佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 39 即死

<<   作成日時 : 2017/01/25 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



嗚呼、その細く白い首

真綿で絞めて殺したい


躍動する手足が動かなくなり

冷たくなるまで、瞬きしない

真っ赤な痣のついた、その首に

百万回のキスをする



嗚呼、滑らかで白い肌

爪を突き立て殺したい


掠り傷で息を引き取り

温かいうちに、裸に剥いて

摩天楼から放り投げて

ぐしゃりと潰れる、見る笑顔




◆ ◆ ◆



「あっれー、ママどこー?」

5,6歳くらいの男の子が、泣きそうな顔で歩いていた。
《クリボー》のイラストがプリントされたシャツには、食べこぼしがある。
半ズボンは、探しているうちに漏らしたのか、染みがついている。

「どうしたの?」

聖母のような笑顔で、天神が通りかかった。
それは、どんな聞かん坊でも安心させてしまいそうな、神の如き笑顔だった。
神を継いだことで得た能力の1つである。

「お・・・おねえちゃん、ママどごー?」

安心したような顔で、男の子は天神の服に縋りついた。
後半は涙声になって、弱々しい小動物のように、体中で庇護を求めた。

「あなたの名前は?」
「かずお・・・はごいし、かずお・・・5さい・・・。」

天神のスカートに、ぎゅっとしがみついて、彼は震えた。

「トイレ、おしっこ・・・」

顔を赤くして、ぷるぷると。
綺麗な女の人の前で、排泄現象を訴える羞恥心で、彼は震えていた。

天神は彼を抱きかかえると、トイレまで連れていった。

「1人で出来る?」
「うん・・・」

彼は小さく頷くと、トイレに入っていった。

出てきたときには、すっきりした顔。
ひとりで手を洗ったぞと、誇らしげに手を見せた。


「あ、ママー!」

振り向くと、息を切らした女が安堵したような顔を見せていた。
30代半ばの、妙に色気のある女で、独身に見えた。

「ありがとうございます! あなたが見つけてくれたんですね!」

何故か彼女は、自分の子供より先に天神の手を取った。

「わたしは羽子石・G・妃と申します。天神美月さんですよね、エキシビションに出ていらっしゃった・・・」

その声が、段々と遠くなっていく。
天神は、景色が揺れるのを感じた。

「天神さん!?」

羽子石妃は、天神の肩を抱えた。

「天神さん、どうしたの!? あまが―――」



- - - - - -



気が付くと、天神は見知らぬ部屋で、両足を拘束されていた。

デュエルディスクとデッキはある。
服も脱がされてない。
ノコギリなどの刃物も見当たらない。

「おねえちゃん、ようこそ。」
「わたしたちの、デュエルステージへ。」

先程の羽子石母子が、デュエルディスクを装着して立っていた。
妃は真っ赤なドレスを纏っているが、和生の方は服すら身につけていない。

羽子石妃は子供を抱きかかえると、胸を宛がって母乳を吸わせた。

「あんっ、あんっ、あんっ・・・気持ち良いわ、兄様・・・」

母と子ではない。
胸を吸われるごとに、彼女の容姿は瑞々しくなり、20歳を切った。
喉が起伏するごとに、彼は成長し、若々しい青年になった。

高レベル能力者から発せられるオーラが、2人から放たれていた。

「・・・・・・・・・」

かつて、この世界を創った“母親”とも対峙した天神である。
この状況でも、狼狽することなく穏やかに睨みを利かせている。

だが、危機感だけは、あのときのデュエルと同じだ。
敗北すれば、悪いことになる―――そんな雰囲気だ。

「あらためまして、僕らは曳砂だ。兄妹だ。」
「わたしは曳砂死鉤。こちらは排泄しか能の無い兄、奉佐です。」
「ふああああん! 酷いよ死鉤! これからデュエルなのに興奮させるなんて!」


