佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 100 Monster Force

<<   作成日時 : 2017/11/12 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



むかしむかし せいれいかいに

はちにんの にんぎょうが いました

だれが つくったかも わからない

それはそれは ふるい にんぎょう でした

あくまが つくったんだ

そんな うわさも ありました


そのうち あおいめのおんなが やってきて

にんぎょうを こわして いきました

まがれ まがれ まがって ねじれろ

はちにんの にんぎょうは

よにん へって よにんに なりました

こわれた にんぎょうは にどと うごきません


そのうち にんげんが やってきて

にんぎょうを ぬすんで いきました

よにんの にんぎょうは

ふたり へって ふたりに なりました

ぬすまれた にんぎょうは

にんげんかいで しあわせに くらしました


めでたし めでたし



◆ ◆ ◆



青空が翳り、地響きが駆動する。
最初は気のせいかと思うほどに弱々しく遠く、やがて大勢が気がつくほどに強く近く。

光を覆うのは雲ではなく、暴虐の巨人。鈍い色の金属。
すらりとした三本脚に載せられた胴体は、引き締まりつつも頑丈な脚と不釣り合いなほどに、くびれが危うい。
シャベルを思わせる爪牙の左腕と、金属骨格そのまま剥き出しの右腕、そして紅く漲る無機質な瞳。
これらを支えるには、胴体の付け根は、あまりにも細すぎるように思えてならなかった。
しかし見る者の心配をよそに、くびれは激しく回転し、ねじれ、暴虐の双腕を空いっぱいに振るう。
心臓の位置で無骨に回る巨大な歯車は、巨人の命を象徴しているようでもあり、恐怖の宣告でもあった。

“オーバーゴーレム”・・・正式名称を《古代の機械超越巨人》という。
その大きさは、《古代の機械巨人》は勿論、融合体である“究極巨人”や“混沌巨人”すらも凌駕する。
ゾークネクロファデス、本来のサイズのマシニクル、極神の面々でさえ、まだ及ばない。


アンティーク・ギア・オーバーゴーレム レベル12 地属性・機械族・融合
攻撃力8800 守備力6800
「古代の機械究極巨人」+「古代の機械混沌巨人」+「古代の機械」モンスター8体以上
このカードは融合召喚以外で場に出した場合、(2)(3)(4)の効果は無効になる。
(1):このカードが場に存在する限り、相手はバトルフェイズに魔法・罠を発動できない。
(2):このカードは1度のバトルフェイズに何度でも攻撃できる。
(3):自軍全てが守備表示モンスターに貫通ダメージを与える。
(4):このカードが破壊されたとき、手札・デッキ・墓地・除外ゾーンから
融合素材を可能な限り特殊召喚する。(この効果は無効化されない)


カードとしての性能は、この通りである。
実体として現れたオーバーゴーレムも、これに準拠した性能を持っている。

デッキを配布された市民たちは、相手がモンスターなら、モンスターで応戦できると高を括っていた。
どれだけ大きかろうが、デュエルモンスターズだ。特に17年前のドーマ事変を知っている者は冷静だった。
魔法・罠を発動できないことに気付き、狼狽する者も多かったが、モンスター効果は使用できる。


「墓地から《クリボー》と《ハネワタ》を除外して、《カオス・ソーサラー》を特殊召喚っす! 効果で除外っす!」

パンタロンの少年、A級14席ピーター・スイッチが駆けつけて応戦していた。
しかし魔術師の混沌は、ゴーレムの装甲に弾かれて霧消する。

(やっぱりパワー不足っすか・・・。マスタールールでは問答無用の破壊効果でも、リアルファイトルールでは単なる魔法攻撃に過ぎない。)

ピーターは忌々しげに舌打ちして、しかしすぐに不敵な笑みを浮かべた。

「でもまあ、デュエルには違いないから《ものマネ幻想師》は通るっさあっ!」


ものマネ幻想師 レベル1 光属性・魔法使い族
攻撃力0 守備力0
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このカードの攻撃力・守備力は、
選択したモンスターの元々の攻撃力・守備力と同じ数値になる。



《ものマネ幻想師》 (攻0→8800)



「打ち砕けっ!!」

たとえ《ものマネ幻想師》が倒されたところで、ピーター自身は何ともない。
決闘者と精霊は、最初から同じ位置には立っていない。


だが、精霊界には“モンスターフォース”という法則がある。


ピーター・スイッチ:LP8000→7719


「がはっ・・・!」

余波が衝撃となって、ピーターを吹っ飛ばした。

(何っすか・・・今の・・・!?)

