佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 118 Mother, Look at Me, and make Me

<<   作成日時 : 2017/11/30 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



むかしむかし あるところに

なもなき あくまがいました

あくまは なまえが ほしくて ほしくて

しかた ありません でした

そこで あくまは たびにでて

なまえを さがすことに しました

でも せかいは ひろいので

あくまは ふたつにわかれて

たびにでました

いっぴきは ひかりへ

もういっぴきは やみへ

ひかりへいった あくまは

むらを みつけました

たいとおじさん ぼくに あなたの なまえを ください

なまえなんて あげられる ものか

なまえをくれたら おれいに おじさんのなかに はいって

ちからをつよく してあげるよ

ほんとうか

ちからが つよくなるなら なまえを あげよう

あくまは たいとのなかに はいっていきました

あくまは たいとに なりました

たいとは むらいちばんの けっとうしゃ

でも あるひ

ぼくをみて ぼくをみて

ぼくのなかの かいぶつが こんなにおおきく なったよ

バリバリ グシャグシャ バキバキ ゴクン

おなかのすいた あくまは

たいとをなかから たべてしまいました

あくまは また なもなき あくまに ぎゃくもどり

かねつきの すずあきのなかに はいっても

バリバリ グシャグシャ バキバキ ゴクン

また なもなき あくまに ぎゃくもどり

えかきの レディンのなかに はいっても

バリバリ グシャグシャ バキバキ ゴクン

やっぱり なもなき あくまに ぎゃくもどり

かいぶつは うみのなかに

すてきなさかなを さがしに いきました

きみのなまえを ぼくにくれたら つよくして あげるよ

びょうきが なおって つよくなるなら なまえをあげる

あくまは こどものなかに はいりました

こどもは とても げんきに なりました

おかあさんは おおよろこび

こどもが げんきになった

こどもが げんきになった

あくまは こどもの なまえが きにいりました

さかなのくらしも きにいりました

だから おなかがすいても がまんしました

まいにちまいにち おなかがぺこぺこでも がまんしました

でも あまりおなかが すいてしまったので

ぼくをみて ぼくをみて

ぼくのなかの かいぶつが こんなにおおきく なったよ

こどもは おかあさんも きょうだいも

みんな たべてしまい ました

バリバリ グシャグシャ バキバキ ゴクン

あるひ こどもは

やみへいった あくまに であいました

なまえが ついたよ

すてきな なまえなんだ

やみへいった あくまは いいました

なまえなんて いらないわ

なまえなんて なくても しあわせよ

わたしたちは もともと やみそのものですもの

こどもは やみへいった かいぶつをたべて しまいました

せっかく なまえがついたのに 

だれもなまえを よんでくれるひとは いなくなりました



アクナムカノン すてきな なまえ なのに



◆ ◆ ◆



「きゅふふ、この状況を覆せないって・・・?」

胸元の傷から鮮血を滴らせて、凶姫、レディンは笑う。

「1対1のデュエルなら、無条件に行えることを忘れたのかなァ? きゅふふ、もう遅いよ・・・既にデュエルは、始まっているんだからねェ!」

その瞬間、同時に複数の戦慄が奔る。

「吉井康助ェ! 神そのものを呼ぶ発想は見事だったなァ! だが私も、56億7千万年、たっぷりと考える時間はあったぜぇ・・・固定概念に囚われない戦術は、お前に学んだようなものだ・・・きゅふっ、あひゃひゃひゃひゃ!」


「まさか・・・・・・地球とデュエルを?」

思わず口にした言葉に、吉井は自分で眩暈を覚える。

他の決闘者たちも、答え合わせをして、同じ眩暈に目を歪めた。


「生命の定義は、ひどく曖昧だ。長期的に見れば、地球も非平衡的解放系に属する・・・無論、生物種に数える意味は無いから、生物学の範疇ではない、が・・・・・・きゅふふ、物理的な実体すら持たないリンネにデュエルが出来るということは、この世の全てがデュエリストってことなんだよなァ! 全てはデュエルだ、平等だァ!!」


拒否権によって、1対1のデュエルは誰にも邪魔されない。

地球が・・・闇に沈む・・・!

そうなれば、生きていられるのは、決闘者と一部の微生物だけだ。


「予定というのは狂うもんだね、きゅふふ・・・本来はトロットを相手に、最善手順の千日手で、世界を膠着させようと思っていたんだよ。S級のマルチデュエルみたいにね。なもんで、奴が沈められたときは、そりゃあ焦った・・・きゅふふ、しかし閃きというやつは、賑やかなほど発生率が高まるものだね!」


56億7千万年の孤独で錆びついた脳髄が、瞬く間に潤い、冴える。


「解き放たれたデュエルを止めることなど、誰にも叶わないゾ・・・? 地球が消えて無くなるデュエルを、がぶりつきで見物できるなんて、君たちは世界一幸運な決闘者だね、きゅははははははっ!!」


そして、デュエルが始まった。


レディン:LP8000
地球:LP8000



「馬鹿げてやがる・・・! 地球がデッキを持ってるはずがねえ!」

デッキが無ければ、デュエルを挑まれた瞬間に敗北する。

地球全体の、具体的なイメージが無ければ挑むことは出来ないが、そこはレディン。
56億7千万年は、地球全体を探索するには十分すぎる時間だった。

「僕らの、負け・・・とまでは言えないが、勝ったとも言えないな。地球が消えた後は、レディンを仕留めて、精霊界に移住するとしても・・・地球の様々な文化は、戻ってこない。マンガも、アニメも、小説も、消えて無くなる。」

