佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   番外編 電脳遊戯の交響曲 (4)

<<   作成日時 : 2017/05/08 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



デュエルが終わり、わたしは息を荒くしてベッドにもたれかかった。
もう立てない。

勝った。もう立たなくていい。
シィハを守ることが出来た。
やった。

「お見事、と言うしかない、か・・・。」

パソコンの向こうの声も、どことなく苦しそうだ。
1ターンで私に匹敵するダメージを受けたのだから当然かな。

「でもさぁ、お前、私に負けた方が、よかった、よ。」

「・・・っ?」

何?
負け惜しみとか、そういう類の雰囲気じゃない。

「たった今、私の上司が到着した。一足先に、地獄で待ってる。」

「な、何? どういうこと?」

慌ててパソコンの画面に向き合うわたしの耳に、耳を劈くようなおぞましい絶叫が響いてきた。


「ぐぎゃああああああああ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※!!!」


「―――っ!?」


何かを咀嚼するような音。
それと、水音。
何かを飲んでいる?
何を?

考えたくない。
嫌だ。
嫌だ。
誰?
何者?


「ごちそーさまでしたっ!」

「・・・っ!?」

「月がとっても青いから♪遠回りして帰ろ♪あの鈴懸の並木路は♪想い出の小径よ♪」

今しがたの奇怪な音声とチグハグな、鈴を鳴らすような可愛らしい歌声が聞こえてきた。
頭が変になりそうなほどの、そぐわなさ。
パソコンの画面すらも恐ろしくて見ていられなかった。

正面から見てなくてよかったかもしれない。

画面から細い手が生えていた。

「恋焦がれてしまうよ♪ハートのエース♪教えて誰か、この先のストーリー♪不思議の国の・・・あれ、何か狭いし、これ? き、きつい、痛い!」

パソコンの画面から人間が出てきた。
何を言ってるのかわからないと思うけれど、わたしも自分が何を言ってるのかわからない。
目の前の光景が信じられない。

「ふー、やっと出れた。初めまして、私は月島カノン。闇のデュエルをしに来ました。」

「・・・っ!」

「といっても、君には断る権利はあるよ。断らないと思うけど。」

「どういう意味・・・?」

「みゅ? 私の侵入を許した時点で、かなり不利だってこと認識してないのかな。君が断れば、今すぐシィハちゃんを丸齧りにするよ。」

「!?」

そのとき、わたしの脳内で先程の嫌な音声が再生された。
こいつ、人間じゃない。

「ちーかーてーつーまーるーかーじーりー♪」

人でなしとか鬼畜とかいう次元じゃない。
本当に、人間以外の何かだ。

「デュエルの条件だけど、マドカちゃんが勝てば、シィハちゃんの臓器は今後一切、取らないことにするよ。もちろん治療に必要な手はずは整える。ついでに私を闇に葬るオマケ付き。」

「・・・・・・。」

「心配しなくても、ちゃんと約束は守られるよ。デュエルモンスターズを通して交わされた約束は、絶対的拘束力を持つ。」

「わたしが負けたときは?」

「そうだね、シィハちゃんと同じ状態になってもらおうかな。」



◆ ◆ ◆



「「デュエル!」」


高見沢円:LP8000
月島カノン:LP5000



「ええ・・・?」

初期ライフが5000になっている。
デュエルディスクの故障?

・・・でないとすれば、何らかのデュエリスト能力。
ライフコストを支払うことで発動するタイプか。

「私の先攻、ドロー。」


高見沢円:LP8000、手札5
場:
場:

月島カノン:LP5000、手札4
場:
場:



見れば手札も足りてない。
手札コストも必要とする能力だとすれば、それ相応の強力な効果か。

「1ターン。」

カノンはウインクしながら指を立てる。

「・・・?」

「マドカちゃんに、1ターンの猶予を与えるよ。」

その意味がすぐにはわからなかった。

「手札を1枚捨てて《THEトリッキー》特殊召喚。捨てたのは《おジャマジック》なので、デッキからおジャマ3枚を手札に加える。《光の援軍》を発動してカード3枚を墓地に送り、ライラを手札に加える。落ちた3枚は全てウォルフ。特殊召喚。速攻魔法《リロード》で手札を入れ替える。」


高見沢円:LP8000、手札5
場:
場:

月島カノン:LP5000、手札4
場:THEトリッキー(攻2000)、ライトロード・ビースト ウォルフ(攻2100)、ライトロード・ビースト ウォルフ(攻2100)、ライトロード・ビースト ウォルフ(攻2100)
場:



・・・・・・。馬鹿げてる。
モンスターを4体も展開しておいて、手札消費は無し。
どんなデッキ構築をすれば、こんなことが可能になるの?