破れたパンタロンに血が滲んでいる。
口元を押さえると、だらだらと血が出ていた。

(所詮、オレっちは人間ってことっすか・・・。精霊のカードも持たない、コモンデュエリスト・・・。)

よく言われるが、世界の危機に対して一部のデュエリストしか戦わないのは何故か、という疑問が存在する。
コモンカードにも強力なものは多数存在するので、それらを駆使すればボス級を倒すことも可能ではないか。
そうした問いかけは、あながち間違っていない。

しかし敵が精霊のカードを用いている場合、コモンデュエリストでは勝てない理由がある。

(逆算すれば、奴の攻撃力は見かけの10倍ってことっすか・・・。三沢さんに忠告されていたのに、なーんで聞き流しちゃったんすかオレっちってば。)

それこそ“モンスターフォース”。精霊は10倍のステータスと10倍の初期ライフを備えている。
しかも単純に10倍ということではない。パワーアップではない。今のように、計算時のみ10倍を適用する。
精霊の宿っていないカードには、“モンスターフォース”は適用されない。ゆえに、この結果である。

絶対に勝てないとまでは言い切れないが、大きく不利なことは確かだ。
ピーターのデュエリスト能力“ガレットルート”は、レベル4屈指の防御性能を誇るが、単独で攻撃性能は無い。

(こんなとき、暗犯満がいてくれりゃあ・・・)

西城空牙も含めて行動を共にしていた、A級13席の男。
彼のデュエリスト能力なら、オーバーゴーレムとて一撃粉砕だ。

“邪夢乎而惨”(イビルミストジャッジ) レベル5−能力(所有者:暗犯満)
1ターンに3回まで、フィールドのカード1枚を破壊できる。


回数制限ゆえに純正レベル5ではなく、マイナー評価を下されているが、破壊性能は保証されている。
たとえ精霊界由来の魔導兵器であろうが、創造神由来の能力に抗う術は無い。


「・・・っ」

オーバーゴーレムの拳が再び飛んでくる。
大きすぎて回避できない。

「ごはっ!!」

ピーター・スイッチ:LP7719→7423


「がふっ・・・」

ピーター・スイッチ:LP7423→7127


「あぐううう・・・!」

執拗に繰り出される拳は、ピーターの引き締まった体を痛めつけた。
なまじ防御性能の高い能力を持っているがゆえに、一撃で死ぬことがない。
もう殺してくれと懇願している相手を嬲り殺すような、醜悪な攻撃。
しかし巨人の目は無機質で、ただただ作業を繰り返しているに過ぎなかった。


