いことだった。許せなかった。
高校時代も、隙あらば成敗しようと―――場合によっては、殺そうとも考えていた。


「なるほどねぇ。君の過剰なまでの正義感は、幽堂神門への憧れから生じているわけだ。初対面より、もとい高校時代より、好感が持てるじゃないか・・・。」

「・・・っ!」

言い当てられて、十字の顔は赤くなった。
それは恥ずかしさと、怒りの両方だった。

神邪の血縁について、高校時代に触れなかったのは、自分の想いを知られたくなかったからなのかもしれない。
無闇に他人に知られたくない、無垢な部分、聖域とも呼べる感情。
それを指摘されて、しかも冗談めかした言い方をされて、十字は頭が沸騰した。

「YOUはっ、幽堂神門に、父親に恥ずかしくないのですかっ!? あれほど立派な父親を持ちながら、どうして自分を守ることしか考えない、狭量な人間に育ったのですかっ!? お父上の名誉を汚し、自らの正当性を貶めて、何故そんな生き方を良しとするのですかっっ!?」

「はっ・・・・・・く、ククッ、アーハハハハハハハ!! 何だそれ!? あの父親が名誉だって・・・? まァ確かに、世間的には、恵まれない子供たちを引き取って育てていたけどねぇ! アッハハハハハ!」

「・・・っ!?」

やおら上機嫌になった神邪に、十字の方が面食らった。
記録では幽堂神門は神邪の生まれる前に死んでいるはずなので、虐待などをされたはずはないのだが。

「いや別にね、幽堂神門に怨みがあるとかいう話じゃないんだ。怨んでないとも言わないけど、そのあたりは色々と複雑で、説明しにくいな。しかし少なくとも、君の知っている幽堂神門は、真実の半分未満だと思うよ?」
「・・・っ、どういう――」
「引き取った子供を魔術の生贄にしていたりとか、まァそういう話なんだけどね。」
「なっ――!?」

どうでもよさそうな口調で、衝撃の事実。
信じていいものかどうか迷うほどだった。

「信じたくなければ信じなくていいよ。・・・はァ、“カンサー”では母さんを、社会では父さんを引き合いに出され・・・まったく、優れた親を持つ子供は大変だァ。」

本気なのかわからない口調で、神邪はげんなりと息を吐いた。
だがそれも、すぐに冷たい怒りの炎を帯びる。

「ひとつ言っておくが、僕は自分の正当性に自信を持っている。“心の正当防衛”に対して、被害者としての正当性が損なわれたとか主張する寝言文化人どもは、せいぜい口先だけの平和を唱えているがいいさ。」

みしみしと、“邪神”の神威がプレッシャーをかける。
内臓の代わりを務める“虚空の闇の瘴気”が、十字を束縛する。

「僕を理解できないなら理解しなくていいけど、これ以上、踏み込んでくるのは許さない。」

十字は、どこかで同じようなプレッシャーを感じた記憶があった。
あのときも確か自分は、ここに立っていたように思う。
だが、誰と向き合っていたのか思い出せない。


「僕は悪い奴だが、僕は正しい。」


透明で冷たい声が響く。


「僕の“心の領域”は、誰にも侵させない。」






   イシュタールの末裔   了

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佐久間闇子と奇妙な世界
2016/12/24 00:03

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
>決闘祭! 2章最後のラスボス(?)戦あたり

レベル5能力ってこんなにたくさん出たんだなぁ……。
並べてみると壮観。そしてこれすらも氷山の一角なくらいには大量に出ているという。

こちらの世界だと、このレベルの能力を持ってすら平気でかませになってしまったり、あまり活躍の出番がなくて終了になってしまうこともままあるあたり、なんて修羅の世界なのでしょう。

個人的には、これらの能力が敵役で本編に出てきた場合、はたしてどうやって攻略しようかという想像がはかどる捗る。
いつかアッキーさんのアイデアをパク……もとい、逆輸入してこういうこともやってみたいなあと妄想している豆戦士です。