「まだ驚くのは早いよ。馬鹿馬鹿しいのは、これからなんだから、ね。」

まるで緊迫感の無い口調で、カノンは笑う。
この無邪気さが腹立たしく、そして恐ろしい。

「またしても手札を1枚捨てて《THEトリッキー》特殊召喚。捨てたカードは当然の如く《おジャマジック》なので3枚をデッキからサーチ。そんでもって《リロード》で手札総入れ替え。2体の《THEトリッキー》でオーバーレイ、エクシーズ召喚、まじまじっ、《マジマジ☆マジシャンギャル》♪」

「えくしーず・・・?」

《ブラック・マジシャン・ガール》に似た、ちょっとくどい容貌のモンスターが出現した。
手札が減ってないということは、エクストラデッキから出てきたのか。
レベル5モンスター2体で、星6のモンスター。どういう計算なのかわからない。

とにかく、初めて見るモンスターだけど、攻撃力は2400で今は効果も使えない。
それに魔法使い族なら、わたしにダメージは与えられない。

「カードを2枚伏せて、速攻魔法《時の飛躍》! 3ターン後のバトルフェイズにしゅっぱーつ♪しんこー♪」

獣戦士族と魔法使い族では、わたしにダメージは与えられない。聖なる門が全てを阻む。
とはいえ、あまり気持ちのいいものじゃない。

「ターンを超えたので、伏せた2枚の《無謀な欲張り》を発動。4枚ドロー。《折れ竹光》をウォルフに装備して、《黄金色の竹光》を3枚発動。6枚ドロー。カードを4枚伏せて、《ハネワタ》を召喚。おお、何と天使族だよ。これならマドカちゃんにもダメージを与えられるかな?」

ふざけた物言いも気にならないくらい恐ろしい。
常識が通用しないデッキ。
常識が通用しないプレイング。

「続きまして、《ハネワタ》とウォルフでシンクロ召喚! 出でよ、《A・O・Jカタストル》!」

また奇妙なモンスターが出現した。
攻撃力は2200か。効果は厄介だけれど、そこまでの脅威じゃない。
でも、ここまで来れば誰にでもわかる。
まだこの先があることくらい。

「速攻魔法《時の飛躍》! でもダメージは与えられないの〜♪ で〜、《ゴブリンのやりくり上手》3枚と《非常食》で、ライフが8000に戻りつつ手札は10枚に増えるよん。《エンド・オブ・ザ・ワールド》を発動、ウォルフ2体を生贄に、ルインちゃん降臨! 魔法カード《融合》を発動、手札の《シーカーメン》、《キラー・ブロッブ》、《海原の女戦士》を融合し、《黒き人食い鮫》出現!」


高見沢円:LP8000、手札5
場:
場:

月島カノン:LP8000、手札4
場:黒き人食い鮫(攻2100)、A・O・Jカタストル(攻2200)、破滅の女神ルイン(攻2300)、マジマジ☆マジシャンギャル(攻2400)
場:



「4体のモンスターを生贄に、《創星神sophia》特殊召喚!」


その途端、わたしの手札が全て吹き飛んだ。


「ソピアの効果。特殊召喚は無効に出来ず、互いの手札・フィールド・墓地のカードを根こそぎ除外する。そしてエンドフェイズに、除外した手札3枚、《異次元の偵察機》が舞い戻ってくる。これにてターン終了!」


高見沢円:LP8000、手札0
場:
場:

月島カノン:LP8000、手札0
場:創星神sophia(攻3600)、異次元の偵察機(攻800)、異次元の偵察機(攻800)、異次元の偵察機(攻800)
場:



「わたしの・・・ターン・・・。」

何が出来るというのだろう。
理解できないことが多すぎるが、理解できることもある。
目の前に、攻撃力3600の、よりにもよって天使族モンスターが立っているのだ。

都合よく《DNA改造手術》を引けるだろうか?
けれど・・・引けたとしても・・・・・・。

いや、考えまい。
弱気になってはいけない。

わたしが負けたら、シィハはどうなるの?
これが、これこそ、絶対に負けるわけにはいかない戦いってやつじゃない!