勝利こそ出来なくても、出来る限りの傷を勝者に残す。
それが“カンサー”の常套手段であり、首領格なら尚更それを先鋭化している。


「地球が、消える・・・・・・」

流石の吉井も、声色に悲痛が混じる。
この状況を覆す手段を求めて、彼の脳髄はフル回転しているが、方法が見つからない。
自分がデュエルしていれば、絶対に諦めなかった。
しかし今デュエルしているのは地球だ。
地球の命運は、地球自身に託されている。
あまりにも、歯痒い。
自分がリンネとデュエルしたとき、傍から見ていた天神は、こんな気持ちだったのだろうか。

そう思って横を見ると、天神は微笑んで吉井を抱き寄せた。

「大丈夫よ、吉井くん・・・地球は、消えないわ。」


天神が言ったとき、既に地球は、変形を始めていた。

時間が停止して、地球は、三次元空間では形容不可能な分割を始めた。


「これは・・・・・・バナッハ=タルスキーの定理!?」

レディンは、消去したはずの可能性が蘇ってきたことに対し、動揺を隠せない。
地球が増えれば、1つが消えても、もう1つは無事だ。
そこにいる人類などの生命を除外して、地球のみにデュエルを挑んだ以上、当然の結論。

だが、この世界は、どれほど細かくとも、最小単位が存在する。
無限集合を扱うバナッハ=タルスキーの定理では、地球を増やすことは出来ないはずだ。


「「・・・ああ、ゾーン様の面白地球改造計画か。」」

2人の神邪が、同時に思い出して言った。


「な・・・に・・・・・・?」

レディンは“ブック・オブ・ザ・ワールド”を取り出して、ページを捲る。

ゾーンは時間を遡り、地球をモーメントに改造していた。
性質上、虚数を物理体系に含むモーメント物理学においては、この宇宙における質量・エネルギー保存法則の外に位置し、すなわちバナッハ=タルスキーの定理が適用される可能性を含んでいる。

「・・・だがっ、可能性だけだ! それが証明・・・され、て・・・・・・」

言いながらレディンは、ハッと気づいて沈黙した。
続く言葉は、あまりにも迂闊な自分を呪う、憎悪に塗れた吐瀉だった。



「“黒い霧”は・・・不加算(アンカウンタブル)か?」



それは、この世界を創造した神様の置き土産。

吉井とのデュエルで、リンネは何故、“黒い霧”で地球を覆ったのか。
宇宙空間に、地球と同じサイズの黒い塊を現出しても問題なかったはずだ。

敢えて地球を覆った理由は、地球という集合を加算から不加算に変質させる為だとすれば、辻褄が合う。

デュエルにおいてはライフ回復しか出来なくても、デュエル以外では様々なことが出来る。
加算から不加算に変えても、吉井が“黒い霧”を吸い込んだときと同じく、地球生物の健康に被害は出ない。

「きゅふ・・・・・・想像力が・・・足りなかったなァ・・・・・・・・・」

ライフポイントが加算可能な以上、“黒い霧”も加算可能だと、自然に思い込んでいた。
地球を覆ったのも、単なるリンネの気まぐれだと思っていた。その先を考えなかった。

不加算集合となった地球モーメントは、自らを守る為に、バナッハ=タルスキーの定理を用いて“株分け”した。
“株分け”の発想は、レディン自身の十八番だというのに、どうして思い至らなかったのか。
56億7千万年の孤独は、所詮、堂々巡りをしていたに過ぎないのか。

「私の、負けか・・・・・・」

連星となった地球を眺めながら、レディンは静かに手を置いた。
デッキに手を置く行為、サレンダー。
自らのライフを0にする、投了の宣告。


レディン:LP8000→0



そしてデュエルは終了した。

レディンは笑いながら闇に沈んでいった。





「・・・リンネは、あの時点で、どこまで読んでいたんでしょうね・・・・・・。」

もしかしたら、レディンが考えた通り、単なるリンネの気まぐれだったのかもしれない。
それが偶然、この状況に嵌まっただけなのかもしれない。

だとしても、ひとつだけ確かなことがある―――・・・


・・・―――このデュエルは、楽しかった。



◆ ◆ ◆



◆ ◆ ◆



◆ ◆ ◆



わたしは誰だったっけ?

わたしは・・・きょうき・・・・・・

うずみやふゆみ・・・

・・・・・・

・・・

・・・・・・・・・誰だっけ?


ああ、ここは、暗くて、狭い・・・・・・

あたたかくて、水・・・・・・あ・・・・・・


ひかりが・・・・・・みえるじゃないか・・・・・・



◆ ◆ ◆



どこかで誰かが泣いている

どこかで誰かが叫び続けている

痛みに体を震わせている


・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・自我ってヤツが芽生えるのは、こういうときか。

あたしは誰だったっけ?

覚えているのは、うず・・・み、や・・・?

うずみやなつき?

誰それ?

あたしの名前・・・?

・・・・・・

・・・・・・・・・

覚えていることは、これ・・・か・・・・・・

変質したカードの束・・・・・・変質?

何だ、それは・・・あァ、わかんねェ・・・・・・な、あ、あああ・・・・・・

剥がれ落ちて、元に・・・戻って・・・・・・

氷が解けて・・・来るのは、春・・・・・・じゃねぇンだよ・・・・・・くひっ♪


あ、そこにいたのかァ?

もう少しだぜぇ、手を伸ばせよ・・・・・・くひっ、ほら、届くじゃねぇか・・・・・・

あン・・・? あちしが、誰だってぇ・・・・・・?


・・・・・・

・・・・・・・・・




・・・初めまして、主人格サマ。






   決闘祭!   第8章 了

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