名乗られて天神は気付いた。

羽子石和生(HAGOISHIKAZUO)はアナグラム。
並べ替えると曳砂奉佐(HIKISAGOHOUZA)になる。

羽子石・G・妃という、ハーフっぽい名前も、同じく。
(HAGOISIGKISAKI)を並べ替えると、曳砂死鉤(HIKISAGOSIKAGI)だ。


「天神さんに排泄行為を見せつけようとしましたね。オシオキです。」
「あぎゃあああああ!!」

死鉤がディスクのボタンを押すと、奉佐に電流が流れた。

「それでは、デュエルを開始します。覚悟は、よろしいですか?」

天神は答える代りにデュエルディスクを展開した。
とにかくデュエルに勝てば、この狂気じみた状況も終わる。

“始まりの1枚”から生まれた“神の遺産”は、自分も相手も強制的に決闘法則に従わせる性質を持つ。
このデュエルに勝てば、曳砂兄妹は自動的に改心することになる。


「「「デュエル!!」」」


天神美月:LP8000

曳砂奉佐:LP8000
曳砂死鉤:LP8000



「手札から《先取り天使》を捨てて、僕の先攻、ドロー!」

腰を振りながら、奉佐はカードを引いた。

「イくよ、イくよ、混迷の道化師《ジェスター・コンフィ》特殊召喚!」


ジェスター・コンフィ レベル1 闇属性・魔法使い族
攻撃力0 守備力0
このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚できる。
この方法で特殊召喚した場合、次の相手のエンドフェイズ時に
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
そのモンスターと表側表示のこのカードを持ち主の手札に戻す。
「ジェスター・コンフィ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。



だが、天神の能力は相手フィールドにモンスターの展開を許さない。
フェイシンとのデュエルを思い出して身構えたが、《ジェスター・コンフィ》は問題なく手札に戻った。


拒絶の神門(ヘブンズゲート) レベル5能力(所有者:天神美月)
相手の場にモンスターが現われたとき、一切の効果を発動させずに、
そのモンスターをそのまま持ち主の手札に戻す。



「あれ・・・おっかしいなあ・・・。」

計算違いがあったようで、奉佐は渋い顔になる。

「仕方ない。カードを5枚伏せてターン終了だ。」

「この愚兄・・・!」

死鉤は軽蔑の眼で奉佐を睨んだ。


「私のターン、ドロー。」

とにもかくにも、天神は自分のターンを進めることにした。
《先取り天使》を使われていなければ、天神の先攻だった。ゆえに奉佐の次は天神のターンとなる。

伏せカードは5枚。除去してくれと言わんばかりの布陣だが、そこに罠があるように思えた。
天神のデッキはモンスター除去を入れてない分だけ、魔法や罠を除去するカードが多い。
そのことは周知の事実でもあるはずだ。まして、自分を標的にするのなら。

「私は、《豊穣のアルテミス》を召喚。カードを3枚伏せて、ターンを終了するわ。」

伏せたカードは、カウンター罠が2枚と、通常罠が1枚。
かなり厚い布陣になっている。
だが、曳砂兄妹から発せられる雰囲気は、それを紙屑のように潰してしまいそうな圧力があった。

天神は基本的に、相手の情報を得ないでデュエルする。
その理由は、情報が無い方がワクワクするから。
ゆえに天神は、曳砂兄妹のデュエリスト能力を知らない。

「そのプレイングは、正解よ。愚兄の低能さと、貴女の判断の良さで、2ターンを生き延びた。だけど、わたしのレベル5能力は、1ミクロンのヒビからでもダムを決壊させるわ! ドローカード!」

真紅のドレスは、まるで血のようだ。
それだけの毒々しさが死鉤にはある。


「わたしは《雷鳴》を発動するわ!」

「・・・?」

天神が首をかしげるのも無理はない。
それはデュエルモンスターズの中でも最低クラスの性能。


雷鳴 (魔法カード)
相手ライフに300ポイントダメージを与える。



・・・だが、かつて神を倒した1枚でもある。

天神は咄嗟に危機を覚え、伏せカードを開いた。


レインボー・ライフ (罠カード)
手札を1枚捨てて発動できる。このターンのエンドフェイズ時まで、
自分は戦闘及びカードの効果によってダメージを受ける代わりに、
その数値分だけライフポイントを回復する。