「ドロー! カードを1枚セットして、ターンエンド・・・!」


高見沢円:LP8000、手札0
場:
場:伏せ×1

月島カノン:LP8000、手札0
場:創星神sophia(攻3600)、異次元の偵察機(攻800)、異次元の偵察機(攻800)、異次元の偵察機(攻800)
場:



目が霞む。
体に負担をかけすぎた。

「その伏せカード、よっぽど自信あるんだね。でも言ったはずだよ、猶予は1ターンしか無いって・・・」

そのときのカノンの笑み、とても表現できる気がしない。
この恐怖と震えを、何て表現すればいいかわからない。

「私のターン、ドロー。ソピアで直接攻撃。」

「リバーストラップ、《DNA改造手術》!」

やっぱり、これしかなかった。
これを引くのが最善だった。

「みゃはっ、攻撃は通してくれないんだ。いいもんね。それなら《カオス・グリード》を発動して2枚ドロー。《フェルグラントドラゴン》を捨てて《トレード・イン》発動。2枚ドロー。《モンタージュ・ドラゴン》を捨てて《トレード・イン》発動。2枚ドロー。《タイラント・ドラゴン》を捨てて《トレード・イン》発動。」

手札交換の連続。
《サイクロン》か何かを引かれれば、まずいことになる。
それでも、まだ・・・



「最後に《超再生能力》2枚発動。エンドフェイズに6枚ドロー。受けてみよ、怒りの業火エクゾード・フレイム!」



封印されしエクゾディア レベル3 闇属性・魔法使い族
攻撃力1000 守備力1000
このカードに加え、「封印されし者の右足」「封印されし者の左足」「封印されし者の右腕」「封印されし者の左腕」が
手札に全て揃った時、デュエルに勝利する。


封印されし者の右足 レベル1 闇属性・魔法使い族
攻撃力200 守備力300


封印されし者の左足 レベル1 闇属性・魔法使い族
攻撃力200 守備力300


封印されし者の右腕 レベル1 闇属性・魔法使い族
攻撃力200 守備力300


封印されし者の左腕 レベル1 闇属性・魔法使い族
攻撃力200 守備力300



あ・・・・・・・・・?

嘘・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・
・・・・・・・・・



◆ ◆ ◆



体が動かない。

何も見えない。

けれど、音は聞こえる。

カチャカチャと、何かの道具を扱うような音がする。
何故か聞いていると寒気がしてくる。

わたし、どうなって・・・?
そうだ、デュエルに負けて・・・。


『わたしが負けたときは?』

『そうだね、シィハちゃんと同じ状態になってもらおうかな。』


シィハと、同じ状態・・・?


「メス。」

「はい。」


聞き間違いだろうか。

そう思ったのは束の間だった。

(痛いぃい!!?)

痛みと共に恐怖が押し寄せてきた。
腹に鋭い刃物が突き刺さっている。

(痛い! 痛い! 痛いぃっ! 痛いい! あうっ、あがっ、あぎゃああああああああああああああ!!!)

何なの。
何が起こってるの。

いや、わかってる。
考えたくない。

(ひぎぃいいいいいいい!!! いぎゃあああああああああああああああああああ!!!)

意識がバラバラになる。
痛みに耐えかねて叫んでいる自分と、こうして冷静に喋っている自分にバラバラに自分と自分がバラバラになるなるなるなるバラバラバラバラバラバラバラバラ・・・・・・・・・・・・・・・・

聞いてはくれない。
奴らは淡々と作業を進めている。
体が動かせない。

(ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ)

腕から、脚から、骨が取り出される。
お腹の中から、臓器が取り出される。

さよなら、わたしの心臓。
さよなら、わたしの・・・

(ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ)

痛みと、苦しみと、悲しみが、耐えられないほど押し寄せてくる。
わたしは何の為に生まれてきたの?
生きたまま切り刻まれて死ぬ為に?

