佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   番外編 Are You Ready? (後編)

<<   作成日時 : 2017/11/06 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



申し遅れました

ようこそ私の世界へ



◆ ◆ ◆



「ごめんね・・・許してなんて言えないよね・・・。ひどすぎるよね・・・。」

叫びながら体を掻き毟る少年を見て、少女は膝をつく。
少女の輝くような髪が、悲しみで濡れる。

全てを失った少年に告げられた、今までの地獄が生温い事実。

世界から石を投げられたとき、孤独だった。
世界から責を負わされたとき、苦痛だった。
仲間が死んだとき、これ以上の悲しみは無いと思った。
仲間が逃げたとき、死ぬよりはいいと思った。
生きていてさえいれば、失っていない。
自分の周りに誰もいなくても、失ってなどいない。
意識を集中すれば、まるでそこにいるかのように。
ひとりでも、独りじゃない。

しかし少年は、全てを失っていた。
それどころか、最初から何も持っていなかった。

仲間だと思っていたものは、孤独な少年の描いた幻想だった。
幻想と現実の入り混じった、虚構の世界。
実体を持たない仲間は、逃げずに死んだ。
どうりで見失ったりするわけだ。どうりで助けられないわけだ。
実体を持った者は、少年の幻想に合わせて振る舞っていただけ。
途中で逃げた仲間の中には、実体もいたのだろう。
いや、もういい。誰が実体で誰が幻想だったかなんて、考えたくもない。
この自分自身すら、誰かの描いた幻想かもしれないなどと。

掻き毟った眼球を虚ろに、少年は言葉を発しなくなる。
悲痛の虚無を携えて、少年はデュエルディスクを外した。

「・・・・・・僕は、誰を憎めばいい? この感情すら偽物なのか?」

「憎いなら、私を殺して。好きにして。犯して。嬲って。」

輝色の少女は自らの頭に拳銃を突きつけて、少年を見据えた。
ここへ来た時から少女は、何も身に着けていない。
服やアクセサリーは勿論、デュエルディスクすらも。
それだけで少女の本気は伝わってきた。
デッキとディスクが無い決闘者は、裸など及びもつかない正真正銘の丸腰だ。

「それもいいかもしれないな。」

近寄る少年に、少女は思わず怯えた顔をしてしまう。
すぐに取り繕うとするが、少年は安堵したように笑った。

「だけど気付いたんだ。僕は全てを失ったが、デュエルが残っている。そうだろう?」

真空がエネルギーの「底」であって、完全な「無」ではないように。
全てを失っても残るものがある。決闘法則は永劫だ。

「全てを失ったのなら、もう一度。全てを持ってないのなら、この手で掴み取ってやるまでさ。」

外したディスクから血を拭い、少年は再び装着する。

「もしかしたら、お前も僕の幻想かもしれない。」
「・・・違う、って言っても信じてくれないよね。」

寂しげに笑う少女に、少年は首を振る。

「どっちでも構わないんだ。ありがとう。」



◆ ◆ ◆



最終決戦

さいしゅうけっせん?


白き無貌



「随分と立ち直りが早いじゃないか。」

“カンサー”の黒幕、顔の無い少女は机に腰かけて本を読んでいた。

「そっちこそ、黒幕なのに白席って、受け狙い?」

立ち直ってなどいない。
この戦いの後、きっと心が潰れて死んでしまう。

「黒幕? 私は傍観者だよ。」

「傍観者ってのは、世界を滅ぼそうとするものだった?」

少年は、傍観者を怨むことなど無い。
いじめられているとき、見て見ぬふりをした者に、負の感情を抱くことはなかった。
傍観者を意気地の無い奴と責めるのは、被害者に強さを求めるのと同じ、唾棄すべき考え方だ。

しかし、白い眼で見るのは、もはや傍観者ではない。
言わずもがな、人の人生をメチャクチャにする奴などは。

「観測者効果ってやつかなあ。ほら私って、神様みたいなものだから。」

「模造品の模造品が、よく言う・・・。自分を慰める為に、更なる模造品を作るのは楽しかった?」

「模造品だって生きてるんだよ! 模造品を馬鹿にするな! コピーは本物に勝てないなんて、いったい誰が決めたというの? コピーだって、本物になれるんだ!」

顔の無い女は、楽しそうな声で非難する。
逆に少年の声は低くなる。

「愚にもつかないエクリチュールはやめろ。お前は誰でもない。」

「そう、私は誰でもない。だから誰にでもなれる。この世界は牢屋なんだよ、シンヤ君。自由なんてものは、鉄格子まで辿り着けない、小市民の美食に過ぎない。いかなる戦慄の拡大も、檻の大きさの問題だけだ。いかなる戦慄の拡大も、無辺の前では牢屋に過ぎない。ただひとつ、永劫なる無際限のみが、許された悪足掻きだよ。」

「それがどうした。僕が無数の塵の1つだろうと、無数の僕の1人だろうと、実体ですらなかろうと、今ここにあるデュエルの価値が揺らぐとでも思うのか? この世界が5分前に作られたとしても、それを傍観している奴らの世界が、そうでないという保証にはならないというのに、まったく僕も弱気になっていたものだよなァ。」

乗り越えた試練は、再び立ちはだからない。
少年はデュエルディスクを構えた。

「冴えた答えは常に単純だ。構えろミリガン、“Are You Ready?”(いのちごいはすませたか?)」

「Yes I am! “Welcome to the my world!”(いらっしゃいませおきゃくさま!)」



◆ ◆ ◆



◆ ◆ ◆



◆ ◆ ◆



「・・・・・・相変わらず、断片的な情報しか読み取れない本だなァ。」

竜堂神邪は“ブック・オブ・ザ・ワールド”を閉じて、溜息を吐いた。

「わかったことは、向こうの世界の僕が真人間だったことくらいか。神月さんには悪いことを・・・いや、結局あれで良かったんだろう。僕は彼女の“シンヤ君”ではないんだから。」

“カンサー”の手口を知っている神邪としては、彼女を疑わずにはいられなかった。
今でも完全に疑念を払拭したわけではないが、現状あまり関係ない。

ただ、もうひとりの僕に向かって言っておきたいことはあった。

「君に届かない声は、僕の自己満足だけど、“シンヤ君”・・・君の仲間は誰ひとりとして幻想ではないよ。」

言うまでもない、のかもしれない。
吹っ切れた彼は、その答えに辿り着いていたと思う。

神邪の言葉は、ただの答え合わせ。

「デュエリスト能力はデュエルの為にある。まったくその通りだ。君は数字を移動する能力で、デュエルモンスターズの精霊を作ったのさ。」

生命の本質は情報にある。肉体のDNAをジーン、精神のDNAをミームと呼ぶ。
DNAは単純な塩基結合の折り返しであり、突き詰めれば、生命情報を0と1で構築することも可能となる。

「僕にとっては凶報でも、君にとっては朗報だろ?」

神邪は幻想の友人を作ることが出来なかった。
作る“性能”を備えていても、作る“才能”が無い。

葉継から「作家向きだ」と言われたとき、らしくもなく否定したのは、そんな単純な理由だ。

至極単純な、想像力の欠如。
自分が好かれる話を、想像できない。
自分が好かれる妥当性を、構築できない。
都合のいい“人形”しか作れない。


「・・・さて、続きだ。マサキがグレゴリーさんを倒して、その後からか。」


無限の虚空の闇の中で、神邪は再び“黒い本”を開いた。






   Are You Ready?   了

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