天神美月:LP8000→7000→0




「―――・・・」


回復するはずのライフは、0になっていた。

不気味な光に包まれる中で、曳砂兄妹の声が響いていた。


「僕のデュエリスト能力は、『相手は効果を適用するとき1000ライフを失う』・・・レベル5だ。」

「わたしのデュエリスト能力は、『相手のライフが減少したとき0にする』・・・愚兄と同じく、レベル5よ。」



“真綿で絞める首”(スクラッガー) レベル5能力(所有者:曳砂奉佐)
相手のカード効果が適用されるとき、相手は1000ライフを失う。


“掠り傷の死爪”(スクレイパー) レベル5能力(所有者:曳砂死鉤)
相手のライフが減少したとき、相手のライフは0になる。




◆ ◆ ◆



吉井康助の脳裏に、ふと不吉なイマジネーションが舞い降りた。

おぞましい黒い影が、天神美月を包み込み、食らい尽くしている。
あまりに鮮明で、白昼夢と呼ぶには生々しすぎた。

「天神、さん・・・?」

彼のデッキには、“始まりの1枚”が入っている。
リアルタイムデュエルのときに“掌握の力”で呼び込んだままになっていた。
それが“娘”の危機を伝えてくれたのか。

吉井は駆け出していた。



- - - - - -



「天神さんっ!」

扉を開けた吉井の目に飛び込んできたのは、今まさに天神がカードになっていく光景だった。


「あれ・・・? 呼んでもいないのに、吉井くんが来てしまったよ。死鉤、やっぱり天神さんを最初に狙ったのは失敗だったんじゃないかな?」
「恐れることはないわ、兄様。デザートも一緒に、いただいてしまいましょう?」

もはや状況は決定的だった。

「僕が勝ったら、天神さんを返してもらいます!」

吉井はデュエルディスクを展開する。

デッキに入っている“始まりの1枚”は、自分も相手も強制的に決闘法則に従わせる性質を持つ。
このデュエルに勝てば、曳砂兄妹は天神を返すだけでなく、自動的に改心することになる。


「「「デュエル!!」」」


吉井康助:LP8000

曳砂奉佐:LP8000
曳砂死鉤:LP8000



「僕の先攻!」

吉井は手札を一瞥し、即座に戦略を組み立てる。
だが、奉佐が手札の1枚を発動した。

「残念ながら、《先取り天使》を墓地に送り、僕の先攻だ。」


先取り天使 レベル1 光属性・天使族
攻撃力0 守備力0
後攻のプレイヤーは、デュエル開始時、手札にあるこのカードを墓地に送ることで、
このデュエルを自分の先攻で始めることができる。



そのとき吉井は、背筋を蛆虫が這いずり回るような、嫌な予感を覚えた。

「僕も《先取り天使》を発動します!」

何故か、先攻を渡してはならない気がした。
もう少し早く来ていれば、曳砂兄妹のデュエリスト能力を聞いていたが、そうでなくても。
天神を倒したというだけで、吉井の警戒度はMAXだ。

「おっと2枚目の《先取り天使》を発動だ!」

「僕も2枚目の《先取り天使》を発動します!」

「では、わたしが《先取り天使》を発動するわ。」

「3枚目の《先取り天使》を発動します!」

これが適用されれば、吉井のライフは0となり、手札は2枚しか残らない。
だが、曳砂兄妹は緩めない。2枚もあれば十分に脅威だ。

「はっはっは、僕の手札には3枚目の《先取り天使》があるのさ!」

発動しながら奉佐は、冷蔵庫から氷水を取り出すと、それを全身に浴びた。

「いっぎゃあああああああああ!!!」

見ている方が背筋の凍りそうな光景だ。
奉佐は心臓麻痺を起こすことなく息を吐き、手札から魔法カードを発動する。


「イッヒ・ナーメ・イスト・ドゥラ・イーモン・・・・・・冥界より来たりし凍てつく吹雪よ、我が剣となりて敵を滅ぼせ・・・・・・エターナルフォースブリザード!!」


エターナルフォースブリザード (魔法カード)
このカードは「鷹野麗子」と名の付くデュエリストしか使用できない。
(1)相手はデュエルに敗北する。



「そのカードは鷹野さん専用カード! まさか・・・役所で?」

「デュエルで勝つ為なら、僕は名前だって変えてみせる。」

腰に手を当てて、奉佐は堂々と宣言した。

「・・・っ、だけど《緑光の宣告者》!」


緑光の宣告者 レベル2 光属性・天使族
攻撃力300 守備力500
自分の手札からこのカードと天使族モンスター1体を墓地に送って発動する。
相手の魔法カードの発動を無効にし、そのカードを破壊する。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。