それにしても、神邪視点の物語では、基本は主人公っぽく描かれていることの多い彼(彼女)ですが、こうしてみると邪悪なラスボス以外の何物でもないなぁ……。対峙している人たちが、物語における二元論で語るなら確実に正義サイドの人間たちですし。
豆戦士
2016/12/25 15:15
>世界的にも公式初のレベル5能力者である、“幽幻神帝”(ファントムロード)
>当時のカードプールで最大最強と謳われた、“時計技師”(クロックワークス)
>極めて大味と言われるレベル5能力を持つ、“火中道化”(ピエロマスター)
>相手のカードすら手中に収める強欲な青年、“石堀り人”(トレジャーハンター)
>特殊勝利能力のパイオニアと言われている、“連星棋士”(バンブーパレス)
>加虐的な能力を持ちながら被虐嗜好の変態、“痛み奉行”(マジストレイト)
>猟奇殺人の罪で、刑務所に服役中の殺人鬼、“凶行狂女”(シリアルキラー)

こういうの並んでるとテンションが上がるのもまた、異能バトルの醍醐味だよね!

こういうのを本編でやらなかったのは今思うと大きな反省点の1つなのですが、決闘学園の本編を書いたころには異能バトル(※GA文庫刊の小説)がまだ世に出ていなかったため、自分の中二観も、その原石は確実に自分の中にあったものの、それを自分でうまく認識できていなかったと言いますか明確な形になっていなかったと言いますか。

最良の読書体験の1つは、「ああ、自分はこういうの好きだったんだ!」という、自分の価値観がはっきりと形にされることだと思っている豆戦士です。
たとえるなら、概念に言語が与えられることによって初めてその概念を認識できるようになるとかそういう。
豆戦士
2016/12/25 15:15
>“禁制の神域”(アンタッチャブルリミッター) レベル5+2i 能力(所有者:エウレカ・セデミクラ)

なんかもう攻略が絶望的な感じにーっ!
異能バトルというか少年漫画の常ですが、インフレが止まらない。

>「勝てるわけねーだろ、こんなの! 能力だけで勝負が決まっちまうようなデュエルなんて、おかしいと思わねえのかよ!? デュエルってのは、そんなもんだったかよ!?」

本編でも似たような苦悩を描いたことはありますが、こっちの方が能力の絶望感が桁違いだからなぁ……言葉の重みが違う。

死ぬ気で限界まで努力を重ねて天才を打破したところで、それは本質的な問題の解決にはなっておらず、次にもっとすごい天才が出てきたら今度こそ詰むという話に近いものがあります。


>悪い予感は、マリクの場で1枚の永続罠が開かれたことで、現実となった。

そしてこれが何なのかまだ分かってないという……。

下手すると普通にOCGという可能性もあるよな……?
OCGもどんどん増えていくので、時代が進むにつれて挑戦状を解く難易度は上がっていく一方という。


というわけで、決闘祭2章もめちゃめちゃ面白かったです!

能力デュエルに対して章ごとに明確なコンセプトを持たせつつ、これだけ大量のデュエルをぶっこんでくるの本当すごいな……。
豆戦士
2016/12/25 15:16
>プリパラについて

まず1枚のプリチケがあった。
その最初のプリチケをパキった衝撃がピックパンとなり、そしてぷちゅうが生まれた。

……ちゃんと書くと、こんな感じになりそうだなーと、わりと本気で思っている豆戦士です。

まあしかし、これだと言うて遊戯王の2番煎じなので、想像もしてなかった方向に突き抜けてくる可能性もまた大いに期待。
豆戦士
2016/12/25 15:18
>豆戦士さん

勢いに任せてレベル5能力者を出しまくり、気が付けば把握しきれないほどに増えてしまった・・・!
ブリーチや禁書みたいなことになっているというw

世界観も暴力的ですが、それ以上に残酷な“出番”という概念。
レアハンターやパラコンのように、負けて輝くことはあっても、あまり活躍せずに退場するのは、キャラとしてやるせないですねぇ。

本来なら、スタイリッシュな攻略法は私が考えるべきですよねw
けっこう力ずくで雑に倒しちゃってることも多く、反省しきり。
決学VSレベル5軍団とか読んでみたい・・・!(他力本願)
もちろん時系列などは気にしない方向ですね。

