置き去りにされた四天王 (中編)

◆ ◆ ◆



「べ、別に、あんたたちのことなんか全然好きじゃないんだからね! あたしは人間なんか大っ嫌いなんだからね! そこんとこ勘違いしないでよね!」

「ヘイトさあー、それって最初の挨拶としてどうなのー? あ、ボクは四天王のNo.2、人魔将軍イヴィルマリス。この獣っ娘は四天王のNo.4、獣魔将軍イヴィルヘイト。」

突然、王宮に現れた2人に、国王も家臣も驚きを隠せなかった。
その振る舞い以上に、その名前が。

「い、イヴィルヘイトに、イヴィルマリスだとお!?」

咳き込みながら、国王は青ざめる。
今にも倒れて死にそうだ。

「だったらどうだっていうのよ! 気安くフルネームで呼ばないでよね! ま、まるで夫婦みたいじゃない!」

「へえー、ヘイトってば老け専だったんだー? ああいうのがタイプなのー?」

「ち、違うわよ! 人間はみんな好きよ! あ、違った、みんな大っ嫌い! 言い間違えた!」

「まあいいやー、話が進まないからボクが喋るけどねー。ぶっちゃけ和解しようぜって提案しに来たの。」

真っ赤な顔で叫ぶイヴィルヘイトを押しのけて、イヴィルマリスが冷静に話す。
だが、その内容は、とても信じられるものではなかった。

「和解だと!? な、な、な、魔族と和解など・・・・ああ、う、者共、何をしているのだ! こいつらを殺せええ!!」

国王の命令で家臣たちもハッとなり、すぐに護衛の兵士たちがイヴィルヘイトとイヴィルマリスを取り囲む。
とはいえ、ここへ侵入を許した時点で取り囲む意味すら無いのだが。


「そうカッカすんなや。カボチャのスープでも飲んで心を落ち着けいな。」


割烹着を着た中年女が、湯気の沸き立つ大鍋を持って現れた。
その隣には同じく割烹着に身を包んだ長身の女が容器を持っている。

「な、何だ、無礼者が! 料理人ふぜいが入ってきていい場所だと思っているのか!」

「馬鹿にされた! 悔しい! この私が、魔王軍じゃ四天王No.3の私が、この水魔将軍イヴィルジェラシー様が、人間ふぜいに見下されて叱られるなんて、悔しい悔しい悔しい!」

イヴィルジェラシーは涙をボロボロと流しながら叫んだ。
やけに説明的なセリフだなあと思いながら、イヴィルマリスは興奮しそうになっていた。

「そんで、オラが四天王のNo.1、食料将軍イヴィルパンプキンだべ。食べ物は大事、腹が減っては戦は出来ぬ。話し合うにしろ、殺しあうにしろ、まずは食べるもん食べてからにしようや。」



◆ ◆ ◆



穏やかな雰囲気に流されて、異様な雰囲気を残したまま食事が始まった。

「ああ悔しい。イヴィルパンプキンのカリスマは異常。羨ましいわ。」

ぶつぶつと呟きながら、イヴィルジェラシーは容器にスープをよそった。
カボチャの良い匂いが広がる。

「いただきますー。」

イヴィルマリスはイヴィルヘイトの胸を揉みながらスープを飲んだ。

「何すんのバカっ!」

イヴィルヘイトが蹴りを放つが、イヴィルマリスは器用によける。

「何すんだよー。スープがこぼれたら勿体無いだろー。」

「あんたなんか大っ嫌い!」

「リア充めリア充めリア充めリア充めリア充め羨ましい羨ましい羨ましいウラヤマシーン。」

どう考えても不要なギャグを呟きながら、イヴィルジェラシーはスープを飲み始めた。


飲んでいるうちに、みんなの表情が変わってきた。
険しい表情が、ほころんできた。

「そうそう、腹が空けば腹も立つ。お腹いっぱいになれば、自然と笑顔になるべ。」

「じゃあー、そろそろー、話し合いしようかー?」

「うん、任せるべ、マリス。」


「和解・・・だったか・・・・・?」

既にスープを飲み終わった国王が、弱々しい口調で聞き返す。

「そうだよー。でもねー、人類と魔族がお手手つないで仲良くしましょー、これにてハッピーエンドなんてー、単純な話じゃないんだー。ボクは平和主義者だからー、それでも構わないんだけどー、むしろそれが理想の形だったんだけどー、そうもいかなくなってきたんだ。これはね、今はね、世界が滅びるかどうかってレベルの話なんだ。」

「は・・・・・・?」

「そうでなきゃー、ボクらが人間と話し合うとかー、ありえないでしょー。話し合うにしてもー、四天王が全員でゾロゾロと来るとかー、ないでしょうー。大体あなたもねー、魔王様のときと違ってー、こうして話し合いの姿勢を取っているあたりー、事態の変化を感じ取っているんじゃないのー?」