吉井康助:LP8000→7000→0



「―――っ」


“始まりの1枚”の効果で、即死は免れている。
だが、吉井にとっては最悪の状況だ。

これが自分のターンであれば、幾らでもやりようはあった。
“掌握の力”の性能は、持ち主の知識次第。
吉井は様々なデッキを研究しており、様々なカードの在り処を把握している。

例えば、デッキワンカードだ。
デュエリスト能力はカードの条件を無視できるので、いかなるデッキワンカードも呼び込める。
デッキワンサーチシステムを使えば、任意のデッキワンカードを手札に持ってくることが出来る。

例えば、《デステニーブレイク》であれば、デッキのカードを10枚も除外できる。
しかも《強欲で貪欲な壺》と違い、表側表示での除外だ。


デステニーブレイク (速攻魔法・デッキワン)
雲井忠雄の使用するデッキにのみ入れることが出来る。
(1)2000ライフポイント払うことで発動できる。そのとき、以下の効果を使用できる。
●このターンのエンドフェイズ時まで、モンスター1体の攻撃力を100000にする。
ただしそのモンスターが戦闘を行うとき、プレイヤーに発生する戦闘ダメージは0になる。
(2)デッキの上からカードを10枚除外することで発動できる。そのとき、以下の効果を使用できる。
●このカードを発動したターンのバトルフェイズ中、相手のカード効果はすべて無効になる。



除外するときの表示形式。
それがデュエルモンスターズにおいては、どれほど大きな差であるかは、言うまでもない。

今なら手札もあるので、《サイバー・ウロボロス》を除外すれば、《強欲で貪欲な壺》を引くことが出来る。
引きの強さが前提になっているコンボだが、神を相手に引きが鈍らない吉井にとっては簡単なことである。


サイバー・ウロボロス レベル2 闇属性・機械族
攻撃力100 守備力600
このカードがゲームから除外された時、手札のカード1枚を墓地に送る事で、
デッキからカードを1枚ドローする。



後は言うまでもなく、適当なカードで手札を増やしていけばいい。
リンネのデッキには、吉井が把握しているだけでも、発動の条件を消去したドローカードや、召喚条件を消去した強力モンスターなどが存在している。


エンシェント・リーフ (魔法カード・“回帰の力”適用)
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


終わりの始まり (魔法カード・“回帰の力”適用)
自分のデッキからカードを3枚ドローする。



原初神ガイア(“回帰の力”適用) レベル4 神属性・無族
攻撃力4000 守備力4000
1ターンに1度、フィールド上に存在するカードの枚数×300ポイントのダメージを、
相手ライフに与える事ができる。



そして、《真宇宙−カオス・フィールド》を使えば、エンドフェイズに膨大なライフを回復させることも出来る。
天神のデッキにある《蛇神ゲー》を使えば、無限のライフを得ることだって可能だ。


真宇宙−カオス・フィールド (フィールド魔法)
このカードの発動と効果は無効化されない。
このカードは他のカードの効果を受けず、自分の場を離れない。
自分は、自分または相手ターンのエンドフェイズ時に、
自分の墓地・除外ゾーンのカードを全てデッキに戻す事ができる。
その後、戻したカードの中に含まれていたモンスターカード
全ての攻撃力と守備力を合計した数値分だけ、自分のライフを回復する。



言うまでもなく無限大は、有限の数値では加減算が不可能である。
すなわち、有限のライフが減ったところで、減少したと見なされず、曳砂死鉤の能力も適用されない。


自分のターンでさえあったら、吉井の勝利は確実だった!

相手が1人であれば、吉井は勝っていた!


そのことを曳砂兄妹は、わかっていた。
いかなるレベル5能力者よりも、吉井の方が恐ろしい。

世界大会の優勝者であるサン・レイティアよりも。
曳砂兄妹にとって相性最悪の泣笠葉継よりも。
公式最強と名高いエウレカ・セデミクラよりも。

この少年は強い。

だからこそ数の暴力に訴えた。
ふんだんに《先取り天使》を使用した。
群れを成すのは、弱者の基本だ。


禍々しい光を浴びてカードになっていく吉井を見つめながら、兄妹は安堵の息を吐いていた。


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