ピーター・スイッチ:LP7127→6831→6535→6239→5943→5647→・・・




- - - - - -



「うう・・・・・・」

「気が付いたか。」

ピーターが目を覚ますと、目の前に木刀を持った少女が立っていた。
凛とした雰囲気を見紛うはずもない。

「天獄三月・・・いや、マーチ・スカイヘル・・・何故あんたが?」

「同朋を助けるのに何故と訊くな。拙者は仲間を見捨てたりなどしない。」

「は、相変わらずの武士口調・・・もっと女の子らしい口調を希望っす。」

「減らず口を叩いてる暇があったら立て、“14席”。」

「・・・・・・なるほど、りょーかいっす“17席”サン。」

デュエルディスクを確認すると、残りライフは23ポイントになっていた。
どうやらオーバーゴーレムの脅威から逃れきったわけではないらしい。

「ところでA級戦力って、どんくらい減ったんすか?」

「我々以外は壊滅したと見ていい。死亡、捕縛、離脱、裏切り・・・いずれにしてもな。」

「“帽子屋”(ハットマン)も、死んだっすよね。」

「そっちも“幸福箱”(ピトス)を失ったらしいな。」

「断末魔の悲鳴とか色々聞こえてきたっす。滅亡派はイカれてやがるっすよ。」

「“あんなもの”を出してきた時点でイカれてるどころではあるまい。」

地響きが少しずつ近づいてくる。
遠近感が狂いそうな巨体が、煙に塗れて視界に映る。

「逃げろ、ピーター。奴の狙いは拙者だ。」

「・・・っ! そういうことっすか!」


“原始時代”(バニラエイジ) レベル4能力(所有者:マーチ・スカイヘル)
この能力を適用している間、モンスター効果は無効になる。



「だったら尚更オレっちは逃げるわけにはいかないっすね。」

「何を言っている。もはや打つ手はあるまい。」

「惚れた女を置いて逃げる手こそ、士道あるまじきっす!」

「なっ・・・?」

凛とした顔が赤くなる。
それを見てピーターは嬉しそうに微笑み、すぐに嘲笑うような顔で踊った。

「な〜んて、本気にしちゃったっすか? かっわいい〜!」

「・・・ああ、本気にしてしまったぞ。」

マーチは凛とした目でピーターを見据える。
騙されたと怒るのではなく、優しい目をしていた。


そのまま数秒、ぎくしゃくした空気が流れたが、そこへゴシックロリータな声が響いてきた。

「あっれ〜、なんか青春してるんだ?」

ニーソックスに、ミニスカート。
小悪魔のような雰囲気を漂わせた美少女が、コウモリの翼を模した衣装で現れた。

「はーい、あなたのショコラちゃんでーっす! ピースピース!」

「ショコラ、無事だったのか!」

「アタシが死んだって噂でも流れてたの? あはっ、無理ないか。“カンサー”A級は残り10人だって。」

「10人・・・そいつは確かな情報っすか?」

「そっ♪ これ貰ったのん。」

爪に赤いマニキュアを塗った指が、黒い靄に包まれた紙を掲げた。

「“ブック・オブ・ザ・ワールド”の断片、“ページ・オブ・ザ・ワールド”ってとこかな? うふん、もうすぐ核ミサイルが飛んでくるみたいね♪」

「「核ミサイル!!?」」

「うふん、物的被害をもたらすなら、物理攻撃が通用するって発想ね♪」

「・・・まずいな。」

「うふん、だからピーター君とマーチちゃんに会えて良かった。早くデュエルを始めようよっ!」

ショコラのディスクが展開され、闇の瘴気が噴き出した。

闇のゲーム中は、あらゆる外的要因から身を守られる。
たとえ核ミサイルの波状攻撃であろうとも、爆風の類は勿論、放射能も通さない。

「いや、まずいというのは別の意味だ・・・しかし、それも火急ではあるか。」

「そうっすよ。まずは生き延びなければ話にならないっす!」

ピーターとマーチもディスクを広げる。

そして闇のデュエルが始まった。


「「「デュエル!」」」


ピーター・スイッチ:LP23
マーチ・スカイヘル:LP8000
ショコラ・イービール:LP8000




◆ ◆ ◆



「くはは、言いたいことがあるなら我慢しなくていいんだぜ?」

嘲笑うような口調で、少年は少女に呼びかける。
2年前に誘拐したときは子供でしかなかった少女も、第二次性徴を迎えつつある。
一方で粗食の幼児期を過ごした少年は、15歳になった今でも中性的だ。

「べ、別に・・・」

もじもじした様子で、少女―――ミリィ・レイティアは、背負っていた赤いランドセルを下ろす。
これを使うのも今年度いっぱいだ。たとえ世界が滅びなくても。

「ああ、トイレか?」
「違うよ!」
「くはは、女だろうが出るもんは出るだろ。恥ずかしがるなよ。」
「違うって言ってるでしょ! 相変わらず下品なんだから!」

少年と同じくらいになってきた目線で、ミリィは真っ赤になって叫ぶ。
しかし本気で怒っているわけではない。すぐに深呼吸ひとつして、落ち着いた声で言った。

「ただ、気になっただけ。アナタの“唯我独尊”なら、ううん、“歪空間”でも・・」

「あのデカブツを破壊できるってか?」

少年は、予想していましたというように、ミリィが言い終わるのを待たずに先を答えた。

「くはは、そいつは正解だが、生憎おれは、しゃらくせぇヒーローごっこに興じる趣味は無いんでな。」
「そうじゃないよ。」
「ああ・・・? おれが実はイイ奴とか思ってんじゃねえぞ。」
「違う。アナタは何か隠してる。」

じっと見据えられて、少年は思わず目を逸らしそうになる。
この少女に誤魔化しは効かない。

「あのゴーレムについて、何か推測があるんでしょう? わたしを誘拐したときも、リンネの正体や目的について仮説をた立てていた。あのときみたいに聞かせてよ。」
「くははっ、とんだ勘違い女がいたもんだ。対等な話相手だとでも思ってたのか? 暇潰しに愚にもつかねぇ妄想を並べただけだ。おれは目に見える力しか信じないんでね。」

2年前に言ったことは本心だ。
リンネの思惑など知ったことではないし、利用できるなら存分に利用するまで。
何度か取引をした北条という男も、似たようなことを言っていた。

カネと暴力。結局それが全てだと思う。

それに対して否定の言葉を口にするのは容易いが、少年の人生までは否定できない。
少年が、カネと暴力の世界に生きてきたことは否定できない。
差し伸べられる手は、例外なく偽善者の甘い罠。
拳は必ず、弱者へ突き出される。

しかし少年は、自分の人生を嘆いたことなど一度も無い。
なんなら、自分にクソッタレな運命を課した神様に、皮肉でなく礼を言いたいくらいだ。

人権なんか最初から無い、掃き溜めの底辺。暴力の捌け口。
そんな子供に神様は、最も欲しい力を与えてくれた。
カードパワーの不足を補って余りある、圧倒的な破壊能力。

世界大会を利用して、更なるカネを、強いカードを手に入れれば、自分の力は更に磐石なものとなる。
サン・レイティアに邪魔されなければ、そうなっていたはずだった。どうせ世界は―――


「・・・どうせ世界は、どこかの誰かさんが救ってくれるさ。くはははは。」

核ミサイルが飛来するのが見える。
少年は余裕の顔でデュエルディスクを展開し、ミリィのディスクに鎖を放った。
これで少々のことでは離れない。

「「デュエル!」」

ゼロサム:LP8000
ミリィ・レイティア:LP8000



闇のデュエルが始まった。




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