主人公兼ラスボスといえば、ほし君やクマーを思い浮かべる私ですが、丁度アニメでも主人公が邪悪なラスボスと化していて、正義と化した人々とデュエルに興じているという。楽しい・・・!
ぶっちゃけカノンがいなければ、確実に神邪はラスボス枠です。
アッキー
2016/12/25 22:13
◎二つ名

こういうのを考えるのが生き甲斐と言っても構わない!
(そのせいで、いたずらにキャラが増えるとも)

言葉が与えられるというのは、大事ですよね・・・。
昔から、自分がカッコいいと思うものが、何だか世間では評判が悪かったり、冷笑的な扱いを受けていて、ズレを感じてきたわけですが、“中二病”という概念が与えられたことで、だんだんと自分の価値観を上手く整理することが出来るようになったという。

中二的な様式美に、よく理由を問うてくる輩がいますが、今なら的確に答えを返すことが出来る。
「カッコいいからだ!」(マップス)

ちなみに。
確か連載中に掲示板で能力名を明かしてくれたわけですが、

拒絶の神門
十指の炎弾
融合工房
炸裂する手札
山札幻視
刃の鎧
不可視の番兵
未熟な絶対防御
生命点の固定
唯我独尊
掌握の力
回帰の力

タイヨウの能力名だけ出てないので、私の方で勝手に名付けていますが、これも想定とかあったりするのでしょうか?
アッキー
2016/12/25 22:14
◎能力パワーアップ

レベル5が増えすぎたので、次は虚数化だ!(殴

壮大にデュエルを広げた最後の最後に根本をチョン切って引っくり返すような、実に性格の悪い能力になりました。何しろ神邪によるパワーアップですからねぇ。
鰐条の叫びは、割とセルフツッコミだったりする・・・。

鰐条が死ぬ気で努力したかどうかは怪しいですが、しかし努力を重ねたら勝てるかというと、やはり才能の壁というものは厳然として存在するのは確か。

何か障害が存在するとき、それ自体を取り除くのは、「それじゃあ面白くない」(安心院)からというよりは、根本的な解決になってないから・・・という話とも通じる気がします。


ちなみに永続罠は、普通に《デスカウンター》だったりします。
《グレイドル・ドラゴン》の効果は墓地で発動するので、フィールドで無効化されていてもループできるという。
バブーンコンボは裁定で失われましたが、どうにか再現できないかと思案していたところへキタコレ!みたいな。

・・・とか自信満々に書いてるけど、合ってるよね?


そんなわけで、ありがとうございます!
第3章は1月1日から連載する予定ですので、お楽しみに!
アッキー
2016/12/25 22:14
◎プリパラ

何の神話だwww
“始まりの1枚”をパキッたのは、女神ジュリィということですね!

ぷちゅう全体が巨大なプリチケとか、高次元のプリチケに浮かんだ膜ぷちゅうだとか、プリチケ場に浮かぶことで質量が生まれているというピッグス機構とか、色々と想像が滾ります。

ぷちゅうに存在する素粒子は、極小のプリチケが変形することで様々な素粒子の形態を成しているとかいう、超弦理論ならぬ、プリ弦理論とかも面白そう。
アッキー
2016/12/25 22:15
> タイヨウの能力名だけ出てないので、

特に想定もなかったのでこのままでも大丈夫です。
異能バトル(小説)を読んだ今ならもっと良い名前を考えられるはず……!

> ちなみに永続罠は、普通に《デスカウンター》だったりします。

>「グレイドル・ドラゴン」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

あれ……? あれ?
豆戦士
2016/12/25 22:36
>豆戦士さん

よし、このまま・・・・・・

>「グレイドル・ドラゴン」の〜

ぎゃあああああ、なんという迂闊なミスを! ミスを!
おかしいとは思ったんだ! 豆戦士さんがデスカウンター思いつかないはずがないと、嫌な予感はしてたんだ!

い、急いで修正しておきます(滝汗
アッキー
2016/12/26 00:51

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決闘祭!   番外編 イシュタールの末裔 (後編) 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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