わたしの心臓、返して!

助けて!
おとうさん、おかあさん、たすけて!

(ああああああ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※)

痛い※※※苦し※助けて※※※か※※※死にたく※い※※※嫌だ※※※返※て※※※わた※の※臓※※※※おと※さん※※※おかあ※※※※痛※※※※※苦※※※※※たす※て※※※※※まだ※※わた※は※※※※※※※※※※※※あ※※※※※※※※※※※※g※※※※※※※※※※※※t※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※k※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※※※    ※※ ※ ※  ※※   ※※※   ※※ ※  ※※   ※※    ※※  ※※※※※※※※※※ ※※※※   ※※※    ※※※※    ※※ ※  ※   ※ ※※※※ ※※※※ ※ ※※※※※     ※※※  ※※※※    ※※  ※※










だれか

シィハ



たすけて



わたし

みたいな

めに

あわせない





だれか

だれか

わたしのこえを

きいてください



シィハを

たすけてください



それが

わたしの


さいごののぞみです










◆ ◆ ◆



みゅ? その後どうなったかって?

マドカちゃんの臓器は、疾患を抱えた患者さんたちに移植されていったよ。予後は良し悪し、元気になった人もいるし、悪化して死んじゃった人もいた。みゃはは、元気と言うと語弊があるかな。何しろ他人の臓器だから、体が拒否反応を起こしちゃう。それを防ぐ為に、薬漬けの日々だから、医療マンガみたいに元気ハツラツってわけにはいかないよ。でも、生きてるだけで素晴らしいことなのかもしれないね。ほらほら、そんな死んだ魚みたいな目をしないでよ。せっかく、女の子を生きたまま切り刻んで永らえた命なんだから。心の中でどう思っていようと、表面上は幸せなフリをしとかないと。移植なんかしないで延命治療で頑張った方がマシだったとか言わないで。後悔とか、不幸とか、私を喜ばせるだけなんだよ? みゃはは♪ そんなに私を喜ばせたいのかな。それならそれで嬉しいけど。

えーと、面白かったのは、肝臓を移植された脂ぎった中年男のエピソードかな。暴飲暴食で肝臓癌になったけれど、美少女の肝臓を移植されるなんて、よっ、幸せ者。退院してから、節制生活を送っていたけれど、あるとき久々に飲もうと思って居酒屋に向かう途中、酔っ払い運転のトラックに撥ねられて死んじゃった。みゃはは、傑作だよね、笑えるね。せっかく病魔の手を逃れたのに、事故死するなんて、運が無いね。せめて最後に美味しいものを食べさせてあげたかったよ。

他にも面白い患者のエピソードはあるけど、ここでは割愛するよ。面白いと言えば、酷死病の、とある男の子。結局、移植手術に耐えられないって診断が下されて、そのまま延命治療を続けていたら、良好な予後になっていったよ。皮肉なものだよね。生きたまま人間を刻んだ成果で永らえた人が予後不良で、何も犠牲にしないで永らえた人が予後良好だなんて。かなり長く生きてるつもりだけど、こういう皮肉な運命ってのは、いつでもちょっぴりスパイシー。新鮮な気持ちにさせてくれるよね。

あ、そうそう、マドカちゃんの脳がどうなったかだけ最後に言っておこうか。脳科学の研究とやらで、しばらく特殊溶液の中で活動を続けていたらしく、時々は脳波も観測できたみたい。でもねー、次第に弱まって、脳全体が萎縮して、最後には落ちて潰れた豆腐みたいにグズグズに崩壊して、廃棄されたみたい。きっと下水と混ざり合って流れていったんだね。どうせなら私が食べたかったなぁ。でも、移植コーディネーターの人々って健全だから、生きたまま人を切り刻むのは平気でも、生きたまま人を食べるのは拒否感あるみたい。要するに普通の人間なんだよね。あー、それにしても、ヨダレ垂らして指を咥える私の前でバラバラにされていくマドカちゃんは、とっても可愛かったな。


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