つづく

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この記事へのコメント

2013年11月15日 16:50
火剣「格好が人間でもいきなり大嫌いって言われたら焦るぜ」
コング「ネコミミ少女だから激怒しててもかわいい」
ゴリーレッド「好きよって間違えてるし」
火剣「冷静なのはパンプキンとマリスの二人だけか」
コング「誰かジェラシーを励ましてあげるべきだ。魔族でもマイナス思考な者はいるんだな」
ゴリーレッド「コングみたいに悩みのない自信満々男にはわからないだろう」
コング「悩みはあるぜ。大人になってもパズーとシータは付き合ってるかと思うと、夜も眠れない」
火剣「それより国王以下、家臣たち。スープを飲むか普通」
コング「和解と言って安心させておいて全滅というのは考えないのか。相手は魔族なのに」
ゴリーレッド「なるほりろ」
コング「僕が参謀なら国王に耳打ちする」
火剣「何だ?」
コング「四人の中では断然ヘイトだ。ヘイトに眠り薬を飲ませて、目が覚めたときは磔! 人質作戦成功」
ゴリーレッド「それで?」
コング「磔の下には煮え滾るカボチャスープ」
ゴリーレッド「頭からかけてあげようか?」
コング「冗談だ」
火剣「話し合いは成立するのか?」
ゴリーレッド「微妙だ」
コング「待てよ。でもタイトルからラストの察しがつく。全裸置き去りにされたネコミミ少女」
ゴリーレッド「フェイスクラッシャー!」
コング「ごっ・・・」
火剣「置き去りにされた四天王か。ハッピーエンドではなさそうなタイトルだ」


2013年11月15日 21:34
どういう…ことだ…?っと、そうか、冬未さんの脅威が伝えられたのか…。そして、冬未さんの魔力暴走によって世界レベルでの天変地異や異常気象、災害が発生しているということなのか?四天王はわりかし魔王の思想を受け継いでいる感じですね。ここで人間と魔族が手を取り合って危機に立ち向かおうという発想がある辺り。全てが終わったその後をどうするかは今はおいといて、対立していた二つの勢力が手を組むということは強大な敵が現れたということ。やっぱり冬未さんしかいない…。まあ、首だけ魔王と竜王、その娘達と勇者一行+ドラゴン軍団も脅威ではありますが…。
2013年11月15日 23:02
>火剣さん
いきなり王宮まで来ている四天王たちです。もうそれだけで焦る要因、雰囲気に流されてスープも飲んでいます。猜疑心が強い割りに、色々と抜けていますね。
パンプキンスープで腹を満たした一同。ここからマリスの話術の見せ所です。ハッピーエンドまでは未だ遠いですが・・・。

八武「悔しがって涙を流す女子。イイ!」
山田「お前は何を言い出すんだ。」
佐久間「ジェラシーを励まそうとしているんだろ?」
八武「その通り。魅力的だと伝えたい。」
山田「逆効果だ。」
佐久間「喜ぶかもよ。放置プレイ推奨。」
八武「いやいや、それは勿体無い。好き放題して、本気で泣きじゃくるまで白濁スープを注ぎ込m」
山田「バルス!」
八武「ぎゃあああ! 目がぁ・・・目がぁ・・・」
佐久間「人質に取るならヘイト。これは正しい。」
山田「四天王最弱だからか?」
佐久間「それもあるが、眠り攻撃が効くのがヘイトだけだからな。ジェラシーは体が柔らかいから磔にしても逃げられるし、マリスは罠には引っかからないし、パンプキンは力ずくで突破する。」
八武「ほう、ジェラシーの体は柔らかいのか。」
山田「注目するところがそこか。」
八武「柔らかさは重要だ。何かと肌の色を問題にする輩が多いが、わかっちゃいない。重要なのは手触りだろうが!」
山田「そりゃあ人種差別は駄目だが、お前の怒りは毎回どこかズレてんだよな・・・。」
佐久間「人種どころか種族の壁も超えなければならない、魔族と人間の明日はどっちだ! 次回!」
2013年11月15日 23:13
>千花白龍さん
姿は見えずとも存在感を示す冬未さん・・・世界を滅ぼしかねない脅威とは、彼女のことなのでしょうか?
四天王は、当初のコンセプトではアンチ人類だったのですが、話を転がすうちにフレンドリーなコメディ集団になりました。
件の魔王ふゆみんには及ばなくとも、ドラゴン族も相当の脅威であることは間違いありません。流石に人類全体と戦えば負けますが、一国家を滅ぼす程度は容易です。

山田「脅威が冬未とか・・・ルビデの虚言が予言になったなんてことは・・・。」
佐久間「国王の態度が弱腰になっていることに、冬未の行動も関係している。」
八武「どうとでも取れる言い方だな。」
佐久間「初期案では、四天王が脅威を呼び覚ます役割だったのだが、変われば変わるものだ。キャラ的に。」
八武「そうだ、手を組もう。すりすりすりすり・・・」
山田「こいつも脅威だ!」

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